アメリカにおけるデジタルデバイド

IT時代の新たな社会問題と政府の役割〜

     針間浩彰

序章

1章      情報化する社会とデジタルデバイドの出現

1節      90年代後半のIT革命

2節      政府におけるデジタル化の動き

3節      デジタルデバイドの問題化

2章      拡大するデジタルデバイド

1節      デジタルデバイドの現状

2節      人種・所得水準による格差

3節      教育水準による格差

4節      その他の原因による格差

3章      政府の役割と課題

1節      現在の政府の対応

2節      政府の対応に関連する議論

3節      今後の政府の役割

終章

 

序章

情報化されたアメリカ社会において問題化しているデジタルデバイドの現状と原因をとらえ、現在の政府の対応に関する考察と今後の政府の役割について見解を述べることがこの論文の目的である。

デジタルデバイドとは、パソコンやインターネットなどの情報技術(IT)を持つ人々と十分に持たない人々(情報弱者)の格差を意味する言葉であり、1990年代後半から注目され始めた現象である。この格差が社会問題となる理由は、パソコンやインターネットを利用する人々は、利用しない人々に比べてより多くのサービスを享受でき、また、より多くの雇用の機会を得ることができるなど、生活における格差が生じる可能性があるからである。

アメリカはIT(情報技術)の普及が最も進んだ国の一つである。電子メールによるコミュニケーションやホームページを通じた情報収集といった基本的な利用方法の他に、証券取引、買い物、銀行取引など、生活を充実させるうえでITは重要な役割を持つようになりつつある。また、企業や政府にとっても業務の効率化、サービス向上、情報公開などのためにITは欠くことのできないものとなっている。

現在ではインターネットを利用したサービスは、書類等を使った従来の方法と併用されており、いわば「オプション」として位置付けられているが、今後社会の情報化が進むにつれ、急速に拡大することが予想される。将来的にはその殆どがインターネット上に限って行われるサービスも数多く存在するであろう。そうなった場合、インターネットを十分に利用できない人々は、生活に必要なさまざまなサービスを満足に受けることができない状況に陥る可能性がある。最近では州政府や連邦政府による行政サービスが電子化され、さまざまなサービスをインターネットを通じて受けることが可能になりつつあるが、その恩恵を享受しているのはインターネットを利用できる人々に限られている。行政サービスは全ての人々に公平であるべきであり、インターネットを利用したさまざまな行政サービスを利用できる人とできない人の間で格差が生じることがあってはならない。このように考えると、政府主導のデジタルデバイド解消のための対策は非常に重要であるといえよう。

現在、アメリカ政府はデジタルデバイドに関する様々な対策を実施している。例えば、予算案におけるIT普及のための出資や税制面における優遇処置などの具体的な法案作成や、デジタルデバイドを専門に扱うホームページを開設し、国民に対して政策の理解を高める努力なども見られる。また、民間企業やNPOと協力してアメリカ社会のデジタル化を推進する政策も打ち出している。

しかし、政府はデジタルデバイドをhaves(情報を持つ者)とhave nots(情報を持たない者)の間に存在する格差であるとする見解を示しているが、果たしてそのように単純化してよいものなのであろうか。また、デジタルデバイドの原因に関して、様々な議論があるが、最も影響の大きい原因と考えられるものは何であろうか。この論文では、2000年に発表された最新のレポートやモデルを用いてこれらの疑問点に対する答えを模索していきたい。

まず1章ではアメリカ社会がいかに情報化されているかを明らかにするために、e-commerce やe-government を例にあげ、現状の説明をする。その中でデジタルデバイドがどのようにして問題化してきたか、の経緯を明らかにする。次に2章では、デジタルデバイドの現状と原因を、最新の資料を用いて明らかにする。そして、3章では現在の政府によるデジタルデバイドに関する具体的な対策を提示し、それらをアンソニー・ウィルヘルム(Anthony G. Wilhelm)によるPeriphery-Center Model[I]と2章で論証するデジタルデバイドの原因を組み合わせて考察・批評を行う。最後に、以上の考察をふまえ、今後の政府の役割について考えてみたい。

この論文のオリジナリティは、デジタルデバイドの原因について、最新のデータをもとに、人種、収入、教育水準、意識といった様々な角度から分析し、従来からの社会問題と大きく関連していることを明らかにする点である。また、デジタルデバイドを「情報技術を持つ者と持たない者の格差である」、と単純化して捉えるのではなく、Periphery-Center Modelと最新資料をもとにした分析結果を組み合わせて考察する点もオリジナリティとしてあげられる。

今後の展開が誰にも予想できないほどの急速な情報化が進むなかで、政府、シンクタンク、研究者などは様々な研究結果やデジタルデバイドの対応策を提示しているが、依然として手探りの状態であり、コンセンサスを得るには至っていない。しかし、この論文で取り上げたように、可能な限り早い段階でデジタルデバイドの現状を正確にとらえ、今後の対策について考えることは将来の情報化社会の基盤を創るために、非常に重要であるといえる。

 

 

1章 情報化する社会とデジタルデバイドの出現

1節 90年代後半のIT革命)

90年代後半におこったいわゆるIT革命は人々の生活に大きな変化をもたらした。「IT革命は200年前の産業革命に匹敵する」ともいわれているほど社会に与える影響は大きいといえる。このIT革命の中核を担うのはインターネットである。

