Restorative Justice
〜アメリカの被害者救済政策〜
谷口 さゆり
序章:はじめに
第一章:被害者救済政策
第一節:被害者救済政策の背景
第二節:被害者運動における二つのイデオロギー
第三節:被害者救済政策の現状
第二章: Restorative Justice
第一節:Restorative Justiceとは?
第二節:Restorative Justiceの現状
第三節:Restorative Justice プログラム−FGCとVOM
第三章:Restorative Justiceの実際−ミネソタ州でのケーススタディを通して
第一節:ミネソタ州の背景
第二節:調査の前に
第一項:調査背景
第二項:調査方法
第三節:調査結果
第四節:調査をふまえて
終章:おわりに
序章:はじめに
損害回復的司法(Restorative Justice: RJ)とは、司法プロセスにおける犯罪被害者の役割を向上させ、被害者本人や被害を被ったコミュニティに対して、直接弁明する責任を犯罪者に課することに焦点を合わせたものである。また、被害者と犯罪者との直接的な対話、犯罪者による被害者への被害弁償、犯罪予防・犯罪者との協働・被害者支援・より安全なコミュニティの創造などへのコミュニティの積極的参加の重要性を強調する。このRJという新たな概念が、多数の地域において政策やプログラムを改革する上で影響を与えている。
この論文では、アメリカにおける被害者政策を、被害者に対する注目がなされるようになった頃からおい、アメリカ社会全体の風潮など、どういった考え方が影響を与えたのかについて考察する。そして、政治とも絡めて、RJのプログラムがなぜアメリカにて注目されるようになったかについて言及したいと思う。RJのプログラムの一つであるFamily Group Conferencing(FGC)は、被害者の立場についてもっと考えよう、という考え方から行われるようになったが、被害者の心の傷という損害を回復する意味で、FGCが効果を発揮しているのか、ミネソタ州でのケースを通して検証して行くつもりである。また、FGCのもう一つの意味として、関係者たちの間に和解を成立させることによって、コミュニティに少年を再び受け入れる環境を整えることができるのか、また、被害者、加害者、支援者などの参加者たちがFGCに対して満足したか、を明らかにしたいと思う。そして、昔から行われてきた刑事手続に代わる代替策として、RJにおけるFGCが機能しうるのか、その将来性について考察をしようと思う。
構成としては、第一章において、被害者救済政策の中で誕生したRJについて説明し、どういった社会的風潮が被害者運動に影響を与えたのか、また、現状について見る。そして、第二章において、RJの概念について説明し、RJの関心がどのくらい広がっているか、RJの限界などの現状を考察し、RJの代表的なプログラムについてより詳しく検討する。第三章では、ミネソタ州でのケースを取り上げてRJの実際の効果を見ることとする。
先行研究についてであるが、私が書こうとしている内容をすべて含んでいるような代表的な先行研究は特にない。そもそも被害者学という研究が法律に関する問題であるため、ほとんどの文献が法律的観点から書かれており、アメリカ社会全体の風潮、政治的観点とも絡めて書かれた文献はない。先行研究書をあえて挙げるとするならば、被害者救済政策の大まかな流れについて触れ、現代アメリカにおけるRJプログラムを幾つか紹介している『刑事政策の新動向』、北海学園大学法学研究に掲載されている「法的平和の回復」という論文が先行研究書にあたる。また、RJプログラムに関する方法論を紹介し、その重要性を主張する英語論文は、数多く存在しているので、それらも先行研究書と言える。
”Family Group Conferencing Comes to the U.S.: A Comparison with Victim-Offender Mediation ”などの英語論文には、RJのプログラムとして代表的なFGCやVOMについて、創設された経緯、実際のプログラムがどのようにして進められるか、そのプログラムを行うことによって期待される効果などについて書かれている。ただ、この論文に限らず、RJについて書かれた多くの論文は、やや理論的であり、プログラムの成果についてもあまり具体的なデータでもって成果を示唆するものが存在しない。そうした点からも、私の論文では、RJの定義と期待される効果について述べるだけでなく、一つの州でのケーススタディを取り上げて、実際にどのような成果が被害者、犯罪者、および関係者たちにもたらされているのか、について言及している点で、オリジナリティがあると言える。
この論文では、被害者救済政策の歴史について述べたもの、RJの定義や方法論について述べたもの、ケーススタディを通して集められたデータをもとにFGCを評価したもの、それぞれをまとめ、政治的観点からも見ることによって、アメリカ政治という大きな枠組みの中で、このテーマを捉えようと試みる。アメリカ社会の民主主義的思想、保守主義的思想が被害者政策にどういった影響を与えたかについて見て行き、アメリカ政治的観点からこのテーマを捉えようとする点もオリジナリティの一つであると言える。
最後に、この論文は、RJが実際に機能しているか、その効果について言及することを主な目的としているので、犯罪予防効果よりも、被害者救済効果に焦点を当ててRJを捉え、癒しをもたらす、という効果について調べることを主な目的としている。そのため、被害者救済運動がどのように変化してきたかという歴史、なぜアメリカにに導入されるにいたったか、ということについては、詳しく触れることができないことを予め理解してもらいたい。また、効果を明らかにするために、RJプログラムの中でも、比較的最近アメリカに導入されたFGCという一つのプログラムに焦点を当てているので、その他のプログラムの効果について触れる余裕がないことを了承して欲しい。RJが比較的軽度の犯罪を取り扱っているため、ここでいう犯罪者、加害者は、主に少年犯罪者を対象としていることに留意する必要がある。
第一章:被害者救済政策
この章では、なぜRJが誕生し、注目されるようになったかを理解するために、被害者救済政策の背景を説明し、また現状について考察する。
第一節:被害者救済政策の背景
アメリカにおいて犯罪被害者に対する社会的関心が高まってきたのは、犯罪の急激な増加が重大な社会的問題となった1960年以降のことである。犯罪被害者の損害を回復させるという損害回復の思想、RJもこの頃から実践的な展開として発展してきた。当初、このように急増する犯罪に対する市民の不安感を除去する手だてとして、いわゆる「法と秩序」の要請に基づき、刑事司法機関による取締りの強化と処罰の厳格化が推進されてきたのであるが、犯罪は一向に減少する気配がなく、このような犯罪対策の効果は疑問視されることとなった。その結果、犯罪によって常に恐怖にさらされている潜在的被害者としての一般市民の保護を推進すべきだという見解が一般化して行ったのである。
被害者をめぐる動向を別の角度から分析した場合、1960年代以降顕著となった、いわゆる「消費者保護」(consumer protection)運動を考慮に入れなければならない。なぜなら、この消費者保護運動における消費者に対する一般的な関心の増大が、刑事司法制度で消費者の立場にあるとみなし得る犯罪被害者にも、付随的に波及したということが指摘されているからである。この消費者運動というのは、大企業による欠陥商品の生産や不当価格表示などの被害から消費者を立法的に保護しようとする動きを指すが、従来、政治的にも経済的にも弱者であった消費者グループが、公民権運動に代表されるような社会的不公正の是正を最重要課題とする時代思潮の中で、自らの保護を求める市民運動を展開し始めたことが、その起源であると考えられる。
このような動向がなぜ犯罪被害者の問題にまで波及したのか、ということについて考察する。本来、犯罪の(潜在的)被害者は、市民として、税金の支払いという形で、刑事司法機関の運営コストを負担し、刑事司法機関からのサービス(犯罪の鎮圧・予防など)を供給されるという意味において、刑事司法制度の消費者であると言える。しかし、現実には、犯罪の急激な増加とそれに伴う被害の急増に直面して、刑事司法機関は何らの対応もできず、被害者は自己のコスト支出に見合うだけのサービスを受けられないどころか、様々な面で、デメリットを被っている。そのために、犯罪被害者は、刑事司法制度の消費者として、一般消費者における消費者保護運動の場合と同様に、社会的公平さの確保を求めて、自己の当然の権利を刑事司法機関に対して政治的に主張し始めたと言える。このような犯罪被害者保護を目的とする市民運動の成果としては、犯罪被害者補償制度が多数の州で制定・実施されていることや、多くの都市に「被害者救援センター」(Victim Assistance Center)などと呼ばれる市民レベルの民間組織が相次いで設立されたことなどが挙げられる。[i]
さらに、この10年間においては、被害者政策にも新しい局面が現れた。アメリカにおいては、刑務所の過剰拘禁という問題が深刻になってきたため、刑務所拘禁の代替策に専門家の関心が集中し、しかも、この代替策を円滑に運用するためには、犯罪者のみならず、その被害者にとっても、意義のある内容を持った代替策にしなければならないという要請が生じ、被害者の立場というものが注目されるようになったのである。そのために、被害者の刑事手続への参加や被害者補償、被害弁償、犯罪者(加害者)とその被害者との間の調停プログラムなどが、刑事司法レベルだけでなく、民間レベルでも様々に論じられるようになったのである。[ii]RJが注目を浴びるようになったのも、こうした点と密接に関わっている。
RJという損害回復の思想がそもそもアメリカにおいてブームとなったのも、第一に、紛争解決を国家領域から私的・隣人領域へと移行させるという、非司法化ともいうべき一般的傾向の影響である。隣人司法センターなどの施設では、民事紛争と刑事紛争との厳密な区別は、貫徹されないことになる。そうしたものの具体例として、近隣紛争解決プログラムや被害者・加害者和解プログラム(Victim Offender Reconciliation Program: VORP)などの調停・和解プログラム、家族集団協議会(FGC)などが挙げられる。RJが誕生した第二の理由として、被害者に対する関心が高まったことが挙げられる。刑事手続における被害者の法的地位を強化し、損害賠償の機会を付与する法律が制定されたが、1982年の「被害者および証人の保護に関する法律」(Victim and Witness Protection Act)や1984年の「犯罪被害者援助法」(Victim of Crime Assistance Act)などがその例である。第三に、先ほども述べた過剰拘禁の問題である。すなわち、効果的な代替自由刑の必要性が主張され、その方法としてRJが重視されるようになったのである。RJは、犯罪者に、拘禁刑に代わる人間的な制裁を賦課することができ、また、犯罪者の社会復帰にも効果があるとされた。最後に、RJは、復讐と応報の実現を減少させる人間的アプローチであり、社会一般も利益を得る、なども理由として挙げられる。[iii]
第二節:被害者運動における二つのイデオロギー
第一節で、被害者が注目されるようになった1960年代の背景について少し触れたが、ここでは、被害者救済政策の背景をイデオロギー視点からさらに詳しく考察する。
消費者保護運動の影響については、すでに述べたが、被害者運動の台頭と成長は、その他にも、「公民権運動」(The Civil Rights and Civil Liberties Movements)、「女性運動」(The Women’s Movements)、そして「法と秩序運動」(The Law and Order Movement)などを含む多様な社会運動の影響を大きく受けている。
例えば、1960年代の公民権運動は、黒人に対する人種差別問題を解決し、社会的平等と公平さを要求することから生じたが、犯罪被害者との関係では、とくに人種差別的暴力への反対闘争を促進させた。また、公民権運動の活動家たちは、刑事司法における差別的執行・人権侵害の問題を告発し、そのような司法制度の被害者に対する憲法上の権利とデュー・プロセス保障を強化することに関心を示している。[iv]
女性運動においては、とくに強姦の女性被害者が病院、警察、裁判所において不当に取り扱われているということ、その結果として当初の被害者を「二次的被害者化」(secondary or second victimization)または「再被害化」(revictimization)させるという問題が明るみにだされた。この運動の成果は、司法制度による女性被害者の不当な処遇に抗議しながら、強姦被害者を直接救援する自助グループの組織化を促進し、そしてそれが刑事司法制度改革にも大きな影響力を与える原動力になったということである。また、この運動は、現在では家庭内暴力の問題にも関心を向けており、そのような被害者を保護・援助することを目的とする市民保護団体が積極的な援助活動を展開している。[v]
