ULTRA7-eps12




幻の第十二話

若い皆さんはこの宇宙人を御存知ないでしょう。
同じ世代の方でも、もう覚えてない方がほとんどだと思います。
ウルトラセブン第十二話「遊星より愛をこめて」に登場した
宇宙人が、この下の画像のスペル星人です。

『ウルトラセブンの十二話って欠番扱いになってるアレですか?』

そう、少し特撮関係に詳しい方なら目にされた事があると思います。
現在発売されているビデオやDVDにも欠番と書かれています。
名作として誉れの高い特撮作品「ウルトラセブン」、その中に
いまだ封印され続けるエピソードがあるなんて、御存知でしたか?



この幻の第十二話「遊星より愛をこめて」は次のような内容です。

若い女性が極度の貧血で失神する事故が増えてきました。
もちろんウルトラ警備隊の出動するような事件ではありません。
しかし、その女性たちが共通する腕時計をつけていたことから
事態は一変します。その腕時計には巧妙な細工がしてあったのです。
女性の血液を抜き取り結晶化させる複雑な仕組み、しかもその時計の
材質は地球上の物ではなかったのです。宇宙人による採血、それが
この事件の裏に隠された恐ろしい真実だったのです。



ウルトラ警備隊のアンヌ隊員の友人も、この腕時計を恋人の男性に
プレゼントされていました。実は、恋人と名乗るその男性こそが
スペル星人の変身した姿であり、彼らは自らの故郷であるスペル星が
核兵器によって汚染されたため、この地球に新鮮な血液を求めて
やってきていたのです。女性の弟が過って腕時計をはめ、血液を
抜かれた事からスペル星人は子供達の血液に目をつけます。
しかしウルトラ警備隊の捜査により、遂に彼らはその姿を現しました。
ウルトラセブンとウルトラ警備隊の活躍によってスペル星人は倒されます。

核の恐ろしさ、そして人種間(宇宙人ですが)を越えて求める平和の可能性、
そういった内容を実相寺監督が見事な映像にまとめています。
何故この内容が今日まで封印されなければならなかったのでしょう?
本編は実相寺監督の手によるもので、あの独特の雰囲気を味わえますが、
実は放送以外の部分で、複雑になってしまった問題があるのです。



このページでは問題提起をするつもりはありません。
ウルトラセブンのDVDや大百科などで片隅に小さく載せてある
「第12話は欠番とする」という短い文章、そこに隠された真実は
皆さんが調べてみて下さい。そして表現の自由について考えてみて下さい。
なぜ第十二話は幻のエピソードとなってしまったのか、
真の表現の自由とはなにか、この国ではそれが守られているのかを。




-2006.5.1更新


昔、某特撮系雑誌でこのエピソードに触れた記事を読んだ。
内容は
「都内某所に昔からのビデオマニアが住んでいて、あの幻の12話の上映会を
 行っていたらしいという噂がある。家庭用ビデオデッキの最初期のものを
 所持している人物で、たまたま録画していたらしい。
 知っていれば観にいったものを云々」といったものだ。

都内某地区では二度ほど再放送されたという噂も流れていた「幻の12話」
放映自粛を知っていた私は当時最新機種であるベータマックスSLJ9(カウボーイ
ビバップに出てきたアレ)を所持しており、なんとか入手できないものかと
あれこれ妄想していたのだが、実際にそんな昔からテープがあるとは知らなかった。
最近では画質の悪いものでよければ入手は可能であるが、当時はまさに「幻」
そのビデオは画質もかなり良いものだったらしい。
(もちろん昔のビデオテープなので、それなりの性能しかなかっただろうが)
私個人は放映当時リアルタイム(当時は白黒テレビ)で観た以外は某ルートで
見せてもらった低画質版の二度だけである。ハワイ版の良質な画像を入手したと
豪語した某編集などからはいまだビデオのビの字も見せてもらってはいない。
私にとって「幻の12話」は「幻のビデオテープ」となった。

(あの連続少女誘拐殺人の宮崎死刑囚がこのビデオテープを所持していたのは
 有名である。当時の報道番組で、宮崎の所持していたビデオテープの中身を
 紹介するようなカットで数秒、この「遊星より愛をこめて」のサブタイトル
 シーンそのものが放映されたのだ。残念ながらビデオには録画できなかった
 がリアルタイムで確認している)

・・さて、最近某所で知り合った中にキュラソ氏(仮名)がいる。
この方、古今東西のB級映画などがお好きで、そのテの話題から発禁映画の話となり
件の「幻の12話」の話になったのだが・・

「もう三十年近く昔ですけど、当時出たばかりの家庭用ビデオがうちにありまして。
 たまたま知人経由でウルトラセブンのビデオを入手したんですけど、
 その中には普通にその12話が入ってたんですよ。
 画質も他の回と比べても遜色なく、良いものでした。
 私は知らなかったんですが、友人の特撮マニアが「これは凄い」という事に
 なって、せっかくだし上映会をしようと某SF系雑誌の読者欄で通知したんです。
 当時ははるばる関西あたりからも観にくる人がいましたよ」

・・この人がそうだったのだ!
あの伝説のビデオマニア本人が今、目の前にいる。
上映会は「知らない人間がテレビを観にくるとはどういうことか」と
注意を受けたとかで、いつのまにか立ち消えとなったらしい。
カルピスや茶菓子を御馳走するなど、おもてなしが原因だったと思われると
キュラソ氏は笑っていた。

さて、問題はビデオテープだ。
巷に出回っているダビングたちの御先祖(おそらくオリジナル放映の孫あたり)に
なったであろう、あのビデオテープは・・

「ああ、知人に貸したきりになってますね。
 もう・・十年ぐらいになるか・・返してもらわないとね」

私はビデオテープが戻ったら是非上映会をしましょうとお願いしておいた。
「幻のビデオ」はいまだ幻のままである。

(この件に関する質問等には一切お答えできません)




-2006.10.19更新/最近の出来事ですが-


「ようつべ」こと海賊動画サイトYOUTUBEでスペル星人に出会いました。
本編が三分割されていましたがストーリーは充分楽しめるレベルです。
秋葉原の海賊版屋台などではこの動画を焼いたのではと思われるDVDも
売られていました。彼らは本編のフルセットも海賊版として販売している
ことから、本物は一話欠如しているにも関わらず、海賊版は全話揃って
いるという皮肉・・そろそろ第12話を欠番とした中途半端なDVDは
やめて全話収録を願うのは私だけではないでしょう。

漫画やアニメ等では作品の本質や時代背景を説明して、オリジナルを
尊重し復刻、放映される傾向にあります。是非とも本作もこれを見習って
いただきたいものです。
「彼」は幻ではなく、確かに地球にやってきたのですから。。




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