油絵修復 (3作目)




レデンプトール修道会(18世紀ナポリに創立)神父の肖像画。
テーブルにある"Glorie di Maria" と書かれている紙片から、同名の本の著者、サント・アルフォンソの肖像ではないかという。 サント・アルフォンソはレデンプトール修道会の創立者という重大な人物なのだけど、写真もなかった当時のことなので、これという証拠もない。 アルフォンソを崇拝する(三流)画家が、本人を想像して描かれたのではないかと、私個人的には思う。

← 修復前(2002.10.28)
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Soggetto : レデンプトール修道会神父
Autore : 無名
Misure : 102 x 75.5 cm
Residenza : ナポリ
Tecnica : 油絵

修復前の状態

キャンバス : キャンバスはオリジナルで、手職人工業製である。網目は粗い。弛んでいて、表面が埃で汚れている。 上部に穴あり。手の部分に破れあり。全4枠部分、キャンバスの破れ、ほころびが目立つ。 裏面には湿気によるしみあり。
木枠: 釘打ちによる固定木枠。木はぼろぼろ状態。湿気による損傷とカビあり。
下地: おそらく動物性の糊と白顔料による下地層。キャンバスとの粘着性は良。下地層の粘着性は悪い。
絵具層: 表面はかなり乾燥している。ほぼ全表面に絵具層の亀裂があり大きい。上面にカビがあり、ほぼ全表面に虫の排泄糞による汚れあり。


修復過程

洗浄

キャンバスは固定木枠に釘打ちされ、さらに木製の額が釘打ちされていたので、釘を抜いてこの額からはずすことから始める。 次に、部分を試洗浄し、どの溶剤が適切か見る。使ったのは 1)ぬるま湯, 2)水 + アルコール, 3)水 + アセトン, 4)水 + アルコール + アセトン, 5)Dimetilsolfossido (50%, 100%), 6)Saliva sintetica, 中和にessenza di trementina(テレピン油)。 最終的に洗浄に使用したのはDimetilsolfossido 100%。表面の虫の排泄糞の点々はナイフで削ってとる。次に裏面を紙やすりで磨く。

Velinatura(部分表面保護)

洗浄に使った Dimetilsolfossido により、絵具層の表面が隆起した部分が生じたので(中央部) coletta(膠糊)と和紙で保護する。

Velatura(表面保護)

水を湿らせた型紙(修復に使う和紙より厚め)を貼る。

裏面の洗浄

紙やすりとナイフで裏面洗浄。その後、裏面にはアセトンに溶かしたパラロイド3% を防水の為に塗る。

Inserti(部分キャンバス入れ込み)

キャンバスの穴と同じ大きさの布を作成。(網目の大きさが同じ布を使用し、縦糸と横糸がオリジナルと揃うように注意) これを裏から穴に当て込み、その上に穴が隠れる大きさのガーゼを置いて、パスタ糊で貼り付け、最終的に全表面にcolletta(膠糊)でガーゼを貼り、補強。

Foderatura(裏打ち)

いつもの油絵修復と同じように裏打ち用仮枠に布を張り、パスタ糊でオリジナルキャンバスと定着させる。

Stiratura(アイロンかけ)

前回前々回と同様にアイロンかけ。温度は45-50度、アイロンは3-5kgとかなり重め。

Svelatura(ワニス取り)

熱湯とスポンジで表面を保護していた紙をはがし、仮枠からはずし、 木枠に釘で固定する。

Stuccatura(ジェソつめ)

うさぎ膠糊とジェソでキャンバスの凹部分をつめ、紙やすりとナイフで磨く。 テレピン油に溶いたワニス(Vernice retouche)を全表面に塗る。

Reintegrazione pittorica(彩色)

ジェソの部分、色落ちの部分にまず水彩絵具で着色し、ワニス(vernice dammar;かなり表面が乾燥していたため)を塗り、 次にヴェルニーチェ(ワニス)絵具で着色。


←修復後(2003.4.9)
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