消費者保護運動、公民権運動、女性運動などの一連の社会運動は、それぞれ特定のカテゴリーの犯罪およびその被害者に対する社会的関心を喚起させ、社会的公正さの観点から本来的に社会的弱者である犯罪被害者への直接的休戦活動を促進させた。そして、その結果、それまでは刑事司法において無視されていた犯罪被害者の一般的重要性が強調され、司法制度における被害者の公平かつ公正な取扱いを要求する被害者の権利運動に大きな影響を及ぼすことになったのである。ただ、ここで注意すべきことは、このような市民レベルでの社会運動の主たる担い手が現実に被害を受けた人およびその支援者であったということ、それゆえ被害者運動の指導理念は現在の司法制度に対する現実の被害者の不信、不満を背景に、少しでも被害者救援のために現行制度を良い方向で改善して行こうとするリベラルなイデオロギーによって支えられていたということである。[vi]
これに対して、政策的には同じく被害者の権利回復を標榜しているものの理念的には全く相対立する保守的なイデオロギーに基づいて被害者の権利運動に影響を与えたものとしては法と秩序運動がある。この運動が登場したのは、同じ1960年代の後半であり、とくに共和党に属する保守的な政治家たちの主導によるものであった。保守派の人々は、犯罪被害者の権利を手厚く保護しようとしていたウォーレン・コートに反対し、むしろ刑事司法機関による犯罪取締りの強化と犯人処罰の厳格化を要請する政治的キャンペーンを展開した。この運動が強くなったのは、一つに犯罪率の急激な上昇に直面して、刑事司法機関による人権侵害の問題以上に犯罪の被害者になることの不安がより大きくなったためである。つまり、従来のリベラルな社会復帰政策において見受けられるような犯罪者に対するル手厚い保護を推進して行くよりは、むしろ、犯罪によって常に恐怖にさらされている潜在的被害者、すなわち、一般市民にこそ、より多くの保護と注意を払う必要があるということをこの陣営は主張している。 保守陣営にとって、被害者問題は、あくまでも彼らの犯罪統制目的の合理化の一貫として位置付けられており、被害者の救済それ自体はあくまでもこの目的を達成するための手段でしかなかった。このことは、公民権運動や女性運動から生じた被害者運動の内容との比較において、法と秩序運動から派生した被害者の権利運動の具体的内容を見れば容易に理解できる。そこにおいては、もちろん個々の被害者の苦痛を緩和するための諸々の救援サービスを提供することがもっともらしく掲げられてはいるが、その運動の真の狙いは、被害者を効果的な政治的シンボルに仕立てて、被害者の応報感情を根拠に犯人処罰の厳格化を要求し、被害者により多くの権利を付与することを装って、刑事司法機関によって行使される統制の範囲をすべての市民の上に拡大しようとるすことにあると言われている。[vii]
以上の論述から、アメリカにおける被害者運動の特徴として、以下のことが指摘できる。第一に、被害者運動は、1960年代の社会的不公正の是正を求めた諸々の社会運動に大きな影響を受けて、現実の被害者の苦痛を和らげることを直接求めるリベラルな市民運動としてまずは台頭したということである。第二に、しかし、他方で、犯罪被害者に対する問題関心は、リベラリズムとは相異なる保守的な法と秩序運動の要請からも生じているということである。このような相対立する政治的イデオロギーが被害者の権利回復の要求運動という実践面において一つに取り込まれているということが、アメリカにおける被害者運動の最大の特徴であると言える。つまり、被害者運動の根底にある二つの指導理念は、現実には全くその論理と目標において異なるものであるにも関わらず、奇妙にも正反対の方向から被害者の権利を支持するようになったということである。
第三節:被害者救済政策の現状
さて、ここでは、幾つかの代表的なアメリカの犯罪被害者救済政策を紹介し、現状を概観する。前半部分において、被害者の権利を保護したり、金銭的に援助したりする制度やプログラムについて述べ、後半部分において、被害者の心の傷を回復する点に着目したRJのプログラムについて述べることとする。
第一に、犯罪被害弁償制度(restitution)を見てみる。ここでいう被害弁償というのは、犯罪被害を受けた個人や組織体に対して行われる金銭的弁償であって、社会奉仕命令のように、社会に対して行われる象徴的な弁償とは異なるものである。被害を被った者に対して償いをしようという考え方は、昔から主張されてきたが、現在のような形で被害弁償プログラムが確立したのは、ここ20年間のことであり、1970年代に入ってからのことである。しかも、現時点においても、体系化された被害弁償プログラムというのは稀で、多くは地域ごとに大きく異なるものであり、一つの司法管轄区域内でさえ、個々の執行官の裁量や指導ごとに違った運用がなされていると言われるくらいである。これらの被害弁償の制度や被害弁償プログラムが、その構造上あるいは機能上、真に被害者のためを考えて作られたものであるかどうかは極めて疑問であり、被害者に対する被害弁償は、通常は刑罰や受刑者の社会復帰の次に位置するものとして扱われているように思われる。また、加害者にとっても、被害弁償を言い渡された場合、支払いは第三者機関を通じてなされるものであり、それ以上は被害弁償プログラムに関与することがないため、加害者にしてみれば、被害弁償というのは、自分の与えた損害の償いというよりも、むしろ、新たに科された刑事上の制裁と感じられることが多いようである。被害弁償プログラムにおいて、被害者があまり重要視されておらず、また、加害者がこのプログラムにほとんど参加することがないという状況の下では、こうした被害弁償の理念を充分に履行することはできないように思われる。それゆえ、アメリカでは、被害者と加害者の双方が、このプログラムに積極的に参加し、その双方の要求にプログラムが適切に対応できるようにすべきであるという要請が生じているのである。[viii]
第ニに、被害者の刑事手続への参加や被害者の利益への配慮が強調されてきた結果立法された被害者保護に関する法律を幾つか見てみる。まず、1982年に「被害者および証人の保護に関する法律」(Victim and Witness Protection Act of 1982)、1984年に「被害者補償および援助に関する法律」(Comprehensive Crime Control Act of 1984)が制定されている。アメリカでは検察官が起訴権限を独占しているため、被害者の被害も訴追要員の一つとなっているにも関わらず、犯罪を当局に告発しても、実際に警察が捜査しないか検察官が訴追しないために、あるいは被害者がそのように信じているがために、被害者は犯罪の被害を警察に報告しないことがままある。また、被害者の見解に充分な配慮が払われていないために、公判で被害者が証言を拒み、そのため検察官が公訴を取り下げたり縮減したりしなければならないことも多いのである。その結果、刑事司法制度に不信感を抱いた被害者側から、刑事法のより完全な遂行、迅速な事件処理、公正な量刑を要請する声が高まっているのが現状である。また、そのような動きに伴って、証人としての被害者が直面している困難な事態を打破し、犯罪の結果被った被害について、いくばくかの財政上の回復を図る道を提供し、犯罪被害の報告率と法執行機関への協力を高める目的で、被害弁償プログラムや被害者補償法、あるいは証人としての被害者の取扱いの改善などの諸方策が考えられたのである。そして、連邦政府も、このような状況に呼応する形で、1982年と1984年に、前述の二つの連邦法を制定したのである。[ix]
第三に、犯罪被害者補償プログラム(Victim Compensation Program: VCP)を見てみる。犯罪被害に対して、公費で援助を与える制度として被害者補償制度は、1965年に、世界で第三番目の国として、アメリカ合衆国はカリフォルニア州において、アメリカでの最初のVCPが開発された。内容としては、被害届出期限、補償申請期限、最低損害額、最高補償額、財源(一般税収・罰金など)が明記されている他、加害者の印税などによる弁済、被害者の困窮、補償前の緊急貸出、弁護士費用の補償、州外住居者への補償の有無が定められている。現在、33州および準州で、VCPが運営されており、六つの州で準備中で、14州では、VCPは存在しない。VCPが直面している最大の問題としては、プログラムに対する一般人の関心を高めること、プログラムの適格性基準を拡大すること、対象者の要求に迅速に対応すること、緊急支払手続を充実することなどが挙げられる。
第四に、調停制度(Victim-Offender Mediation: VOM)を見てみる。現在アメリカの刑事司法において用いられている「調停」とは、裁判所の過重負担を軽減すべく、軽微な犯罪については、被害者と加害者の間で調停人を置いて、事件を解決しようとする制度である。訴訟件数の爆発的な増加により、現在、アメリカの裁判所は過重負担に悩んでいるので、裁判所の代わりとまではゆかなくても、何か他の良い紛争解決策があれば、それを用いるべきではないだろうかとして、調停などの非当事者主義的紛争解決策が必要であることが指摘されている。アメリカでは、調停についての関心は高まってきており、近年、多くの州で和解プログラムが実施されるようになってきている。ただ、現在の刑事司法プロセスでは、こうした試みは極めて制限的なものとならざるを得ないようである。しかし、このような「和解」に基づいて、犯罪の被害者と加害者の間で協議を行うことにより、被害者の要求を実現し、被害弁償を促進し、加害者の自己の責任を自覚させ、プロべーション局や裁判所の過重負担を軽減することが可能となるのである。[x]
第五に、被害者・加害者和解プログラム(VORP)を見てみる。VORPは、もともとカナダにその起源を有するもので、アメリカでは、主に、受刑者・コミュニティ協力会社(Prisoners and Community Together, Inc.)とメノー派教会(Mennonite Church)との協力によって生まれたものである。このVORPは、紛争解決の手段と被害弁償を結びつけた簡略な手続である。裁判所の支持に基づいて、このプログラムへの参加に同意した被害者と加害者は、直接に面談を行う。その際に、訓練を受けたボランティア職員が、第三者の立場にたって面談に参加し、当事者が和解に達するように助言をする。VORPで最も重視すべき点は、被害者が加害者に対して、当該犯罪事実についての釈明を求め、自己の感情を明らかにすることができる点である。つまり、VORPでは、被害者が、犯罪被害を受けて生じた憎しみ、苦しみ、怒りなどといった激しい感情を直接加害者に訴える機会が与えられるのである。こうして、被害者が感情を吐露し、疑問点を解消することによって、被害者は、本当の意味で、加害者による被害弁償プログラムに参加することができるのである。VORPによって、被害者は、加害者の立場をも理解できるようになると同時に、被害を受けて生じた精神的痛手を軽減することができるのみならず、被害体験に伴って生じた無力感や虚脱感をも除去することができるのである。とりわけ、被害者にとって一番大切なことは、自分の中にある被害体験をいつまでも引きずることなく、事件そのものに決着を付けることができる点であり、犯罪問題の解決に被害者が積極的に参加できる点に、VORPの特色があると言えよう。[xi]
第六に、FGCを見てみる。FGCは、ニュージーランドとオーストラリアの裁判官、プロべーションや教育のスタッフ、および警察官などによって、アメリカに紹介され、アメリカの少年司法制度の中で認識され始めた。FGCは、自らの罪を認めている犯罪者を、犯罪者の家族や友人、被害者、および被害者の家族や友人などが出席する協議会へ参加させるという形をとる。そして、この協議会は、一般に、警察官や学校職員によってコーディネートされ、犯された犯罪やそれが参加者全員に与えた影響について話し合い、犯罪者がその犯罪行為によって引き起こした加害を賠償するための計画を考察することに焦点を合わせているのである。賠償方法は、必ずしも金銭的賠償のみではなく、地域社会労働、地域計画参加もある。[xii]ここでは、実行された犯罪行為自体は、公然と非難される一方で、個々の犯罪者ついては、コミュニティに再び戻ることが歓迎される。犯罪者は、なぜその犯罪をしたのか、被害者が犯罪によって、どのように影響をされたかを説明する。そして、両者がそれぞれ理性的、感情的、意欲的に会話をする。そうすることによって、被害者は、怒りから解放され、犯罪者が自分に直接弁明する場に積極的に参加することによって、自らの被害が終結したという感情を得る機会が与えられる。また、犯罪者にとっては、生の責任を感じ取る機会が与えられるのである。[xiii]
第二章:Restorative Justice
第一章で、RJが誕生した歴史的背景を被害者救済政策の流れと合わせて説明した。第二章では、RJについてより詳しく考察し、RJに対する具体的なイメージをつかんでもらうことを目的とする。第一節では、基本的な概念とRJの特徴について説明する。第二節では、RJの現状として、どのくらい関心が広がっているか、また、RJの適用範囲や限界といった弱点も指摘する。第三節では、第三章で詳しく取り上げるFGCの内容を具体的に紹介する。
第一節:Restorative Justiceとは?
