ナショナル・スペース戦略(FALCONランチャー革命の波紋)
  
 (エアワールド2009年4月号抜粋):詳細は雑誌「エアワールド2009年4月号」をお買い求めください

 本稿では「革新宇宙戦略シリーズ」と題して国際競争舞台から脱落してしまった日本が国際競争力を高めるために今後進めなければならない「お手軽宇宙システム」の国際動向を紹介、組織解体が検討されているJAXAの問題を見ながら、日本を建て直すための新たな宇宙体制も考えてみたい。

◎ランチャーのモジュール・ユニット競争

 ロケットを量産化してコストを下げ、しかも打上性能レンジ幅を広く確保して顧客を多く取り込むモジュールランチャー競争が始まっている。これは大中小ロケット、固体&液体推進系を問わずに進んでおり、優秀なロケットコンセプトとエンジン・モータが選択される時代となりつつある。これは航空の世界では常識だ。例えばゼネラル・エレクトリック社のCF-6-80ターボファンエンジンシリーズは、ジャンボ機B-747で採用されているが、他にもB-767やエアバス社のA300、A310、A330、旧マクドネル・ダグラスMD-11、川崎重工C-X等で採用されている。各航空機メーカーはエンジンを各々2基、3基、4基搭載して様々な旅客機・貨物輸送機を開発している。

 ロケット推進系もいずれ“決定版”が生まれ、市場シェアを拡大していくのだろう。事実、現行のDELTAとATLASでは上段エンジンがRL-10系統に統一され、NK-33エンジンは米露のTAURUS-II、SOYUZ-3、POLYOTでの利用計画が進み、固体モータCastor-120はAthenaシリーズ、Minotaurシリーズ、TAURUS-XLで採用されている。優秀なエンジンやモータがモジュール搭載される時代へ突入し、量産による低コスト化も進むことから、工芸品製造型/少量生産型/信頼性偏重型のロケット(=JAXAランチャー)では市場淘汰されてしまう可能性が非常に高い。
 この情勢から、優秀なランチャーのモジュール・ユニット開発競争が始まっている。現行における優秀な1段目液体エンジンはRD-180、RS-68、Vulcaine-2、RD-172、NK-33、Merlin-1C等であり、固体モータもP80、Castor-120があるが、各国では新型の液体エンジンや固体モータで優位性を築くべく、大型に限らず中小型ランチャーのコンセプト研究と先行開発を続けている。

 例えばフランスCNESの動向が興味深い。CNESでは、国策企業として育て、さらに商業化でも多くの実績を挙げたArianespace社がサービスを展開するAriane-V、SOYUZ、VEGAの後継機計画を進めている。この計画はESA将来輸送機開発の予備研究プロジェクトFLPP(Future Launchers Preparatory Programme)で行われている。そのコンセプト案は一部で公表されているが、小型は空中発射ロケットと地上打上型のモジュールランチャーが検討され、中大型もVEGAのP80固体モータを大型化(P107)させたり、Ariane-Vの固体モータMPS240をランチャー用に改造して推薬を更新したP240、Ariane-Vの新型アッパーステージエンジンVINCIモジュールを他のランチャーで採用したり、新型液体エンジン開発(VEDA、VOLGAなど)を実施している。
 その背景には、SPACEX社のFALCONロケットにおける「真の戦略」やモジュール・ユニット設計思想が国内のみならず国際連合でも進んでいる事実、そして何よりも衛星が小型高性能化していることと、民間参入により「宇宙システムには経済性が追及されるようになった」ことから、「経済的=小型高性能&短納期」のお手軽宇宙システムを作らねならない事情に迫られたからだ。このため、VEGA、SOYUZ、Ariane-Vという3本ロケットシステムの体制が国際市場で優位性を保てるのかどうか不透明となりつつある。今後は在来技術を見直し、有効的な新規技術開発、コンセプト研究を練り直してくるだろう。


VEGA、SOYUZ、Ariane-V後の計画をCNESは検討中(出典:CNES)

◎液体ロケットのベンチマークはFALCONシリーズ

 過去の誌面、モジュール・ユニットランチャーの台頭(2009年2月号)で紹介したように、米国が在来技術の延長ではなく、新規にエンジンを開発して民間ベースで展開するFALCONロケットは、ただ単に小型衛星打上市場(FALCON-1)、国際宇宙ステーションの貨物輸送市場(FALOCN-9、Dragon宇宙船)をターゲットにしたものではなく、1段目エンジンをモジュール化してクラスター化することで、様々な打上市場へ参入できる万能型液体ユニバーサルランチャーであることを説明した。しかし、筆者の勉強不足もあり、FALCONシリーズの戦略がさらに「究極的な戦略」で実施されていることが判明したため、再度紹介したい。

・ なぜFALCON-1、FALCON-5、FALCON-9なのか?

