HAYASHI Hikaru


HAYASHI Hikaru
($Src: CD: fontec: FOCD9561/2)

林光 (Hikaru Hayashi, 1931-2012) [ja]

Hayashi : Wind orchestra (1992)

ヤマハ吹奏楽団の委嘱編曲。[P5]なし。
演奏チャンスが閉じられているので本来単独で取り上げるべきではないが、「『知っている人には有名』らしいのにほとんど情報がない」ので、ここで取り上げる意味があると判断した。 今後聴く機会が訪れるか否かはヤマハ吹奏楽団さんの意向にかかっている。
(何とかCDで販売してくれないものか…)

当日プログラムをヤマハ吹奏楽団様よりご提供頂きました。
ご協力ありがとうございます!

Musical score

手稿譜のみ。
JASRACへは登録されていない。
ヤマハ吹奏楽団様によると、団は初演権のみ保有で、楽譜の権利は持っていないとのこと。【2013.06.13ご回答。感謝!】

Instrument-s

unknown

Contents structure

タイトル列はプログラムの曲目解説内の表記。 27回と35回で表記があまりにも異なるが…
(a) 初演である前者は林光氏が楽譜上に付けたもの、後者は解説執筆者である田村文生氏によるもの
(b) 前者は従来のHindsley編に則ったもの、後者は林光氏が楽譜上に付けたものを尊重し復活させたもの
…このどちらかではないかと考えている。

林光編「展覧会の絵」
musictitle (27th)title (35th)Tr.pos.description
[P1]A. プロムナード散歩1 (導入部)@冒頭はEngHrn?とSax。
[Gnomus]1. グノームス1【こびと(地底の宝を守る神)】@
[P2]B. プロムナード散歩2@
[castello]2. 古い城2【古城】@(未聴)
[P3]C. プロムナード散歩3@(未聴)
[Tuilleries]3. テュイルリー3【テュイルリー公園】@(未聴) 27回の曲目解説によれば木管のみらしい。
[Bydlo]4. ビドロ4【牛車】@(未聴)
[P4]D. プロムナード散歩4@
[Balet]5. 殻をつけたひな鳥のバレエ5【殻をつけた雛鳥のバレエ】@最後は1回鳴く。
[Samuel]6. サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ6【サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ】@(未聴) 27回の曲目解説によればシュムイレ役はClらしい。
[P5]-
[Limoges]7. リモージュの市場7【リモージュの市場】@(未聴)
[Catacombae]8. カタコンブ8【カタコンブ(ローマ時代の墓)】@(未聴)
[mortuis]E. 死せる言葉によって死者と共に散歩5@(未聴)
[Baba]9. 鶏の足の上に建っている小屋9【ババ・ヤーガの小屋】@(未聴)
[Kiev]10.キエフの大門10【キエフの大門】@コラール1はSaxアンサンブル、コラール2はFl,Cl,Ob,Fgアンサンブル?
最終部のPercの入り方が独特(*)。

(*) TamTam以外は管楽器と同タイミングで鳴らし、TamTamはそこから少し(4分音符位?)遅れて鳴る。(大抵の編曲では、メロディー楽器群のロングトーン音長の丁度半分のところでドガシャンと鳴らす)
※Tr.pos.=Transposition(移調)列の表記は半音単位. -1は原曲より半音低い.

Performance-s

林光編「展覧会の絵」演奏歴
dateplayertitlevenuedescription
1992.07.04T18:30 森田利明 : ヤマハ吹奏楽団[浜松] 第27回定期演奏会 "彩": 第2部 浜松市民会館 (現: はまホール(浜松市教育文化会館)) 委嘱編曲, 初演(Premiere)
2000.06.10T18:00 山下一史 : ヤマハ吹奏楽団[浜松] 創立40周年記念 第35回定期演奏会: 後半 アクトシティ浜松: 大ホール VHS: Brain: BOVM-W-20008 ("Winds" vol.135; 2000.08.01)
CD: Private (非売品。34,35回が一緒になっているらしい)

ヤマハ吹奏楽団の創立50周年記念 第44回定期演奏会 (2010.04.24T15:00; アクトシティ浜松: 大ホール; 須川展也指揮) での「展覧会の絵」は、同団によると、林光編曲ではないとのこと。