ネス(Van Ness)によると、RJは、犯罪とその反応に対する見方という哲学である。このRJ哲学は、次の三つの信念に基づいている。第一に、犯罪とは、被害者、加害者、コミュニティにとって損害をもたらすものであり、第二に、政府だけでなく、被害者、加害者、コミュニティも積極的に刑事司法プロセスに参加するべきであり、そして第三に、正義を促す時、政府は規律を護ることに対して責任を負い、コミュニティは平和を築くことに対して責任を負う、ということである。
これらの一般的な信念は、RJプログラムに共通する幾つかの項目を導いている。それらの項目とは以下の通りである:@犯罪の定義は、被害者とコミュニティの平和に対する害である、A不正を正すことに焦点を当てている、B被害者と加害者の両方が、犯罪闘争に対して反応し、解決するための能動的なプレーヤーである、という視点から見る、C加害者による弁償によって被害者の失ったものを補う、D司法プロセスへの直接関与を通して、被害者の立場を向上させる、E被害者が、犯罪によってもたらされた、自分たちが住む地域における恐怖心を取り除くために援護する、F加害者が、自分たちが犯した行動に対して責任を負うことを目的としている、G加害者の行動が被害者に対して影響を及ぼしたことを加害者に肌で感じさせる、H加害者が社会的に受け入れられるように導く方法で、加害者に対して責任を認識させる、I犯罪の結果によってもたらされた、被害者、加害者、コミュニティそれぞれ個人の傷と人間関係の傷を対処することを目指す、J犯罪に関わった関係者全員を含めて問題を解決できるように協力する。[xiv]
損害回復司法協会(Restorative Justice Consortium)[xv]のマーシャル(Tony Marshall)は、RJが次の六つの効果を得ることを目指すべきである、と示唆している。その六つとは、@犯罪に対する公然の非難、A加害者一人ひとりの改善、B犯罪の予防、C被害者の救済、D犯罪によってもたらされた苦しみの回復、E司法を管理するためのコストを最低限に押さえること、である。@は、多くの場合、加害者に対する処罰や仕事といった負担の形をとる。Bは、犯罪をコントロールし、減少させるために、コミュニティの役割を促進している。損害回復的仲裁は、コミュニティが関わる範囲を広げさせる。[xvi]
マーシャルによると、「RJとは、特定の犯罪に関心を持つすべての関係者が、罪の結果とその将来において及ぼす影響に対してどう対処するべきか、ということについて正しく解明するために集まるプロセスである。」[xvii]このマーシャルの「プロセス」定義は、RJに関する必要最低限の規定を設けてはいるものの、十分な理論に基づいたものではない。しかしながら、それは、実用的な定義として、RJプログラムに対して、明確な最低限の必要条件を設けている。それによると、RJプログラムは、被害者と加害者が結果を決める場としての直接顔を合わせるミーティングに関わらなければいけない。マーシャルの定義に当てはまるモデルとして、被害者救済政策として紹介した三つの代表的なRJの実施モデル:VOM、VORP、FGCが挙げられる。これらは、別々に出現してきたものだが、相互に影響し合い、発展してきた。RJの重要性について理解するためにも、長年実施されてきたVOMと最も新しいFGCとの二つを取り上げて、後ほど第三節で見ることとする。
第二節:Restorative Justiceの現状
まず、RJの関心がどれくらい広がっているかを見てみよう。RJの初期の概念化は、1970年代後半に始まり、ゼーア(Howard Zehr)[xviii]によって最も明瞭になされた。当時、RJは、刑事および少年司法の政策作成者や専門家の主流派たちにとって、まだ真剣には考慮されていなかった。1990年には、RJの世界における関心の広がりを検討するため、NATOの資金によって支援された国際会議がイタリアで開催された。そこでは、様々な国(オーストリア、ベルギー、カナダ、イギリス、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スコットランド、トルコ)の学会員や専門家たちによって、RJの政策と実施の発展と影響に関する報告書を発表された。それ以来、RJに対する国際的な関心はずっと発展してきた。
アメリカにおける関心は、1991年以降、最も幅広く発展してきた。最も古いRJの一つである、VOMの実施は、1970年代後半に始まったが、現在では、全米で280以上のコミュニティにおいて実施されている。1996年1月には、アメリカ司法省は、RJに関する最初の全国大会を行い、全国から政策作成者や専門家たちを召集した。このRJ運動の初期の頃、被害者援護グループは、かなり懐疑的だった。多くは、未だにそうであるが、RJ運動に積極的に参加している被害者支援団体の数は、増えている。[xix]
アメリカ司法省の少年司法および非行防止局(Office of Juvenile Justice and Delinquency Prevention of the U.S. Department of Justice)によって支援されたBalanced and Restorative Justice(BARJ)プロジェクトの結果、全米に渡る多数の郡や州管轄区は、RJのメリットを検討している。すでに、15州は、より被害者と加害者の両方にとって釣り合いのとれた、損害回復的少年司法制度を促進する法律の立案と導入を行っており、[xx] RJの政策やプログラムは、大きな制度上の変化をなそうとしつつある数多くの州や郡の司法制度を含む、全米で45以上の州において発展している。[xxi]BARJプロジェクトは、六つの少年司法制度[xxii]を広く取り扱ってきており、それらは、RJ政策や実習の実施に積極的に関わっている。
広範囲の制度のイニシアチブよりも、個々の損害回復的プログラムのイニシアチブの方が全米に渡って広く拡散されている。全米において、280以上存在するVOMプログラムに加えて、RJの原理を含む幾つものプログラムが他にも存在している。正確な数字で表すことは難しいが、慎重な見積もりによると、200から300のRJプログラムが全米の都会と田舎のコミュニティにおいて発展している。[xxiii]
次に、RJの弱点とも言うべき側面に触れて行く。まず、RJの適用範囲についてであるが、現在、大多数のRJプログラムは、初めて、もしくは、二度目の財産犯罪を犯した者、特に少年犯罪者を取り扱っている。もし、こうした軽度の犯罪者に対してのみRJが適用されるのであれば、これは、RJの一つの限界となる。しかし、一方で、多くのプログラムは、長年、ささいな暴行事件や成人の犯罪者を取り扱ってきたことが事実として述べられる。Mediation(調停制度)、家族集団協議会(FGC)などの幾つかのプログラムは、多くの場合、被害者の希望によって、非常に乱暴な犯罪に関わった者に対して、刑務所におけるRJ仲裁を提供し始めている。[xxiv]
特にRJ仲裁に適している、より深刻で暴力的な犯罪を取り扱う場合、クライアントの査定に関する研究がもっともっと必要である。そうした犯罪の被害者は、激しい感情的トラウマを経験しており、また加害者にとってもそのインパクトが大きいため、RJに関心を持っている被害者が、暴力的な犯罪における損害回復的な仲裁によって得られる潜在的利益は、明らかである。RJ仲裁では、他の仲裁ではほとんど起こり得ないあるレベルの癒しの感情が達成される。しかしながら、殺人罪のような非常に暴力的な犯罪に関わった関係者たちに対してRJ仲裁を行う時、より大きなリスクが存在していることも事実である。それゆえに、それらのような凶悪犯罪のRJ仲裁は、刑務所で行われるもの、財産罪やささいな暴行事件のRJ仲裁は、ほぼコミュニティを基盤として行われるものとして理解されている。[xxv]
RJが「自発的な協力」に頼っているということも限界の一つである。もし、被害者もしくは、加害者のどちらか一方でもRJのプログラムに参加することを拒否すれば、解決策の選択肢の幅は狭められる。もし、両者が参加を拒否した場合、正式の司法にプロセスを任せるしか手段はない。一見、これは、RJの大きな欠点のように見える。しかしながら、RJプログラムに参加する機会が与えられた場合、大多数が参加することを選ぶことが事実として指摘されている。しかも、被害者と加害者が合意に達する率が高いことも指摘されている。なぜなら、損害回復的なプログラムは、法律上の手順よりも理解しやすく、手段に柔軟性があるため、個人にとって魅力的であるからだ。また、正式の司法プロセスでは得られないような利益が提供されるのもRJが支持される理由である。[xxvi]
コミュニティと関連した限界としては、利用できる「資料とスキル」が不十分であることとコミュニティの間における「社会的不法行為」の存在が挙げられる。まず、最初に、現代のコミュニティは、以前ほどまとまっておらず、個人のプライヴァシーを尊重し、文化や年齢によって社会的に分離しているということが指摘できる。RJがコミュニティの関わりを要求するのであれば、教育、トレーニング、実用的な資料がより必要となる。もし、RJがコミュニティを主要なプレーヤーとして位置付けるならば、社会的不法行為をなくすことのできる影響力のあるコミュニティが必要である。どれくらいの影響力を持つかは、刑事司法とは別の教育、家庭・コミュニティの創造、環境の質などといった社会政策にかかっている。ですから、時間をかけ、コミュニティの結束力を強化し、RJに関する教育を浸透させることさえできれば、RJを行うことは可能である。[xxvii]
さて、特定の被害者が存在しない犯罪における損害回復的仲裁は、一般的に行われていないが、展開させることは可能である。少年が学校や近所において麻薬を売るという犯罪行為は、良い例として取り上げることができる。特定の被害者を認定するのは難しいが、学校全体やその近所は、その麻薬犯罪によって害を被ることとなる。麻薬の売買は、命の質を減少させ、学校や近所などにおける公共の安全性に対する恐怖心を増加させる。裁判によって罪が確定された少年は、麻薬の売買と使用によってネガティブな影響を受けた生徒や先生、近隣住民たちの前に現れることを要求されるかもしれない。単に講義を聴いたり、加害者を侮辱したりするのではなく、会話を行う機会が与えられれば、少年犯罪者が二次的被害者と対面することは、重要な損害回復的仲裁と成り得る。[xxviii]
第三節:Restorative Justice プログラム−FGCとVOM
第一章でRJの実施モデルとして紹介した三つをさらに大きな枠組みで捉えると、VOM、VORPを調停モデル(Mediation model)、FGCをコミュニティ司法協議会モデル(Community Justice Conferencing model)と分けることできる。前述のように、これらのモデルは、相互に影響し合い、発展してきた。FGCは、アメリカににおいて長年実施されているRJ介入策であるVOMと非常に類似しているが、明白な相違点も有しているため、その正確な区別について混乱が生じている。まず始めに、このコミュニティ司法協議会モデルを代表するFGCと調停モデルを代表するVOMを比較し、どちらが良いか、どちらが悪いかを決めるのではなく、RJという大きな枠組みで見た場合のRJの重要性を確認することとする。そうした後に、第三章において、RJという概念の影響力を拡大する大きな可能性を持った最も新しい介入策の一つであり、注目を浴びているFGCに着目し、ミネソタ州のケーススタディを取り上げ、その被害者救済効果について詳しく見て行くこととする。
VOMと比較した場合のFGCの有する長所は、犯罪事件によって被害を被った広範な人々を会合に参加させ、彼らが抱いている感情を表出しうる雰囲気を作り出し、会合において、犯罪行為を犯罪者とを分けて考えるよう積極的に話しかけるなどという、FGCの構造自体から由来するものである。より多くの参加者が一堂に集まることによって、参加者全員は潜在的に強烈な体験をしたり、犯罪によって発生した加害についてより深く認識することができる。また、被害者や犯罪者を支援しようとする多数の人々が会合に参加することによって、多くのコミュニティメンバーの間に結束が生まれ、被害者や犯罪者をコミュニティに再統合するためのより広いネットワークを作り出すことができる。FGC終了時には、再統合の行事として非公式的な懇談会やお茶会などが行われるらしいが、非常に良い効果を生み出している。この行事はVOMプログラムでは滅多に実現することができないため、FGCの素晴らしい特色と言える。
しかしながら、VOMが北アメリカにおいて20年以上に渡り実際に実施された経験も豊富なプログラムであることは事実である。このような比較的非公式な状況の下で被害者と犯罪者が調停人を交えた対話を行うことによって、@参加者の極めて高いレベルの満足感や公正感、A被害者の不安の緩和、B犯罪者による被害者に対する被害弁償の完了可能性の増加、C犯罪者の将来の再犯の可能性の減少、D他の人々にもこのプロセスを勧めようとする意思の発生などの成果が現れている。それゆえに、FGCがアメリカ国内でますます注目されるようになってきた現在、北アメリカにおける150以上のコミュニティで長い豊富な経験を有しているVOMとFGCを区別することよりも、むしろ、どうすればこの二つの介入策が相互に補完し合い、互いの長所や制約から学ぶことができるか、ということに注目するべきなのではないかと思われる。現に、各モデルの支持者は、この双方の主要な長所を統合した二つの側面を持つプロセスを作成すべく、実験段階に入っているようである。そして、いずれはこのような協力的な努力の成果として、まず最初は、被害者と犯罪者のそれぞれが被った犯罪による影響を強調し最大限化するために、一般的なVOMのセッションを行い、その後、当該犯罪者を双方当事者が受けたその影響についての当事者の家族やコミュニティの見解を強調し最大限化するために、FGCのセッションを行うというような介入策を展開させることもできるようになるであろうと思われる。いずれにしても、FGCとVOMのいずれもRJの理論と実務をアメリカに浸透させる最も強力な介入策であると言える。
