衛星の淘汰・統合時代(国際標準技術衛星の誕生)
       
 (エアワールド2007年7月号抜粋):詳細は雑誌「エアワールド2007年7月号」をお買い求めください

本稿では、先月号に引き続き、日本の国際的地位回復も含め、気象・環境観測衛星時代に向けて日本が狙うべき戦略を考えてみたい。

◎標準衛星機(デファクト・スタンダード)が確立

 今後の衛星時代は、技術開発偏重主義よりも早く打ち上げてデータ取得(一番乗り)した者が勝利する時代だ。ニーズに応じてセンサーを適時投入する発想の方がニーズ対応的に優位で国際競争力もつくからだ。今後は、衛星を1機、1機ほぼゼロから開発していた時代は終わり、開発製造期間短縮とコストダウンの要求から、標準衛星機が生まれてくるだろう。

静止通信放送衛星の世界では標準衛星機がすでに確立されている。この分野は“商業化”がなされており、経済原則の観点から国家宇宙機関ではなく、民間企業主体で開発がなされている。大手衛星メーカーであるEADS Astrium、Alcatel Alenia Space、Boeing、Lockheed Martin、Space System Loral社は各社それぞれ、Spacebus筐体、Eurostar筐体、BSS-702筐体、A2100筐体、1300シリーズ筐体等を保有しており、その筐体ベースに商業用の通信放送衛星や軍事通信衛星を製造している。この筐体の基本は1990年代に各国の宇宙予算をベースに開発されたが、近年では筐体開発というよりも、個別の技術(電気推進・電池・電子機器等)へ開発予算が投じられるようになり、ETS-8やWINDSのように技術開発のためと称してわざわざ衛星を作るというトレンドではない。技術開発は必要だが、通信放送衛星の世界は商業ベースが基本であり、旧NASDA路線による従来体制の延長というやり方はもう時代外れであり、旧NASDA(現JAXA筑波の一部)は歴史的に役割を終えたと言える。

 一方で、気象・環境衛星時代へ向けて地球周回型衛星にも標準衛星機(デファクト・トスタンダード)が確立されつつある。これはJAXAのような一品工芸品的(専用設計・専用製造型)な衛星ではなく、拡張性・汎用性を有している。過去の紙面で紹介したイギリスのTOPSATはMicrossat-100筐体、アメリカのTACSATは新世代型の筐体設計思想が取り入れられ、フランスのMYRIADE筐体バスなども数々の衛星を打ち上げている。これら標準衛星機は衛星のバス筐体系(電源系、構造系、姿勢・推進制御系、熱制御系、通信コマンド系)をほぼ固定して、望遠鏡やレーダーなど個別のセンサー(搭載ミッション機器)を載せかえれば使用可能なコンセプトで製造されている。

 具体的に言えば、2007年3月号で示したMYRIADEバス筐体やTACSATは過去述べたため詳述しないが、先月号で説明したOCO(二酸化炭素観測衛星)やA-TrainのCLOUDSATなどがそれにあたる。まずOCOはLEOSTARバス筐体が使用されている。このLEOSTARはLEOSTAR-1及びLEOSTAR-2と2種類あり、地球観測衛星ORBVIEWシリーズ(一部商用事業化)やNASA宇宙科学ミッションSORCEやGLORYなどにも使用されている。LEOSTARは衛星数で言えば14機(SMEX 9、SMEX-7、OCO、OrbView 4、SORCE、ST-8 、Glory、OrbView 3、STEP 0、STEP 1、STEP 2、STEP 3、STEP 4、TSX-5)ある。次にCLOUDSATではBCP-2000筐体バスが使用されており、他にもNASAのICESAT、高解像度地球観測衛星QuickBird(商業化)、将来打ち上げ予定のNPPやSBSS-1を加えれば、7機ある。対するフランスは、MYRIADEに加えてPROTEUSバス筐体も有している。これは、先月号で紹介したCalipso(雲・エアロゾル観測衛星)に加えてNASAとCNESの協調ミッションJason-1、Jason-2、ESAの土中水と海洋塩分を観測するSMOS、天体望遠鏡COROTなどに加え、欧州測位衛星システム“ガリレオ試験衛星(IOV)”でも採用されている。もしガリレオ衛星群で本格採用されれば、PROTEUS筐体は35機以上のベストセラーとなる可能性もある。さらにフランスは、今後の標準衛星機(デファクト・トスタンダード)時代へ備え、「125kgのMYRIADE」と「500kgのPROTEUS」に加えて、50kgクラス級の筐体バスと1000kg付近の筐体バスを構築する方針だそうだ。つまりフランスは4つの筐体バス製品群を揃える事になる。このように周回型衛星も静止衛星と同様に標準衛星機(デファクト・トスタンダード)が存在し、世に出始めているのだ。つまり衛星を1機づつセロから作っているわけではない。


LEOSTAR(Orbital Science)                BCP-2000(Ball Aerospace)