 2008年9月30日、FALCON-1は4度目のチャレンジの末に打上成功した。民間企業が自己投資して本格的に液体ロケットを開発し、成功した初事例である。JAXA宇宙輸送ミッション本部や官需依存企業から見れば「見たくない存在」であろう。しかしFALCON-1戦略はまだ序章に過ぎない。海外の宇宙技術者らからもたらされた情報によれば、ただ闇雲にモジュールランチャー戦略を展開しているわけではないそうだ。
まずFALCON-1はモジュールランチャーの「基盤技術」を確立するために実施されている。このため「ベースライン」と呼ばれている。このベースラインで使用されているMerlin-1エンジンにおける「クラスター化の応用コンセプトがFALCON-5」だそうだ。FALCON-5の開発計画は中止しているものの、5基エンジンをクラスター化したシステムは2008年5月の燃焼試験に成功している。

 そしてクラスター化の基礎技術を確立したことで、エンジンを2基クラスター化したFALCON-2及び、2基ができれば4基も展開が容易なFALCON-4への派生型が出来る道筋及び、FALCON-5の5基エンジンにもう2基をプラスしたFALCON-7へ展開できる道筋も出来上がったのである。つまり「現実を見て未来を展望する戦略」でFALCON-5が作られたのだ。5基クラスター技術を確立することで、FALCON-2、-4、-7という技術的展開を見越して開発している。逆にFALCON-1の後に真面目にFALCON-2を開発し、-4、-5と展開していたら、余計に開発コストがかかっただろう。FALCON-1とFALCON-5は将来展望を見据えた戦略だったのだ。


FALCON-5燃焼試験(出典Space-X)

 そしてFALCON-9は「クラスター化の応用編」に加えて「有人仕様&ユニバーサル化」したのがFALCON-9である。エンジンを9基もクラスター化するチャレンジはFALCON-5試験の成功があり、目処がある程度つく。9基エンジンを約3分燃焼する試験に成功して基盤技術を確立している。そしてISSという有人仕様にしながらフェアリング直径は5.2mとすることで、DELTA-IVとATLAS-Vの大型フェアリングと同じ寸法にすることで、衛星混載システムであるPPOD(Cubesat搭載装置)やESPA(小型衛星搭載装置)搭載システム等を共用できるコンセプトにしている。さらにDELTA-IVヘビー型のようにFALCON-9の1段目をモジュール化し、これをクラスター化することでFALCON-9ヘビー型へ展開するコンセプトやFALCON-9エンジンをさらに3基プラスしたFALCON-12を検討しているそうだ。これは、NASAの月・火星探査向けのランチャー市場が発生した場合に展開可能なコンセプトとしている。


Merlinエンジン          9基エンジンをクラスター化        燃焼試験成功(出典:SPACE-X)

 以上、FALCON-1成功から始まるFALCON-5、FALCON-9におけるクラスター化は単なるモジュール戦略ではなく、技術的な派生型を見越した戦略なのだ。

・ 低コストのICBMランチャー市場を切り崩したいFALCON

 このMerlin-1エンジンをモジュール化し、クラスター化することで、小型から超大型まであらゆる市場へ比較的短期に参入できるコンセプトは、当然ながらコスト競争力が向上する。なぜならば「かつてないエンジンの大量生産」が出来るからだ。SPACEXは世界初航空機量産化を成し遂げたDC-3の計画名、プロジェクト・ダコタを取って「スペース・ダコタ計画」を一部で言われているそうだ。この大量生産コンセプトにより、ICBM派生型ランチャーの信頼性期限が見込まれる2015年以降の小型ランチャー市場で勝利したい思惑がSPACE-Xにはある。このため、COSMOS-3Mの性能向上バージョンを見越してSPACE-XではFALCON-1のMerlin-1エンジンを性能向上させたMerlin-1Cをベースに燃料タンクを増強して打上性能を420kg→1010kg向上させたFALCON-1eの市場投入計画を発表し、さらに非公開ながらFalcon-1fの計画も立てているそうだ。クラスター化技術を持ちつつも、コストにもこだわる姿勢が見て取れる。
 そしてFALCON-5とFALCON-7では国際ベンチマーク衛星や商業打上衛星(Rapideye、Terrasar-X、THEOS、Kompsat-2、cubesatなど)を打上げるDneprとRockot及びその派生バージョンを市場撃破したいという戦略がある。ロシア独り勝ちのLowコストランチャー市場をアメリカが新規量産ランチャーで巻き返す戦略が考えられているのだ。

・ FALCONは1段目モジュール戦略だけなのか?(アッパーステージ戦略は?)