家族集団協議会(FGC)と被害者・加害者間調停(VOM)の比較
|
家族集団協議会 |
被害者・加害者間調停 |
| 目的 |
*犯罪者の弁明責任 |
*犯罪者の弁明責任 |
|
*被害者の参加と回復 |
*被害者の参加と回復 |
|
*被害者の被害の弁償 |
*被害者の被害の弁償 |
|
*被害者、犯罪者、支援者、家族全員の積極的参加 |
*被害者と犯罪者による、非指導的役割にある調停人の下での相互対面式の対話への積極的参加 |
|
*犯罪者ではなくて犯罪行為に対する非難 |
*紛争の解決 |
|
*被害者と犯罪者のコミュニティへの再統合 |
|
| 犯罪者の参加 |
被害者が希望する場合には要請される。 |
任意選択。 |
| 被害者の参加 |
任意選択。 |
任意選択。 |
| 主な委託元 |
警察官あるいは学校職員。 |
裁判官、プロべーションスタッフ、あるいは検察官。 |
| 全体会合前の当事者とのコンタクト方法 |
FGCコーディネーターが電話で当事者全員にコンタクトをとる。あるいは、双方当事者それぞれと別々に面接することもある。被害者と犯罪者以外の参加者については電話によるコンタクトのみ。 |
調停人が当事者(被害者と犯罪者)と電話でコンタクトをとり、通常、各当事者と別々に面接する。 |
| 事前コンタクトの主な目的 |
プロセスの説明、被害者と犯罪者から、他に誰がこのプロセスに参加してもらいたいかということを聞き出すこと、プロセスに参加する彼らの意思の確認。 |
プロセスの説明、犯罪・感情・影響に関する当事者の説明を聞くこと、信頼感と信用の確立、プロセスに参加する彼らの意思の確認。 |
| 全体会合の一般的な場所 |
警察署、社会福祉事務所、学校、コミュニティ内の建物の中の会議室。 |
図書館、コミュニティセンター、教会の中の会議室などの中立的な場所、あるいは、当事者が要求し承認された場合には、被害者の自宅。 |
| 全体会合に参加する者 |
被害者、被害者の支援者、犯罪者、犯罪者の支援者(例えば、親やその他の大人など)、FGCコーディネーター。 |
通常は、被害者と犯罪者および調停人。プログラムの中には、犯罪者の親や被害者の支援者を参加させるものもある。 |
| コーディネーターや調停人の主な役割 |
参加者を促したり集めたりすること、協議会の設営、沈黙や一時休止および強烈な感情の表出を許容するような会合の雰囲気の維持、犯罪に対する参加者の非難および被害者と犯罪者の肯定を行うこと、当事者の合意内容の記録。 |
参加については任意であるということを当事者に伝えること、当事者の全体会合への参加準備の手助け、沈黙や一時休止を許容するような、安全で尊敬心に満ちた雰囲気の調停会合の付与、感情を表出し、情報を共有し、被害弁償の合意内容について交渉しうるような対話を提供すること。 |
| 全体会合の一般的アジェンダ |
コーディネーターによる概要、基本的ルール、プロセスの説明、犯罪者が自分の話を行い、他の者たちがそれに反応する、当事者が犯罪事件について議論し、懸念を表明する、被害弁償についての話し合い。 |
調停人による概要、基本的ルール、プロセスの説明、被害者と犯罪者が自分の話をするが、その際、被害者の順序が最初であることが多い、当事者は犯罪事件について議論し、懸念を表明する、被害弁償についての話し合い。 |
| 全体会合の一般的な時間 |
45〜75分 |
45〜75分 |
資料源:Umbreit, Mark S. and Susan L Stacy, “Family Group Conferencing Comes
to the U.S.: A Comparison with
Victim-Offender Mediation,” Juvenile and
Family Court Journal, Vol. 47, No. 2, Spring 1996, p. 35.
第三章:Restorative Justiceの実際−ミネソタ州でのケーススタディを通して
第二章で、RJの重要性を理解したところで、次の第三章では、実際の効果をミネソタ州でのケースを通して検証することとする。第一節では、まず、ミネソタ州についての基礎的な背景を紹介した後で、RJと関連した事柄を説明し、50州の中で、なぜミネソタ州を取り上げるにいたったかを理解してもらいたい。そして、第二節以降、調査内容に触れて行き、FGCがもたらす効果を明らかにする。
この章では、ミネソタ州をケーススタディとして取り上げるが、RJプログラムの中でも特にFGCに注目して、その効果について言及する。ここでは、RJおよびFGCに関する詳しい研究を行っているアンブレイト(Dr. Umbreit)を始めとするCenter for Restorative Justice & Mediation(CRJM、CRJP)[xxix]が行った調査[xxx]を参考にしたい。この調査は、1年半近くという長い期間をかけてその効果について調査を行っており、比較的最近に行われた調査であることから、RJの実際を考察するにあたって有用なものであると言える。また、ミネソタ州を調査の対象として取り上げる理由は、前述のように、ミネソタ州が被害者救済政策やRJ政策、FGCなどをいち早く導入し、全米の中でも特に熱心にRJに取り組んでいるからである。もちろん、この調査だけでは、FGCの評価を決め付けることはできないが、一つの例としてRJの一つであるFGCの可能性を示唆することができると思われる。
第一節:ミネソタ州の背景
まず、ミネソタ州の基礎的な背景を説明する。ミネソタ州は、アメリカ中西部の中心に位置し、カナダと国境を接っしており、アメリカのハートランドとして親しまれている。ネイティブアメリカンの言葉、ミニソタ(Minne-sota「空色の水」)に由来する州名のとおり、内には15,000の湖や数多くの川があり、州全体が豊かな自然に育まれている。[xxxi]
全米国勢調査局とMinnesota Planningの州立人口統計学センターが行った1999年度人口統計の見積もりによると、ミネソタ州の全人口は4,775,508人であった。人種別に見ると、白人が92.9%(4,437,800人)、黒人が3.1%(148,596人)、アメリカン・インディアンが1.2%(58,575人)、アジア人が2.7%(130,537人)であった。「ヒスパニック」を、どの人種カテゴリーにも属するヒスパニックをオリジンとする人々と定義した時、当てはまったのは1.9%(92,589人)、「マイノリティ」を、非ヒスパニック系白人以外のすべての人々と定義した時、当てはまったのは8.8%(418,521人)であった。[xxxii]
この450万人を超える州人口のうち、半数以上がセントポールと州内最大の都市ミネアポリス近郊に集中している。ツィンシティ(双子都市)と呼ばれる両市は、ミシシッピ河を挟んで両岸に位置し、全米で16番目に大きな首都圏を形成している。農業、酪農に加え、エレクトロニクス、ハイテク産業など様々な産業が発達してミネソタ州は、安定して経済に支えられ、教育、文化、市民生活などの水準が高く、全米で最も治安の良い州の一つに数えられている。[xxxiii]
次に、RJと関連した事実を述べる。まず、アメリカで最初の被害弁償プログラムは、ミネソタ州において取り入れられた。それがミネソタ被害弁償プログラム(Minnesota Restitution Program)であり、このプログラムに基づいて、ミネソタ被害弁償センター(Minnesota Restitution Center)が設立された。このセンターには、ミネソタ州立刑務所に収容されている受刑者で、財産犯罪で有罪とされた者が受け入れられている。受刑者は刑務所に収容されている間に、弁償センターのスタッフの助けを得て被害者と面談し、被害弁償の合意を得るのである。[xxxiv]
また、アメリカ国内で最初の試験的FGCは、ミネソタ州警察局によって実施された。[xxxv]オーストラリアのNew South Wales警察局のオーコーネル(Terry O’Connell)は、アメリカのミネソタ州で初めて、FGCを紹介する講演を行った。その講演会に参加したミネソタ州Anokaの警察長官であるレヴァリング(Andy Revering)が、後にFGCを彼の警察局に導入し、それがアメリカで最初の試みとなったのだ。[xxxvi]
ミネソタ州には、Minnesota Department of Corrections(MDC)、Minnesota Restorative Services Coalition(MRSC)のようなRJを支援する組織が存在している。MDCは、RJの原理を支持し、RJのコンセプトのミネソタ州全体に渡る導入を援護する部隊を設立した。この全州的努力は、学校、教会、裁判所、矯正機関、法律施行機関、市民などを含むコミュニティすべてと関わりを持っている。[xxxvii]MRSCは、創設4年になる全州的ネットワーク組織であるが、元々、別々に発展してきた二つのグループが合わさってできた組織だ。MRSCの目的は、全州的コアリションとして、被害者、加害者とコミュニティに対して、質の高い損害回復的サービスを促進することによって役立つことである。MDCとMRSCは、合同で”Hearts & Hands”という全州的RJニュースレターを発行している。[xxxviii]また、ミネソタ州立大学のCenter for Restorative Justice and Peacemakingでは、RJに関する様々な研究が行われている。
ミネソタ州民は、こうした組織や研究者たちによって行われる講演会や定期的会議、トレーニング講習、RJに関する報告書やニュースレターなどの書物の発行によって、RJに関する教育を受けることができる。インターネットや電話によるコンサルティングによっても、専門家からRJに関する技術的な補助を受けている。
第二節:調査の前に
第一項:調査背景
1996年7月、FGCプログラムが第1司法区域における12のコミュニティにおいて始まった。この2年間の試験プロジェクトは、Dakota County Community Corrections(DCCC)によって、積極的に始められ、コーディネートされており、ミネソタ州議会から$95,000の援助がなされた。また、ミネソタ州立大学でのCRJMは、この新しいFGCに関わったクライアントの満足度を評価することとなった。この評価は、1997年5月に始められ、1998年9月に終了した。ここで問われた主要な研究質問は、@FGC参加者たちの人工統計学的な分析は何か?、A被害者、加害者、被害者と加害者を援護するために参加している人々は、FGCプログラムについてどう思っているか?、BFGCプログラムに参加した後、被害者と加害者の態度は変わったか?、である。[xxxix]
166の犯罪における被害者インタビュー、159の少年犯罪者インタビュー、130の支援者(犯罪者・被害者の家族、友達、地域住民など)インタビューを含む、合計455ものインタビューがなされた。ここでのFGCで最も一般的な犯罪は、万引きであり、全体の62%であった。これらのインタビューから分かったことは、FGCプロセスにおけるクライアントが高いレベルの満足度を得ているという継続的なパターンであった。[xl]
第二項:調査方法
12ヶ所で、FGCが行われ、そのケースにおいて少なくとも一人の被害者と一人の加害者が関わっている少年犯罪ケースをすべて評価の対象としていた。表1でも明らかなように、それぞれの場所で実施された評価の対象となる協議会の数には、かなりのばらつきがあった。
表1:各場所で評価の対象と成り得ると判定されたケース数
場所 |
評価の対象と成り得るケース数 |
| Apple
Valley |
47 |
| Cannon
Falls/Goodhue/Redwing |
15 |
| Carver |
7 |
| Chaska |
5 |
| Hutchinson |
17 |
| Inver
Grove Heights |
3 |
| Kennwood/Lakeville |
11 |
| Leseur/New
Tomorrows |
15 |
| Nicolett
Junior High |
5 |
| Shakopee |
45 |
| South
St. Paul |
2 |
| Woodbury |
21 |
| Total |
193 |
