ナノ・マイクロスペース戦略(将来宇宙システムの日の出)
   (エアワールド2009年1月号抜粋):詳細は雑誌「エアワールド2009年1月号」をお買い求めください

 本稿では、各国で進む小型高機能の衛星関連技術動向に注目し、日本が必要とする将来の防災・環境気象衛星の基盤・基礎技術となるナノ・マイクロスペース技術を紹介、衛星小型化が一向に進まない日本の問題点にも迫りたい。

◎将来防災宇宙戦略の策定(低コスト・小型・高機動)

 2008年8月29日、ついに民間地球観測衛星群であるRapideyeが打上成功した。本衛星群は5基で構成され、それぞれギリシャ語でTACHYS (英語ではRapid)、MATI(同じくEye)、 CHOMA(Earth)、CHOROS (Space)、TROCHIA(Orbit)と命名された。衛星取纏めはカナダのMDA社、衛星バスはSSTL、センサーはドイツJena-Optronikで構成され、衛星1基あたりの製造費は$6〜7million(約6億〜7億円)、ロケットはドニエプル(約30億円程度、5基同時打上)という、小型高機能衛星&ユニバーサルランチャーという経済的な組合せで実施されている。この衛星の目的は「穀物生育、生産量予測」「地図作成・測量」「自然災害評価やステレオ観測による3次元視」であり、衛星1基あたりの解像度は6.5mで観測幅80kmを1500kmにわたって撮像可能である。つまりRapideyeは高解像度を狙うのではなく、広い地域を見渡す仕様で製造されている。これは衛星目的が示しているように、比較的解像度を必要としない“穀物の発育監視による穀物取引の先読み利用”や“衛星から取得出来る地理情報や地質情報による新たな農地開拓”などへターゲットを絞り、地球環境の変化による食料不足&争奪戦や産地移動における情報収集に利用されたり、ハリケーンやサイクロンにより被害を受けた場合のダメージ・アセスメント(被害状況把握・被害額&復旧日数の算定)に使用されたりと、利用・コスト・性能・基数のバランスを狙った絶妙な高機動コンセプトで立案・製造されている。しかも、ドイツ企業が中心となって民間で資金を集め、衛星作りはカナダ企業にしながらバスは英国、センサーはドイツという競争力のある多国籍企業体制で実施しているのも注目すべきだ。

 また、小型高性能の英国地球観測衛星TOPSATも衛星ミッション寿命が1年としてあったが、「3年経過しても順調である」と国際会議で公表され、いよいよ小型高性能で経済的な宇宙システムが勝利する時代となりつつある。この新時代に対して10億円以下ランチャーであるFALOCN-1が4度目の挑戦で打上成功、ロシアのICBM派生ロケットが市場を独占していたユニバーサルランチャー市場にも明らかに変化の兆しが見え始めている。

 
5基のRapidEYE(Rapideye)   Dneprロケットへの衛星搭載作業(tsenki.com)

 災害確認手段として光学・高頻度のRapideyeや解像度が良いTOPSATがある中、防災宇宙システムとして周回軌道や極周回軌道へのニーズも高まっている。それは、静止気象衛星のバックアップ的な役割だ。過去の誌面(2007年6月号、2008年7月号)で紹介したように、高度36000kmにある静止気象衛星網は監視塔のように地球全体を撮像出来るが、A-Train衛星群、DMSP、MetOpらは、水質・大気塵・CO2・雲(水蒸気)など、静止気象衛星では観測できない、もしくは詳細観測を目的として運用されている。近年のゲリラ豪雨や大気汚染状況など、静止気象衛星では捉えきれない事象を観測、必要に応じて警報を出せる体制を目指して、各国では様々なセンサーを衛星へ搭載、打上げているのだ。

 また、周回軌道と極周回軌道の使い方にも違いがある。例えば、地球全体を詳しく観測したければ、極周回軌道の方が良い。だが、「台風発生地域を徹底観測したい」、「日本付近を徹底監視したい」という場合は、北極・南極付近を飛行しない傾斜角45度付近の周回軌道を打上げれば良い。このように衛星ミッション目的により軌道利用の意義が違うのである。今後は、環境気象観測における戦略を立てる上でも、観測目的に応じて軌道計画も練る必要があるのだ。