インターネットはアメリカ国防省が1960年代に開発したARPANETというネットワークシステムをもとに開発されたネットワークである。ARPANETは開発当初は研究者や政府関係者によって使用されていた限定的なものであったが、しだいに大学間のネットワーク構築や商業的な目的のために使用されるようになり、その範囲は拡大していった。その後、1989年にCERN (European Particle Physics Laboratory in Geneva) によってWorld Wide Web と呼ばれるインターネットの基盤となるネットワークシステムが開発され、世界中に広がっていった。World Wide Webに使用されているHTML言語の技術によって、文字だけではなく音や映像も自由にやり取りすることが可能となった。さらに最近ではHTML言語の後継技術として、データ管理や検索機能に優れたにXML言語が開発され、世界で標準化の動きが加速している。World Wide Webが従来のネットワークと大きく違う点は、ネットワークの範囲が限定されておらず、いくつものサーバーを経由して世界中のコンピュータと通信ができることであり、インターネットは無限の可能性を秘めたネットワークとなった[II]

1995年のウィンドウズ95の発売によって、一般家庭へのインターネットの普及は著しく進んだ。そして企業の間でもe-business といったインターネットを駆使したビジネスモデルの構築が進み、「ドットコム企業」と呼ばれるインターネット関連企業が続々と出現した。それに伴い、ネットバンキング、オンラインショッピング、オンライントレードといった様々なサービスがインターネット上で行われることになった[III]

インターネットの出現で人々の生活は大きく変化した。パソコンと電話線さえあれば国境や時間を超えてあらゆる情報や商品を入手できるようになった。例えば、従来は旅行代理店へ足を運ばなくては購入できなかった航空券が、インターネットを使っていつでも購入できるようになった。また、企業情報や学校案内など、今まではパンフレットを入手しなければ知ることができなかった情報が素早く、そして簡単に手に入れることができるようになった。また、便利さだけでなく、インターネットを使うことによって、商品の価格や情報を簡単に比較できるようになったため、消費者の利益が守られるようになった

このように、90年代におけるIT革命は社会に大きな変革をもたらした。この変革は、民間企業だけでなく、政府のあり方にも大きな変化をもたらした。次節では政府におけるデジタル化の動きについて注目してみたい。

 

2節 政府におけるデジタル化の動き

現在アメリカではe-government と呼ばれる政府のデジタル化が急速に進められている。政府のデジタル化とは、政府のあらゆる情報の公開や、サービスの提供をインターネット上で行うというものである。具体的には、電子申請、電子入札や調達、ホームページや電子メールを利用した市民の行政への直接参加、各種情報の市民への告知などがあげられる。

1996年に情報自由法(FOIA 1966年)が改正され、「電子情報自由法」(EFOIA)が制定された。これによって、行政情報はインターネットでの公開が原則となった。電子情報自由法では、公開可能な記録には「電子的なフォーマットのものも含め、あらゆる形態で」保存されている情報が含まれることが明確に規定されている。また、多くの記録をハードコピーのみでなくコンピュータ端末によってオンラインで手に入るようにすべきだ、ということもうたわれている。さらに、政府機関は文書を電子の形態で検索するための妥当な努力を払う責任があることが明記されている[IV]

また、クリントン政権は、市民がより快適に行政サービスを享受できる環境を作るために、連邦政府による行政サービスをオンライン化する「電子政府構想」を発表するなど、連邦政府のデジタル化を積極的に進めている。 2000年6月24日に発表されたE-GOVERNMENT INITIATIVESでは2000年度中に、ポータルサイトfirstgov.govを開設し、連邦政府が提供する全ての情報を入手可能にすること、また、firstgov.govを通じて中小企業や地域団体が約5000億ドルの補助金や公共調達を受けることを可能にすることを明らかにした[V]

このfirst.govではあらゆる連邦政府の情報が入手可能であり、政府の総合窓口としての役割を持つ。現在20,000以上ものウェブサイトに分散されている政府の情報を一つの窓口に統一することにより、行政サービスの効率化が期待されている。例えば、複数の行政機関にまたがる手続きを一つの窓口から処理が可能となることにより、縦割り行政の弊害を無くすことができる、といったことや、行政機関にわざわざ赴くことが必要なくなるという利点があげられる。現在、first.govによるサービスは既に開始されており、一日2,700万人の訪問者を見込んでいる。

連邦政府だけではなく、州政府もデジタル化を積極的に進めている。メリーランド州では州政府のホームページに “Maryland is The Digital State” というコーナーを設け、デジタル化への取り組みに関連した計画や報告などを逐一報告している[VI]。また、毎年「情報技術マスタープラン」を策定し、州政府の情報化促進を目指しているテキサス州では、州のハイテク産業化政策の一環として州政府のデジタル化を積極的に進めており、既にテレビ会議の実施、州政府業務での電子署名の使用、電子メールによる市民とのコミュニケーション強化などが実現されている。さらに将来的には、インターネット上でのクレジットカード、デビットカードを活用した手数料支払いや納税、パブリックミーティングの放送などを実現する予定である。このような州政府のデジタル化は州によって取り組み方が異なるが、全ての州政府にみられるものである[VII]

このように、90年代後半のIT革命以後のアメリカにおけるデジタル化は急速な勢いで進められていることがわかる。しかし、同時にさまざまな問題点が浮上している。その一つがこの論文で注目しているデジタルデバイドである。次節ではこのデジタルデバイドがどのように問題化してきたのかについて考えてみたい。

 

 

3節 デジタルデバイドの問題化

 社会のデジタル化が進み、あらゆる分野でITが使われるようになり、人々の生活も大きく変わりつつある。しかし、ITの恩恵を受けるためにはコンピュータが必要であり、そのために金銭的な投資をしなくてはならない。さらに、テレビやラジオのようにボタン一つでインターネットに接続できないため、それなりの知識が必要となってくる。ここに大きな問題点が存在する。コンピュータを購入することや、インターネットに接続することは、金銭的にある程度の余裕がある人々にとっては特に問題のない投資額ではある。しかし、アメリカ社会における貧富の差はかなり大きく、コンピュータを購入することが大きな負担となる人々は少なくないといえる。つまり、経済的に弱い立場にある人々がデジタル化された社会から取り残されることになりかねないのである。また、金銭的に余裕がある人々でもコンピュータに関する基礎的な知識がない人々や、興味関心が薄い人々、インターネットの重要性を認識していない人々も同様にデジタル化された社会からはじきだされることが懸念される。