協議会の事前に、被害者と加害者は、協議会前のアンケートを仕上げるよう要請された。協議会前のアンケートは、プログラム参加者たちからベースライン・データ(協議会前の情報)を集めることによって、プログラムが参加者たちの態度や理解にどのようなインパクトを与える可能性があるかを理解することを目的としていた。この協議会前のアンケートは、FGCスタッフによって各場所に配布され、少なくとも協議会の一日前には、仕上げることとなっていた。しかしながら、幾つかのケースの場合、参加者たちは、ちょうど協議会に参加する直前の協議会当日に、アンケートを協議会が実施される場所で仕上げていた。この協議会前のアンケートは、@被害者と加害者にとって、それぞれの被害者もしくは、加害者と会うことの重要度を調査すること、A加害者が関わった犯罪について、どれくらい責任を感じているか、また、被害者が将来において再度被害者となる可能性について、どのくらいのレベルの不安を感じているかを査定すること、B被害者と加害者が協議会に参加する前に、司法制度についてどのくらい満足しているか、というレベルを調査すること、これら三つを行うよう構成されていた。協議会が開催された後、地元のプログラムスタッフによって、協議会前のアンケートとそのケースに関する報告書がDCCCのFGC管理部へと送られた。そのケースに関する情報は、その後、ミネソタ州立大学のCRJMへと転送された。
協議会前のアンケート・データは、すべての場所において継続的に収集されなかった。61%の被害者アンケート、56%の加害者アンケートしか評価スタッフは受け取ることができなかった。分析を行うために十分な数のケースを確保したかったため、プログラムおよび評価スタッフは、協議会前の被害者/加害者アンケートを受け取らなかったケースについても評価の対象とすることとした。
いったんケースが評価の対象に含まれるものとして受け取られると、被害者と加害者に対する二度目の接触が行われた。二度目の接触は、CRMJにいるトレーニングされたインタビュー・スタッフが実施する協議会後の電話インタビューによってなされた。同じケースに関わった被害者や加害者を含めて、できるだけ多くの完了したケースを得ることが重要であった。そのため、最初の被害者や加害者が同じケースにおいて、インタビューを完了しなかった場合、そのケースは、評価の対象から外された。
しかしながら、被害者や加害者に対する接触の最初の試みがインタビューの完了という結果をもたらし、二度目の試みが失敗に終わった場合のケースは、評価の対象とされた。例を挙げると、インタビュアーが、最初にあるケースの被害者に接触しようと試み、インタビューを拒否された、もしくは、被害者を探すことができなかった場合、例え加害者の方と接触することが可能であったとしても、このケースは、評価の対象から外された。しかし、インタビュアーが、最初に被害者にインタビューしようと試み、完了し、加害者の方にインタビューを拒否された、もしくは、加害者を探すことができなかった場合、そのケースは評価の対象として含まれた。
被害者インタビューは、81項目、加害者インタビューは、73項目から成っていた。双方のインタビューは、約30分ほどかかった。被害者と加害者の協議会後のインタビューは、実際の協議会が行われた日から30日間以内で行われることが望まれていた。しかしながら、参加者の連絡情報を含むFGCケース情報を、それぞれの場所から受け取るのが遅くなったりしたせいで、幾つかのインタビューは、協議会の日よりも90日間以上遅れて完了した。
被害者と加害者の協議会後インタビューは、両方ともより詳しく、FGCプログラム自体や満足度に関する参加者の意見を調査していた。それらは、参加者たちがFGCを選んだ理由、彼らがFGCプロセスや進行係(facilitator)に満足しているか、といったことを調査する幾つかの質問を含んでいた。また、インタビューは、参加者たちがプログラムのどういう面が一番気に入ったか、および、一番気に入らなかったかを表現すること、プログラム内容とその効果に対する満足度を評価することを要求していた。
被害者、もしくは、加害者のいずれかによってインタビューが完了し、そのケースが評価対象としていったん認定されると、インタビュアーたちは、支援者たち(被害者、または、加害者を援護するためにFGCに参加した個々人)に接触し始めた。協議会後の支援者インタビューは、68項目から成っており、約15分所要した。その内容は、被害者と加害者に行われたものと類似している。
第三節:調査結果
@各場所で開催された協議会の数、A適切な報告書が評価スタッフに送られたケースの数、という二つの基準を満たしているかどうかで、各場所で評価の対象となる完了したケース数を認定した。FGCが開催される場所すべてを反映する代表的なデータを得るために、プログラム管理部と評価スタッフは、各場所において評価の対象となるケース数に、上限を設けた。各場所での上限数と実際評価の対象として数に含まれたケース数は、表2という結果になっている。
表2:各場所において評価の対象として数えられたケース数
場所 |
その場所での ケースの上限数 |
評価の対象となった ケースの数 |
| Apple
Valley |
25 |
25 |
| Cannon
Falls/Goodhue/Redwing |
20 |
11 |
| Carver |
10 |
6 |
| Chaska |
5 |
5 |
| Hutchinson |
20 |
14 |
| Inver
Grove Heights |
15 |
3 |
| Kennwood/Lakeville |
15 |
9 |
| Leseur/New
Tomorrows |
20 |
13 |
| Nicolett
Junior High |
10 |
5 |
| Shakopee |
25 |
23 |
| South
St. Paul |
15 |
2 |
| Woodbury |
20 |
16 |
| Total |
200 |
132 |
表3:被害者、加害者、支援者たちの特徴
|
被害者 |
加害者 |
支援者 |
| インタビューされた人数 |
105 |
103 |
130 |
| 平均年齢 |
30.2 |
14.7 |
41.1 |
| 人種: 白人 |
96.2% |
94.1% |
96.8% |
| 黒人 |
0% |
1.0% |
0.8% |
| アジア人 |
0% |
1.0% |
0.8% |
| アメリカ先住民 |
0% |
3.0% |
0.8% |
| 他 |
3.8% |
1.0% |
0.8% |
| 性別: 男 |
61.9% |
69.9% |
71.1% |
|
女 |
38.1% |
30.1% |
28.3% |
| この協議会は、どんな犯罪に対して行われるか: |
|||
| 被害の対象: 店 |
61.9% |
57.0% |
報告なし |
|
人 |
38.1% |
43.0% |
報告なし |
| 被害者、もしくは、加害者を以前 から知っていたか?
Yes |
41.0% |
42.9% |
|
| 以前にも被害者となったことはあるか? Yes |
68.6% |
|
|
表3は、調査の参加者たちを3グループに分けた場合に見られる特徴分析を報告している。表3は、三つすべての調査グループに属する参加者たちが白人によって占められており、プログラムを収容している各コミュニティにおける白人の割合が影響していることを明らかにしている。3グループにおける性別の分類は、類似しており、60%以上が男性である。約60%の犯罪が店(万引き)を対象に行われたものであり、40%が人に対して行われた犯罪であった。40%の被害者と加害者とが、犯罪が行われる以前からお互いを知っていた。被害者のほぼ70%が以前にも犯罪の被害者となっていたため、協議会への参加を促進させたと思われる。
前述のように、ベースライン・データ(協議会前の情報)は、FGCに参加する一部の被害者と加害者から、各場所のプログラムスタッフによって収集される。調査の対象として含まれる132ケースのうち、プログラムスタッフは、被害者61人、加害者56人から協議会前の情報を収集した。協議会後のインタビューも同様に行われた。調査の対象として含まれる132ケースのうち、被害者105人、加害者103人、支援者130人(130人のうち、加害者側の支援者100人、被害者側の支援者30人)がインタビューを完了した。表4は、グループごとに完了された協議会前のアンケートと協議会後の数字とパーセントを現わしている。
表4:完了された協議会前アンケートと協議会後アンケート
(対象可能なケース合計=132)
| グループ |
協議会前の完了 |
協議会後の完了 |
||
|
数 |
対象可能なケースの% |
数 |
対象可能なケースの% |
| 被害者 |
61 |
46% |
105 |
79% |
| 加害者 |
56 |
43% |
103 |
78% |
| 被害者支援者 |
|
|
30 |
23% |
| 加害者支援者 |
|
|
100 |
76% |
表4によると、わずか小人数の協議会後の被害者支援者インタビューしか完了されていない。FGCによって協議された多くの犯罪は、店に対して行われたものであった。多くの店は、協議会に参加するために、企業から一人の代表しか派遣しなかった。したがって、一人の人が被害者を代表し、被害者の支援者として参加する者はいなかったのだ。
被害者と加害者は、なぜFGCに参加したか、ということについて質問された。FGCに参加した被害者の主要な理由は、「犯罪についてどのように感じたかを犯罪者に伝えたかったから」という理由が29%、「自分たちの質問に対する答えが欲しかったから」が19%であった。協議会に参加した加害者側の理由は、「被害者に対して謝罪をするため」が30%、「責任を取るため、物事を正すため」が26%であった。被害者と加害者の双方は、FGCに参加することが自発的なものであったか、と聞かれた。97%の被害者と86%の加害者が自発的に参加したと答えた。
被害者、加害者、支援者たちは、FGCの進行係についてどのような印象を受けたか、また、協議会での彼/彼女の役割についてどう思ったか、ということを聞かれた。表5は、被害者、加害者、支援者たちそれぞれが進行係の役割について、その印象を報告している。この表は、被害者、加害者、支援者たち全員が、進行係に対して高い評価をしていることを明らかにしている。
被害者と加害者の大部分は、彼らが協議会に参加するにあたって、進行係が十分心構えをさせてくれたと感じた。彼らが協議会に向けて心の準備をするにあたって、進行係はどのように役立ったか、と聞かれた時、65%の被害者と50%の加害者は、協議会がどのように機能しているか、どのようなことを協議会で期待できるのか、といった情報を提供してもらえたことが最も役立ったと答えた。また、被害者は、協議会に関して質問や心配があった場合に接触できる人がいること、被害者が事件を振りかえることによって、犯罪の現実と向き合ったり、Department of Correctionsに接触できる人がいること、などが役に立ったと答えた。幾人かの加害者は、協議会について十分な情報を得ることができなかったと述べた。彼らは、自分たちの協議会への関わりについてただ話すだけではなく、自分たちの質問に対して、もっと時間を取って答えてくれる人が欲しかったと述べた。
被害者、加害者、支援者たちのほぼ全員が、進行係の協議会の行い方に対して、公平であったと感じた。付け加えると、各グループにおける95%の参加者は、進行係が弁償協定について交渉の間、中立的であったと感じた。94%以上の各グループは、進行係に満足した、もしくは、大変満足した、と報告した。
表5:進行係の責任
|
被害者数=105 |
加害者数=103 |
支援者数=130 |
| 進行係は、十分参加者の心の準備をさせることができた Yes |
96.2% |
85.4% |
|
| 進行係は、公平だったか? Yes |
100.0% |
98.1% |
96.9% |
| 進行係に対する満足度 大変満足/満足した |
99.1% |
94.2% |
96.1% |
| 進行係は、弁償協定について交渉の間、中立的であった Yes |
97.9% |
94.9% |
97.5% |
被害者、加害者、支援者たちは、進行係について幾つかの任務を評価するよう、要求された。3グループすべてが、「良い聴取者となること」が進行係の最も重要な任務だと感じた。加害者と支援者たちは、「弁償協定の考案を援助すること」も重要な任務として評価した。被害者は、「参加者全員に話す機会が与えられるよう、機会を確保すること」、「参加者全員にとって居心地の良い協議会にすること」が進行係の重要な任務と思っていた。3グループすべてが、進行係の最も重要でない任務が「協議会の指揮をとり、ほとんどの会話を一方的にすること」と答えた。
参加者の3グループすべてが、弁償協定についてとその協定に対する満足度に関する質問を幾つかされた。表6は、弁償に関する質問に対する参加者たちの反応を示している。加害者と支援者よりも少ない数の被害者が、協議会の最中に弁償協定が交渉された、と報告した。しかしながら、被害者と加害者の両方が、その協定が双方にとって公平であるものと同意した。約82%の加害者が弁償協定にインプットしていると答えた。
表6:弁償協定に関する質問
|
被害者数=105 |
加害者数=103 |
支援者数=130 |
| 弁償協定については、協議されたか? Yes |
79.2% |
91.9% |
90.7% |
| 弁償協定は、あなたにとって公平であったか?