 そして日本が重大な局面にある、静止気象衛星(ひまわり後継機)の戦略も重要だろう。近年の劇的な気象変化を捉えるには、静止気象衛星の性能向上は欠かせない。急速に発達する低気圧を捉えるには、1時間〜30分に1回程度の画像取得(現状のMTSAT)では無理がある。少なくとも撮像間隔を短くして解像度を向上する必要がある。よって、センサー開発・衛星バス利用・インフラ整備・商業ランチャー利用を分けて開発・入札させるのが良いだろう。事実、海外の気象衛星はこのようなやり方で進めている。ロシアはアメリカ企業(Space Dynamics Laboratory)と共に気象センサーを共同開発している。日本も短期的には輸入品であっても、長期的にはセンサーを国内外企業と共同開発して国際市場へも対応できる体制を目指す、「地道な積み上げ戦略」、「コスト管理」、「要求性能の決定」を立ててトータルコストを最適にした戦略が必要だろう。

◎防災・静止気象・周回気象・極周回気象衛星は“内閣府宇宙局所管”へ

 このような戦略から、防災衛星・静止気象衛星・周回気象衛星・極周回気象衛星というデザスター・スペースは内閣府宇宙局所管衛星として進めるべきだ。現在、“静止気象衛星を管轄する国土交通省管轄の気象庁”と、“地球観測衛星を計画立案する文部科学省管轄のJAXA”という2つの組織が個別に予算を申請している。しかし、国民生活で最も重要な静止気象衛星は予算の少ない気象庁が管轄している一方、技術開発機関のはずが“センサー輸入品”で“メーカーマル投げ”のJAXAは予算豊富だが成果が乏しいのが現実だ。縦割り行政によって宇宙予算が本来使われるべきプロジェクトへ使われず、逆に効果的ではないプロジェクトに無為に消費されている事実は読者の皆さんはもう理解しているはずだ。詳細は後述するが、これからの防災や気象(地球環境観測)時代を見据えれば、組織体制も予算配分も最適ではないのは明白であるため、来年設立されるであろう内閣府宇宙局が一括で所管して、国際情勢を見ながら「民間レベルですべきこと」、「国家レベルですべきこと」、「大学及び研究機関ですべきこと」を分けて「短期・中期・長期的にできる衛星・出来ない衛星・育てるべき技術は何か?」という積み上げ型戦略を立案して実行できる体制が理想だろう。これは、始動した宇宙開発戦略本部による立案が必要だが、重要なことは“JAXA主導体制”とするのではなく「JAXAは戦略実行の一組織に過ぎない」という観点を持ち、「他のセンサー開発組織の専門家」や「基礎技術を地道に育て上げられる研究機関(ISASや大学組織)」や「自社利益に執着し過ぎない、まともな視野をもったメーカー」等を仮想的に集めた総合的な防災・環境気象宇宙戦略を策定して欲しいものだ。

◎新世紀国際防災宇宙標準システムの実用化競争

 だが将来の防災・環境気象衛星は必ずしも“既存技術の延長”で実施されているわけではない。海外では“今出来る技術水準”を見ながら“将来の基盤・基礎技術”を育てる戦略も描いている。その戦略的開発をしている国はアメリカ・フランス・カナダ・イスラエル・ドイツ・イギリス等である。アメリカでは過去の誌面で説明したように大学・空軍・NASA・大手企業などが実施中で、フランスもCNESが新たな地球観測計画を発表、イスラエルもナノ衛星を100基単位で打上げるコンセプト研究を実施、ドイツはRapideyeに加えてBREMSATなどで新世紀宇宙システムの技術開発を進めおり、カナダでも小型衛星育成ビジョンを発表している。これら動向を分析すれば、「自国でできること、できないこと」を念頭に置いて「短期的に出来ること、中期的に出来ること、地道に築きあげて長期的に出来ること」を考えて実施されている。では、新世紀の動向を見てみよう。

◎フランスの13〜20基衛星群(e-CORSE)計画案

 CNESでは地球観測衛星の大量コンステレーション(衛星群)を計画している。これはe-CORSEコンステレーションとされ、1m解像度、観測幅28kmの光学衛星を13〜20基打上げる計画で、2013年-2016年までに打上げると計画している。市場ターゲットはインターネット用配信を目的としており、おそらく“宇宙中継“用だろう。Google Earthの生中継版(近リアルタイム)のような戦略で、TV局やインターネット中継企業らの出資が見込まれる。プライベート・スペース時代を見据えて、CNESは積極的にアクションを起こしているようで、「この計画は収益性が求められるので、できるだけ早く衛星を打上げる必要がある」とCNESのHPで述べている。