Materials

演奏会一次資料

ヤマハ吹奏楽団 定期演奏会プログラム

当日プログラム提供:ヤマハ吹奏楽団

第27回定期演奏会プログラム
PROGRAM
PROGRAM
[略]
<第2部>
・「岩と鳥」(平成4年度委嘱作品・初演)……近藤 譲
・組曲「展覧会の絵」(初演)……M.ムソグルスキー 作曲; 林 光 編曲
 A・プロムナード
 1・グノームス
 B・プロムナード
 2・古い城
 C・プロムナード
 3・テュイルリー
 4・ビドロ
 D・プロムナード
 5・殻をつけたひな鳥のバレエ
 6・サムエルゴールデンベルクとシュムイレ
 7・リモージュの市場
 8・カタコンブ
 E・死せる言葉によって死者と共に
 9・鶏の足の上に建っている小屋
 10・キエフの大門
・お話 ……林 光
演奏後に林光氏のお話があったようだ。どんなお話をされたのだろうか、興味深い!
作曲者名の誤記は痛い。
曲目解説
★組曲「展覧会の絵」
[略]
 今回の編曲者である林 光氏は次のように語っています。
 『「展覧会の絵」の編曲といえば、ラヴェルによるオーケストラ版が断然有名だが、オーケストラ版だけでも、ほかに数十種を数えるという話であるし、そのほかギター・ソロからジャズ・オーケストラまで、じつにさまざまの編曲が存在する。 ムソルグスキーの原曲は、ピアノ音楽として後にも先にも係累をもたない、孤立した名曲で、文句無しの難曲のくせに「ピアノ音楽」からの足抜きを待ちのぞんでいるような風情があって、そんな <彼女> に魅入られて深みにはまる編曲家が、昔から絶えない。
 かく言うわたしもその一人であることを、彗眼にも見抜いた森田利明さんの、4年越しの、なんというか口説きの結果が、今日お聴きいただくものである。
 むかし、足抜き女郎の手引きをしたオトコは、失敗すればつかまってなぶり殺しにされても仕方なかったものだが、さて今夜の首尾はいかがなるものであろうか。
 なお、今回の編曲は、1954年ショット社刊の <原典版> を底本とした。 したがって、ラヴェル等が底本とした慣行版とは異なる部分があることを、付記する。』
[略]
(楽譜 Manuscript)
底本がSchott版ならば(というかピアノ譜であれば)[P5]があるはずであるが、この編曲でも(Ravel編と同様に)[P5]をカットしたようである。 そのあたりを知りたかった。
第35回定期演奏会プログラム
プロフィール: 編曲者 林 光
1931年東京生まれ。[略]
今回演奏する組曲「展覧会の絵」は1992年にヤマハの依頼を受けて編曲したものです。
曲目紹介: 組曲「展覧会の絵」M.ムソルグスキー/林 光 編曲 (文:田村文生)
[略] 本日お聞きいただく吹奏楽版は1992年に作曲家林光氏によって特別に編曲された「ヤマハバンド版」です。 この新版では、原曲のキャラクターが林氏独特の音色感覚で彩られることによって、ムソルグスキーの表現した世界がさらに生き生きと眼前に現れたかのようです。
[略]

Winds 135

吹奏楽のための月刊ビデオ・マガジン「Winds」2000年8月1日発行 Vol.135: 「楽器職人たちのチャレンジ・スピリット! ヤマハ吹奏楽団 ライヴ ~創立40周年・第35回定期演奏会より~」 (発行 ウィンズ編集部; 発売 ブレーン株式会社; 2850円 税別)
※同ビデオマガジンは一部が月刊ウィンズ復刻DVD-Rとして販売されているが、135は復刻されていない。

[P1][Gnomus][P2],[P4][Balet],[Kiev]のみ収録。

VHS字幕上の題名表記:
プロムナード系は題名表記なし。 「1. こびと」「5. 殻をつけた雛鳥のバレエ」「10. キエフの大門」

他収録:
長生淳「波の穂」(平成12年度ヤマハ吹奏楽団委嘱)
あつまれ!ウィンズ仲間!!: 平田中学校 吹奏楽部 (島根県)