Yes |
94.6% |
89.3% |
|
| 弁償協定は、相手に対して公平だったか?
Yes |
97.8% |
92.6% |
|
前述のように、協議会前後のデータは、FGCに参加した被害者61人と加害者56人から収集された。協議会の結果、態度が変わったかどうかを調べるために、協議会前と協議会後とで同じ質問がなされた。司法制度が、そのケースを取り扱った方法に対して参加者たちが満足したかどうかに関する情報が、被害者と加害者に対しては、協議会前後に、そして支援者に対しては、協議会後に収集された。表7は、協議会前後のアンケートでは、被害者61人と加害者56人、協議会後のアンケートでは、支援者130人によって報告された、満足した/大変満足した、という合同の反応を示している。
司法制度に対する参加者の満足度は、協議会後、被害者と加害者の両方上がったが、加害者の増加の方が14%ポイント上がったため、大きかった。支援者たちの司法制度に対する満足度は、90%以上、満足した/大変満足したであった。
表7:協議会前後の被害者と加害者の司法制度に対する満足度
司法制度に満足しているパーセンテージ |
||
|
協議会前% |
協議会後% |
| 被害者 数=56 |
86.6% |
93.3% |
| 加害者 数=61 |
80.0% |
94.2% |
| 支援者 数=130 |
報告なし |
92.2% |
表8では、被害者と加害者によるFGCの他の面での評価が現わされている。この表に反映されているパーセンテージは、大変重要/重要という二つの反応が合わさったものである。この表は、協議会の後、理解に対して幾つかの変化があったことを明らかにしている。例えば、加害者の被害者と会うことの重要性の評価を大変重要/重要とみなす数字は、協議会後に18%も上がった。一方で、被害者の加害者と会うことの重要性を評価は、5%上がった。被害者は、協議会後については、謝罪を受けることに対して、あまり関心を持たなくなり、18%下がったが、逆に加害者は、協議会後の方が謝罪をすること重要であると感じ、15%上がった。被害者と加害者の両方とも、どうやったら加害者が被害者にとってことを正すことができるか、について議論することがより重要であると捉えていた。
表8:協議会前/後の質問
|
大変重要/重要のパーセンテージ |
|||
|
被害者(数=61) |
加害者(数=56) |
||
被害者/加害者に会うこと |
協議会前 |
協議会後 |
協議会前 |
協議会後 |
|
80.3% |
85.3% |
79.6% |
98.1% |
| 謝罪をしたり/受けたりすること |
80.4% |
88.6% |
91.0% |
99.7% |
| どうやったらことを正すことができるか議論すること |
81.9% |
91.7% |
85.4% |
92.4% |
| 仕返しをされること、およびすること |
75.0% |
57.6% |
57.6% |
88.5% |
被害者は、犯罪が自分たちにどのような影響を与えたかを加害者に伝えることに関して、どのくらい重要なことと捉えているか、という質問をされた。重要度の評価は、協議会前の82%(とても重要/重要)から、協議会後の91.7%へと上がった。さらに、将来において再び被害者となることへの不安のレベルを評価することを要求された。10段階評価で、1を不安がない、10を高いレベルの不安があると設定した場合、不安に対する評価は、協議会前の4から協議会後の3へと下がった。
加害者は、犯罪の状況となぜ犯罪が行われたか、ということを被害者に伝えることがどのくらい重要なことであるか、と尋ねられた。加害者の協議会前の評価は、85.5%(大変重要/重要)から94.2%へと上がった。また、加害者は、犯罪に対する責任を取ることについて、協議会前と後での気持ちを評価するよう、要求された。10段階評価で、1を責任が全くない、10を完全に責任があると設定した場合、加害者は、協議会後の方が責任があると感じ、評価は、協議会前の8と比べると、協議会後は9となっていた。
被害者、加害者、支援者は、FGCについて何が最も役に立ったか尋ねられた。被害者は、加害者と話をすること−犯罪が自分たちにどのような影響を与えたかを説明し、加害者がどんな犯罪を犯し、なぜ起こったか、という説明を聞くこと−が最も価値のある事柄であったと報告した。また、被害者は、反対側の家族メンバーから話を聞いたり、加害者から謝罪を受けたり、弁償協定にインプットしてもらえたことが役に立った、と述べた。
加害者は、被害者と顔と顔を合わせて向き合うこと、被害者に対して謝罪すると同時に、自分たち側からの話を語る機会を得られたこと、がFGCの最も価値のある側面であると述べた。また、加害者は、犯罪が記録に残らなかったこと、裁判を避けられたことが重要であった、と報告した。
支援者たちは、関係者すべてが集まり、犯された犯罪について話し合うこと、弁償協定を決めることがこのプログラムの最も重要な貢献である、と主張した。また、彼らは、FGCの成功に貢献するプロセスを補佐する公平で中立的な進行係の存在も重要とみなした。
反対に、FGCにおいて、何が最も役に立たなかったのか。被害者は、加害者の両親のネガティブな態度が最も役に立たないものとみなした。加害者は、彼らの友達が協議会に参加することに対して最も悩んだ。支援者たちは、幾つかの協議会は、長すぎて、時間を浪費し過ぎている、と主張した。彼らはまた、加害者が協議会に参加しなかった場合にがっかりした。
被害者は、加害者が彼/彼女の犯した行動について、十分責任を感じている、と信じているかどうか尋ねられた。90%以上の被害者は、FGCが加害者に責任を感じさせるのに効果的であったと述べた。また、被害者は、加害者が何らかのカウンセリングを受けること、または、矯正施設において刑務所でいくらかの時間を過ごすことのどちらか、あるいは両方を経験することがどれくらい重要だと考えているか尋ねられた。面白いことに、被害者の約80%が、加害者が何らかのカウンセリングを受けることが重要だと感じた一方で、被害者の約10%が、加害者が刑務所や矯正施設で時間を過ごすことが重要だと感じた。
被害者のほぼ90%が加害者から謝罪を受けることが重要だと感じており、92%が実際に加害者から謝罪を受け取った。被害者のわずか13%が、その加害者が再び自分たちに対して犯罪を行うと恐怖を感じていた。しかしながら、55%以上が、協議会後のインタビューで、未だに犯罪に対してショックを受けていると答えた。最後に、被害者の96%が、FGCが犯罪司法制度の一部として、常時被害者に対して提供されるべきであると感じた。
加害者は、被害者と会うことがどのように役に立ったか、と尋ねられた。加害者の96%以上が、被害者と会うことが役に立った/いくらか役に立ったと答えた。付け加えると、加害者の95%が、被害者と会った後、気持ちがましになったと答えた。
支援者たちは、FGCに参加することがどのくらい価値のあるものであったか、と尋ねられた。多くは、協議会が、加害者に責任を感じさせ、彼/彼女の行動が被害者にどのようなインパクトをもたらしたかを理解させよう助けた点に価値があったと感じた。また、支援者たちは、関係者が議論や協議といった形でこの問題を解決しようとした点が重要であったと感じた。
三つのグループすべての参加者は、FGCに関する最終的な印象を知るための質問をされた。表9は、それらの質問に対する各グループの反応を比較している。
表9:FGCに対する印象
| 協議会後: |
被害者 数=105 |
加害者 数=103 |
支援者 数=130 |
| 相手に対する感情 ポジティブ/大変ポジティブ |
59.2% |
71.9% |
|
| 結果に対する満足度 満足/大変満足した |
95.2% |
95.1% |
93.9% |
| FGCを他の人に勧めるか? Yes |
98.1% |
94.2% |
99.2% |
| 自ら再びFGCに参加することを選択するか? Yes |
93.3% |
89.2% |
96.1% |
表9は、FGCの後、被害者と加害者は、未だにお互いに対して少々心地悪いと感じており、それぞれのグループの30%以上が、お互いに対してポジティブより低い感情を抱いていた。しかしながら、被害者、加害者、支援者たちの約90%以上が、協議会の結果に対して満足しており、同じようなシチュエーションに巻き込まれた人々にFGCを勧めると報告した。さらに、90%、もしくはそれ以上が、自ら再びFGCに参加することを選択するとした。
第四節:調査をふまえて
犯罪の被害者との166のインタビュー、加害者(少年犯罪者)との159のインタビュー、支援者たちとの130のインタビューを含む、合計455のインタビューが行われた。これらのインタビューから得られたデータは、FGCプロセスに対するクライアントの高いレベルの満足度の一貫したパターンを示した。
10人中9人の被害者と加害者は、彼らのケースを取り扱った少年司法制度に対して満足した。表7は、協議会に参加したことによって、少年司法制度に対する満足度が上がったことを証明している。10人中9人の被害者、10人中8人の加害者が、協議会に参加するにあたって、十分心の準備ができていたと感じた。また、被害者と加害者および支援者たちのほぼ全員が、協議会の進行係が公平であったと感じた。表5は、協議会の成功に大きく関係してくる進行係が被害者、加害者と支援者たちの橋渡し役として、上手く機能していたことを証明している。10人中9人の被害者と加害者は、取り決められた弁償協定が彼らにとって公平であったと感じた。表6は、協議会が被害者、加害者、支援者との間に、何らかの解決策をもたらすことに成功したことを証明している。協議会が10人中9人の被害者、加害者、支援者たちは、協議会の結果に満足し、他の人たちにも勧めると述べた。表9は、協議会が三者それぞれに何らかのプラスの効果をもたらし、他者にも勧めるという意見に達したことを証明している。
これらのFGCプロセスに関するクライアント満足度のポジティブな調査結果は、マックコールド(McCold)とウァッチェル(Watchel)によるペンシルヴァニア州(Bethlem)でのFGCプロジェクト調査[xli]、アンブレイトとファーセロ(Fercello)によるFGCプログラムにおけるクライアント満足度調査[xlii]、というアメリカで行われた二つの結果と一貫している。
ミネソタ州では、FGC参加者たちだけでなく、ミネソタ州民全体のRJに関する意見を調べるために、全州的な調査[xliii]を行った。これは、1991年に実施された調査だが、州全体の意見を反映するために人工統計学的にも地理的にもバランスのとれた825人の成人を対象に行われた。彼らに対して、三つの質問がなされた。第一問目は:「自分が留守の間に、家に強盗が入り、$1,200相当の物が盗まれたとする。その強盗は、以前にも一度だけ同じような犯罪をしたことがある。4年間の保護観察中、あなたは、$1,200を含む弁償と4ヶ月の拘禁のどちらを判決として選びますか?」であった。4人中3人のミネソタ州民は、加害者が弁償をすることの方が、彼らの家を襲ったという罪で刑務所で過ごすことより重要だとした。
RJと密接に関連している関心事、つまり、犯罪を引き起こす原因の根底にある社会問題を対処する政策に対して、公衆の援護があるかどうかを調査するために、次の質問がなされた:「犯罪を減らすために最も大きなインパクトを与えるものとして、特別なお金を、より多くの刑務所を設立するために使うべきか?それとも、教育、職業訓練やコミュニティ・プログラムに対して使うべきか?」。5人中4人のミネソタ州民は、お金の使い道を、刑務所に対してではなく、教育、職業訓練やコミュニティ・プログラムに対して使うべきだとした。
三つ目の最後の質問は、RJのプログラムへの関心を調査するためのものであった。その質問は:「ミネソタには、トレーニングされたコーディネーターの付き添いで、犯罪被害者が、犯罪を行った加害者と会い、加害者に彼らの行った行動が自分にどういう影響を与えたかを知らせ、心の傷を含め、失ったものを弁償するため計画の調整を可能にするプログラムが幾つかある。例えば、あなたが、少年または青年による非暴力的な財産犯罪の被害者になったとする。こうしたプログラムにあなたが参加する可能性は、どれくらいありますか?」であった。5人中4人以上のミネソタ州民は、加害者と直接顔と顔を合わせる仲裁セッションに参加することに興味を示した。
1991年に行われた調査によって、ミネソタ州民は、高価格な懲罰や拘禁という懲罰よりも、社会的不正義の根底にある問題に焦点を当てた、心の傷の回復を含む弁償や犯罪予防戦略に興味を示したことが分かった。これは、ミネソタ州のややリベラルな社会政治の伝統を反映した結果と言えるかもしれない。しかしながら、アラバマ、デラウェア、メリーランド、ミシガン、ノース・カロライナ、オレゴン、ヴァーモントなどの州でも、同じような調査でRJに関心を示す者が多かったことから、ミネソタ州に限らず、他の州でも公衆の高い支持が見られること、実際に45州以上が何らかのRJを導入していることから、RJは確実に浸透していると言える。
終章:おわりに