MYRIADE         2機のPTOTEUS(SMOSとJASON-2)(出典:CNES)

◎衛星の世代交代

 これら衛星を標準化している背景には、標準化を図ることによって「製造ラインの安定」、「コストダウン」、「パーツの量産調達」、「顧客の信頼を得る」というメリットがある。また標準化をすれば商用としても販売が可能になる。その証明としてフランスは、MYRIADE筐体がフランス・中国との共同ミッションやアルジェリアAISATで採用され、台湾のFORMOSAT-2ではLeostar-500-XO筐体バス(EADS-Astrium社)が商業販売に成功している。また、カナダでも合成開口レーダー衛星RADARSATがあるが、RADARSAT-1はBCP-4000バス筐体(Ball Aerospace社製)、RADARTSAT-2はPrimaバス筐体(イタリアのAlcatel Alenia Space)が採用されている。つまりバス筐体を自国以外へ販売しているのだ。しかしコストと性能のバランスを追求する時代にもかかわらず、JAXA(旧NASDA)は大型衛星を開発しては設計寿命をもたずに短期間で故障・廃棄している事態を繰り返し、「目的・費用・効果のバランス」が非常に悪い衛星を作り続けている。「技術開発を目的にしているから」という言い訳が聞こえてきそうだが、逆説的に見れば「競争力のつかない技術開発」をしているとも言え、「信頼性向上を言って膨大な宇宙予算を消費した事実」は見ないフリをしている。

 だが、そのようなやり方が通じなくなってきている。一品工芸品型の衛星製造ならば、国家宇宙予算で開発している背景もあり、例えトラブルを起こしても「新しい衛星だから仕方がない」と言って“責任逃れ”ができるメリットがあった。ETS-8故障やADEOS故障がいい例だろう。一千億円以上の損失を出しながらJAXAはまともな反省会を開催していない。これは1990年代までは世界共通だったかもしれない。しかしその“甘えた体質”では国際競争で勝利できないという考えがヨーロッパとアメリカで理解され、宇宙企業を競争力のある企業へ育成させる政策が必要であると認識された。その分析・政策に基づき、アメリカやフランスは周回型衛星の筐体バスを開発、様々なミッションへ対応できるバス筐体を確立、地球観測・宇宙サイエンス・工学実験・軍事ミッションへ対応しながら“衛星製造の短期化”や“製造ライン維持”や“量産化”を遂げている。

 しかし日本は世界第2位の宇宙予算を有しながら、筐体バス流用型衛星というものはほとんど存在せず、いまだに専用設計・専用製造型で高価な衛星が製造され続けている。これでは国際競争力がつかない衛星メーカー(三菱電機やNEC東芝スペースシステム)になってしまうのは、当たり前と言えるのではないだろうか?よって日本も国際競争力のある標準衛星機(デファクト・スタンダード)を育成する必要があるだろう。この戦略の詳細はあとで述べたい。


EADS-ASTRIUM社のLEOSTAR筐体バスの派生例(出典:SSC00-IV-2)

◎キーパーツ(重要部品)とモジュールの充実を(部品産業育成)

今後は、衛星のキー・パーツ(重要部品)やモジュールを充実・確保しないと国際競争では勝てないという理解が宇宙先進国にはある。このキーパーツとは、衛星を作動させる上で最低限必要で重要な部品を示す。具体的には太陽電池、スタートラッカー、リアクションホイールや磁気トルカ、推進装置(スラスター)、バッテリなどだ。

「太陽電池」

 (エアワールド2007年7月号をご覧ください)

「スター・トラッカー」

 (エアワールド2007年7月号をご覧ください)

「リアクションホイール」

 次にリアクションホイールだ。この装置は内部に回転ゴマが仕掛けてあり、その回転ゴマの回転数を変化させ、その加減速によるトルク反作用で衛星本体を回転させる装置だ。これは先のスター・トラッカーとの連携で使用されるものであり、姿勢を検知したスター・トラッカーの情報から姿勢修正の必要があれば、リアクションホイールが作動・衛星を回転させて任意の姿勢に変更することができる。つまり衛星の姿勢を変化させる上でスター・トラッカーとリアクションホイールは重要な関係と言える。よってスター・トラッカーの性能が悪ければ、リアクションホイールの仕事量が増えるため、これが“大きな負荷”となって衛星全体の寿命を早める結果へとつながる。このように衛星バス筐体のキーパーツは全体のバランスを考慮し、1つの部品へ負荷が集中しないよう性能バランスを考慮して設計する思想が必要で、同じリアクションホイールだから変えてもいいという発想ではいけないそうだ。

 1つ事例を考えると、2007年3月に発生した情報収集衛星が1つの教訓になるだろう。情報収集衛星は設計寿命5年をもたずして4年で運用終了へ追い込まれたそうだ。この衛星はUSEFが主導して製造したSERVISバス筐体が流用されたそうだ。しかし同衛星は当初の基本形態であるパーツをやめて外販を購入、性能バランスを重視せずに衛星へ組み込んだ結果、それが災いして寿命を早めて運用終了に追い込まれたのではないか?と考えている。