 ロケット性能を握る1段目戦略を「これでもか」と言わんばかりに徹底した基盤技術確立とモジュール派生戦略(クラスター化)を展開し、どこのサイズへも参入できるSPACE-X社FALCONロケットは、これで満足しているわけでもない。そう、アッパーステージ戦略である。アッパーステージ戦略は、やり方次第で既存ロケット性能を向上させることが出来る。SOYUZのアッパーステージ戦略がそれだ。SOYUZはFregatというアッパーステージを開発し、低軌道以外にも静止軌道や惑星探査軌道へも打上げられる体制を確立している。さらに最近では、Fregatの性能アップバージョンであるFregat-MTを開発、欧州版GPS衛星のGalileoを複数機軌道投入へ対応したり、より大型の静止衛星を軌道投入したりできる仕様(再着火数増加、タンク容量増加)を目指している。


SOYUZのアッパーステージ性能向上戦略(Arianespace)

 SPACEXでもこのような情勢から、アッパーステージ戦略を練っているそうだ。最終的な方針はまだ発表されていないが、FALCON-1ロケットの2段目エンジンKestrelに加えてFALCON-9の2段目エンジンDrancoがあり、アッパーステージは個別のエンジンが開発されているが、まだ非公開の戦略があるそうだ。読者の皆さんも「今後は何の戦略でくるのか」考えてみて欲しい。



民間ロケットFALCON-9の「市場&コンセプト破壊力」に焦る既存企業(SPACE-X)


12/16射場搬入、1/10には直立したFALCON-9(SPACE-X)

◎モジュール型ランチャーFALCONに危機感を抱く既存ランチャー

 以上、判明しているFALCON戦略を説明した。まだまだ不明な情報があるが、スペース・ダコタ計画と評されるように、エンジン量産化とモジュールランチャー戦略に加えて衛星・貨物・有人打上というSOYUZコンセプトを真似る「温故知新戦略」を立てながら、さらに“どのサイズにも参入出来る戦略”及び“搭載標準化(PPOD、ESPA等)”という「オリジナル戦略」も有するFALCONロケットは、間違いなく国際ベンチマークランチャーと言えるだろう。
 この情勢下、DELTA-IIは近い将来“引導”を渡されると見られている。フェアリング直径がTAURUS-IIやFALCON-5よりも1m狭い上に、小型・大型化をするにしても抜本的に作り直しするしかないため、革新的コンセプトが出てこない限り引退は避けられないと考えられる。

 さらに危機感を抱いているのはDELTA-IVとATLAS-Vである。“1段目エンジンの単体性能”ではなく“戦略量産的なクラスター化”によって追いつかれた上、コスト競争力ある上に有人仕様でもあるFALCONロケットの参入でDELTA-IV、ATLAS-Vは危機的な状況となっている。両社のロケット担当者曰く「市場を独占してきたが、未来が厳しくなった」と漏らすほどである。もしかしたらDELTAとATLASを統合しても生き残れない可能性があることから、各々メーカー内部では、固体で参入し直すか他と組むかで大議論を始めているそうだ。恐らく、ATLAS-Vの1段目をGXの1段目として日本へ売却しようと動いているのは、「ATLAS-IIIと似たような境遇」にあるのかもしれない。またしても、日本は旧式宇宙の売却市場となるのだろうか?(H-2システムよりかは先端的ではあるが、、、、)

 話は少し外れたが、未来展望が厳しい情勢から、DELTAを有するボーイングとATLASを有するロッキードマーチンでは、すでにDELTAロケットを製造するアラバマ州DecaturへATLAS-V設備の移転を進めて統合化を図る一方、NASAが進める大型貨物ランチャーARES-Vの入札に望みを繋いでいる。また、ピンチを見透かしているのか分からないが、ロシア企業からAngara共同開発の打診も受けているそうだ。果たして反撃できるコンセプトを立てて大手メーカーは復活してくるのか、それとも淘汰されるのかは今の時点では誰も分からない。ここからは筆者の憶測だが、ARES-Vは米国在来技術の生き残りをかけた「関が原決戦」となるのかもしれない。固体技術は大型へチャレンジが進み、既存エンジンは整理淘汰されるプロジェクトと見ることが出来るかもしれない。ともあれ、今後の推移を見守る必要がある。

◎究極の上段システムを目指す動きも

 また、別の情報では、アメリカ宇宙関連機関の1つが民間企業を集めてFALCON-1の成功に学んで、革新的なアッパーステージ計画を立てているそうだ。恐らく、「大量生産・モジュール化(大中小)・性能レンジ幅」をキーワードにしていると見られるが、詳細は公開されておらず、プロジェクト名も発表されていない。どのような戦略かはまだ不明だが、恐らくFALCON以外にもTAURUS-IIやATHENA-IIIなど他のランチャーにも対応できる究極のアッパーステージ戦略を考えているものと思われる。振動問題が足を引っ張り、アッパーステージ戦略さえまともに展開できないH-2A、H-2Bの2段目とは2世代、3世代先を行こうとするアメリカである。

◎固体ロケット戦略はどうなのか? 