第一章において、1960年代に被害者運動が台頭し、それが80年代では、連邦の被害者保護立法へと結実し、また連邦政府の積極的援助を受けて、被害弁償、調停、被害者・加害者和解プログラム、被害者補償などの被害者救済政策が積極的に確立、運用されるようになった一連の刑事政策上の動きを概観し、それらの特色と問題点を分析した。第一章第二節では、もともと被害者運動は、被害者の苦痛を和らげることを直接求めるリベラルな市民運動と、保守的な法と秩序運動という二つの相対立するイデオロギーに大きな影響を受けて台頭し、成長してきたことが明らかになった。
第三節では、被害者救済政策の現状を考察したが、その考察からも明らかなように、最近20年間のアメリカでは、被害者保護立法および被害者救済政策の充実化が表面的に進歩した時代であったと言える。しかし、同時にこの時期は、被害者運動の根底を当初支えていたリベラルな理念が、次第に犯罪統制の強化を支持する保守的な法と秩序運動によって吸収、操作される傾向を強めた時期でもあったことに注意しなければならない。現在、一連の被害者保護立法および被害者救済政策の現実的な機能の問題が議論されるようになっている。現時点において、少なくとも、80年代の被害者運動の具体的プログラムの直接の目的が、現実被害者の救済ということではなくて、むしろ潜在的被害者の保護を口実とした犯人の厳罰化と犯罪統制の強化ということにあると見る見解がアメリカにおいて有力となりつつある。つまり、被害者援助プログラムの現実的機能としては、それは被害者救済のためではなく、むしろ犯罪統制策の一貫として国家、政府の正当性を高めるための政治的シンボリック機能にあるとの懸念が表明されるようになってきているのである。[xliv]このような制度上の理念と現実とのギャップを埋めるため、そして被害者運動および被害者救済制度が、真に現実の被害者の利益援護のために確立、運用されて行くためにRJが有益な政策として注目されるようになったことが明らかになった。
第二章では、RJについてより詳しく考察したが、RJの下では、犯罪被害者は、個人的な力を取り戻すより多くの機会が与えられていることが明らかになった。被害者は、現在の司法制度では、多くの場合、自らのケースからも司法プロセスから除外されていると感じている。ゼーアも指摘しているように、被害者には多様なニーズがある。被害者には、自分の感情を話し、司法に関わり、加害者によって傷付けられた心の傷を癒す機会が必要である。RJは、こうした被害者のニーズを満たすために被害者の司法への関わりを可能にする、といった効果があった。
RJの下では、コミュニティの役割も大きく変化した。コミュニティ全体が、被害者と加害者を含むすべてのメンバーに対して何らかの責任を負担するのである。コミュニティは、被害者を援護し、助けること、加害者に罪を認識させ、責任を負わせること、そして、加害者が改心する機会を保証すること、に対して責任を持つのである。また、コミュニティは、将来における被害を減らすために、犯罪に隠された原因に焦点を当てる責任を持つのである。
法的問題と処罰を避けることができる可能性に焦点を置いている、現存の刑事司法制度の下では、加害者は、彼らの犯した罪を認識することが求められていない。彼らは、多くの場合、間違って犯した罪を正すことさえも求められていない。被害者に対する責任を直接負わせ、加害者が犯した被害者の個人的な心の傷に直面させ、被害者とコミュニティに対して改心したことを示す、という損害回復的アプローチに比べれば、投獄は比較的簡単な処罰かもしれない。しかし、ただ判決によって取り決められた投獄という処罰に従うのでは、加害者は受身的な役割しか果たせない。加害者も被害者やコミュニティのメンバーと同様、積極的に司法制度へ参加できる。RJは、犯罪に関わったすべての人々の双方向的なコミュニケーションを可能にしたのだ。
第三章では、ミネソタ州でのケーススタディを通して、RJの一つであるFGCの実際の効果を考察した。ここでは、RJが被害者救済という効果だけでなく、加害者やコミュニティ全体にとっても良い影響をもたらしていることが明らかになり、それが調査の具体的な数字でもって証明された。調査結果では、被害者、加害者、支援者たちが、協議会前と比べて、参加後に少年司法制度に対する満足度が上がっていること、協議会の結果に満足し、他の人たちにも勧めると、90%以上が述べていること、取り決められた弁償協定が彼らにとって公平であった、と多くが感じたのも、協議会が被害者、加害者、支援者との間に、何らかの妥当な解決策をもたらすことに進行係が成功したこと、など協議会が三者それぞれにプラスの効果をもたらし、クライアントがFGCプロセスに関する高い満足度を示したことが証明された。
しかしながら、RJが犯罪と処罰を理解するための新たな見方を提供しているにも関わらず、被害者の司法への参加と被害者に対するサービス、市民の関わりを無視するような、現在のより高価格な報復的な司法があまりにも深く浸透しているため、RJがそれに代わる代替策と成り得るのか、犯罪学者、司法関係者たちの間でも、はっきりとは明らかにされていない。現在の司法が深く浸透しているので、RJを急に導入するのは、リスクが大きいという懸念もあるからである。
また、RJの根本的な弱点として指摘されているのは、それが犯罪をどうコントロールするかについて、もっともらしい青写真を提供できていないという失敗である。この失敗は決定的である。というのは、ゲット・タフ運動などは、可能な限り多くの危険人物を拘禁することによって、社会を守るということを主張してきたからである。市民は、自分たちの安全が危険にさらされることがない、ということを納得させられない限り、進歩的な政策アジェンダは定着しないであろう、というのが反対派の意見である。[xlv]しかし、彼らは、RJの弱点を指摘してはいるものの、加害者に対して処罰を与えることのみが犯罪に対する最良の解決策である、という考えを覆すことのできる有力なアイディアとしてRJを捉えていることも事実である。加害者が被害者の痛みを癒すことができ、加害者自身が犯罪を犯す可能性も低くなる、ということが明らかになれば、市民もRJを受け入れるはずである。そのためにも、今後、RJの犯罪防止という意味での効果を研究することは、必要不可欠と言える。
幾つかの管轄区では、より被害者と加害者にとって釣り合いの取れた損害回復的な司法制度へと完全に再構築し直そうとしているが、多くは、伝統的少年司法制度に基づいて、損害回復的な政策や実施策の一部を取り入れているのみである。現在までのRJ運動は、本質的に損害回復的ではない政策や実施策の基づいて運営されてきた。この断片化されたRJの価値の適用は、望ましくはないが、ほとんどの管轄区では、必然的にそうなってしまわざるをえない。なぜならば、長期の主要な社会的/文化的変化は、時間がかかるからだ。時間との闘いもRJが乗り越えなければいけない壁の一つである。
RJをさらに浸透させるには、時間だけでなく、コミュニティの援護と強力な連結も必要だと思われる。犯罪、恐怖心、撤退、分離、拘束の弱化、犯罪の増加。被害者、加害者、コミュニティメンバーたちは、犯罪がより大きな恐怖心、コミュニティメンバー内における孤立と不信感の増加へと導き、それが更なる犯罪の増加へとつながる悪循環にとらわれている。恐怖心や結束力が分離されることによってコミュニティの拘束は弱まり、コミュニティの間違っていることを不承認する力が減少し、犯罪が増加する。RJプロセスにおけるコミュニティのより大きな関わりは、こうした悪循環を打破し、コミュニティメンバー間の連結を強化する強力な方法である。コミュニティのメンバーが互いに連結していればいるほど、コミュニティにおいて不承認されるような衝動を抑制する可能性も上がるだろう。RJがますます発展し、将来、現存の刑事手続に代わる代替策と成り得るかは、コミュニティの援護と強力な連結にかかっているとも言える。
長期的に見ると、それぞれの改革政策は、前時代への失望に端を発し、新しい制度への期待、その制度への失望から更なる改革へ、あるいは、問題の認識、対策、対策の逆機能としての問題の転移、というサイクルの繰り返しであったとも言える。だから、リベラルと保守というイデオロギーの色彩もその時々で一方が強くなったり、弱くなったりと繰り返しているのかもしれない。ウォーカーも言うように、「われわれの歴史において、法と正義の黄金の時代など一度もなかった」[xlvi]のかもしれない。したがって、刑事政策にこれ以上エネルギーと資金を投入する意義はないとの極論もありうる。しかし、社会成員がいつ被害に遭遇するかもしれない犯罪問題の解決に向けて、国家と社会が絶えずエネルギーを注入し、更なる改善のために努力を傾注しているのだというその姿勢が、日常生活における人々の恐怖感や不安感を軽減させるという機能を果たしているのであろう。RJには、現時点で多少の限界があるものの、この論文で明らかとなった効果を考慮すると、被害者救済政策の改善のために、RJという概念にもっと力を注ぐことは決して無駄ではない。今後、トライ&エラーを繰り返すことによって、RJの限界も打破できるだろうし、時間はかかるがRJの導入範囲も徐々に増えて行くであろう。そのためにも、コミュニティ単位から努力して行くことが大切だと思われる。
[i] 藤本哲也『刑事政策の新動向』(青林書院, 1991年), 163, 164頁
[ii] 藤本,前渇書, 165頁
[iii] 高橋則夫『刑法における損害回復の思想』(成文堂, 1997年), 101,102頁
[iv] 藤本哲也・朴元奎「アメリカ合衆国における被害者の権利運動と被害者救済政策―最近の動向を中心として」(1994年)被害者学研究4号, 36頁
[v] 藤本・朴, 前渇書, 36, 37頁
[vi] 藤本・朴, 前渇書, 38頁
[vii] 藤本・朴, 前渇書, 38, 39頁
[viii] 藤本, 前渇書, 165-167頁 ; 藤本・朴, 前渇書, 46-48頁
[ix] 藤本, 前渇書, 170-173頁 ; 藤本・朴,前渇書, 41-43頁
[x] 藤本, 前渇書, 167,168頁
[xi] 高橋, 前渇書, 94-100頁
[xii] 守山正・西村春夫『犯罪学への招待』(日本評論社, 1999年)184頁
[xiii] Umbreit, Mark S. and Susan L. Stacy “Family Group Conferencing Comes to the U.S.: A Comparison with Victim-Offender Mediation”,, Juvenile and Family Court Journal, Vol. 47, No. 2, Spring 1996, p. 29-38
[xiv] Restorative Justice: A Discussion Paper, ed. Ministry of Justice New Zealand,(Wellington; Ministry of Justice, 1995), p.8
[xv] 損害回復的な実施策を何らかの形で推進している組織の集まり。政策作成者にRJの必要性を考慮してもらうよう働きかけること、RJに関する情報を散布し、協会に属する組織の間で情報を共有することなどを目的としている。
[xvi] Ministry of Justice, p.8,9
[xvii] http://www.realjustice.org/Pages/vt99papers/vt_mccold.html (“Restorative Justice Practice-The State Of The Field 1999”, p.1)
[xviii] RJ創始者とも言える刑事司法のスペシャリスト。
[xix] http://ssw.che.umn.edu/rjp/Resouces/Documents/cumb96c.pdf (“Responding To Important Questions Related To Restorative Justice”, p.1)
[xx] http://ssw.che.umn.edu/rjp/Resouces/Documents/cumb96c.pdf , p.2
[xxi] http://www.corr.state.mn.us/pdf/rj.pdf (Hearts & Hands Minnesota’s Restorative Justice Newsletter, Fall/Winter 1999, p.4)
[xxii] Deschutes and Lane counties,オレゴン州、Travis county,テキサス州、Dakota couty,ミネソタ州、Allegheny county,ペンシルヴァニア州、Palm Beach county,フロリダ州
[xxiii] http://ssw.che.umn.edu/rjp/Resouces/Documents/cumb96c.pdf, p.3
[xxiv] Ibid., p.6
[xxv] Ibid., p.6
[xxvi] http://ssw.che.umn.edu/rjp/Resouces/Documents/bmar98a.PDF
(“Restorative Justice An Overview”, p.5)
[xxvii] Ibid.,p.5
[xxviii] http://ssw.che.umn.edu/rjp/Resouces/Documents/cumb96c.pdf, p.7
