いちょうの舞う頃(Types '98)
秋。それはだれもが少しだけ感傷的になる季節。あざやかな彩りの衣をまとった秋の木々は綺麗だけれど、どこかもの悲しいから。いつか風が吹いて彩りが失われてしまうことを知っているから。綺麗だけど、悲しい。だから憂鬱な気分になる。想い出に身を浸らせてしまう。秋。だれもが少しだけ感傷的になる…。
〜2.14詩集『追想のドミナ』より『えいえん』一部抜粋〜なんて恥ずかしいポエムを思わず作りたくなるのが『いちょうの舞う頃』です(嘘)。
WEB上での評判がすこぶる良くて、それならと購入してみたわけですが、大アタリでした。プレイしてる間顔にやけまくりでした。よくもまあこの暗い御時世にこんな直球な青春ラブコメをもってきたな〜と感心してしまいましたよ。ラブコメの大先輩に『To Heart』がありますが、あっちは「青春」の色合いは薄いですからね。いまどき「青春」を恥ずかしげもなく前面に押し出してくるのって、故あだち充先生くらいかと思ってました。いやまだ死んでないか。僕の中で死んでるだけですね(無礼)。
さて、このゲーム、オーソドックスなノベルです。フルカラーが当たり前の時代にノベル形式はもう不向きなんじゃないかと思っていましたが、画面デザインがちょっと新鮮です。テキスト表示をギザギザ縁の半透明シート上で行うんですが、コレによって画面がすごくポップな感じになります。AZELチックなメーカーロゴといい落ち着いたパッケージといい作り手の何気ないセンスの良さが感じられますね。
センスが良いといえば音楽。これもいいです。週に1回はHMVだのTOWERだのに行っちゃう普通の音楽好きががおもわず二ヤリとしちゃうような感じ。アブストラクトを吸収しながらも基本はポップ。細かい音使いも練りこまれてます。DTMでもこんな肌触りの音楽が作れるんですね。
メニュー表示で画面が切り替わるとかチャイムの音が飛ばせないとか巻き戻しできないとかシステム面にはかなりナニな部分がありますが、それを吹き飛ばすくらいに良い話です。落とせる娘サンは4人で、シナリオは大きく分けて先輩サイドの2人と後輩サイドの2人とに分岐します。これによって何が起きるかというと…。三角関係ですよ! 三角関係が見られるんです! ラブコメの基本。三角関係。さえない主人公を2人のかわいい女の子がなぜか好きになって…ってアレ。しかも『いちょう〜』の場合あくまでラブコメ的三角関係ですから、女の子同士のバトルが生生ドロドロしてなくて、安心して話を進められます。先輩パートのお弁当VSイベントなんて悶絶必至。僕はどっちを選ぶかにマヂで1時間悩みました(実話)。ラブコメの主人公の気持ちを疑似体験できるなんて! ヒデキ☆感激!
こっぱずかしい恋愛描写はある意味快感です。恥ずかしさのあまりディスプレイの前で身悶えしつつ、マウスを放り投げつつも、しっかりとお話を進めてしまいます。オマケに主人公の行動を決定するのはプレイヤーですからね。どの娘を狙うか決めるときのココロの葛藤はタダゴトじゃありません。4人の娘の描き分けがちゃんと(極端なまでに)できてるってのがポイントで、どの娘も非常に捨てずらいです。以下プレイ中の僕の心の叫び。 「先輩ごめん!でも今はまこと狙いなんだぁっっっ」 「みやこちゃん君のこと嫌いじゃないんだぁぁぁ!ただ今は千枝ちゃんなんだぁっ!」 究極のバーチャルリアリティートライアングルラブコメゲー。
ラブコメ的恋愛模様もさることながら、「青春」模様もよく描かれていて、非常に好感が持てます。ちゃんと親がいて妹がいて友達がいて、学校へ行って、1日をダラダラ過ごして、恋して、悩んで…(書いてて恥ずかしいな)。なんつーかこう地に足の着いた描写なんですよ。押し付けがましくなくさりげない。自分の高校のとき思い出をゲームにフィードバックさせつつ、展開されるはラブコメ的恋愛模様。堪りませんて。
惜しむらくはクライマックス。尻すぼみなんですよ。ラストなんだから大きな山場を用意して、劇的なドラマをドーン! ってやりたかったと思うんですよ。シナリオライターは。でもできなかった。理由は明確。ライターの実力不足。いや経験の不足かな? ラストがとってつけたモノになってるってこと多分描いてる本人が1番よくわかってると思いますよ。折角積み上げてきたものをどこに下ろせばいいかわかってるのに下ろし方がわからないっていうか。そんな印象を受けました。ホント惜しいですね。ラストさえ決まれば今後10年は語り継がれるであろう名作になったのに。でもシナリオの林さんこれがデビュー作でしょ? 大丈夫大丈夫。代表作はこれから作ればいいって。ポテンシャルは充分あるんだから。
エロシーンにも触れておきます。ウスめ。ヌルゲです。このテのゲームにエロは期待してないんでそれは別に構わないんですが、ただコレだけは言いたいです。「処女にフェラさせんのは止めて。」誤解のないように言っときますけど僕フェラが嫌いなわけじゃないですよ。咥えてもらったり、舐めてもらったりするのは大好きです。でも初エッチで処女にいきなりフェラされるのはヒきます。それはあきらかにムリがあんだろ?足りないエロをちょっとでもエロくしようとしてフェラさせたんでしょうけど、はっきりいって興ざめです。そもそも膜破りそのものだって痛々しいからあんまり見たくありません。エロゲには非処女希望。
総括。全編に溢れる明るさ、ポジティヴィティーはかなりの好印象。新規レーベルらしいフレッシュな若さに満ちた作風が嬉しい一品。ラストの尻すぼみすらも若さの味わいと思えてしまうのは贔屓のし倒しでしょうか?あっ。若さ若さって連発してますけど僕まだ20台半ばですよ。えっ!? 充分おっさん!?
[ 好き:秋山温子(39歳) ]
かーちゃん(笑)。主人公への虐待っぷりがナイス。いや、でもこの人の子供との距離の取り方って結構理想かも。それにエロゲで主人公の肉親がちゃんと出てくるって珍しいし、そこがなんとも嬉しいんですよ。家庭描写ってバッサリと切り捨てるのはもったいないと思いません? シナリオ的にはみやこちゃん。たどたどしい恋愛の進展具合が微笑ましくてグー。