 FALCONという液体モジュールランチャーの登場で、液体ロケットのコンセプト見直しが欧米で進めら得ているが、固体ランチャーも水面下で様々な動きが出てきている。そのキーワードは「大型(大直径)、再使用(セミ・フライバック)、低毒化・高分子材料」であることが分かってきた。少なくとも“液体至上主義で固体は消える運命”という概念しか見られないJAXA/文部科学省宇宙開発委員会では考えられない動向が海外で見られると同時に固体ロケットを停滞させたJAXA戦略の愚かさがより明らかとなってきた。
 まず、過去の本誌(2009年2月号)で説明したように、NASAが開発しているARES-1の固体モータを使って、ATHENA-IIIを民間団体Planetspaceが大手企業(Lockheed MartinとBoeing)と組んで開発しようとしている動向は説明した。この大型固体ロケットATHENA-IIIは競合ランチャーDELTA-IIを有するBoeingも参加している。一方でBoeingはATHENA-I、ATNENA-IIには参加しておらず、DELTA-II引退後戦略の一環で参加しているのだろう。


  
       NASA-ARES-1と固体モータの詳細(ATK)          ATHENA-III(右)(Planetspace)

 ATHENAランチャーはARES-1固体とCastor-120モータを組み合せた固体モジュールランチャーで、量産・保存性・コストの利点を生かして液体FALCONシリーズへ対抗するコンセプトを立てている。
 さらに、このARES-1の固体モータを使用して衛星打上事業を計画している民間コンセプト企業がいるそうだ。それはAndrews Space社であり、同社は過去にNASA-COTSプロジェクト(ISS民間輸送ビジネス)へ入札参加していたが敗れている。しかし、そのコンセプトをさらに進めて「衛星打上、貨物輸送、宇宙探査、有人仕様ランチャー」というFALCON-9と同じマルチコンセプトを計画している。しかも、将来における宇宙輸送は「貨物会社」へ運用委託することを想定して輸送大手のFEDEXを巻き込んで事業検討をしているそうだ。そのランチャーは大型固体ランチャーにアッパーステージと衛星・貨物・探査・有人仕様とした量産型固体ランチャー“オリンパス”を計画している。


オリンパス(Andrews Space)

◎NASAのARES-1は新型モジュール開発だった

 つまりARES-1開発技術は、例え技術的な問題などでARES-1計画が消滅しても、モジュールは民間採用するスキームで進められているのだ。しかしその背景を聞いているうちに、ARES-1開発の目的の1つは「20年ぶりの大型固体技術の開発」であることが分かってきた。
 固体ロケットは、「推力があっても燃焼時間が短く、液体ロケットのように再着火能力がなくて振動環境が激しいため、液体エンジン技術が発展すれば消える運命」という理論の下、スペースシャトル用の補助ブースター以降、大型固体ロケット技術を開発してこなかった。つまり20年以上、固体ロケット技術の開発は止まっていた。しかしスペースシャトル・コロンビア事故以降の後継機計画を考えた際、液体エンジン技術は価格的・能力的にロシア・ウクライナの方に分があり、国内における大型1段目液体エンジンはDELTA-IVのRS-68エンジンが現役運用されているだけで、他はロシア・ウクライナエンジン(RD-180@ATLAS-V、RD-171@Zenit-3SL)であった。このため、失われたプレステージの起死回生の1手がFALCONモジュールランチャーであった一方、固体も失われたプレステージを取り戻すため、相当な額をATK(旧サイオコール)社へ投入し、大型固体モータ開発を仕掛けたそうだ。

 しかし、液体エンジン至上主義が蔓延しているため、固体ロケット技術を再開発することを良く思わない勢力も存在する。内部を納得させるため、発表当初はスペースシャトル技術の遺産をARES-1で有効活用するとNASAは説明し、補助ブースターをそのまま利用するとした。しかし上段構造の重量過多で「性能が足りないからセグメント増加」と周囲へ説明して納得させ、固体モータの大型化(直径3.7mをそのままに長さを延長)を進めたのである。セグメント増加は固体モータ特性上、推力が増加することを意味し、モータ内部燃焼の圧力が上昇することを意味する。つまり「事実上の作り直し体制」となり、固体モータ構造の更新、固体推進薬の更新、製造の自動化、仕様部材の更新等を進めたのである。

 この“したたか戦略”でCastor-120以降、20年途切れていた大型固体ロケット製造技術を事実上復活させ、しかもシャトル遺産設備(固体燃料充填設備、回収船やメンテナンス設備)を流用できるコンセプトで“固体モータの量産”、“モジュール利用戦略(民利用)”を近年展開していたのである。さらに大型固体モータ開発を進める欧州のVEGAロケットモータP80を凌ぐ固体モータ技術を確立したことで、大型固体ランチャーの性能的優位性を確保したのも戦略の1つにしていたそうだ。どこかの国のように、補助ブースターを使って小型ランチャーを作ると称し、“最後まで真面目にやってダメコンセプト”になるのとは違う戦略をアメリカは展開していた。

◎「セミ・フライバック」から「固体フライバック」の検討も

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Ariane-Vのブースター回収(IMS)

◎Orbital Sciences社は戦略練り直し中

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ATHENA登場で戦略練り直し中のOrbital社(画像出典:orbital/USAF)

