修復前の状態
キャンバス :
キャンバス地はオリジナルである。既にワニス塗りされ、和紙が貼られ、その上、板に膠で接着されている。
(既に乾いて破れている)和紙の上からも、布地の破れ、損傷や色落ちが多数見られる。布地の縁はほころび、破れあり。
木枠 :
板に接着しているため、木枠なし 損傷 :
無数の虫の排泄糞あり。布地が板に膠で接着されている 下地 :
下地層は茶色。布地との粘着力、悪 絵の具層 :
色落ち多し。下地との粘着力、悪。(触れるとぽろぽろ絵の具が落ちる)
修復過程

表面の保護
キャンバスは既に和紙が貼られ、板に膠で接着されているので、
まず、最初に表面の絵具がはがれかけている部分に和紙を膠糊(材料レシピ)
で貼る。

板からはがす
へらとナイフでキャンバスを板からはがす。

裏地洗浄
裏面を紙やすりで磨き、掃除機で粉を吸い取る。

Consolidamento(裏地の保護)
裏面に熱いcolletta;膠糊を塗る。

Foderatura(裏打ち)
裏地にColla di Pasta;パスタ膠糊を塗る。裏打ち用枠を準備し、新しい布地をかける。
これを絵の裏側に重ねてさらに上からパスタ膠糊を塗り、定着させる。

Stiratura(アイロンかけ)
これが乾いたら絵の表側からシリコン紙、新聞紙をひいて低温(45-50℃)でアイロンをかける。

Svelatura(ワニス取り)
熱湯とスポンジで表面を湿らせ、ナイフで表に貼ってある和紙を取る。
膠糊注入
和紙をはがすとき、紙といっしょに絵具もはがれてくる部分に注射器で膠糊を注入し、
キャンバス地と定着させる。乾いたら、その部分に再度アイロンがけをする。

Ripensamento(再思考)
熱湯で表面の洗浄中、右手の上に最初に描かれていた手を発見。

Montaggio(木枠に張る)
仮枠からはずし、キャンバスの大きさの木枠に張る。

Pulitura(表面の洗浄)
始めに、一部分だけ洗浄し、他の部分との比較をする。
その後、全体を洗浄。使用した溶剤は、アセトン、dimetil solfossido(デメチル硫化物?)、コントラッド10%、20%(弱い順に)。
絵具の色まで取ってしまわないよう注意。
中和用に、テレピン油、最後にワニス(vernice retouche 50%)を塗る。

Stuccatura(ジェソ詰め)
下地層のない部分に、うさぎ膠と茶色の顔料を混ぜたジェソをつめる。顔料を使用したのは、
オリジナルの下地層が茶色なため。乾いてから、キャンバスと同じ高さになるよう表面を紙やすりで研磨。
その後、またワニスを塗る。

Reintegrazione(着色)
ヴェルニーチェ(ワニス)絵の具で、ジェソの部分、色落ちの部分を彩色。

Vernice(仕上げのワニス)
ワニスをスプレーでかける。
←修復後(2002.6.28)