 衛星重量は300kg、設計寿命6年、高度600km、電力120Wとしている。また、ロケットはSOYUZを使用して13基一括打上を計画している(Arianespace社がSOYUZを10基分大量発注した報道との関連は不明である)。ミッションコストは衛星製造、打上費込みで400millionユーロ(約550億円)としている。実際に行われるかは不明だが、利用ターゲットを一般人向けにしている点は興味深い。製造はSSTLへの対抗馬でCNESが育成しているMYRIADEベースかもしれない。これら衛星は震災や気象被害の中継画像配信に加え、ミャンマーや北朝鮮など、”報道の自由“が無い国で何が起きているのかを一般人へ配信する能力もあるため、マスメディアは恐らく出資してくる可能性がある。

 さらには125基打上げる計画もある。これは実現不可能と思うかもしれないが、「衛星コストが低く」、「官民問わず、利用権や衛星数を購入すれば、他の衛星とも情報をシェアできるというオーナー制」コンセプトなら可能性があるかもしれない。CNESが取り仕切る以上、「民間ベースだけ」ではなく、「ALSAT-2のように資源獲得のための宇宙外交」や「欧州地球観測衛星の情報シェアシステム(GMES)のような、欧州域外への新たな宇宙同盟体制構築」の意図が含まれているかもしれない。やり方次第だが、高速通信技術・軌道維持・地上アンテナ局の最適配置など、コストと性能を追及し続けられれば、机上の空論というわけでもない。このように、100%官需ではなく、利用者の出資も考えたコンセプトは学びたいものだ。


e-CORCEコンセプト(CNES)           最大125基にするコンセプトも(CNES)

◎SSTLがイギリス国防省向けに解像度50cmの衛星を複数売り込み

 SSTLはTOPSAT技術を開発した上に、光学カメラ企業を買収して内製化した上で開発したナイジェリアサット-2技術を向上させた、新型の高解像度衛星をイギリス国防機関(RUSI)へ提供する計画を発表した。衛星名はSkySightで、計画案によれば最大解像度1mクラスのSkySight-1衛星を2基製造し、さらに最大解像度50cm以下のSkySight-2衛星を2基製造、合計4基の衛星を製造する。打上ロケットは先日成功したSPACEX社のFALCON-1の能力向上バージョンFALCON-1Eを使用するとしている。これら衛星の画像受信は撮像から6時間で入手可能とし、緊急時は移動式の受信アンテナが4台展開することで、わずか30分以内に画像入手可能となる。

 この他の衛星の仕様についてはまだ不明だが、新型の即応型宇宙システムを「性能と数」を加味して提案、民事利用も可能な上に衛星製造と打上費、及び運用サポート3年分の費用込みで、100millionポンド(約190億円)としているのだ。これは、衛星費を含まないH-2Aロケット1回分の打上費用(製造費・特許支払費・射場維持費・人件費等)よりも安い。また情報収集衛星4機に加えて打上費と運用費に3000億円以上かかる事情と比較すればコスト競争力もある。だが、これでも「SkySight計画はまだ高価」という意見もある。日本は今後の防災・環境気象衛星システムの構築は費用対効果の悪い計画を見直すことから始める必要があるだろう。

 このSkySight計画は、TOPSAT(2.5m解像度、130kg)とナイジェリアサット-2(1m解像度、300kg)という開発実績から見れば、技術的に到達できる可能性は十分あるだろう。そして解像度も十分だが気になるのは観測幅だ。ナイジェリアサット-2では、マルチスペクトラルモードで撮像すると、解像度は2mで観測幅は最大300kmと広い。TOPSATの15km観測幅と比較すれば、飛躍的に光学カメラシステムの能力は向上していると分析できる。SSTLはEADSの傘下にあるが、着実に技術進歩と供給販売戦略を進めながら、利用者が必要とする宇宙システムを提案している。


SSTL-300(SSTL)     FALCON-1とFALCON-1eの比較(SPACEX)

◎アメリカもさらなる追撃体制(小型衛星専門企業を新設)