 また、“はやぶさ”のリアクションホイール故障は上記の情報収集衛星搭載型と同じであり、国産では高価だったため予算措置上安価な外販モノを購入したとの噂があるが、それは正確ではないようだ。はやぶさへ搭載されたリアクションホイールは、軽量化要求が背景にあるかもしれない。故障の背景を聞くと、リアクションホイールメーカーは、“ISASという先進的宇宙機関に採用される“ことが会社としてのプレステージ上昇に繋がるため、軽量化による改造費を自己負担で実施したそうだ。ISASの予算がないことはあらかじめ分かっていたため、既存リアクションホイールで信頼性のあるものを改造したのだろう。だが、それが裏目に出てしまったのではないか?ある宇宙技術者の指摘では「軽量化のための材料を変えたことが災いし、何らかの理由でリアクションホイールの回転ゴマにクラックが入り、重心がズレたことで回転軸に負荷がかかって故障したのではないか?」という意見を聞いた。なぜこのリアクションホイールメーカーが選択されたのか背景を徹底検証する必要がありそうだが、これが災いしてはやぶさミッション遂行が危機的状況に陥っているのは事実である。このように「外販モノはブラックボックスだからダメ」というナショナリズム的で”一方的な“考えではなく、献身的にもISASへ協力してくれたリアクションホイールメーカーの実態を理解したうえで、「キーコンポーネントの国産化育成をすべし」という考えをもつほうが正しい見方だろう。

「推進装置(スラスター)」

 (エアワールド2007年7月号をご覧ください)

 今後は、輸入バルブ体制を脱して民生品や原子力関係等のバルブを取り入れながらコストダウンを図る必要がある。また、希少材料の低減を目標に将来の大型ロケットエンジンへフィードバックできる基礎研究とマイクロスラスターの研究も必要だろう。

「電池」

 (エアワールド2007年7月号をご覧ください)

 


太陽電池パネル(Dutch Space)    リアクションホイール(Goodrich)


    スタート・ラッカー(USEF)           スラスター(エネルギア)


リチウムイオン電池(EADS)



 以上、上記衛星の心臓部(キーパーツ)は国産化しておくこと重要で、“いいものを見分ける眼”が必要だろう。しかし、外販を購入する背景には国産モノが高すぎるという問題が存在する。これをクリアするには万国共通で「量産型衛星を作るしかない」というのは当然の論理だ。これら背景のため、フランスやアメリカがMYRIADE、PROTEUS、LEOSTAR、BCP-2000、TACSATなど、いち早く衛星標準筐体を作り、リアクションホイール・スタートラッカー・スラスター・電池などのキーコンポーネントを育成しながら「量産衛星でメーカーを育成」させながら、「自国が宇宙ミッションで一番乗り」し、組めるところとは組む発想で「技術が空洞化しないよう技術安全保障体制」を構築している。しかし日本では標準衛星機がない。内部では“ある”と聞こえてきそうだが、国際的認知は“殆どない”と言える。唯一あるとすれば、ETS-8やMTSAT-2のDS-2000筐体バスだろうが、商用衛星バスとして国際的評価は低く、ETS-8の故障で前途多難だ。またJAXAの将来計画も量産衛星には予算上無理ともいえる大型衛星計画を平然と発表している。これら根本には、旧NASDAの実態は「丸投げでいいものを見分ける眼がないからだ」という指摘がある。キーパーツが輸入品で経験数も少ないため、見かけ上は標準機が出来ていても、大手5大衛星メーカーからは“我々の競争相手ではない”と言われてしまう状況だ。逆に低予算で数をこなしてきたISASは小型ながらも手弁当でこなしてきたため技術があると言える。

◎衛星標準機開発は競争力強化政策でもある

この衛星標準機開発動向を詳細に考察すると、衛星を製造できる企業は多々あるが、大きく大別すると2つある。それは

・ ほぼゼロから筐体バス(衛星標準)を設計・製造出来る会社

・ 外販モノで標準バスをアッセンブリする会社


である。前者は“衛星のパーツ製造”から“全体システムを作りあげる技術”を根本から有している企業であり、後者はパーツ製造が十分にできず外販(買ってくる)モノを組み込むタイプだ。前者を挙げれば、ボーイング社、ロッキードマーチン社、Alcatel Alenia Space社、EADS Astriumだろう。これら企業は衛星を作る技術的素地を十分有している企業であり、もし新しい技術が登場しても柔軟に取り込める思想や技術を有している企業と言えるだろう。