 今後、より一層の社会のデジタル化が進むにつれ、行政サービスや生活に必要な各種情報の多くがインターネットを通じて提供されることを想定するならば、政府はいわゆる「情報弱者」に公平な利用機会を保証する必要がある。 

 

2章 拡大するデジタルデバイド

1節 デジタルデバイドの現状

ここではまず、デジタルデバイドの現状について考察してみたい。アメリカではすでにデジタルデバイドに関連するさまざまな調査が行われているが、その一つとして1995年に商務省によってまとめられたFalling Through the Net[VIII] があげられる。1998年、1999年に改訂版が出されており、2000年10月に最新版の Falling Through the Net: Toward Digital Inclusion が出版された。電話、パソコン、インターネットという3種類のコミュニケーションツールの普及について、所得、地域、人種、などのあらゆる角度から調査しており、アメリカ社会の多様性が強く感じられる内容である。これらのレポートを通じて理解できることは、アメリカ国内は急速な勢いで情報化が進んでいるが、依然として多くの人々がその恩恵を十分に受けることができていない、という現状である。最新版のFalling Through the Netでは、副題に「Inclusion=包含」、という表現を使っていることからも、情報化は広い範囲で進展していることがわかるが、しかし、その度合いは人種・地域・収入などによって大きく異なっていることが明らかになっている。本章では主にこのFalling Through the Netや、その他の最近のデジタルデバイドについての調査報告について考察を行う。

 

2節 人種・所得水準による格差

まず、人種間における格差に注目してみたい。インターネット利用率を人種別に比較した場合、黒人は23.5%、ヒスパニック系は23.6%、白人は46.1%、アジア系・アジアパシフィック系は56.8%となっており、それぞれに大きな開きがあることがわかる[IX]。(Figure 1)また、全国平均(41.5%)と黒人の利用率(23.5%)の格差に注目した場合、2000年度調査での格差は23.5ポイントであるが、これは1998年度の結果(15ポイント)に比べて3ポイント拡大していることがわかる。同様に、全国平均とヒスパニック系(23.6%)の格差は2000年度調査では17.9ポイントであるが、1998年度の結果(13.6%)に比べて4.3ポイント拡大していることがわかる。つまりこの結果は、黒人・ヒスパニック系と白人・アジア系とのデジタルデバイドは若干ではあるが拡大していることを示している[X]

 

これら人種間の格差の最も大きな原因は、所得水準である。なぜなら、黒人やヒスパニック系は白人やアジア系に比べて低所得層に属する人々が多いことから、コストがかかるインターネットの利用に格差が生じるのである。調査によると、年収75,000ドル以上の家庭のパソコンの所有率(86.3%)は、年収15,000ドル以下の家庭(19.2%)に比べて約4.5倍である[XI]。(Figure 2) インターネットの利用に関しては(77.7%、12.7%)約6.1倍である[XII]。(Figure 3)このように、所得水準別にはっきりとした格差が存在することは明らかである。 

 

しかし、所得水準だけが人種間の格差の原因ではない。なぜなら、同じ所得水準層でも人種間の格差が生じているからである。人種と収入を組み合わせて分析した結果によると、同じ所得水準の層でも黒人やヒスパニック系のコンピュータ所有率は白人やアジア系に比べて低くなっている。世帯収入が35,000ドルから74,999ドルの中間層でもコンピュータ所有率は白人68.7%、アジア系72.4%、に比べて、黒人52.7%、ヒスパニック系55.9%と、約13〜20%の格差が生じている[XIII]Figure 4)逆に、アジア系のコンピュータ所有率は全ての収入層において高くなっている。世帯収入が15,000ドル以下の層においても、アジア系の所有率(39.4%)は、他の人種(白人22.8%、黒人11.5%、ヒスパニック系12.5%)に比べて非常に高いことがわかる。

 

これらの原因として考えられることは、まず、コンピュータやインターネットに対する興味や考え方の違いである。もともと白人が主体となって開発・発展してきたインターネットは、白人文化に合わせており、白人向けのコンテンツが中心を占めているといえる。言い換えると、インターネット上には黒人やヒスパニック向けのコンテンツが比較的少なく、ニーズに応えることができていない、ということである。その結果、経済的には余裕がある中間層に属する黒人でさえも、白人に比べてインターネットに対する興味が薄くなり、コンピュータの普及が他の人種に比べて遅れているといえる。

ヒスパニック系に関しては、アメリカに住んでいるとはいえ、英語が十分に理解できないというハンディを持つ人々が多く存在する。このため、英語によって書かれたコンテンツが多くを占めるインターネット は、彼らにとって扱いにくいものとして敬遠されることが考えられる。

また注目すべき点は、アジア系の高いインターネット利用率である。この背景には就業意欲の高さ、教育に対する熱心さなどが考えられる。アジア系の多くはアメリカでの経済的な成功を目的とした移民であり、ヒスパニック系移民などに比べて就業意欲が高いことが知られている。そのためにコンピュータに積極的に取り組むのではないか、と考えられる。

 

3節 教育水準による格差

次に、教育水準による格差に注目すると、所得と同様に、教育水準に比例してインターネット利用率も高くなっている。大学卒のインターネット利用率(64%)は高校を卒業していない人々(11.7%)に比べて約5.5倍である[XIV]。(Figure 5)