楽譜からのぞく世界

林光「現代作曲家探訪記 ~楽譜からのぞく世界~」 (ヤマハミュージックメディア; 2013.03) の 「編曲をする作曲家たち」(p.221~) p.224~225に展覧会の絵に関する記述がある。 しかしながら連載のこの回は編曲より前の執筆なのか、自編曲には一切言及していない。
→下記の通り、1998年公開の文章であった。執筆が1992年以前とは考えにくい。

この書籍はヤマハの関連会社が発行していた「楽譜音楽書 展望」内の連載「楽譜からのぞく世界」をまとめたもので、連載順に並んでいる。
当該章「編曲をする作曲家たち」は連載3回分で、展覧会の絵に触れるのは前2回。

楽譜からのぞく世界(69)「回想 武満 徹」(1998年2月号; 第9巻第1号)
p.21
[略]
ムソルグスキーのピアノ曲「展覧会の絵」にあこがれる編曲師も、後を絶たない。 なのに、モーリス・ラヴェルの右に出るものが今のところ、無い。 編曲師ならびに編曲師の卵たちは不満だ。そりゃあラヴェルはうまいよ。でも、あれがムソルグスキーかね。 ぼくも同感だ。同感だというのはつまり、「あれがムソルグスキーか」というのにも、「ラヴェルはうまい」というのにも、ということだ。 (この項つづく)
本来は「編曲をする作曲家たち・その1」である旨「その2」で筆者から訂正あり
楽譜からのぞく世界(70)「編曲をする作曲家たち・その2」(1998年6月号; 第9巻第3号)
p.20
[略]
オーケストラ版「展覧会の絵」のスコアには、ラヴェルがとらえた「ムソルグスキーの新しさ」が書き込まれているが、そこまでだから、不満をいだかれても不思議はない。 けれども「そこまで」をあれだけみごとな細工に仕上げられては、もう降参するしかないだろう。 芸の世界はそういうものだ。 二流の細工が正しい解釈をふりまわしてもどうにもならない。 だれかがほんとうにラヴェルを乗り越えて見せてくれたら、それは世界史的大事件。 ぼくはその大事件を待ち望む。 「展覧会…」の話はこれで終わり。
[略]
楽譜からのぞく世界(71)「編曲をする作曲家たち・その3」(1998年8月号; 第9巻第4号)
関連する内容なし
「楽譜音楽書 展望」と連載「楽譜からのぞく世界」
連載回範囲掲載誌備考
第1回 (1988=S63年8月号; 第27巻第8号; 通巻第236号) から
第24回 (1990=H02年7月号; 第29巻第7号; 通巻第259号) まで
国内版外国版 楽譜音楽書 展望 (毎月5日発行) 連載第24回を最後に、当該連載を含む複数の連載が新創刊の「展望 特集号」へと移動。
第25回 (1990=H02年8月号; 第1巻第1号) から
第45回 (1994=H06年2月号; 第5巻第1号) まで
国内版国外[外国]版 楽譜音楽書 展望 特集号 (隔月1日発行) 1993年8月号と10月号はどちらも「楽譜からのぞく世界(43)」とあり重複している(勿論内容は異なる)。(確認した範囲では)以降で訂正・調整もされていないので、総連載回数は回数次+1である。

「展望 特集号」は1994年2月号を最後に「展望」へ移行。(*)
第46回 (1994=H06年4月号; 第5巻第2号) から
第84回 (2000=H12年10月号; 第11巻第5号) まで
国内版外国版 楽譜音楽書 展望 (隔月5日発行) 1998年4月号と2000年12月号は(当該連載は)休載。
以降未調査 (調査予定なし)

(*) 1994年3月以降7月位までは、発行者が「ヤマハ 音楽事業推進本部」から「ヤマハミュージックメディア 営業部」へと変更される移行期。
その中で「展望 特集号」は「展望」へ移行、元々の「展望」は1994年2月号を最後に「Klaviatur」(隔月発行?)へ移行する。
奇数月と偶数月で交互に発行する形になったのかも。2誌で名前がクロスするのは非常に紛らわしいし説明が面倒くさい。

Reference