 イギリスやフランスが光学衛星をベースにコンステレーション打上げする時代に、即応型宇宙システム(TACSATシリーズ)や低コストランチャーFALCON-1等を開発しているアメリカ勢もさらなる追撃体制を整えている。それは小型衛星企業の登場だ。アメリカにおける即応型宇宙開発は、「短納期・高機能・低コスト」がキーワードであるが、それを実現するためには、現在のパソコンと同様に「プラグイン衛星」を作ることを目的としている。これら仕様・戦略の中身は即応型宇宙会議では一部のみしか公表されていないが、今のところMicrsat Systems社(Sierra Nevada Corporationが買収)に加えて、General Dynamics社、SPACEDEV社、Orbital社、Aeroastro(Radyne Corpが買収)、Swales社(ATKが買収)らが存在している。また、大手もBOEINGもナノ衛星開発を実施している。しかし、どちらかといえばイギリスやフランスのように国外販売戦略展開が出遅れている感もあることから、戦略的な小型衛星マーケティング企業の登場はあってもおかしくない。だが、アメリカ特有の問題もある。宇宙技術で幅広い実績と技術力を有するアメリカは、先頭を走るが故に技術輸出を厳しく制限している。これは国際武器取引規制(ITAR)といわれ、米国内企業が海外企業と取引する場合には、必ず鬼門となる問題だ。確かに“悪の組織”へ宇宙技術が漏洩することは避けなければならないが、イギリスやフランスが既に宇宙外交・プライベート・スペースを始めている中で、アメリカの市場や権益が失われる事態となれば、戦略変更の必要がある。この背景もあるようで、最近では情報管理能力のある空軍退役者や大学及び政府機関(通信や宇宙ファンド政策担当者)のメンバーを集め、小型衛星企業「WP Aerospace社」を設立した。この企業の市場ターゲットは10〜500kgの衛星とし、民生部品利用やマイクロ・ナノテクノロジーで衛星のコストを従来よりも50%ダウンし、地球観測・通信・サイエンス分野へ衛星を設計・製造・デリバリーするサービスと米国内外へ提供するそうだ。つまりアメリカが、政府組織を複数巻き込んで小型衛星企業を育成しようとしているのだ。

 このWP Aerospaceのキャッチフレーズは「The Next big thing in space … isn’t big at all(宇宙における次なる大きな潮流は、、、全てが大型でないということだ)」という、マイクロスペース産業の潮流を宣言している。今後どのようなビジネス展開をしてくるかは不明だが、少なくとも言える事はアメリカも小型衛星産業育成と欧州追撃体制を着々と進めているということだ。

 
Boeing社もナノ衛星開発(Boeing)             民間によるマイクロ衛星開発(SPACEDEV)

◎イスラエルはナノ衛星産業育成(ナノ衛星協会を設立)

 小型高性能衛星EROSで世界を驚かせているイスラエルも、小型衛星の基盤技術強化を進めている。それは、小型衛星の育成とアプリケーションを模索し、学術と商業利用を広めることを目的とした「ナノ衛星協会(INSA)」である。この協会組織は2006年に設立、2007年から国際会議化してイスラエルの宇宙技術交流の場として展開を始めている。ホームページは「http://insa.netquire.com/」であるが、このトップページで流れているYOUTUBE動画は興味深い。ここでは「良い潮流は、小型パッケージが進んでいること」、「地球撮像は、1基でもなく、2基でもなく、100基のナノ衛星が舞う」、「INSAは既存概念を打ち破る」、「カウントダウンは始まった」、「ナノ衛星・大きなアドバンテージ・低いコスト」と謳っている。

 では、実際にナノ衛星(10kg以下)で何のプロジェクトを進めているのだろうか?調べてみると、意外なプロジェクトが出てきた。それは、ナノ衛星バスシステムの開発に加えて「ナノ衛星に原子時計を搭載するミッションNAPS」と、先月号で紹介したバイオ衛星GENEBOXのイスラエル版「バイオ実験ナノ衛星ミッションWASP」というものだ。

 NASPは、衛星にマイクロマシン(MEMS)の詰め合わせパッケージを目指しているようで、MEMSジャイロ、GPSレシーバー、バッテリ、太陽電池などのバス機器に、ルビジウム原子時計と送信機を搭載、軌道上に打上げることで欧米路各国の測位衛星(GPS・Galileo・GLONASS)技術に関する知見と、測位技術の修得を行うようだ。つまり「10kgのナノ衛星でGPS衛星を作ってみる」というコンセプトを掲げている。原子時計の周波数安定レベルにもよるが、ある程度の測位精度は出る可能性がある。また原子時計もアメリカでは国立標準技術研究所(NIST)が米粒サイズの原子時計開発に成功しており、小型化は着実に進んでいる。イスラエルの同様の開発を進めている可能性はある。


ナノGPS衛星NASP(INSA)               バイオ実験ナノ衛星WASP(INSA)             MEMS原子時計(NIST)