所得・教育の両方を組み合わせて分析すると、それぞれが密接な関わりを持っていることがわかる。Figure 6 [XV]をみてわかるように、所得水準が高い場合はネット利用率も高く、逆に所得水準が低い場合はインターネット利用率も低くなっている。しかし、注目すべき点は、同じ所得水準のグループの中においても、教育水準の違いによってインターネット利用率に大きな開きがあることである。年収75,000ドル以上の富裕層において、大卒以上の場合は82%であるが、高校を卒業していない人々は51%であり、所得水準の高いグループ内にも利用率に格差が生じていることがわかる。また、年収15,000ドル以上35,000ドルの家庭の場合、大卒以上の場合は46%、高校を卒業していない人々は11%である。つまり、これらが示していることは、所得水準が高い場合でも教育水準が低いとインターネット利用率が極端に低くなり、「情報弱者」になるということである。従って、インターネット利用率を向上させるためには、教育が大きな影響を与えるといえる。

4節 その他の原因による格差

デジタルデバイドのその他の原因として注目すべき点は、人々のIT技術に対する意識である。つまり、インターネットをどれほど必要なものとして位置付けるか、という意識の違いによって、格差が生じているのである。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の通信政策センターは、米国内2096世帯のインターネットユーザーと非インターネットユーザーの両方を対象に調査を実施した。Surveying the Digital Futureと題されたこの調査によると、アメリカではインターネットを使っていない理由の第一は「コスト」ではなく、「興味がないから」であるという結果がでている。また、インターネットを使わないことを「誇りに思う」と言い切る「インターネット拒否派」の人々も少数ながらいることも分かっている[XVI]

  インターネットを使っていないことの理由に「高価すぎる」ことを挙げた人は、非インターネットユーザーのわずか9.1%にとどまっている。ネットに接続していない理由としてはむしろ、非ネットユーザーの3分の1が理由に挙げた「興味がない」、約20%が挙げたインターネットの「使い方が分からない」というもののほうが大きいと述べられている。

 また、Pew Internet & American Life Projectが2000年9月に発表した調査報告によれば、現在インターネットを使っていない米国民のうち57%までが、今後も使う気はないと答えているという。そしてそれらの人々はインターネットについて何の意見も持ってない人が非常に多いことも分かった。同調査は、「インターネットという現象にまるで関心のない人がたくさんいる」としている。インターネットを使わないことで損をしていると感じたことがあるのは、こうした「無関心派」のうちの19%にすぎない。また44%は情報を見つけるのにインターネットは役立つかもしれないと認めたが、「情報収集ツールという点に限定すると、Webの魅力は無関心派を引き寄せるほど強くない」とされている[XVII]

しかし、現在インターネットを使っていない人のうち41%は、より前向きな姿勢を示している。この層は、インターネットを使っていないことで何か損をしていると感じており、テクノロジーに対する恐怖心も少なく、その可能性に魅力を感じている。しかし、料金やセキュリティなどの危険性を考え、まだ足踏みをしている段階であると考えられる。

以上、デジタルデバイドの原因について考察を行ったが、明らかになったことは、デジタルデバイドの根本的な原因とは、教育水準・所得水準の格差といったアメリカに従来から存在する社会問題だということである。この2つは互いに密接な関係を持っており、どちらか一方が欠けた場合でもインターネット利用率を大きく低下させ、デジタルデバイドの原因となるといえる。そしてこの2つの要因が人種間のデジタルデバイドを生み出しているといえる。

また、非インターネットユーザーがインターネットの持つ重要性を認識していない点もデジタルデバイドの原因の一つである。これは、人々の意識が社会の急速なデジタル化の波についていけない状況にあるといえよう。デジタル化された社会において、インターネットはインフラの中核を占めるものであり、今後その重要性はますます高まっていくと考えられる。従って、いかに人々の意識を変えていくか、ということもデジタルデバイドを解消するためには重要であるといえる。

 

3章 政府の役割と課題

1節 現在の政府の対応

 1998年4月22日のホワイトハウス・プレスリリースにおいて、ゴア副大統領は「我々は情報を持つ人々(haves)と持たざる人々(have nots)の間に存在するデジタルデバイドを解消し、すべてのアメリカ人がインターネットの恩恵を享受できるようにすべきである」と述べている[XVIII]。連邦政府はデジタルデバイドの拡大は深刻な問題であると踏まえ、電話、パソコン、インターネットの完全普及を目指して様々な対策を実施している。

 例えば、経済的な理由でパソコンを購入できない人々のために学校や図書館などにパソコンを配備したり、学校や図書館でのインターネット接続を促進するために、接続料金に教育レートと呼ばれる低料金を設定して補助を行っている。また、ネイティブアメリカン30万世帯に対し、電話代を月1ドルにするなどの施策を発表している。

また、クリントン政権は、2001年度予算案において、デジタルデバイドの解消を国家目標として取り組むことを提案している。具体的な対策は以下の通りである。

@     民間企業の学校や図書館などへのパソコン寄付ないしは出資に対し、税制面において10年間で20億ドルの優遇処置を実行する

A     教師に対するパソコン教育の充実を図るために150万ドルの出資を行う

B     低所得あるいは過疎地域にパソコンを配備した1,000の技術センターを設立するために100万ドルの出資を行う

C     政府と民間企業の協力による低所得層へのインターネット普及のために50万ドルの出資を行う

D     IT技術の普及が遅れている地域に対する45万ドルの支援を行う

E     田舎や都市中心部における民間企業による高速ネットワーク網の設立のために25万ドルの出資を行う

F     ネイティブアメリカンの情報技術分野への就職を推進するために10万ドルの出資を行う

 