◎固体も液体も将来展望を見据えて開発しているアメリカ

 以上、FALCONと大型固体開発動向を説明した。これら動向により、小型を含む衛星・貨物輸送・有人輸送市場で圧倒的市場優位を誇るロシアランチャー(COSMOS-3M、Dnepr、Rockot、SOYUZなど)を撃破するために、アメリカはDELTA-IV、ATLAS-V以外でしっかりと戦略展開していたのである。この開発が進めば、「ICBM派生ランチャー」と「万能型ランチャーSOYUZ」で市場へ巻き返しがかけられるだろう。

 このため、既存勢力であるDELTA-IV、ATLAS-Vは上述したように戦略練り直しを進めている。無論、液体エンジンを止めているのではなく、Merlinエンジンとモジュール構成による「成功例」を参考に、液体エンジンをコスト的・技術的・量産的に建て直す戦略を立てているのだろう。だが、次世代ランチャーでは既存エンジンでは競争力が厳しいため、大手は固体ベースでモジュールランチャーと固体再使用化(セミフライバック→フライバック)と、液体はTSTO(2段式再使用ランチャー)の事前段階を、既存液体エンジンを使用して空中発射ロケットで実施しようと計画しているそうだ。そのモジュール構成が次第に明らかになってきている。その1案は、C-5ギャラクシーを2基結合したツインギャラクシーをベースに検討しているとのことだ。そう宇宙旅行用機体のスペースシップワンの母機“ホワイトナイト”の大型版を作り、1段目をRD-180エンジンとした再使用機を開発、上段アッパーステージを使い捨てとする「セミTSTO」を検討している。RD-180を使用しているATLAS-V筐体を利用した、地上打上によるフライバック化は解析の結果、推力不足と判明したため、C-5ギャラクシーを使用してセミTSTOをやってみようと考えている。打上能力は低軌道へ2t級を検討している。


ツインギャラクシー/CG(www.airlinepictures.net)         セミTSTO(spaceworks)

 これは、ロシアがAn-124輸送機を発射母機とするPOLYOT空中発射ロケット及び次世代モジュールランチャーへ対抗するコンセプトだそうだ。このPOLYOTはモジュールを組み合わせて、地上打上と空中打上ができる液体モジュールランチャーを計画している。ちなみにPOLYOTはTAURUS-IIやSOYUZ-3と同じNK-33を採用している。
 以上、アメリカでは次世代ランチャーの世代交代が進んでいる。JAXAのように特定宇宙システムを優遇するのではなく、国外動向を徹底的に情報収集して分析し、競合相手からでも学び、「次なる一手」を着実に打つことで、将来展望を見据えた上で商業市場への巻き返しを図っている。


ロシア次期モジュールランチャー検討案(Aerospace Corporation Air Launch)


◎民間宇宙旅行会社はロケット打上事業を検討開始

 また、このような情報を掴んだバージン・ギャラクティック社は、宇宙船スペースシップツーの母機であるホワイトナイトツーを使用して小型衛星ランチャー市場へ参入すべく、事業化検討を開始したそうだ。その名前はスペースシップワンに続き「ランチャーワン」だそうだ。フライトインターナショナル誌が報じているが、打上性能は低軌道へ100kg-200kg付近を計画しており、ロケットは固体ロケットもしくはハイブリッドロケットを検討している。
 実のところサブ・オービタル事業は、宇宙旅行事業だけでは採算が厳しいため、様々な事業を展開しなければならないそうだ。このため、弾道宇宙旅行に加えて小型衛星打上・高層大気観測・微小重力実験の事業を計画しているそうだ。この方針で営業活動を展開したところ、昨年10月には米国のNOAAより大気気象観測のセンター委託観測を受注したそうだ。事業の多角化へ向けて着実に展開しているバージン・ギャラクティック社である。

 
宇宙旅行以外にも空中発射衛星打上ロケットの事業化を検討開始
(バージン・ギャラクティック/Flight International誌)

◎欧州も危機感を抱く(戦略見直し中)

 このような情勢下、欧州でも危機感が増してきている。Ariane-V/SOYUZ/VEGAの3本柱体制が将来的に危機的状況になる可能性が出てきているからだ。未だに有人ロケット計画エルメスの夢を見てAriane-Vの有人化計画を進めようとする動きも存在するが、「コストも低く、従来衛星ランチャー市場でも競争力ある上に有人仕様のFALCON-9」の登場で「今更Ariane-V有人をやっても、国際競争力なし」という結論に傾いており、欧州の閣僚理事会で有人開発の研究開発は認められたものの実態は「グルジア情勢によるロシア(SOYUZ)への政治的牽制」という意図で決まったそうだ。このため、上記や過去の誌面で示したようにフランスを中心に様々なメーカーが集まり、次世代コンセプト研究が続けられている。

 加えて新規の再使用や使い捨て低コストの液体エンジンのVEDA、VOLGA、VIKING開発に遅延が生じていること、コンセプト変化の必要性及び衛星のダウンサイズ動向が見られることから固体ロケット戦略を徹底的に練り直しているそうだ。その第一弾が空中発射ロケットである。欧州ではフランス、イタリア、スペインなどが空中発射ロケットを検討しているが、フランスではRAFALE戦闘機や欧州版C-130であるエアバスA400を使った空中発射ロケットMLA、HORVSを検討している。