 次にWASPだ。WASPは先月号で紹介した、宇宙ホテル“ビゲロー試験機”によるバイオ実験衛星モデルGENEBOXと同じコンセプトである。WASPは「ナノ衛星に与圧カプセルを搭載、蜂の生態・水・食物実験を観測するミッション」である。つまり、JAXAがISSで利用者を募っているバイオ実験を、CUBESATの2連掛けしたナノ衛星でやってしまおうとするコンセプトだ。資料を読むと、小型の与圧カプセルに実験ミッションを搭載、打上げ後、数ヶ月程度の間に生物実験を実施、そのカプセル内部を可視光線・赤外線のCCDカメラで観測し、観測データを地上へ送信するという。当然ながら、WASPは回収不能でありISSと違って制約は存在するが、費用対効果は抜群かもしれない。宇宙実験はコストがかかるという概念を根本から崩そうとするバイオ実験ミッションWASPである。JAXAから見れば、悪夢のようなミッションかもしれないが、(ISSのような)フル規格ではなくユニバーサル規格で着々と宇宙環境利用を進めるイスラエルの戦略は注目すべきと同時に、日本も国内の大学CUBESATを束ねる大学宇宙工学コンソーシアム(UNISEC)ではなく、戦略的に学術機関・民間企業等を集めた新たなナノ衛星育成体制を作る必要があるだろう。イスラエルが示しているようにナノ衛星のもたらす可能性は計り知れない。ナノテクを取り入れて、短期・極小観測衛星を実用化してPICO・NANO気象ミッションとして大型台風やハリケーン時に防災利用することができるかもしれない。

◎カナダのナノ・マイクロ衛星育成戦略(産官学チームによる基盤技術育成)

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カナダ衛星育成戦略ビジョン/ナノ衛星をベースに産業育成(CSA)


CANX-4,-5で精密軌道制御(UTIAS)       民間企業のCANX計画参加(UTIAS)


CANX-3でナノ衛星バス開発(UTIAS)         小型衛星で宇宙計画を進めるカナダ(UTIAS)

◎ドイツも新型の衛星バス戦略(新型Flexbus)

 欧州の中でも高性能の合成開口レーダ衛星SARLUPEやナノ衛星BREMSATを開発するドイツも、小型衛星ミッションへ向けて高解像度カメラ衛星と、光の波長を細かく区切って観測するハイパーセンサー搭載が可能な衛星バス戦略を発表している。その企業はSARLUBEを開発したOHB Systemではなく、SpaceTech International 社(STI)だ。このSTIは過去の紙面(2008年8月号)で紹介したように、ドニエプルロケットの販売やエンジニアリング・営業をしている企業であり、商業マーケットにおける戦略展開で実績を挙げている。この企業にATKが提携・買収を考えているという情報は先日紹介したが、STIでは地球観測衛星の商業販売も目指している。それは、過去実績を挙げたDornier Satellite Systems社(現在はEADSに吸収されている)の衛星Champ 及びGRACEの使われた衛星バスFlexbusをベースに世代交代させ、なんと台湾宇宙機関NSPOへ商業販売している。その衛星名はARGO と言われ別名“RapidEye 6”とも言われている。そう、先日打上げに成功した5基のRapideyeのセンサー(Jena-Optronik社)をそのままモジュール採用しているのだ。ARGO(RapidEye 6)は2009年にFALCON-1(675km、SSO)で打上予定である。

 STIでは、これら販売供給実績を元に、Rapideye解像度よりも優れた高解像度衛星と、ハイパー衛星など、衛星バスをベースとした様々なミッション提案している。そして、商業販売価格はバスのみが20millionユーロ(約26億円)、ミッション装置込みの価格が30-60millionユーロ(約39億円〜78億円)としており、さらには“SSTLのような(宇宙技術の無い国への)技術導入プロジェクト”も提示している。つまり、地球観測衛星の商用販売提供に加えて、支払額に応じて技術そのものを移転することもやっているのだ。恐らく、台湾は技術導入もしているのかもしれない。これは、JAXA主導の地球観測衛星(防災衛星など)開発体制が終焉していることを意味している。


FLEXバスのよる高解像度光学ミッションとハイパーミッション、技術移転も(STI)

◎新世紀技術(宇宙ナノテク)を開発する各国、その先には

 以上、各国の新世紀衛星開発の動向だ。他にもあるがスペースの都合もあるので後日紹介するが、近い将来に実用レベルへ達するであろうSkysightやe-CORCEは利用者側のニーズをベースに開発計画を練っている一方、STIでは、既存センサーをモジュール採用する一方で性能向上版や技術移転サービス戦略も行われている。さらに各国は新世紀へ対応した衛星技術も着実に開発・進歩している。例えばNASAのMEMS部品開発では

・ 短期スパン(6-9ヶ月:CCDを使った太陽センサやスターセンサ、GPSレシーバー)

・ 中期スパン(12-15ヶ月:トランシーバー、コンピュータ、慣性姿勢計測装置)

・ 長期スパン(18-24ヶ月:マイクロ・ナノスラスター、小型軽量高性能バッテリ)