 しかし、日本の衛星メーカーは後者にあたる。その背景には、日米宇宙協定とスーパー301条の制約から、日本は国際競争力ある衛星標準機を開発させずに量産概念がない専用設計・専用製造型衛星を奨励してきたため、部品メーカーも量産できない状態が続いた。そしてメーカー側も一品工芸品衛星という技術試験衛星という名のもと、できるだけ利益を出すために、“コスト”と“時間”のかかる手法で大型衛星製造へ走り、部品は“国内一品製造で高コスト部品”より“低価格の輸入品”を購入という路線で近年、衛星が作られてきた。このため、ゼロから衛星を作る能力は失われ、JAXA-ISASではまだ辛うじて保たれているものの、旧NASDAは外販モノを組み合わせて取り纏める方式で実施、膨大な予算を消費している割に“かけたコストに見合わない成果”が出続けている。これが、ADEOS、ADEOS-II、ALOS、ETS-8故障の遠因ともいえる。そしてその路線を変更するつもりもない。

 海外からのコスト分析によれは、通常100という予算でできる宇宙システムが日本では150という50%UP予算でないと製造できない体質となり、150の予算で実際に製造すればコスト超過で200になっているという、つまり国際的比較では倍掛けで出来上がっているそうだ。その現行での悪循環の実例がGXロケット、情報収集衛星、国際宇宙ステーション、HTV、H-2Bなどだ。旧NASDA(=現JAXA)体質がこの方針転換を変更する対応は見られず、宇宙開発委員会も“出来レースと新聞で指摘”されているように、諮問機関として機能していない。


かけたコストに見合わない成果(左からADEOS、ADEOS-II、ALOS、ETS-8  出典:NASDA、JAXA)

 だが、それを建て直すのが宇宙基本法であると思われる。JAXA(旧NASDA方式)体制は国際的に通じないため、このままの路線を走れば、日本の衛星・ロケットメーカーは国際競争で完全に脱落するのは明らかだろう。一部の噂では、日米宇宙協定がこれら事情を考慮して改定をしているらしいとの話があるそうだ。事実かは分からないが、もしそうならば日本の宇宙体制が新たな次元でやり直すチャンスが到来していると筆者はみている。しかし残念ながら国際競争についていけない宇宙企業は淘汰され、歴史的役割を終えた宇宙組織は解体・改編することになるだろうが、日本の一部の宇宙企業や宇宙組織は国際舞台で戦える基盤技術を有しているため、旧NASDA体制の柵を脱して“育てるに値する宇宙企業を育成”する体制が今後必要だろう。そして公共事業型宇宙体制を脱し、国際舞台で戦える宇宙企業を育てるべく、フランスやアメリカの事例にならって衛星標準機を作り、「製造ラインの安定」、「コストダウン」、「パーツの量産がかけられる」体制とゼロからバス筐体を製造できるような「創意工夫が出来る企業」を育成する政策が必要だ。これが出来ない限り、キーパーツ(重要部品)を作る部品産業も育たないため、日本の本質的な宇宙先進国復活はあり得ないと言える。

◎衛星標準機に必要な思想

 しかし、闇雲に衛星標準機を作るのは過去の失敗を繰り返すだけだ。JAXAならば喜々としてやりそうだが、国際動向を見極めながら日本として段階的に構築する方法が望ましい。ではどこを目指せばいいか?

 まず静止衛星における筐体バスは、日本は敗北している。さらに静止通信衛星は商業ベースで成り立っており、長寿命化と大型高性能化も進んだ上に、地上光ファイバー通信の発達による需要減少で供給過剰となっている。今後は移動体通信に活路を見出すことになりそうだが、通信放送衛星の開発を国が大々的に支援する時代は終わった。このため、この市場へ参入しても困難を極めると言えるだろう。また、JAXA(旧NASDA)ベースで作られたDS-2000筐体バスとも言えるETS-8は、送信装置の故障で通信衛星として機能できない事実が判明してしまった。故障箇所の切り離しが出来ないのは設計そのものに問題があり、商業衛星の世界では莫大な保険金(百億円単位)が支払われる事態だ。過去のH-2Aの打上失敗による遅延も一因であり、JAXA(旧NASDA)主導の静止衛星筐体バス開発は「技術開発・実証・実用(商業)戦略のバランス」が失敗したと言え、もし継続するにしても別の次元でやり直す必要があるだろう。以上から静止衛星筐体バスは、国際的に出遅れており、小型静止通信衛星もOrbital ScienceとOHB Systemがトップランナーで、今から回復しようにも非常に困難と判断している。

 では周回型衛星ではどうか?これは今後の気象・環境観測衛星時代を考えれば可能性があると考えている。しかしゼロから衛星標準機を開発していては間に合わない。またJAXAが掲げる地球観測衛星はシリーズ化を謳ってはいるが、国際トレンドからは大きく外れている。ましてや現状のJAXAならば相変わらずゼロから開発して、競争力のつかない公共事業を実施して役に立たない気象・環境観測衛星を作ってしまうだろう。以下を見ていただきたい。