 また、VEGA開発によって欧州では大型複合材モータ“P80”の開発に成功したが、P80モータを強化して推進薬を80tから107tへ増強したP107固体モータを検討している。さらに大型固体へ対応するためARES-1固体ブースター動向を意識してか、Ariane-Vの補助ブースターP240のモータを流用し、さらなる大型化(推進薬10t追加)、推進薬の更新、低毒化、バインダー開発など、段階的な開発計画を練っている。
つまり、小型から大型まで固体ロケットの育成を計画していることを意味している。これはまだコンセプト研究段階であり、最終的な方針には至っていないが、公表情報を分析すると既存ランチャーの概念を捨てて次世代を見据えたランチャー戦略を研究している。恐らく、固体再使用の検討もしているのだろう。事実、2002年にAriane-V打上時に、海上でAriane-Vの補助ブースターP240の回収を実施、再使用に向けた知見を得ている。実フライトによるモータの損傷・損耗のデータは得られている。

 過去どんなに予算、資金をかけて開発した宇宙システム(エンジン、Ariane-Vなど)でも、FALCON-9のように「市場&コンセプト破壊力」のあるランチャーが出てくれば、積み上げた「既存コンセプトが吹っ飛ぶ現実」を直視できるようで、欧州は今後もロケット開発国として生き残れる可能性が高いだろう。
 一方で日本のH-2Aは「固体は旧式技術、開発を終えた。」という公正に分析判断する能力が不足しているため、射場関連や非力液体エンジン開発には巨費を投じているにも関わらず、SRB-Aの回収(再使用知見獲得)は一度も行っていない。加えてH-2A、H-2Bの1段目の回収も同様だ。特定組織・企業を優遇して他は非難して公正に評価しない体質例とも言える。

◎JAXAによる大中小ロケット戦略は完全に崩壊か

 日本は国際技術動向の現実を見据えて、出直す必要に迫られている。特に巨費を投じたH-2シリーズ(H-2、H-2A、H-2B、H-X)は早急な見直しが必要であろう。まず、液体エンジンのトレンドが「大出力・大型・高コスト」から「大出力・小型・低コスト」へコンセプトシフトしている動向を見逃してはならない。この「大出力・大型・高コストという旧態コンセプト」エンジンにおける頂点がRS-68(DELTA-IV)とRD-180(ATLAS-V)である。これを追おうとするLE-7AやLE-7Bは性能そのものが敗北しているのに加え、新規計画LE-Xも能力不足な上に旧態コンセセプトのため、もはや意味がない。

 GXロケットも「今からやる」にしては旧態コンセプトのため、もはや実施の意義がない。またRD-180(GX、Atlas-V)はソ連邦崩壊によるICBM技術流出と技術者流出を阻止するためにアメリカがロシアへ出資し、RS-56(ATLAS-II)に変わるエンジンとして開発させた経緯がある。このためアメリカは技術者や製造関連施設を引き取った。だが、冶金技術などの詳細面で一部ライセンスが米国に譲渡出来ずに、ライセンス生産ができない状況となっているそうだ。つまりRD-180を有するGXロケットはロシアの影響力も残っているため、容易に日本へ輸出できない事情があるそうだ。実際にATLAS-Vの筐体輸出許可は存在しないとのことだ。一方、NK-33・34はAJ-26・27としてAEROJET社へライセンス・製造技術・パテント全てが譲渡されておりない。

 またGX射場の流転が顕在化している。当初は種子島(大崎射場)だったが、南大西洋諸島か米国本土のカリフォルニア州バンデバーグへの変更する事態となっている。またLNGエンジンによるJAXA開発委託が事実上挫折、コスト超過となっている。つまりGXは旧態コンセプト、筐体輸出許可が存在しない上に性能はH-2シリーズ以下にせねばならず、最近は「日米共同開発/LNG開発失敗」から「射場建設プロジェクト」ヘ変質しており、GX開発の意義が消滅している。


画像出典:AIAA、JAXA、ULA、McNerney

 射場は可能な限り低コストに仕上げなければならない。SPACEX社はケープカナベラル空軍基地内のTITAN射場跡地を流用して建設した。昨年2月にTITAN-4B整備塔を爆破解体し、避雷針や土台及びアブレーション等の施設をそのまま流用、燃料タンクは新規設置したのだ。そして昨年12月にはロケットを搬入、FALCON-9の組立・架台設置・直立を2〜3週間で実施して、既存施設流用・納期短縮の低コスト射場を建設した。これは非常に参考にすべきであり、“何故か防弾仕様のドーリーを使用した高コスト体質”、“減価償却をしていない射場”で“射場システムのコストダウン戦略さえない”という無戦略態勢なのに打上日数制約を問題にして「射場移転論を叫ぶ」のは、財政措置上及び減価償却問題がある一方、すべき戦略順序そのものが違うのではないか?