と、タイムスパンに分けて開発している。これをナノ衛星バスに搭載、実験を行う一方で、ナノ衛星の“姿勢制御、軌道変更(加速)、ペイロード比率の向上(=バス小型化)、バス価格は量産で$1million”という段階的で戦略的な基礎技術を育成しているそうだ。

 またSSTLも欧州測位衛星試験機GIOVE-Aに2.2kgの小型放射線計測機を搭載、測位衛星軌道(中高度軌道、23000km)における耐放射線を実測、小型部品開発を着実にス占める一方、STIでも衛星バスだけではなく、小型・軽量部品開発を着実に行っている。

 さらに、将来の衛星群(コンステレーション)技術の構築へ向けて、はやぶさイオンエンジンで一躍有名になった電気推進よりも推力レベルが低い電気推進器の開発も進めている。それはLISAであり、宇宙空間における測定が困難とされている重力波を検出する物理実験のため、衛星同士が数万キロ離れて互いにレーザーを送受信することで、重力波を計測してみようとするミッションだ。このLISAミッションでは衛星の姿勢を超精密にコントロールする必要があるため、はやぶさイオンエンジンの“mNクラス”の推進力よりもさらに1000倍も低い“μNクラス”の電気推進(FEEP、Colloid、フォトンスラスター)を開発している。もしLISAミッションが成功すれば、次はXEUSという光学宇宙望遠鏡を開発し、小型でも超大型望遠鏡に匹敵する可変焦点距離型望遠鏡を作りたいとESAは発表している。宇宙航行用の電気推進という発想だけではなく、欧米では電気推進の技術進歩により新たなコンセプト・ミッションが登場しているのだ。

 以上、アメリカに限らずカナダ・イスラエル・欧州などのMEMS部品開発やマイクロスラスター及び新型電子機器の開発は、従来宇宙システムの小型軽量化やコストダウンに加えて、新たなミッション需要を生み出す「宝箱」となっている。


NASAの段階的MEMS開発(NASA)


 2.2kgの小型放射線観測機(SSTL)            衛星群維持に必要なμNスラスター開発(ESA) 

◎小型衛星であるほど、その国の基礎技術が判明してしまう事情も

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小型衛星における利益とは(DARPA)


小型衛星に必要な基礎部品開発(NASA)

◎センサー開発もできないJAXA(GOSAT基幹センサーが輸入品)

 JAXAのホームページによると「二酸化炭素観測衛星“いぶき”はJAXAと環境省が共同開発するプロジェクトで、JAXAは衛星と観測センサの開発を、環境省は主にデータ利用を担当します。」と書いてある、しかし、二酸化炭素観測衛星にして、その重要で心臓部ともいえる二酸化炭素検出装置はABB社という米国企業からの輸入品という驚くべき事実が判明した。しかも、センサーシステム試験も国内では出来ずに海外で実施したそうだ。

 JAXAでは旧NASDA時代から開発したセンサーをADEOS-1、ADEOS-2、に搭載、衛星自身は直ぐに故障して廃棄されたが、センサーの方は米国衛星(AQUAやTRMM)で採用された。それなりの費用対効果は挙げたと言えるだろう。しかし、小型化のトレンドについて行けず、インタフェースも旧式で合わないことからアメリカの次世代環境気象衛星計画から搭乗拒否された。このためJAXAは旧式技術をそのまま引きずってヨーロッパ衛星へ搭載する方向で検討が進んでいるが、バスの割にセンサーが大型過ぎなのは創造図から推測でき、センサー開発能力低下が進んでいるようだ。それを裏付けるように「継続的観測が必要」と謳ってCalipso・PARASOL・OCOのような次世代環境気象衛星が登場している中、80年代技術(アナログ)で延長したGCOMやGPMを提案しても、デジアナ・フルデジタル衛星時代ではコンセプトアウトなのは明白だ。そうした情勢下に、新しく出てきた二酸化炭素衛星GOSAT“いぶき”は「センサーさえ、まともに開発してない」という事実が判明したのである。

  
GOSAT(いぶき)の心臓部ともいえる二酸化炭素検出装置は輸入品(ABB,JAXA)

 つまりJAXAにはセンサー開発能力がないか極端に低下している(ISASの理学研究者は別だが)。加えて、衛星バス・ランチャー・トータルコストも国際水準以下になっているのである。この事実を隠すかのように、JAXAメールマガジンでは[温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)の愛称が「いぶき」と決定しました。「いぶき」は、女性も男性も苗字もあるので、はたして「ちゃん」なんでしょうか「くん」なのでしょうか、はたまた「さん」なのでしょうか。なんだかとても気になります。]とマスコミ受け、一般人受けするネタでお茶を濁している。