このように、多くのアメリカ国民がコンピュータやインターネットを活用できる環境を整えるとともに、企業内での基礎的コンピュータ教育費用に対する税控除や新任講師に対するコンピュータ教育助成金の交付などを行い、国民がこうした環境を有効に活用するために必要な情報リテラシー獲得を支援していくことを明らかにしている。政府は合計で約24億ドルの予算措置を講じ、デジタルデバイド解消のために積極的に関与していく方針を打ち出している[XIX]

 以上のような政府としての取り組みに加えて、2000年4月クリントン大統領がFrom Digital Divide to Digital Opportunity, A National Call to Actionを発表して、政府、企業部門、教育者、労働組合、図書館、市民権運動リーダー、宗教団体、財団、ボランティア、コミュニティ組織など広く社会を巻き込んだ取り組みを開始している。大統領は、「技術の不平等を克服しようという試みは、倫理上の義務であると同時に、経済政策としても重要なこと」であると主張し、貧困層や排除されたコミュニティのデジタルデバイド解消に手を貸すことが、今後の米国経済成長の原動力になると説明している[XX]

具体的な目標として、すべての教室をインターネットに接続することや、生徒4〜5人に一台の割合でコンピュータを設置することによって、「21世紀型の教材」を子供たちに提供すること、すべての家庭をインターネットに接続することなどを掲げている[XXI]

そして、これらの目標を実現するために、政府は民間部門やNPOに協力を呼びかけている。既に400以上の企業や団体が協力に合意しており、民間企業やNPO側も政府の求めに応じ、積極的に協力していく意向である。NPOであるThe Corporation for National Serviceは1000万ドルをかけて750人のボランティアを学校やコミュニティのコンピュータ施設に派遣し、技術サポートを行うことや、250万ドルをかけて教育プログラムを支えていくことを決定している。また、American Library Associationは全米250のコミュニティで情報リテラシー教育プログラムの開設を、そしてKaiser Family Foundationは若者にコンピュータやインターネット活用を進めるキャンペーンを実施することを表明している。

また、政府の呼びかけに対して多くのIT企業も協力を表明している。具体的な内容は以下の通りである[XXII]

     AOL - 若者の技術教育用に10万人分の無料電子メールアカウントを提供

     AT&T - 高校生向けの技術教育を行うAcademy of Information Technologyを支援

     Applied Materials  ハイテク職業訓練センターへ100ドルを寄付

     Cisco - Cisco Network Academy Programを拡大

     Gateway - 7500人の教師に対する技術訓練の実施を行うこと

     Hewlett Packard - コンピュータ教育のために1500万ドル相当を寄付

     Novell - ヒスパニック系住民のための非営利組織に2000万ドル相当のソフトウェアを寄付

     Qualcom - サンディエゴのデジタル格差解消のために2500万ドルを寄付

     Yahoo - 100万ドルを投じ、ボランティアを募集するための広告制作

     3COM - 4〜16歳の女性に対するコンピュータネットワーキング技術訓練の実施や資格取得の支援

また、民間企業が個別に対応するだけでなく、NPOなどを通じ複数の企業が共同で出資し、活動をサポートする動きもみられる。NPOであるHighway 1は、1995年にIBMやマイクロソフトなどのIT企業が資金を提供して共同で設立されたものである。また、日本企業ではキヤノンとソフトバンクが参加している。主な活動内容は、ロビイングや営業は行わないものの、米国議会と連邦政府に対し、先端技術と公共部門でのその活用について情報提供と教育プログラムを実施することや、次世代インターネットに関する教育などが掲げられている[XXIII]

また、Highway 1はワシントンD.C.中心部に9500平方フィートの展示場を備え、米国科学財団(National Science Foundation)の提供による超高速バックボーン・ネットワーク・サービス(vBNS)で産業界や大学の施設と接続された設備を備えている。これらの施設と、出資者である企業の最先端ハードウェア、ソフトウェア、アプリケーションを各省庁のCIOや議員に体験させることで情報技術への理解を推進させることを進めている。

このように、連邦政府は民間部門との協力の下に、アメリカ社会のデジタル化のためのさまざまの対応策を打ち出している。

 

2節 政府の対応に関連する議論

デジタルデバイドが従来の社会問題を原因とする新たな問題であると位置付けされるということは、政府主導による対策を進めていくことは非常に重要である。しかし、現在の政府による対応について、いくつか問題点が指摘できる。2章で提示したように、デジタルデバイドは、教育・所得水準の格差、人々の意識など、様々な原因が重なり合って引き起こされていると考えられる。従って、いわゆる「情報弱者」は一枚岩的な存在ではなく、様々なカテゴリーに分類されるべきである。しかし、現在の政府による対策は包括的なものであり、より細かな認識に基づく対策を打ち出していく必要があるといえる。そこで、アンソニー・ウィルヘルム(Anthony G. Wilhelm)によるモデルを用いて考えてみたい。

ウィルヘルムは著書Democracy in the Digital Ageの中で、政府によるデジタルデバイドの認識の仕方には問題が含まれていると述べている。ゴア副大統領はホワイトハウスプレスリリースの中でhaves とhave notsという言葉を使っており、デジタルデバイドを「情報をもつ人々」と「持たない人々」という二つのグループに区別している。しかしWilhelmは、このように区別を行うことは、問題を単純化しすぎており、デジタルデバイドを正確に認識していない、と指摘している[XXIV]。つまり、have notsと単純化することは、情報弱者を一枚岩的で変化のない存在として認識してしまっており、それぞれの異なる度合いを識別する視点が欠けているということでる。そこで、情報弱者がおかれている状況をより詳しく捉えるためのモデルとして、Wilhelmが提示するPeriphery-Center Modelがあげられる。このモデルは、「情報をもたない人々」をまず “immune to progress”(情報化からの除外者)、“peripheral access”(周辺的参加者)、“peripheral users(周辺的利用者)”という3つの大きなカテゴリーに区分して捉えている。

