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-10- その灰は一人の僧侶と二人の戦士によって運び込まれたという。 ワードナの遺した地下迷宮に挑む冒険者達は常に死と隣り合わせだ。 一瞬の油断が命取り、次の瞬間にはその魂は天に召される。 「異教の神に召されはせぬ。 彼の魂はいまだ彷徨っている・・」 彼と冒険を共にした僧侶は語った。 遥か東、太陽の出づる黄金の島から彼はやってきた。 黒く薄い衣に不可思議な術、小さな十字剣は敵の首を瞬時に切り裂く。 忍(シノビ)と呼ばれる彼は無数の魔物に取り囲まれ、石化したという。 「カドルトの加護は得られなかった。 彼は砕け、灰となった。私らは辛うじて移動呪文で戻ってきたのだ」 僧侶は苦々しい表情で懐を探った。 「これが彼の唯一の持ち物だ。 あんたに預ける。 彼を呼び戻す事ができたなら、これを渡してやってほしい」 それは小さな十字架のような剣だった。。 「武器よ。 あなたたちの探しているムラマサと同じ。。 武器というのはね、剣とは違って不思議な力を備えているの」 まるで子供に教えるように、優しい声でレイナは語った。 その手には武器と呼ばれた小さな十字剣が握られている。 リィンは妖し気な視線に少しうつむきながらも聞き入っていた。 「綺麗でしょ・・ 魔物の血を吸い続けた魔性の刃紋よ」 「あ、あの、、」 くすぐるような吐息は甘美な香りがした。 リィンの体は微かに痺れ、夢に誘われるような心地良さを感じた。 耳許にレイナの唇が近付く。。 「いいかげんにしろ」 ヴァーンガルツが声を荒げた。 レイナはリィンの髪を撫でながら微笑んだ。 「あら、 契約したのは彼女と、よ」 「いいから黙って・・」 ヴァーンガルツが立ち上がった。 「いくぞ。 カント寺院だ」 「これから?」 「これからだ」 ド ウル ワトーを留守に残し、彼らはカント寺院に向かった。 月が長い影を映し出す。 リィンがつぶやいた、、 「不思議・・死んだ者が蘇るなんて・・」 「肉体は魂の器でしかないのよ。 ・・死んだことはないから、詳しい事はわからないけどね」 「魂だけになると、心はどこにいくのかしら・・」 しばらくすると綺羅びやかに飾りつけられた門が彼らを出迎えた。 「黒装束の戦士、ヅェート ラゥイルの復活を希望する者だ」 寺院の受付は昼夜を問わない。すぐに多額の寄付が要求された。 「本当に・・使えるんだろうな?」 渋々金貨の入った革袋を差し出すヴァーンガルツに レイナはただ笑って答えた。 儀式が終わったのは明け方、町が紫に染まった頃だった。 棺は礼拝堂から大広間に移された。 静かに眠る男の体はわずかに動いていた。 息が戻っている。 復活は成功したのだ。 「ヅェート、、ヅェート ラゥイル」 レイナが呼び掛けると男の眼が開いた。 「・・・・」 言葉はなかった。 瞳は宙をみつめている。 やがて静かな呼吸音が聞こえ出した。 切れ長の眼、黒い髪、痩せた頬、、初めて見る異国の戦士、、 リィンはただ黙って彼を見守っている。 ヴァーンガルツは品定めするかのように、その鍛えられた体に目をやった。 「・・感謝する」 男は静かに体を起こし、命の恩人たちに礼を言った。 「二度目だな、レイナ アッシュ」 レイナは無邪気に微笑みながら、あの小さな十字剣を手渡した。 |