 これは、地球観測衛星における標準衛星動向を表したものだ。過去に遡れば他にもまだたくさんあるが、ここの表にある標準衛星筐体は、各国の周回型衛星開発動向で特に重用され、先進的でトップランナーの衛星筐体バスと言える。(衛星筐体バス一覧表はhttp://www.skyrocket.de/space/sat_bus.htmを参照)

 過去の紙面でJAXA衛星と比較したEROS-BはOFEQ筐体バス、JAXAのGOSATよりも軽量な二酸化炭素観測衛星OCOはLEOSTAR筐体バス、能動型センサーのライダーやレーダーを搭載したCALIPSOやCLOUDSATはフランスのPROTEUS筐体バスやアメリカのBCP-2000筐体バスが使用されている。これを重量クラス別に並べ替えると、150kg級、500kg級、1000kg級、2000kg級と大別され、それぞれ住み分けが存在することが分かる。各国はそれぞれ能動型・受動型センサーの開発にあわて筐体バスへ組み込んで打ち上げているのだ。このような流れは前々からあったが、近年では「目的・費用・効果のバランス」から上表らの筐体バスが気象・環境観測衛星の世界でトップランナーとなりつつある。また開発メーカーもフランスはAlcatel Alenia Space社とEADS Astrium社という大型通信衛星メーカーが開発している。対するアメリカはLeoStarがOrbital Science社、BCP-2000やBCP-5000がBall Aerospace社、TACSATは発展途上の段階のため、確定はしていないがTACSAT-2を開発したMicrosat System社としておこう。つまり、大手衛星メーカーのBoeing社やLockheed Martin社は参加していない。だがOrbital Science社やBall Aerospace社やMicrosat System社の社員は、Boeing社(旧Hughes衛星部門)やLockheed Martin社やNorthrop Grumman(旧TRW衛星部門)社出身技術者が設立したことも事実であり、突然生まれた会社ではない。アメリカでもヨーロッパでも大手衛星メーカーの技術者が周回型衛星のバス筐体を作っていると分析できる。

 最近の動向ではフランスはMYRIADEとPROTEUSバスに加えて50kgクラスと1000kg級の筐体バスへ着手し、アメリカでも大型気象・環境観測衛星NPOESSの就航(2020年頃)に備えてBCP-2000筐体バスでNPPと呼ばれる「NPOESSのテストベッド衛星開発」へ着手しているそうだ。つまり、各重量級へ備えて筐体バスを着実に開発しているのだ。

 ここで1つの危機意識が生まれる。それは日本の動向だ。地球観測衛星を開発するJAXA(旧NASDA)では、上記の表へ“柔軟に対応できる筐体バス”がない。表に示すUSERSとSERVIS筐体バスは経済産業省管轄化下のUSEF(財団法人 無人宇宙実験システム研究開発機構)が開発したもので、JAXAが開発したものではない。USEFは少数職員で構成され、開発は基本的にメーカー主体で監視要員として適時USEF職員に加えてISASや退職した研究者及び大学の先生を投入、指導にあたっている。アウトソーシング型で開発した衛星と言えるだろう。しかしJAXAの近年における地球観測衛星及び防災衛星計画は2000kg級以上の大型衛星ミッションを数々発表している。世界で活躍しつつある次世代筐体バスよりも大型なのだ。それには理由がある。JAXA(旧NASDA)は、膨大な職員を抱えているがセンサー独自開発が極端に乏しく、衛星の多くは海外から旧式パーツを購入して組み立てて体裁を整えているため、トップランナーの気象・環境観測衛星と比較して高コスト・旧式パーツの外販購入型衛星で大型となっているのだ。さらに丸投げ主義が横行し、いい技術を見分ける眼がない。このまま、文部科学省とJAXAの審査不全開発を進めれば、日本が国際協調へ対応できない気象・環境観測衛星時代を迎えてしまうのは分かるだろう。

◎センサー開発も軽量化・競争力向上も急務

 また近年の気象・環境観測衛星は、センサー技術の高性能化とデジタル化により小型・高性能化が進んでいる。これは新たなセンサーの開発競争が勃発しているように見え、パンクロ(白黒)、マルチスペクトラルセンサーの開発競争からレーダー・ライダー・ハイパースペクトラルセンサの開発競争が勃発するように思える。そのセンサー基本技術は大気物理学や宇宙科学ミッションから派生してくるとのことで、NASAやESAらが月探査や火星探査に様々なセンサーを送り込んでいることがその1つの答えである。