 そして次期固体も同様だ。日本唯一の固体ロケット技術維持は重要だが、世界は維持どころか発展コンセプトである固体モジュールランチャー(VEGA+、Minotaurシリーズ、ATHENAシリーズ)戦略に加えフライバック利用戦略も検討・展開されている中、現状のコンセプトでは1世代、いや2世代はコンセプトが遅れていると言える。

 以上、JAXA宇宙輸送ミッション本部はまだ既存計画を続行することしか考えられないようで、日本は「そのまま行く」のか「現実を見て変わる」のか選択を迫る情勢となっている。筆者らは前者を選択すれば、「自己崩壊して脱落」し、日本はロケット撤退という政治的決断が近い将来やってきてしまうと考えている。軍事という国家安全保障衛星までもが東西冷戦時代の敵対国道同士で打上げられる時代(露COSMOS-3M、独SARLUPE)になり、民間までもが宇宙を目指す時代の現代では「国威発揚・国家安全保障・夢・コンセプト不足」でロケット開発できるほど日本は財政的余裕も政治的パワーもない。出来るならば、日本は後者の「現実を見て変わる」をいう選択肢を採択すべきだと考えている。


TITAN射場の爆破解体(NASA) FALCON-9射場はTITAN射場の流用(SPACEX)

◎日本は有人やISSへ人を割いている場合じゃない(出直策が必要)

 FALCONロケットのコンセプトにより、H-2A、GSLV(インド)、長征(中国)がもはやアウトであるのは明白だ。GXやH-2Bも「これから作る」ロケットとして見れば論外である。よって出直し策が必要だ。

 これは第2次大戦時のアメリカが良い例だろう。日本は大戦初期にゼロ戦を開発し圧倒的に空中戦を制していた。しかしアメリカはゼロ戦の飛行特性・防弾性・戦術・材料・プロペラを徹底分析して「日本はエンジン馬力の製造限界とプロペラ問題があり、超々ジュラルミンで軽量化している」という工業技術力の本質を見抜き、日本では当時作れなかった2000馬力エンジンを搭載したヘルキャットなどを投入、パイロット錬度と機体性能のスキを突く戦略を展開・勝利した。逆に日本は加工機器が当時敵対国で輸入・更新も出来ず、また材料・設計・量産・規格統一も更新できないため、工業技術、とりわけ「取りまとめる力」の不足を露呈し、巻き返しできずに敗北した。このゼロ戦を現在のロケットに例えるとしたら言うまでもなくH-2A、H-2B(LE-7、LE-7B)であり、ヘルキャットを例えるとFALCONシリーズ(Merlinエンジンシリーズ)となる。日本は過去の栄光(といっても産地偽装だが)に胡坐をかき、次なる一手を考えるコンセプト戦略能力が極端に弱い。工業技術力も衰退しており、是正するどころか、醜い内輪揉めをする情勢だ。よってJAXAではない、真のロケット再生戦略を内閣府宇宙局が練る必要があるだろう。

 まずは液体エンジンの再生だ。日本にはベースライン・エンジンがない。そしてコンセプト力もない。またGXのRD-180ではロシアの制約があり、輸入はほぼ不可能であることが判明した。もしメーカーが日米同盟を主張するならば新コンセプトエンジンへ着手すべきであり、日米共同エンジン開発(仮称:RH-001)としてクラスター1段(P&WとIHIによる国際ロケットエンジン)を開発、FALCONコンセプトを意識したベースライン・エンジンにチャレンジしてはどうか?性能万歳主義ではなく「大出力・小型・低コスト」を主体として、補助ブースター無しでも1基でリフトオフできるエンジンが望ましい。日本は液体エンジン国産化を完全に達成していない。設計と加工が出来ても、インテグレーション力が弱く、ソフトが未だに海外依存であるのが真相だ。今後はエンジンメーカーの整理淘汰が進むため、早めに国際的に組んでおくことは、生き残る上で必須だろう。

 そして上段(アッパーステージ)はRL-10-5を採用して、H-2A/Bの後継機を狙い、打上費用はRH-001エンジンを1基としたランチャーコストが10億円以内、クラスター化によるモジュールエンジン構成でトータル50億円以内の性能向上バージョンを作れば、既存ランチャー(H-2シリーズ)の後継市場を狙うことは十分可能だ。少なくともJAXAが掲げるLE-XとH-Xよりもコンセプト的には優位に立つことができるだろう。あとは国際提携でエンジン量産、コスト勝負戦略で「ポストH-2A/B、ATLAS-V」市場を狙えばよい。メーカーが発想転換できるかが勝負といえる。

 一方、固体ロケットはモジュール型ランチャーが国内で提案されていることから、JAXAとは違う流れが出始めている。SPACEX社が示しているように、もはや宇宙機関(JAXA)が主導してロケット開発する時代ではない。今後は、世界的な固体ロケットメーカーの国際提携が展開されるため、その市場に国内メーカーが参入できるかが勝負と言える。国際市場・提携戦略を練る一方、アメリカやフランスが進めている固体ロケットの「推薬性能向上・低毒推薬開発・低融点推薬・再使用化」の先行研究が必要だろう。