 日本国民に知られないためにマスコミへ“聞こえの良い情報”を流しても、国際宇宙社会では通用しない。欧米の宇宙専門家からは当然ながら事実を把握されている。世界第2位の予算を使って成果を出せない、悪いベンチマークとしてJAXAを評価しているだろう。そんな中で「JAXAブランド」を実施しても国際宇宙社会では日本の地位は向上しないのである。

◎ISASと経済産業省が小型衛星バスを開発しているが問題は山積

 だが、日本として技術開発戦略として建て直すべき「センサー開発・小型部品開発・小型衛星バス開発・低コストランチャー」のうち、小型バス開発については一筋の光が差し込んでいる。それはISASや経済産業省が始めていることにある。しかしこの流れは主流と言えず、今後はさらに強化・育成する戦略体制が必要であり、バス機器(MEMS部品・新型太陽電池・電気推進・プロセッサ等)の基礎技術育成戦略の策定(技術とタイムスパンを鑑みた)とセンサーの小型化開発及び費用最適なユニバーサルランチャーによる高頻度実証が必要だろう。

 これはサイエンスでも実用ミッションへも波及できるため、今後ISASはJAXAから分離し、文部科学省だけではなく、内閣府や経済産業省らとも協力するJPL戦略方法も考えられる。

 そして内閣府が全体省庁をまとめて公共宇宙の担い手として重点宇宙(防災・環境気象)を担当し、民間の宇宙活動の担い手は経済産業省が担当し、「JAXA独占の高コスト宇宙活動」を是正する方法も考えられる。何でもかんでもJAXAが首を突っ込むのではなく、アメリカやヨーロッパのように、宇宙機関(JAXA)は全体の1つに過ぎないという視点で戦略を立てる必要があるのだ。

◎周回地球観測衛星はナノ・マイクロ技術が基盤になる

 衛星の作り方が変わってきている。各国がナノ・マイクロ衛星技術を育成している背景には、コストの安くて軽量な高性能衛星を作らねば国際技術競争に敗北するからであり、そのためには小型部品を作り上げ、モジュールやユニット技術の高度化を図ってバスを開発、センサーも小型・高性能化しながら、販売営業戦略(商用・外交利用など)を立てながら量産による低コスト化を図り、国際的地位を築く“新世紀宇宙戦略”を実施している。

 また、これからの周回衛星のニーズ変化もある。かつて周回衛星の代名詞である地球観測衛星は、軍事利用(偵察)を目的に開発・打上げられた。そして様々なセンサーが登場し投入されたことで、気象予測・国土地理利用・農作物の植生把握など民事利用の幅が広がり、解像度の悪いものから市場へ出回ることになった。これら利用の幅が広がることで、センサーの高度化が進められ、ついには民事ベースで高解像度衛星(イコノス、クイックバード)が打上げられたのである。

 しかしこれは、解像度が高いこともあり、国家による購入が大半を占め、真の商業化はまだなされていない。そして最近では、解像度がある程度悪くても、農作物把握や防災利用等の市場ターゲットを絞った地球観測衛星群Rapideyeが5基打上げられ、民間による宇宙システムの販売が始まっている。

 今後は、“宇宙システムを買う”動向に加え、“機能を買う”時代もやってくるだろう。欲しい情報を得るために、必ずしも国家宇宙機関がセンサー・衛星バス・ロケット全てを開発・購入せず、センサー依頼搭載(次世代IridiumのNOAAセンサー搭載)や宇宙電話局ORBCOMMへ観測データ転送(RUBIN-X)する機能・サービス購入時代がやってきている。それは静止通信衛星が体現している。

 かつて静止通信放送衛星は、国家開発・打ち上げ利用から始まり、国際コンソーシアムを通じて最終的には民営化され、今では多くの静止通信衛星を民間が運営している。そして通信枠である増幅器(トランスポンダー)は、利用権が取引所で売買されている時代だ。

 ある国の取引所では、マスコミがテレビ中継の際、“利用時間帯と通信容量”を利用するため、取引所で競り落とす時代となっている。レンタカーのように使いたい時に利用枠を買う体制が通信放送衛星の世界では常識となっているのだ。地球観測もセンサーによっては“利用枠・機能”を買ったり費用を払ってセンサーを搭載してもらう時代がやってくるのだろう。