一つ目のカテゴリーである“immune to progress”(情報化からの除外者)とは、情報弱者のなかでも最も情報化から遠ざけられており、情報化に対する理解度が低いだけでなく、社会的、経済的にも恵まれていない人々が含まれる。その多くは低賃金労働者、パートタイマー、失業者である。読み書きのできない人々も多いため、コンピュータについて全く理解がなく、一度も利用したことが無い人々も多く含まれる。そして、このカテゴリーの大部分はインターネットを知らないばかりか、電話さえも持たない人々も存在する。また、インターネットのセキュリティやプライバシー、ポルノなどに関する懸念を抱いているために、情報化に対する否定的な態度をとる人々も含まれる。

また、このカテゴリーに属する人々が多く住む、居住地域を取り巻く環境も、情報化から取り残される原因になっている。ビジネス的視点からみて、低所得者層が多く住む地域はマーケットとしての魅力が無いために、情報化への投資が他の地域よりも遅れ、コミュニケーションや消費・生産といった生活に必要である基本的なインフラが整備されにくいのである。つまり、“immune to progress”とは、周囲を取り巻く大きな障害によって、社会の大部分がその恩恵を享受している先端技術から取り残されている人々であるといえる[XXV]

二つ目のカテゴリーである“peripheral access”(周辺的参加者)とは、コンピュータやインターネットを利用する機会を多少持つ人々を指す。具体的には、職場や公共の施設でのインターネットの利用は可能であるが、自宅にはその環境がないという人や、家にコンピュータはあるものの、インターネットに接続されていないという人を含むものである。多くの人々は、高校や大学に通った経験を持ち、事務員や技術者といった職を持つ人々である。これらの“peripheral access”に属する人々は、先に説明した“immune to progress”とは質的に異なるといえる。彼らは社会的、経済的により高い地位にいるために、コンピュータの技術やネットワークの効能に対する理解力を持ち、市場の動向にうまく順応できるのである[XXVI]

三つ目のカテゴリーである“peripheral users”(周辺的利用者)とは、中間層に属し、大学の学位を持ち、マネージメントやプロフェッショナルとしての職を持つ人々である。自宅にインターネットを利用できる環境を持つが、情報検索などをするのみで、電子メールをやり取りすることや、自らの情報をインターネットに発信するなどということは行わない人々を指す。このようなインターネットの利用方法は、彼らのニーズに十分に応えることができている。しかし、よりレベルの高い位置にある「パワーエリート」は、インターネットを単に利用するだけでなく、自らコンテンツを創造し、富を生み出しており、これが「周辺的」利用者とされる理由である[XXVII]

このように、Wilhelmが提示するPeriphery-Center Modelを使って分析すると、「情報弱者」とされる人びとは単一のグループではないことがわかる。従って単純にhave notsと捉えてしまうことは、それぞれのカテゴリーの違いを識別する視点が欠けているといわざるを得ない。また、このモデルを注意して見てみると、それぞれのカテゴリーに属する「情報弱者」が抱えている問題点が浮かび上がってくるが、それらは2章における分析結果とうまく重なり合うことがわかる。

まず、第一のカテゴリーの場合、低賃金労働者、パートタイマー、失業者など、収入が極めて少なく、同時に読み書き能力やコンピュータに関する知識が十分にない人びとが含まれている。また、学校などのインフラ整備が遅れている地域に住んでいるために、十分な教育を受けることができないという問題も抱えている。つまり、第一のカテゴリーの場合、教育・所得水準の両方の低さが問題となっているといえる。

一方、第二・第三のカテゴリーの場合、教育・所得水準といったものよりも、インターネットに対する興味やより高いレベルへの意欲の有無など、人びとの意識が「周辺的利用者」と「パワーエリート」の差を生んでいるといえる。

つまり、以上の分析の結論は、情報弱者が置かれているレベルの違いによって、それぞれ異なった原因があるということである。2章における分析では、デジタルデバイドの原因は所得水準、教育水準、そしてインターネットに対する「意識」であることが明らかになったが、ウィルヘルムのモデルにあてはめた場合、最も深刻なレベルの人びとが抱える問題は所得・教育であるのに対し、パワーエリートに近づくにつれて人びとの「意識」がレベルの違いを生み出す、ということがいえよう。

 

4節 今後の政府の役割

政府は情報弱者をより詳しく認識し、それぞれが持つ問題点に対応したデジタルデバイド解消策を打ち出すことが重要である。

デジタルデバイドの原因を考えた場合、政府が積極的に対策を打ち出すことは非常に重要であると考えられる。なぜなら、デジタルデバイドは所得・教育水準、人種といったアメリカに従来から存在する問題を根源とする新たな社会問題であり、一時的なものではなく、今後長期的に存在し続けるIT時代の新たな社会問題となると考えられるからである。

2章で明らかにしたとおり、収入・教育水準はそれぞれがインターネット利用率に大きな影響を与える相互作用的なものであり、デジタルデバイド解消のためにはどちらか片方だけでなく、両方を改善することが重要であるといえる。また、ウィルヘルムのモデルを用いて明らかにしたように、情報弱者が置かれているレベルの違いによって、異なった原因がある点も重要である。従って、政府はそれぞれの情報弱者に対応した対策を取る必要がある。

