日本にとってロケットは必要か?
 国民生活に貢献できる気象衛星などを打上げるためには、ロケットがなければ出来ない。これは現時点では疑いのない事実だ。しかし「なぜ日本がロケットを持つべきなのか?」と考えると筆者も一言で説明する事が難しい。日本の衛星を外国のロケットを用いて打上げる方法も現実的には存在し、最近では外国のロケットは商業打上げ活動を行っている。その目的はロケット開発費回収、外貨獲得、利益の確保、経験値獲得など様々だが、近年では交渉次第でいつでも自由に打上げられる時代となってきた。では、まず海外のヨーロッパ、アメリカ、ロシア、中国がなぜロケットを含む宇宙活動をしているか政策的・戦略的に見てみよう。

・ヨーロッパ
ヨーロッパでは、「欧州の自立(自律)」というスローガンを掲げている。宇宙活動についても「外国に頼らずに自分達で衛星やロケットを製造し、打上げられる能力を持つのだ!!」という政策を掲げており、その政策を背景にして宇宙活動を行っている。また、航空で言えばエアバス社の育成がそれにあたる。つまりロケットについて言えば、「欧州の自立のためにロケットは必須」であるという意識統一がなされている。

・アメリカ
次にアメリカになるが、アメリカがロケットを持つ理由は極めて明確だ。アメリカではスペースシャトルによる有人宇宙活動の一方で、偵察衛星やGPS衛星など空軍が管理する軍事衛星が数多く打上げられている。打ち上げ回数も圧倒的に他国と比較して多く、従って他国に軍事衛星打上げを依頼することはまずない。以上から、アメリカにとってロケットは軍事作戦上「なくてはならない」ものであり、「独自に宇宙へアクセスできる手段を持つ事は当然だ」とロケットの必要性については当たり前のように認識されている。

・ロシア
ロシアでは、「大国かつハイテク国家たらしめるための手段」として宇宙開発は経済、科学、社会の発展及び国家安全保障の確保に貢献しているとされ、ソ連邦崩壊後も国の最重要次項として位置付けされており、その枠組みの中にロケットがある。

・中国
中国では国威発揚と技術力誇示、アジアにおけるリーダーシップを狙う目的で宇宙活動が行われており、それを内外に示すためにはロケットという打上げ手段が必要とされている。

以上からロケット開発国では「独自の輸送手段を持つ」、「技術力の誇示」というキーワードが読み取れる。このように海外では政策的に「ロケットは自立(自律)手段としてロケットは必要だ」と位置付けられているのだ。
次に経済活動の観点から見れば宇宙産業は「組立型産業の頂点に位置する産業」としても認識されており、ロケット開発国は「高い技術を有している国」とみなされ、その国が製造する製品の市場価値を間接的に押し上げている側面もある。その意識を最近強く持っているのが中国ではないだろうか?

また、さらに言えばロケット技術は「目的の場所に目的のものを運ぶ輸送手段」としての捉え方を考えれば「弾道ミサイル技術」としても転用が可能である事は否定できず、場合によっては国家安全保障という「国を守る」ための技術として利用もできると海外では認識されている。よって “弾道ミサイルを保有する事とは別”として、ロケット技術を保有する事は「自国を守れる技術を保有している」と内外にアピールできる側面がある。

最後に軽視しがちな教育的効果だ。ロケットを含む宇宙開発は、一般的に“夢がある”と言われているが、次世代を担う自国民の教育・広報的効果もある。アメリカNASAでは宇宙教育・広報へ積極的に予算を配分しており、火星探査ローバーの例を見れば「2ヶ月で90億件」という驚異的なホームページのアクセスがあった(前年は年間で25億件程度)。このように教育・広報の活動によって宇宙におけるチャレンジング精神を自国民へ見せて学ばせ、豊かな視野をもった次世代の若者を育成している。
以上を踏まえて、改めて「日本がロケットを持つべきか?」と考えれば、経済活動的にも国家安全保障的、教育・広報的にも持っておくべきだと筆者は考えており、科学技術立国として先進国として世界と渡り合うためにも日本はロケットを持っておくべきだろう。

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