 日本の固体ロケット関連技術はまだ世界トップレベルであるため、フランスや米国らと共同開発へ持ち込める環境だ。すでにISAS固体ロケット技術者らが、JAXAを脱して有志で研究を始めている。文部科学省は固体ロケット開発を事実上放棄しているため、JAXAを解体し、民間が独自に立ち上がり、別組織(内閣府)で支援する体制があればよいだろう。

 以上、戦略案を考えた。いずれ設立される内閣府宇宙局の宇宙産業政策による国際基準ランチャーの戦略立案能力が重要となってくる。決してJAXA残渣(GX、H-X)であってはならない。コンセプトアウト計画を是正する体制が必要と同時に、失われた10年を取り返す「出直し戦略」が至急必要であり、(ろくな技術がなく競争力のない)有人開発を実施したり、ISS関連で巨額な宇宙公共事業をしている場合ではない。

◎世界の革新宇宙システムの実用化競争

 日本の産業競争力衰退が露呈し始めている。それは国際動向の変質と民間による宇宙活動の進出からも明らかだ。世界の基軸ランチャーは「既存改良・商業市場対応・モジュール化」をテーマにし、衛星も「ダウンサイズ(小型衛星)」がテーマにされている。

 具体的に欧州はCNESやESAが中心となり、小型衛星による技術実証・宇宙途上国販売・地球環境(MYRIADE、PROTEUS、SSTLバスなど)というマイクロ宇宙システムの展開により、“お手軽宇宙システム(衛星・地上インフラ・解析)“による利用・外交・コストダウンを実現した。加えてGooglemapの画像の多くにフランスSPOT衛星が利用されたが、「もっと安くしなきゃ買わないよ」と言われ、しかもGoogleが衛星保有の動きを見せたことから、さらなる低コスト&高性能衛星を作るべく小型衛星戦略(ナノ・マイクロ衛星産業育成)を立てて産業競争基盤を立てている。さらに民間も、ニーズに答える形でバージン・ギャラクティックが「宇宙旅行事業とランチャーワン」を発表、CNESとダッソー社の空中発射ロケットによるMYRIADE衛星打上事業や、英国CST(Commercial Space Technologies Ltd)社によるマーケティング会社が登場している。

 またアメリカは即応型宇宙政策により小型衛星産業(SPACEDEV社、Microsatsystem社等)を育てて世に放ち、Orbcomm-2やIridium-nextなど民間宇宙システム構築を促せて欧州を追う体制となっている。

 ロシアも衛星開発が多少遅れているものの、部品レベルで市場参入する一方、ロシア版GPS衛星「新型グローナス」の小型化を進めて技術育成している。ランチャーもICBMランチャー市場による商業宇宙の”旨み(金銭的・海外情報収集的)“を知ったことからドニエプル信頼性回復やユニバーサルモジュール(技術更新)開発に着手、具体的にはSOYUZ新世代化(Fregat-MT、NK-33採用など)、Angara、POLYOTロケットの戦略を立て始めた。
 つまり産業衛星システムは小型・高性能衛星でなければ採算が取れないという事情から、「低コスト・小型衛星バス・ユニバーサルランチャー」の世界競争が勃発、革新的宇宙システムを求めて各国の情報収集を実施しながら、コンセプト研究を繰り返し、自国の宇宙産業が衰退しないよう「様々な施策」を展開している。

◎まとめ
 民間ロケットFALCONコンセプトが「SOYUZ/温故知新」&「オリジナル戦略」であり、「価格&コンセプト破壊力」ある戦略的モジュールランチャーであることが判明した。また液体エンジンが「大出力・大型・高コスト」から「大出力・小型・低コスト」へコンセプトシフトしている。
 固体ロケット技術も維持するどころか未来戦略(推薬更新/セミ・フライバック/低毒化等)まで展開されている動向が見られ、ARES-Iの1段目固体モータは20年ぶりの大型固体モータ開発であることが判明、民間が利用する計画も出てきているため固体モジュールランチャー開発競争も拡大しつつある。
これら事情から世界各国の既存ランチャーは戦略練り直しを迫られている。アメリカは勿論のこと、欧州とロシアも戦略的モジュールランチャーのコンセプト研究を展開、セミTSTOの具体化検討も開始されている。
 一方、日本には旧態コンセプト(LE-7、LE-X)しか存在せず、ベースラインエンジンがない。加えて「H-2シリーズ、H-X、GX」計画は、コンセプト破綻しており、もはや継続不自然なカンブリアランチャーとなっている。JAXAでは戦略立案力が不足しているため、新組織設立と宇宙局による再生戦略が必要だ。
具体的には、固体も液体も再使用を含めた将来ロードマップ戦略の検討、基礎知見獲得(H-2Aブースターと1段目回収など)、液体エンジン再生(国際提携含む量産戦略)、コンセプト研究等を徹底的に練り直し、「お手軽宇宙システム」を目指した日本再生戦略(小型万歳)の策定が最優先だろう。


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