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その灰は一人の僧侶と二人の戦士によって運び込まれたという。
ワードナの遺した地下迷宮に挑む冒険者達は常に死と隣り合わせだ。
一瞬の油断が命取り、次の瞬間にはその魂は天に召される。

「異教の神に召されはせぬ。
 彼の魂はいまだ彷徨っている・・」

彼と冒険を共にした僧侶は語った。
遥か東、太陽の出づる黄金の島から彼はやってきた。
黒く薄い衣に不可思議な術、小さな十字剣は敵の首を瞬時に切り裂く。
忍(シノビ)と呼ばれる彼は無数の魔物に取り囲まれ、石化したという。

「カドルトの加護は得られなかった。
 彼は砕け、灰となった。私らは辛うじて移動呪文で戻ってきたのだ」

僧侶は苦々しい表情で懐を探った。

「これが彼の唯一の持ち物だ。
 あんたに預ける。
 彼を呼び戻す事ができたなら、これを渡してやってほしい」

それは小さな十字架のような剣だった。。

「武器よ。
 あなたたちの探しているムラマサと同じ。。
 武器というのはね、剣とは違って不思議な力を備えているの」

まるで子供に教えるように、優しい声でレイナは語った。
その手には武器と呼ばれた小さな十字剣が握られている。
リィンは妖し気な視線に少しうつむきながらも聞き入っていた。

「綺麗でしょ・・
 魔物の血を吸い続けた魔性の刃紋よ」

「あ、あの、、」

くすぐるような吐息は甘美な香りがした。
リィンの体は微かに痺れ、夢に誘われるような心地良さを感じた。
耳許にレイナの唇が近付く。。

「いいかげんにしろ」

ヴァーンガルツが声を荒げた。
レイナはリィンの髪を撫でながら微笑んだ。

「あら、
 契約したのは彼女と、よ」

「いいから黙って・・」

ヴァーンガルツが立ち上がった。

「いくぞ。
 カント寺院だ」

「これから?」

「これからだ」

ド ウル ワトーを留守に残し、彼らはカント寺院に向かった。
月が長い影を映し出す。
リィンがつぶやいた、、

「不思議・・死んだ者が蘇るなんて・・」

「肉体は魂の器でしかないのよ。
 ・・死んだことはないから、詳しい事はわからないけどね」

「魂だけになると、心はどこにいくのかしら・・」

しばらくすると綺羅びやかに飾りつけられた門が彼らを出迎えた。

「黒装束の戦士、ヅェート ラゥイルの復活を希望する者だ」

寺院の受付は昼夜を問わない。すぐに多額の寄付が要求された。

「本当に・・使えるんだろうな?」

渋々金貨の入った革袋を差し出すヴァーンガルツに
レイナはただ笑って答えた。

儀式が終わったのは明け方、町が紫に染まった頃だった。
棺は礼拝堂から大広間に移された。
静かに眠る男の体はわずかに動いていた。
息が戻っている。
復活は成功したのだ。

「ヅェート、、ヅェート ラゥイル」

レイナが呼び掛けると男の眼が開いた。

「・・・・」

言葉はなかった。
瞳は宙をみつめている。
やがて静かな呼吸音が聞こえ出した。
切れ長の眼、黒い髪、痩せた頬、、初めて見る異国の戦士、、
リィンはただ黙って彼を見守っている。
ヴァーンガルツは品定めするかのように、その鍛えられた体に目をやった。

「・・感謝する」

男は静かに体を起こし、命の恩人たちに礼を言った。

「二度目だな、レイナ アッシュ」

レイナは無邪気に微笑みながら、あの小さな十字剣を手渡した。


第三章『漆黒の戦士』につづく

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