 また、すでに確立したセンサーも軽量化や電子技術の世代交代も必要だ。例えば、マイクロ波放射計AMSRが急務かもしれない。このセンサーは雲、降水、海面水温、海上風速、海氷、積雪、土壌水分など、水に関する観測が可能なセンサーであり、AMSRシリーズとして日本は保有しており、NASAのAQUA衛星へ搭載されている。しかし、同様のセンサーは海外でも開発されている。その性能比較をJAXAは公表していないが、NASAが公表している。それによれば、日本は性能バランスが悪いといえる。なぜこれだけ性能の割には重過ぎるのか聞くと、海外と比較して在来技術で製造し、デジタル化やインターフェース等の技術の世代交代について行っていないからだそうだ。また、海外の能動型センサーの試験衛星と見られる衛星筐体バスは、500kg〜1000kgの間で推移しており、抜本的にAMSRの改良を実施しなけば、今後国際協調の舞台として日本が搭乗拒否されるかもしれない。だがJAXAはAMSRの国際レベル低下を隠して、世界トレンドから外れた重量の大型地球観測衛星計画推進を発表している。AMSRを今後継続するならば、現実を見ずに体面だけを整える方式はやめ、徹底した戦略建て直しが必要だろう。

   同型センサーの実力差(日本はAMSRシリーズ) (出典:NASA) 



   アメリカの小型センサー開発 (出典:NASA)


気象・環境観測衛星は宇宙科学ミッション技術とリンク(NASA)


ICESATとCALIPSOのライダー開発(NASA)

 
NPP搭載マイクロ波サウンダー(NASA)  NPP搭載赤外光学サウンダー(NASA)

◎日本の気象・環境観測衛星戦略は?

 よってJAXAの地球観測衛星や防災衛星計画は国際動向から見ればもはや失格だ。シリーズ型をやろうとする姿勢は賞賛できるが、国際動向から見ればその重量では競争力が無く予算的にもかかり過ぎる。まさに“大男の殿”になりかねない。

しかも旧NASDA衛星の設計寿命は平均すると18ヶ月(3年)程度で長持ちしない。信頼性向上と称して膨大な予算を費やしている割にこの状況だ。これは衛星メーカーである三菱電機やNEC東芝スペースシステムの将来が危うい。よって短期的にはUSERSとSERVIS筐体バスを活用して短期的に乗り切る戦略を提唱したい。これら筐体バスを利用すべき理由は7つある。それは

・ ミッション機器が載せ換え可能な拡張性を有している

・ 曲がりなりにも情報収集衛星で採用され、国内で最も量産されている

・ センサーの小型・軽量化を段階的に進める観点で1000kg級から始めたほうがいい

・ USERSは場合によってはセンサー回収ミッションが可能

・ 国際協調で搭載電子機器のキャッチアップを実施可能

・ 書類ではなく衛星数を打上げて信頼性向上を図れる

・ JAXA(旧NASDA)計画よりも低コスト


という観点だ。まず、USERSとSERVISは短期的にセンサーを搭載して実証するには適した衛星筐体バスだ。ただ、情報収集衛星への適用は選択のミスでもある。カローラの筐体バスにフェラーリの仕事をさせたのだから故障して当然だろう。余談だが偵察衛星の値段が高いのは製造管理の関係から、モジュール製造で3基製造が最低とされ、センサーは先行(5年)開発で、打ち上げは既存手段(新規は利用しない)が原則であり、日本は冒険をし過ぎた。偵察衛星は他と違い、衛星心臓部(キーパーツ)は1対でテスト基準が強化されているため、設計思想・製造仕様・統合思想が全く違う。これをUSERSとSERVIS筐体バスへ当て込むには無理があったのだ。USERSとSERVISは次世代・新世代の宇宙実証機として有望ではあるが、偵察衛星のような筐体バスへは向かないのだ。

 国際動向から見てもUSERSとSERVISはやや大型だが、PROTEUSやBCP-2000のような拡張性・高性能の筐体バスを一足飛びに目指すにはハードルが高い。よって気象・環境観測衛星に対応できるセンサーなどを搭載して、実証する体制がいいだろう。また、これは国際戦略も視野に入れている。現在、人類を延命させるために打ち上げている気象・環境観測衛星のトップランナーはフランスとアメリカだ。この仲間に入るためにはADEOSシリーズの失敗から容易ではない。だが、彼らの有する125kg級や500kg級を利用する戦略で日本はUSERSとSERVISを提供、各国センサーの試験を担当、アライアンスへ加わる方法があるかもしれない。相手にとってのメリットはUSERSを全面に押し出せばいい。

 USERSは回収カプセルを保有している。よって「あなたの国の搭載センサーを宇宙実証試験後にお返しします」というやり方が考えられないだろうか?当然米仏には開発能力があるが「宇宙で早く実証したほうが勝利する時代」ならば、わざわざ新調達せずに日本と組んだほうが手っ取り早いというメリットがある。フランスやアメリカのセンサーは現在開発途上の段階で宇宙実証したい希望は多々ある。もちろん日本国内にもISASの理学研究者のニーズもあるだろう。そこへUSERSを提供し、テストベッド屋として打上げ、宇宙空間で晒されたセンサーを回収するのだ。通常、宇宙空間へ打ち上げられたセンサーは使用後廃棄するため、どれぐらい劣化したか運用時のデータから予測できるがはっきりとは分からない。回収できればより信頼性の高いセンサー開発に繋がる。

   
               USERS                       SERVIS(USEF)