最も情報化から遠ざけられている人々“immune to progress”(情報化からの除外者)に対しては、積極的にデジタル化の教育を進める必要があるといえる。一つはコンピュータ(ハードウェア、ソフトウェア)のについての教育である。まず、コンピュータについて学ぶためには、学校におけるコンピュータ設備が必要となる。しかし、都市中心部などの低所得層が多く住む学区では、十分な設備を設けることは予算的に容易ではない。先ほど述べたように、クリントン政権は2001年度予算案において、民間企業の学校や図書館などへのパソコン寄付ないしは出資に対し、税制面において10年間で20億ドルの優遇処置を実行することを決めており、その成果が期待されている。

また、パソコンの基礎的な使用方法、インターネットの基礎知識などを教えることができる教員の育成も重要である。最近問題になっているインターネット上でのモラルなど、道徳的な部分の教育も含め、パソコンやインターネットの有効的な使用方法を学校教育などを通じて指導することが重要である。

政府だけでなく、民間企業による出資も必要である。これは、民間企業にとっても意味のある投資であるといえる。なぜなら、自社の製品の使用方法を教育することで、将来的にその製品のユーザーが増え、売上に貢献することが予想できるからである。また、人的コストの削減のために、教育支援ソフトなどを開発することも必要である。

しかし、デジタルデバイドはこのようなコンピュータに関する教育だけで解決できるほど単純な問題ではないことは明らかである。コンピュータの操作方法といった技術以前に、より基本的な教養が必要である。まず、インターネット上に存在する情報を理解し、役立てるためにはまず基本的な読み書き能力や演算能力が必要である。1992年に行われたNational Adult Literacy Survey (NALS)によると、アメリカでは21%〜23%の成人(約4000万から4400万人)が読み書き能力において、五段階評価のうち、最低レベルの「レベル1」だとされている。これらの人々は新聞などの簡単な文章でさえも十分に理解できないレベルである。さらに、25〜28%(約5000万人)が「レベル2」とされている[XXVIII]。この調査結果から明らかであることは、読み書き能力の向上のための教育の改善である。インターネット上にある文章を理解することができなければ、いくらコンピュータの操作方法を知っていても得られる情報はゼロに等しいといえよう。また、膨大な情報がインターネット上に氾濫するなか、自分にとって必要な情報と不要な情報を区別する、といった情報処理能力も必要である。そのためには基本的な読解能力が必要であり、学校における教育が重要であるといえる。

 一方、“peripheral access”(周辺的参加者)、“peripheral users”(周辺的利用者)に対しては、以上の対策に加えて、政府や企業によるインターネットのPR活動などを通じてより積極的に利用することを促していく必要がある。今後はさらに多くの行政サービスがインターネットを通じて行われるようになるが、その普及のためにはこれらの人々をいかに取り込んでいくかが課題といえよう。また、インターネットに無関心な人々に対しては、インターネットの持つ有効性を認識させる必要がある。インターネットは単なる情報収集ツールではなく、デジタル化された社会におけるインフラの中核を占めるものであり、今後は自らの生活に大きく関わるものであるという認識が必要である。

 

終章

これまでデジタルデバイドの現状や対応策、今後の課題について述べてきたが、デジタルデバイドはIT社会におけるあらたな社会問題であり、その根本的な原因は貧富の差、教育、人種といったアメリカに従来から存在する社会問題であることが明らかになった。さらに、インターネットの必要性を認識していない人々がまだ数多く存在し、そのこともデジタルデバイドの原因となっていることも明らかになった。

また、現在の政府の対応について、政府はデジタルデバイドを単純化しすぎており、情報弱者を十分に認識できていないという点、そして情報弱者が置かれているレベルの違いによって、異なった原因があるということ前提に、それぞれのカテゴリーに対応した対策を行う必要があると言う点などを指摘した。

アメリカは90年代後半から急激な勢いで情報化が進み、人々のライフスタイルも大きく変化しつつある。その結果として景気拡大の大きな要因となった。そのため、情報化を推し進める動きは今後もより強力なものになっていくと予想される。しかし、一方ではデジタルデバイドのように、従来からの社会問題を根源とする新たな社会問題が生み出されており、デジタル化の流れから取り残された情報弱者が存在し、大きな懸念材料となっていることいることを忘れてはならない。今後、社会のデジタル化が進んでいくなかで、デジタルデバイドに代表される新たな社会問題を指摘し、解決策を模索することは政府の重要な役割であるといえる。

政府は民間企業やNPOとの協力関係を維持し、より多くの協力を得られるよう積極的に呼びかけていくべきである。そして、デジタルデバイドの調査を今後継続して実施し、情報弱者に関しての現状をより詳細に認識したうえで、長期的な視点にもとづく政策を打ち出す必要がある。また、Wilhelmのモデルを用いて説明した通り、情報弱者は一枚岩的な存在ではなく、いくつかの異なるカテゴリーに区別されるため、それぞれに対応した対策を行っていく必要がある。そのためには、情報弱者に対してできる限り多様な教育の機会を提供することや、利用しやすいインフラ整備を進めることが重要である。

インターネットは現在最も可能性を秘めた情報通信技術であり、政治経済のあり方をさらに大きく進歩させるであろう。その社会的インフラを国民全員が共有できるような環境作りをどのように進めていくか、ということが21世紀におけるアメリカ政府の課題である。



[I] Anthony G. Wilhelm, Democracy in the Digital Age: Challenges to Political Life in Cyberspace (New York: Routledge, 2000), pp. 73-76.

[II] Wayne Rash, Jr., Politics on the Nets: Wiring the Political Process (New York: W.H.Freeman and Company, 1997).

