初めての修復作品




どこぞの教会にあったという19世紀の油絵を、修復初めて、 という私たちに与えられたことにまずびっくりしたのですが、イタリアは、 こういう古い絵が無尽蔵にある国なのだな、と。
この絵を私はイスラエル人のエイナットと二人で修復することになったのですが、 一番の問題はイタリア語で、毎日の修復レポートからして、周りに聞きながら、ようやく 修復完成に至ったのでした。

← 修復前(2001.11.15)

主題 : Il canonico Alessio Simmaco Mazzocchi
作者 : 無名
寸法 : 89 x 67 (楕円)
地域 : ナポリ
技法 : 油絵

修復前の状態

キャンバス : 2ヶ所の傷と無数の細かい孔がある。布地はとても薄い。最近修復された跡がある。裏に2ヶ所の継ぎ当て布と、無数の染みあり。
木枠 : オリジナルである。虫食いによる孔あり。
損傷 : キャンバス地が弛んでいる。無数の虫の排泄糞あり。
下地 : 下地層は白。絵の具層、キャンバス地との粘着力は良。
絵の具層 : 色落ち、多少あり。引っかき傷あり。裏地に当て布のある部分を含め、何ヶ所か修復の跡が見られる。


修復過程

Velatura(表面の保護)

Colletta;膠糊(材料レシピ)を表面に塗り、水を湿らせた型紙(和紙を使うこともある)を貼る。

Consolidamento(裏地の保護)

翌日以降、表面が乾いてから裏地を紙やすりで磨く。 上の絵の場合、裏に当て布があったので、それを取ってさらに裏地を磨いた。その上に熱いColletta(膠糊)を塗る。

Foderatura(裏打ち)

それが乾いたら、更に裏にColla di Pasta;パスタ膠糊(材料レシピ)を塗る。

裏打ち用枠を準備し、布地をかける。これを絵の裏側に重ねてさらに上からColla di Pasta;パスタ膠糊を塗り、 絵と裏打ち布を定着させる。

Stiratura(アイロンかけ)

翌日以降、これが乾いたら表側からシリコン紙、新聞紙をひいて低温でアイロンをかける。

Svelatura(ワニス取り)

熱湯をスポンジに湿らせて、表に貼った紙をとる。布地を裁断し、新しい木枠に張る。

Pulitura(表面の洗浄)

溶剤は色々種類があるのですが、この場合はアセトンのみを使用。 前に修復された跡(ヴェルニーチェ;ワニス絵の具)がオリジナル部分も含めて着色されてあり、その部分も洗浄。

Stuccatura(ジェソ詰め)

下地層のない部分に、うさぎ膠を混ぜたジェソをつめる。

Reintegrazione(着色)

最初は水彩絵の具、次にヴェルニーチェ絵の具で、ジェソの部分の他、色落ちの部分を彩色。

Vernice(ワニスかけ)

仕上げにワニスをスプレーでかける。


←修復後(2002.3.7)





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