上高地 2001年9月19・20・21日

遅い夏休みを取って上高地に行ってきた。

新宿から中央線でスーパーあずさっていうのに乗って2時間くらいだったか、松本に着く。ここからは松本電鉄っていうので、新島々駅まで30分(ちなみに、この駅名は、「しんしましま」と濁音なしに発音するのが、可愛い感じだった。)。そして、そこから1時間くらいバスに乗って上高地に到着である。

途中は、ダムに継ぐダム。はっきり言って、あれを見りゃ、「もうダムは要らない」って、土建屋以外、誰でも思うわな、なんて思う。ダムをのぼりきったあたりの集落から奥へは、タクシーかバスでしか上高地へ行くことは出来ない。自然を大切にしているとともに、地元の特定の企業に独占的に金が転がり込むという構造になっている。

上高地は周りを山に囲まれた湿地帯の多い高原だけれども、バスで行くと左手に上高地唯一の活火山という焼岳が見え、眼下に大きな湖が見えてくる。大正時代の噴火で梓川が堰き止められて出来たので大正池という名前だそうだ。この湖畔にひっそりと一軒たたずむ大正池ホテルに宿泊することになっている。他のホテルはもうちょっと上流の方、地理的に中心に位置し、バスターミナルもある河童橋周辺に多いのだが、コストパフォーマンスが高いのはここだと判断した。もっとも、CPを考慮しなくても良い経済状況なら、迷わず帝国ホテルに泊まるのだが。。

ホテルには、昼ごろ到着した。かなり暖かい。空は真っ青。雲ひとつない。まさに、千昌夫の歌にあった「白樺、青空・・」である。素敵な歌詞なので、もっと素敵なメロディーを考えたくなる。チェックインは3時なので、荷物を預けて、ホテルの食堂で昼飯を食べる。豚汁定食、山菜蕎麦。メニューは平凡だが、味付けはまあまあ。食堂から見える大正池の色彩美にしばし酔う。青〜緑の微妙な色彩は、湖底が白砂のところで見ることが出来るようだ。ボートに乗っている人がいる。昼飯を食べながら、スケジュールを大まかに決める。初日は、大正池から田代橋まで往復ハイキング、田代橋近くの帝国ホテルでお茶。二日目は、河童橋までバス、そこから明神池まで往復ハイキング。三日目は、チェックアウト後、ボートに乗って、昼、河童橋、昼過ぎ帰路へ。という感じ。めずらしく、ほぼ予定通りの旅行となった。

早速、湖畔に下りる。焼岳が大正池に写る。波がほとんどないので、鏡のよう。鴨がすごく人懐っこい。オシドリのメスがいる。すごく可愛い。オシドリ夫婦のオシドリなのにオスはいない。写真を撮っている人がたくさんいる。観光地に来たのは、とても久しぶりだったので、他の人が使っている光学機器を楽しく観察する。上高地においては、おおよそ、一眼レフ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、双眼鏡、使い捨てカメラという順番で持っている人が多い。一眼レフは、ほぼ100%、キャノン、ペンタックス、ミノルタあたりのAFカメラ。MFの人は、旅行中、一人も見なかった。ましてや、RF機など一人もいなかった。私は、もちろん、ニコノスV一台である。

天候は、ティーシャツ一枚でも大丈夫な感じ。事実、そういう人がいっぱいいる。自然研究路という名前の散歩道に進む。湿地帯なのでボードウォークも多い。黒い上着を着ていたので、蜂にしつこく付きまとわれるので、白ティーシャツだけにしたら、やっと相手にされなくなる。黒い上着は、蜂蜜大好き、蜂巣破壊者の熊に勘違いされるというわけだ。蜂がいるなんて想定していなかった。今度からは気をつけよう。

それはそうと、水のクリアさに圧倒される。岩魚とかそういう魚がいっぱい泳いでいるのが見える。釣りなどする人は一人もいないから、稚魚も成魚も非常に人懐っこい。人の気配にきづき逃げるということは皆無である。鴨類も人を見るとよってくる。帝国ホテルの敷地内では、日本猿の一家に出会うが、彼らも人に敵対心も警戒心もない。「あ、ひとか」という感じ。こちらも「あ、さるか」という感じ。ここは、理想郷か。

かと思うと、河原でおばちゃん軍団がタバコをぷかぷかしながら、鴨をからかって、みんなで大笑いしていたりする。ああいう輩が、ごみを捨てていくんだろうな、なんて思う。

帝国ホテルは、田代橋の近くにある。昭和8年建築のなかなか素敵なホテルだが、フランク・ロイド・ライトの設計ではないと思う。高度成長期に屋根がぺらぺらスチールに替えられてしまい、ちょっといけてない感じになってしまったのが残念であるが、雰囲気は悪くない。ロビーは結構小さく、山荘的な雰囲気ではあるが、ドアマンから始まって、従業員の立ち振る舞いは、一流ホテルのそれである。休憩をしにティールームに入る。ここの床は、なかなか素敵なデザインだった。やまぶんど(山葡萄の現地語か?)のジュース、および、モンブラン+紅茶を頼む。こんなに美味しいモンブランを食べたのは初めて。

田代橋にもどると3時過ぎ。ちょっと寄り道が過ぎるので、普通のペースの倍はかかっている。5時には暗くなるという話なので、大正池方面に戻ることにする。往路にも立ち寄った田代池に帰路にも立ち寄る。今度来るときは、ここでピクニックをすると誓う。今回は、ビニールシートとか食べ物とかはもちろん、上高地の水は、とても甘くて美味しいから、ペットボトルさえも持っていなかったのだ。