[xxix] 当時の名称。2000年にCenter for Restorative Justice & Peacemakingと改名。
[xxx] http://ssw.che.umn.edu/rjp/Resouces/Documents/ferumb98.PDF (“Client Evaluation of Family Group Conferencing In 12 Sites in 1st Judicial District of Minnesota)
[xxxi] http://www.minnesota.gr.jp/intro.html( About Minnesota)
[xxxii] http://www.mnplan.state.mn.us/demography/demog_3a_97.html ( Racial population by age)
[xxxiii] http://www.minnesota.gr.jp/intro.html
[xxxiv] 藤本哲也『刑事政策の諸問題』(中央大学出版部, 1999), 191頁
[xxxv] Umbreit, Mark S. and Susan L. Stacy, p.29-38
[xxxvi] http://www.realjustice.org/Pages/mn98papers/nacc_oco.html (“From Wagga Wagga to Minnesota”,p.3)
[xxxvii] http://www.corr.state.mn.us/organization/commjuv/rjbackground.htm (Backgrounder on Restorative Justice)
[xxxviii] http://www.corr.state.mn.us/pdf/rj.pdf, p.5
[xxxix] Ibid.,1,2
[xl] Ibid., p.1
[xli] McCold, P. and Wachtel, B.(1998). Restorative Policing Experiment: The Bethlehem Pennsylvania Police Family Group Conferencing Project. Pipersville, PA: Community Service Foundation.
[xlii] Umbreit, M. S. and Fercello, C.(1998). “Family Group Conferencing Program Results in Client Satisfaction.” Juvenile Justice Update 3(6), 3-4, 12-13.
[xliii] http://ssw.che.umn.edu/rjp/Resouces/Documents/cumb96c.pdf, p.3,4
[xliv] 藤本・朴,前渇書, 52頁
[xlv] Sharon Leverant, Francis T. Cullen, Betsy Fulton, John F. Wozniak, “Reconsidering Restorative Justice: The Corruption of Benevolence Revisited?”, Crime & Delinquency, Vol.45 No.1, January 1999, p.22, 23
[xlvi]徳岡秀雄『少年司法政策の社会学』(東京大学出版会, 1993), 254頁
参考文献
<一次資料>
http://ssw.che.umn.edu.(Center for Restorative Justice & Peacemaking)
・”Client Evaluation of Family Group Conferencing In 12 Sites in 1st Judicial District of Minnesota”
・“Responding To Important Questions Related To Restorative Justice”
・“Restorative Justice An Overview”
http://www.realjustice.org(Real Justice Family Group Conferencing)
・”From Wagga Wagga to Minnesota”
・”Restorative Justice Practice- The State of the Field 1999”
・”Linking Crime Prevention to Restorative Justice”
・”Building Community Support for Restorative Justice Principles and Strategies
・”Mainstreaming Family Group Conferencing: Building and Sustaining Partnerships”
http://www.corr.state.mn.us (Minnesota Department of Corrections)
・Hearts & Hands Minnesota’s Restorative Justice Newsletter, Fall/Winter 1999
・Backgrounder on Restorative Justice
http://www.mnplan.state.mn.us(Minnesota Planning)
・Racial populations by age
http://www.minnesota.gr.jp(ミネソタ州政府観光局日本事務所)
・About Minnesota
<二次資料>
・Restorative Justice: A Discussion Paper, ed. Ministry of Justice New Zealand,(Wellington; Ministry of Justice, 1995), p.8
・Gordon Bazemore, "Restorative Justice and Earned Redemption: Communities, Victims, and Offender Reintegration", American Behavioral Scientist; 1998, 41, 6, Mar, 768-813
・S. Levrant, F. T. Cullen, B. Fulton, J. F. Wonzniak, "Reconsidering Restorative Justice: The Corruption of Benevolence Revisited?", Crime and Delinquency; 1999, 45, 1, Jan, 3-27
・Umbreit, Mark S. and Susan L. Stacy, "Family Group Conferencing Comes to the U.S.: A Comparison with Victim-Offender Mediation", Juvenile and Family Court Journal, Vol. 47, No. 2, Spring 1996, p. 29-38
・Umbreit, Mark and Howard Zehr, "Restorative
Family Group Conferences: Differing Models and Guidelines for
Practice", Federal Probation, Vol. 60, No. 3, September 1996,
p. 24-29
・G. Bazemore, and M. Umbreit, "Rethinking the Sanctioning Function in Juvenile Court: Retributive or Restorative Response to Youth Crime", Crime and Delinquency. 41:3, p.296-316, 1995
・Umbreit, Mark S., "Crime Victims Seeking Fairness, Not Revenge: Toward Restorative Justice", Federal Probation; 53: 52-7 S 1989
・『刑事政策の諸問題』、藤本哲也、1999年、中央大学出版部
・『諸外国の刑事政策』、藤本哲也、1999年、中央大学出版部
・『民衆司法−アメリカ刑事司法の歴史−』、サミュエル・ウォーカー 著、藤本哲也 監訳、1999年、中央大学出版部
・『犯罪学への招待』、守山正・西村春夫、1999年、日本評論社
・『刑法における損害回復の思想』、高橋則夫、1997年、成文堂
・『アメリカ刑事法の諸相』鈴木義男先生古稀祝賀論文、西原春夫・松尾浩也・田村裕 編集代表、1996年、成文堂
・『アメリカ少年司法の再生』、渡辺則芳 訳、1996年、成文堂
・『犯罪被害者と刑事司法』、宮澤浩一・田口守一・高橋則夫 編訳、1995年、成文堂
・「アメリカ合衆国における被害者の権利運動と被害者救済政策―最近の動向を中心として」被害者学研究4号、藤本哲也・朴元奎、1994年
・『少年司法政策の社会学』、徳岡秀雄、1993年、東京大学出版会
・『現代アメリカ犯罪学事典』、藤本哲也、1991年、勁草書房
・『刑事政策の新動向』、藤本哲也、1991年、青林書院
あとがき
谷口さゆり
思えば、ここにたどり着くまでに、いくつの山を越えてきたのだろうか…。まず、就活中の春休みには、英語論文のブックレポートがあった。英語論文を探すにあたって、初めて三田図書の4階に足を踏み入れた。たくさんの資料があることに驚き、初めて「4階にこもる」という意味が理解できた気がした。ブックレポートの山を無事越えるとすぐに、春合宿での発表という山がやってきた。遠い記憶をたどると、私は合宿に参加する当日に、どっかの試験を受けた後、家に帰宅し、数時間でレジメを作成し、合宿に参加。しかし、レジメは作成できたものの、勉強不足であったため、発表はかなり緊張した。先生には、「Restorative Justiceというのは、本当に日本語で損害回復的司法なの?谷口さんが昨日作ったんじゃないの?」などと厳しいツッコミを入れられたことは、今でもはっきりと覚えている。確かに専門書で使用されている言葉なのに…疑われてしまうのは、いつも直訳ばかりしていることがばれているからなのか?と少しあせった。
春の山を越えると、あっという間に夏になり、また課題の季節がやってきた。私は、旅行のため、実際の提出期限よりも1ヶ月近く前にブックレポートを提出しなければならなかった。そのため、かなり大変な思いをした。アメリカに経つ数日前(=提出前)に、先生とゼミ女何人かで麻布ラーメンでお食事した時、「谷口さん、ブックレポートは大丈夫そうですか?」と聞かれ、苦し紛れに「今、頑張っています…。」と答えた。なんとか無事ブックレポートを提出し、私は容子とアメリカへと旅立った。人生で一番楽しい時を過ごしたが、帰国して待っていたのは厳しい現実。4日後には、夏合宿がせまっており、しかも、その後には中間報告がせまっていた。旅の余韻に浸る間もなく、勉強の毎日に突入した。夏休み初めの時点で、4階で集められる資料はほぼ全部集めていたが、それだけでは足りず、とうとう本格的にインターネットの世界に足を踏み入れたのがこの時期だった。RJなんてマイナーだし、そんなに情報ないだろう…と甘く見ていた。私の予想をはるかに越え、RJで検索して発見したRJ関連の組織のサイトは、内容的に非常に充実していた。論文なども、簡単にダウンロードすることができ、私の論文を完成するにあたって、インターネットがなかったら致命的だったであろう、というくらいの情報が得られた。二日間ほどインターネットまみれになり、私はミネソタ州の調査と運命的な出会いを果たした。夏合宿では、結局発表はまわってこず、レジメと準備に費やした合宿直前の二日間の努力は水の泡となった。中間報告では、諸事情により、他のゼミ生よりも2割増しになっていたので、かなり苦しんだ。膨大な資料をどうまとめたら良いのか悩んだが、いつものように、なんとかきりぬけることができた。
発表も終わり、ホッとしていたら、あっという間に初稿という山がやってきた。しかし、中間報告でかなりの字数を蓄えていたこと、提出期限が延びたこと、などの事情にも助けられ、余裕を持って初稿を完成。3万字弱の初稿は、内容的にももりだくさんだったので、私は、この時点でかなり満足していた。しかし、先生や院生、ゼミ生から厳しい指摘も受けたので、今回、可能な限り、加筆&修正作業を行うこととなった。
私の論文は、テーマが比較的新しく、日本語文献が少ない中、インターネットを使って資料や論文を集め、英語と格闘した結果、完成にいたった。だから、アメリカ政治学的にホントに意味があるかどうかは別にして、自分的にはかなり満足している。こんなにたくさんの資料にかこまれる日々も終わりかと思うと、ちょっぴり寂しい。膨大な量なので、あまり読み返したくはないが、とりあえず、いつか学生時代を振り返った時に、こんなに勉強した時代もあったんだなぁ…と懐かしめる証拠できた良かったです。