 USERSのカプセルの設計変更が成功のキーとなりそうだが、国際交渉する価値はあるだろう。ぜひとも将来設立されるかもしれない宇宙防災機構で検討してほしいものだ。経済産業省・国土交通省(気象庁)・環境庁やISAS理学研究者(J-JPL)などのアライアンスで進めるのもいいだろう。文部科学省が入れば、既存の大型・高コスト・戦略の乏しい計画を推し進める危険性がある。抜本的改革が内閣府宇宙戦略本部主導で望まれる。そしてUSERSやSERVISバス筐体でセンサー開発・搭載を進めながら気象センサーの国産化技術向上と、国際アライアンス時代への対応、将来の先進的衛星筐体バスの発展へ繋げる道筋でメーカー育成をする戦略を期待したい。


国際アライアンスによるセンサー実証と解析及び段階向上(NOAA)

◎衛星メーカーが国際競争で瀬戸際に

 この考察には海外衛星メーカーの危機意識がある。実のところ地球観測衛星は通信放送衛星と同様に商業化の波が出てきている。「信じられない」という意見が大勢を占めるだろうが、コーヒー・バナナ・じゃがいも・トマト・麦・米・水・砂糖を栽培もしくは購入する国際企業は、地球温暖化による産地移動・産地開拓・発育状況データ分析のため、独自に衛星を保有しようとする動きがある。従来はNASAなどのデータを購入すればよかったが、小型高性能衛星の登場やセンサー技術の発展で、調達コスト的に採算が合うようになりつつあるようで、ライバル企業に手の内を見せないためも、独自で衛星を保有し、特定の作物専用の観測センサーで観測しようとする動きがあるそうだ。このため、第3者を介して小型高性能衛星メーカーへこっそり出資する動きがある。詳細は述べられないが、当然ながらTOPSAT・MYRIADE・TACSATは競争力が高いと言える。またセンサー開発能力をある企業も優位に立てるだろう。この動向に備えて戦略的に日本のメーカーを育成させて国際水準に留まらせなければ、静止通信放送衛星競争の二の舞になる可能性が高い。

 また今後は、メーカー同士のアライアンスが進み、量産ラインメーカーにならなければ生き残れない時代となる。静止通信放送衛星の世界では5大メーカーでも供給過多であるが、周回衛星の世界でも終末戦争が起きているとも見てとれ、デファクト・スタンダード製造会社にならなければ、市場淘汰される時代がやってくる。三菱電機やNEC東芝スペースシステムも今のうちにアライアンスを組ませる体制を構築しておかねば将来が無い。周回衛星も量産ラインメーカーが登場するため(一部ではもうあるが)、国際購買モジュール・ユニット体制となれば、世界中で5社〜10社しか市場規模的に成り立たない。これら経済原理からすれば、メーカー育成戦略は徹底的に練る必要がある。しかしJAXAにも宇宙開発委員会にも「我々は技術開発担当だから、、、」と言って競争力のある技術開発をせずに膨大な宇宙予算を浪費し続けている。今後は量産メーカーを育成させるため、衛星標準機に必要な思想を持つ必要がある。それは

・ 標準設計

・ 標準工程

・ 標準オペレーション

・ 標準筐体


という思想だ。これは自動車にも航空機にも鉄道車両にも言えることで、宇宙の世界でも周回衛星でスタンダードをとる動きが加速している。この動向を見極め、どこの国や企業と組むか戦略を練る必要がある。

◎量産衛星メーカーの育成戦略の必要性

 (エアワールド2007年7月号をご覧ください)


三菱重工の小型衛星筐体バス案(MHI)

◎宇宙予算の有効活用を

 今後は、国際的に通じない衛星やロケットは開発すべきではない。基幹ロケットであるH-2Aもそうだろう。そもそも基幹ロケットとは「価格・信頼性・ミッション達成度のあるロケット」であり、H-2Aは基幹ロケットとしてふさわしいのだろうか?最近の報道では「H-2Aが商業化した場合、1回の打ち上げ費用約110億円のうち20億〜30億円の公費負担を国に要請」との報道が流れている。「打ち上げ時の発射設備の点検費」や「打ち上げで傷んだ発射台などの修理費」が必要というが、これは即応型宇宙技術動向やアリアンスペース社らの国際動向を無視していたツケがまわってきたことを意味している。予算が少ないは説明にならない。国際比較をしても日本は今まで種子島射場へ十分過ぎるほど予算投入をしてきたはずだ。

 これは基幹ロケットではなく「補助金ロケット」ではないだろうか?JAXAや文部科学省が基幹ロケットとして定義するのはかまわないが、高コストのロケットを無理に他の官庁が国民の税金で負担する説得性は乏しい。実際防衛省でも「高価過ぎて購入は困難」と事実上の“購入拒否”の報道が流れている。しかもH-2Aは国産と言えるには乏しく、素材ベースで7割以上が輸入品であり、日本の自律ロケットにもならない。さらに最近では振動の問題と電気的問題が発生しているようだ。このまま“国の基幹ロケット”として定義する必要はあるのだろうか?と疑問に思う。国際動向を無視して開発しているH-2Bや全段固体の次期固体ロケット計画も見れば、JAXAは海外を見て見ぬフリをする“宇宙鎖国体制”を構築しているかもしれない。