[III] 大前研一『ドットコム・ショック』小学館、2000年。

[IV] The Freedom of Information Act

http://www.usdoj.gov/oip/foia_updates/Vol_XVII_4/page2.htm

[V] PRESIDNET CLINTON AND VICE PRESIDENT GORE: MAJOR NEW “E-GOVERNMENT” INITIATIVES

http://clinton6.nara.gov/2000/06/2000-06-24-fact-sheet-on-major-new-e-government-initiatives.html

[VI] Welcome to Maryland Technology ?The E-State

http://www.techmd.state.md.us/maincontent.htm

[VII] 白井均、城野敬子、石井恭子『電子政府』東洋経済新報社、2000年、111-120頁。

[VIII] U.S. Department of Commerce, Falling Through the Net: Toward Digital Inclusion (Washington, D.C.: 2000).

http://www.ntia.doc.gov/ntiahome/digitaldivide/

[IX] Percent of U.S. Households with Internet Access By Race/Hispanic Origin, 1998 and 2000

http://www.ntia.doc.gov/ntiahome/fttn00/falli0{image129}.gif

[X] U.S. Department of Commerce, p.16.

[XI] Percent of U.S. Households with a Computer By Income ($000s), 1998 and 2000

http://www.ntia.doc.gov/ntiahome/fttn00/falli0{image126}.gif

[XII] Percent of U.S. Households with Internet Access By Income ($000s), 1998 and 2000

http://www.ntia.doc.gov/ntiahome/fttn00/falli0{image125}.gif

[XIII] Percent of U.S. Households with a Computer By Income, By Race/ Hispanic Origin 2000

http://www.ntia.doc.gov/ntiahome/fttn00/falli0{image190}.gif

[XIV] Percent of U.S. Households with Internet Access By Education of Householder, 1998 and 2000

 http://www.ntia.doc.gov/ntiahome/fttn00/falli0{image127}.gif

[XV] Percent of U.S. Households with Home Internet Access By Income and Education, 2000

 http://www.ntia.doc.gov/ntiahome/fttn00/falli0{image128}.gif

[XVI] UCLA Center for Communication Policy, Surveying the Digital Future (Los Angeles, 2000).

http://ccp.ucla.edu/pages/internet-report.asp

[XVII] Who's Not Online: 57% of those without Internet access say they do not plan to log on

http://www.pewinternet.org/reports/index.asp

[XVIII] STATEMENT BY VICE PRESIDENT GORE

http://clinton6.nara.gov/1998/04/1998-04-22-vice-president-statement-on-the-e-rate.html

[XIX] THE CLINTON-GORE ADMINISTRATION: WORKING TO BRIDGE THE DIGITAL DIVIDE http://clinton6.nara.gov/1999/12/1999-12-09-fact-sheet-on-working-to-bridge-the-digital-divide.html

Zdnet Top Stories 2000419日)

http://www.zdnet.co.jp/news/0004/19/clinton.html

[XXI] A National Call to Action to Close the Digital Divide

http://clinton6.nara.gov/2000/04/2000-04-04-fact-sheet-on-closing-the-digital-divide.html

[XXII] Zdnet Top Stories 2000418日)

http://www.zdnet.co.jp/news/0004/18/b_0417_11.html

[XXIII] Highway1

http://www.highway1.org/

[XXIV] Wilhelm, ibid., pp. 68-69.

[XXV] ibid., pp73-74.

[XXVI] ibid., p75.

[XXVII] ibid., p76.

[XXVIII] American Literacy Council, Literacy Figures

http://www.under.org/alc/literacy_figures.htm

 

 

卒論を書き終えて

針間浩彰

 昨年の夏休みに1冊目の参考文献を買ってから半年、やっと卒論を書き上げることができた。今、僕の横ではキヤノンのプリンター(宣伝してみたりして)がこの半年の成果をせっせとプリントアウトしている。もう少し早いうちから集中してやっておけばよかったな、といつものように反省しつつも、一応なんとか終わってよかったという気持ちである。

 このトピックを選んだ理由は、コンピュータ、インターネットに対する強い興味があったからである。特に、ちょうどアメリカでインターネットが爆発的に流行りだした時期にむこうに住んでいたので、影響を強く受けたのだと思う。それ以来、そのすごさにすっかり「ハマって」しまったというわけである。

 僕が最初にインターネットを使い始めたきっかけは、パソコンを使えばいろんな情報が引き出せるらしい、ということを高校の授業で学んだことであった。早速試しにパソコンに向かってみると、まさにいろんな情報で溢れかえっていた。特に、色々な写真や文章を駆使し、ありとあらゆる情報を掲載している政府や企業のホームページの充実ぶりには「アメリカって進んでるなぁ」と素直に驚いたものである。

 しかし、そのように情報が進んでいるアメリカにおいても、全国民がインターネットを利用しているとは限らず、実際にはインターネットについてまだ何も知らない人が非常に多く存在することがわかった。あんなに何でもE-ナントカ!」と名付けてしまい、社会の至るところでコンピュータが活用されている国において、そのような事実を発見したことは驚きであり、その原因について調べてみたいという興味がわいた。こんなわけでこの論文を書くことになった。

 苦労したことは、インターネットを取り巻く環境はものすごい速さで変化しているため、次から次と新しい資料が見つかり、どれを参考にしてよいかわからない点であった。色々と見つかる割に、在り来りのことしか書いていない資料が多かった気もする。また、クリントンからブッシュへと政権が交代したため、せっせと集めたホワイトハウスのプレスリリースのウェブアドレスが全て変わってしまい、あわてて注を書き直さなくてはならなかった、などというインターネットの資料ならではの苦労もあった。しかし、インターネットなしにはこの論文を書くことは不可能であったので、論文の中で述べているように、やはり非常に優れたツールであるということを改めて感じた。

 最後に、コメントを書いてくださった方々、そして色々とアドバイスを下さった久保先生にこの場を借りてお礼を申し上げたい。

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