〜〜 エッセイ『旅は続く』 September, 2003 〜〜



去る8月12日、午前10時ジャスト、無題のEメールが、弁護士事務所から届いた。私は、現在勤務しているSun Microsystemsを通じ、永住権を申請していた。その第1段階、アメリカ労働省に外国人雇用許可(AEC)申請中で、2年近く、足止めされていた。「やっと下りたか!」と、メールを開き、読み始めると、内容が違うのである。「えっ、なに、これ?」 AEC却下! すこし、青ざめて、薄笑いが出た。

 昨今のアメリカ経済、2000年にNETバブルがはじけた後、特にここ、シリコン・バレーでは、失業者で溢れている。私の友人・知人にもあおりを受けたものが数人、1年経つのに、まだ再就職の便りを聞かない。AEC却下の理由は、アメリカ経済の状態、Sunの2回のリストラ、要するに、アメリカ人をもっと雇え、ということだ。

 仕方ない。失業か? 日本へ帰国か? 帰ったら、どうするか? こんな障害で、働けるのか? ここまで、やってきたのに、また落とさせるのか? もう本当に、笑い泣きである。古い親しい友人に送ったメールには:
ところで、ニュース。
来年3月で、失業します。今は、就労ビザで働いていて、永住権申請していたんです が、不況のため、却下!
アメリカを去らなければ、なりません。一難去って、また、一難です。
まあ、どこでも、生き抜いてやるぞ、ッて。
でも、疲れたーって、感じ。 まだ、生きていなくては、なりませんか、なんてね。
と、破れかぶれ。これは、ユーモアで書いたつもりだが、せっかく、SunのEngineeringで3年、仕事を覚え、職場の雰囲気を味わい、環境を整え、やる気になっていたときに…。よりによって、13年住んだアメリカの政府から、斬られるなんて。まあ、でも、これは、私の思い込みでしかない。時機が遅かった。I just missed the boat. ということでしかない。

ボスに話す。日本のSunで、働けないかということを、示唆される。でも、次には、日本で仕事したら、アメリカでの将来のポストは、約束できないという。チームとしては、head count(頭数)が減るのだから、要員を補充するかもしれない。補充したら、私の入るスペースは、無くなる。戻れない。学生に戻って、大学院へ進むか? 受かるのか? 資金は? 今の貯金、3年持つかな? 卒業後の再就職? うーん。ギリギリの生活で、切り抜けられるか? いろいろコースを考えた。ゲームを楽しむように。アメリカ政府に異議申し立てて 助けてくれる人もいた。だけど、時間掛かるかな? また却下だったら、本当に失業か? ほかに、別のビザで、アメリカで仕事を続けさせくれようとした人もいた。

ボスから、別の提案が出された。イギリスで働いてみないか? 今、私は、お客さんから持ち込まれた問題、主にバグを解決する仕事をしている。中東・ヨーロッパ地域は、イギリスの部隊でカバーしている。仕事は全く同じである。メールのやり取りも頻繁で、他人ではない。全世界を網羅したチームとしては、head countは、減らないわけだから、Come Backの可能性は高い。1年、アメリカの外で過ごせば、また労働ビザは取れる。景気が回復すれば、永住権への道もある。

では、イギリスで、本当に、自立生活が送れるだろうか? 引越しは、家族や友人の協力なしにはできないのだが! 調べ始めている。今のところ、ロンドンは、雪が降らないこと。歩道には、スロープが付いていることがわかった。雨は多いにしても、年間を通じ、車椅子の走行は可能だ。食料品の買出しが可能、食っていけそうだ。問題は通勤だ。地下鉄へのアクセスは無いと聞く。バスも期待薄い。車椅子の送迎があるというが、Internetの検索では、見つからなかった。救急車が代用だとか!あった。でも、もし、ロンドンまでついてきてくれて、しっかりサポートしてくれるパートナーがいたら、…毛皮のコートくらい、何枚でも、買ってやるのに。とか、すこし思った。夢の中のお話だが。(笑)

その一方、友人の紹介で、イギリスの福祉に詳しい先生にコンタクトを取ったりしている。したのようなウェブ・サイトも見つけた。
   http://www.scope.org.uk/
このサイトは、脳性麻痺中心の団体で、またスキーやエベレスト・トレッキングといったプログラムもあるようだ。不謹慎な遊び人の私は、仕事の事は、置いといて、つい、にやけてしまう。家族も、ヨーロッパに拠点ができることを、喜んでいる。これで、父達がカリフォルニアに住めば、日の沈まないファミリーだ。まあ、いつも、誰か、星空のもと、居眠りしている家族ともいえるが。

考えようによっては、イギリス行きは、島流しではない。栄転である。オファーを受けることにした。自分でいうのは、恥ずかしく、気が引けるのだが。この不況の中、会社は少しでも、人員を減らしたいだろう。斬ることは簡単である。ボスは、「君の技術力を、評価しているんだよ。そうでなければ、話はぜんぜん違ってくるはずだ。」 と言った。それが、私には、涙が出るほど嬉しい。3年、ソフトウェア・エンジニアリング部門で働いてきた。同僚の人たち、周りの人たちの大きいな助けがあって、実現できたことだ。そして、いま、技術者としての1つのゲートをくぐれたような気がする。

しかし、何もまだ決まっていない。決まったことは、移動のターゲットを来年2月の末にしたことだ。英国のWorking Visa、住環境の模索と構築、通勤手段の確保など。一つのExpedition(冒険)と捉えることもできる。また、諸事情で、話が消えてしまうこともある。イギリスのSunでは、自動ドアなど、車椅子のアクセスを確保するために、改造してくれるようだ。ありがたい。

旅は、続く。好むと好まざるに関わらず。それが、私の旅なのであろう。私もそんな旅が好きなのだ。

追記:イギリス・サンがある場所は、ロンドンから西に30KMのBagshotという町です。高速3号線が通っていて、近くにCamberleyという大きな町があるようです。どなたか、イギリス、ロンドン近郊に詳しい方がいましたら、掲示板か、私のほうまでメールください。できるだけ、情報が欲しいのです。
また、移転の進行状況は、随時、このサイトで、Updateしていく予定です。楽しみにしていて下さい。


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