 今後は宇宙利用時代に備えて宇宙予算を有効活用して次期固体計画も含めて公共事業から産業へ転換する戦略体制が必要だ。そのためには、無駄な宇宙計画は縮小・廃止すべきだろう。例えばHTVとH-2Bが1つの例にあたる。HTVは人が搭乗しないにも関わらず、空気清浄機を搭載、「なくても機能する」無駄な装備が多い。これを廃止し、プログレスのように物資輸送任務に絞り込んで軽量・最適化したHTV-Liteを製造すれば、H-2A-204(SRB-Aが4本)で打上げ可能であり、H-2Bを製造する必要もない。もしH-2Aで打ち上げられなくても海外ロケットがある。これだけでH-2B開発費と高価HTV開発費の250〜350億円の予算は浮くはずだ。HTVは総合科学技術会議で最低ランクとも言えるC評価を得ている。特定プロジェクト、旧NASDA計画のみ特別扱いし、それ以外の計画はことごとく予算減をかけるJAXA方式にウンザリしている声は強い。


HTVとH-2Bは、コスト・技術・戦略的に競争力がない(JAXA)

 またH-2B自身も問題だ。今後は自国だけでランチャーをやっていると、国際市場からはじき出される。H-2A競争力の無さがそれを示している。インドが日本より先んじて商業打上げに成功した。日本のロケットは中国にもインドにも商業化に遅れた格好にも関わらず、補助金を要請している。またH-2Bは国際動向から次世代ロケットとしては飛躍的、新世代には届かずでどちらともつかない1.5世代コンセプトロケットだ。詳細は過去の紙面で紹介したが、H-2Bはアッパーステージ時代に対応できず、パーツからソフトも旧世代で将来性もなく、上記で示した気象・環境観測衛星用はH-2Aと共にオーバースペックで、民間が独自で開発するならば構わないが、「国として必要だ」と言うには説得性の乏しいロケットだ。宇宙予算の有効活用と国際トレンドを意識した“大々的なコンセプトチェンジ”が必要と同時にJAXA宇宙基幹システム本部の解体は急務だろう。スペースに限りがあるため本件はいずれ詳細分析を発表したい。

◎小型衛星育成政策が乏しい日本

 (エアワールド2007年7月号をご覧ください)

◎まとめ

 当然のことだが宇宙活動は国際舞台へ出ることが必要で、どこかの宇宙機関のような“世界第2位の宇宙予算を有して鎖国体制”というのは許されないだろう。国際水準に立たなければ日本のメーカーが生き残れないからだ。衛星も製造思想そのものが変化しつつあり、デジタル化(小型化)・量産化へむけて標準化・ユニット&モジュール化が進められている。量産化が図れれば工場稼動の安定、コストダウン、製造の低労力化が図れる。

 そうした中、静止衛星に加えて周回型衛星でも次第に商業化の波が起きつつある。周回型衛星において“能動型・受動型センサーを搭載する適正を得ている衛星筐体バス”はMYRIADE、LEOSTAR、PROTEUS、BCPシリーズ等であり、TACSATは新世代向けの実験機であるようだ。2007年4月時点では、1000kg級にはまだ空きがあり、日本が入れるチャンスがある。恐らくここで頑張らなければ将来がないだろう。USERSとSERVIS筐体バスは試験機として有望で実績もあり、これをベースに回収ミッションを含めて国際アライアンスへ出る方法がある。国内にもニーズが見込めるため、次期固体ロケットも国際的に価格競争力があれば、開発にGOをかけてもいいのではないか?H-2Aではコスト的に合わず話にならない。またJAXA地球観測衛星計画は2000kg級を目指しているが、中身は国際競争力と性能が悪く、輸入品構成の挙句に予算的にも量産化が見込めないため、一時的にメーカーは潤うが、それ以降は脱落する可能性が高い。衛星トレンドを見られる人間ならば分かるだろう。衛星メーカーの三菱電機やNEC東芝スペースは国際的に生き残れるか瀬戸際に立たされているのだ。よって1000kg級と500kg級で大手メーカーが国際的に生き残れる量産・国際アライアンス体制戦略の検討及び小型衛星や部品産業育成戦略の検討を内閣府宇宙戦略本部や経済産業省へ期待したい。

 今後は数をこなし、新しい技術にも柔軟に対処でき、モジュール・ユニット化が出来る組織が生き残れるだろう。メーカーもデファクト・スタンダード製造会社を目指せる政策が必要だ。この失われた10年を如何に挽回する戦略が構築できるか?が今後の宇宙政策に問われた課題と言える。 


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