ホテルに戻るやいなや、風呂に入る。上高地には温泉がある。無色透明だが、すごく鉄イオンが豊富な味がする。血が溶けてるんじゃないの?って感じ。そういえば、渓流にも所々、真っ赤な水が出ているところがあったっけ、なんて思う。ここのホテルの風呂は、泊まっている部屋とおなじ最上階の3階にあり、焼岳、大正池が一望できる。部屋に戻ったら、ちょうど夕焼け。池の微妙な色彩に食堂に行くことも忘れる。夕飯は、典型的な和風旅館スタイル。豪勢で、味もなかなか良かった。

二日目、朝目覚めると、一面真っ白、しかし、上空は青い空であることがわかる。上高地全体が霧の中に入っていることに気づく。ちょうど山に直射日光は当たるが池にはまだ当たっていないとき、霧が池の上にかぶさったような感じになり、とても神秘的。上高地全体に直射日光が当たるにつれ、霧は消えて、最終的には、とてもクリアな空気になる。今日も雲ひとつない快晴である。

朝風呂に入って朝食。売店で山葵煎餅を購入。10〜15分おきにバスは走っているので、すぐ河童橋に着く。ここからの穂高の眺めは、上高地の代表的絵葉書的景色。今日はそこから明神池まで往復ハイキングの予定である。途中ボードウォークから分岐する桟橋があり、そこでしばし休憩。ここでも、鴨が寄ってくる。本当に可愛い。ルックス的に一番すきなのは、やはり、おしどりの雌。

途中で梓川の河原に出ることが出来た。猿、鹿と思われる足跡を確認。熊がいたらちょっと怖いな、なんて思う。足だけ水に浸かる。水は非常に冷たい。5秒も入っていれば痛くなってしまう。でも、だいぶ足が軽くなる。そのあと、木に聴診器を当てている人に出会う。音が聞こえるらしい。話し掛けたけど、ろくに相手にされなかった。

そこからは結構すぐに明神池に着く。トータル2時間くらい。やはり、普通の倍はかかっている。明神池に入るには、神社の入場料を払わなければならない。とりあえず、手前にある、嘉文次小屋で昼飯を食べる。ちなみに、ここでは、注文してから岩魚を川の囲いから取り出して焼くので評判だが、それは食べなかった。明神池は、一の池と二の池に分かれている。一の池は、緑色の大きな鏡のよう、鴨がはしゃぎ、岩魚がいっぱい泳いでいる。これだけ動植物が豊かなのにこれほど水がクリアなのは何故だろう。しばし、美しい緑色に酔う。

二の池では、大きな岩があったので、そこで、岩魚や鴨と遊びながら小一時間だらだらする。こちらは、一転、岩がごろごろしており、それが盆栽のようになっている。岩の上に草の種が飛来し、草が腐り土になり、木の種が飛来し、その土の上で発芽し、それが育ち、盆栽のようになっている。雄大な時の流れを感じる。

あまりだらだらしてもいられないので、梓川の川岸に戻ると、日本猿の雄と目が合う。明神橋まで先導してくれ、橋の前で、我々が追いついたところで来た道を戻っていった。よぽっど暇だったんだろう。気持ちはうれしいけど、ピンク色のツルツル無毛たまたまがブラブラするのが丸見えだよ。

橋を渡ると日本猿の群れ。なので、橋のたもとで昼寝をする。ここの猿たちは、人の荷物にちょっかいを出すというようなギスギスした輩ではない。ぼんやりしていると、猿の群れに、岸の反対側から石を投げるアホカップルがいたので、猿が騒然となる。ちょっと興奮気味なので、その場を立ち去る。猿のおしっこは、ちょちょっと出して終わることを知る。

明神館に行こうと思ったが、別に用がないのにきづき、そのまま、もと来た道を戻る。梓川、青い硝子のようなクリアさ。2時間弱歩いたところで、往路に休んだ河原にてまた水遊びをしていたら、猿が河原を散歩しているのに会う。

やはり、往路に立ち寄った鴨の桟橋で、鴨としばし遊ぶ。こんなに上流なのに岩ごつごつでなく、緑がいっぱいなので、日本でないような気分になってくる。ここで無性にカヤッキングがしたかったが、それはかなわぬ夢。河童橋に戻り、御土産を購入。バスでホテルに戻る。

三日目は、くもっている。前日と違い、本当に曇りだ。今日も、朝風呂に入る。風呂から池を見ると霧雨が降っている。降ったり止んだりしているよう。朝食をたべ、チェックアウト。荷物を預けて、外に出たら、ちょうど雨が止んでいたので、ボートに乗る。30分800円也。高いよなぁ。白砂の部分は水が青く見える。その部分に行き、また、ヒヨドリの雌としばし遊ぶ。30分なんてあっという間。

雨が降ってきたので、とりあえず、バスターミナルにバスで移動。とても寒い。前二日のポカポカ日和が嘘のよう。散歩をしようと思ったら、本格的に霧雨が降ってきたので、もう帰路に着くことにする。上高地から外に出るバスは、チケットだけでなく、整理券も手に入れなければならない。前日に手に入れておいた2時頃のバスの整理券を午前中の便の整理券に交換。次日から連休なので、人がたくさんいる。「暑さ寒さも彼岸まで」って言うけど、ここ上高地でも、そうだった。彼岸直前の上高地、人も少なくて最高です。もっとも、台風が来る可能性もないわけではないので、本当に運が良かった。

September 27 2001

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