 そうした時代に、JAXAのように80年代技術延長の大型・高額衛星に加えて、国威ランチャー(H-2A・H-2Bも市場で通用しない)ではどうしようもない。このままの日本の宇宙開発体制では未来がないのは明白だ。今後は国際情勢を分析しながら日本の宇宙企業が国家予算に依存しなくても一人立ちできる企業を育成するため、「納期・性能・コスト」が国際レベルとなるために、ナノ・マイクロ技術を基盤とした宇宙開発利用体制が必要だと考えている。そして既存の宇宙体質(旧NASDA体制)で無為に予算を浪費し続けるJAXAは「歴史的役割を終えた」と見られ、大改革の時期に来ていると考えている。きっと宇宙基本法の登場もそれを目的にしていると信じたいものだ。

◎新世紀へ向け重点宇宙ビジョンは内閣府立案へ

 組織も宇宙システムも永遠に続くものではない。これは歴史が証明している。既得権益も同様だ。そして近い将来、JAXAの抜本的改革は行われるだろう。

 JAXAという技術開発機関の能力的・戦略的限界も理解する必要がある。センサー技術開発能力・ランチャー戦略不足・衛星コスト高のJAXAを中心に国内組織を一本化しても、何も変わらない。

 三機関統合時に旧NASDAがISASを飲み込んだことで、日本で唯一費用対効果の高い宇宙組織が消滅させられ、能力不足の職員がISASへ介入したことでISASレベルも低下してしまった事実がそれを証明している。そして宇宙科学が壊滅的なダメージを受ける一方、世界でも打上手段に加えて衛星でも価格破壊が起きており、JAXAの進める宇宙システムが時代へ適合していない事実が露呈している。この事実から見れば、JAXAを日本の宇宙代表組織として存続させるのは得策ではない。しかし、問題のある組織を解体するのも容易でないのも事実だ。よって、日本が抱えている宇宙負債は後に回し、日本として重要な「ナノ・マイクロ宇宙技術育成、温暖化時代への防災・環境気象宇宙ビジョンなど」は内閣府が担う体制として、JAXAは「日本の1つの宇宙機関に過ぎない」という体制にし、

・ 内閣府が国として重点部門を所管して、戦略立案

・ 輸送手段はユニバーサル(内外区別なく提案も調達もする)

・ 納期・コスト・性能を重視


した宇宙空間利用技術を追求するため、内閣府がNOAAやCNESなどと連携して「堕落した日本(JAXA)ではない、新たな戦略ビジョン・行動力・意思決定」で新世紀の日本宇宙体制を構築すべきだろう。

 よって、衛星・打上手段(ロケット)・運用のあり方も変わってくる。国際動向から見れば、輸送手段は国際調達、衛星は仕様公開の国際入札、運用も国際入札で、経費を別請求するようないい加減な宇宙システムは許されない。今後は、「(高コストの宇宙システムを)政府一括購入(アンカーテナンシー)してくれ」、とか「(国産でもないのに)継続・技術維持が必要」という甘え体質を脱した“基幹宇宙システムの呪縛から離脱“が必要だろう。国産でもないものを国産と偽って技術維持を謳う”高コスト・産地偽装宇宙システム“とは決別しなければならない。ランチャーも衛星も国際レベルに到達してから「アンカーテナンシー」を謳うべきであり、今の日本の宇宙組織やシステム単に維持・看板変更するだけでは何も変わらないのである。


◎ナノ・マイクロ宇宙戦略案(内閣府所管)

 将来の防災・環境気象衛星システムを日本として確立するのに最低限必要なのは、ナノ・マイクロ宇宙戦略である。ここで基礎技術獲得を怠れば、国際水準の衛星システムは永遠に作られない。CUBESAT技術も、日本では東京大学と東工大学が世界に先駆けて成功したが、「過去の栄光は古い」と言わんばかりに、世界は大学レベルと見せかけながら、実態は民間企業や軍、宇宙機関が出資・支援した小型高性能の衛星バスシステム・ミッション機器(センサー)・部品(推進機や姿勢制御装置など)開発が進んでいる。大学というマークし難い存在を使って海外では新世紀技術の育成が進んでいる。アメリカでも上記のCAN-Xのように衛星同士のフォーメーションフライトや自律飛行技術の実験など、小型高機能衛星の開発が行われ、通信装置の小型化、衛星同士のBluetooth(ブルートゥース)通信、MEMS磁気計、GPSレシーバーなど着実に機能向上が進められる一方で、CUBE技術をベースに大型サイズの衛星開発も行われている。


CUBE衛星も次第に性能向上&サイズ最適(AIAA)  ナノ衛星は新世紀宇宙技術の実験場(AIAA)


次期NASAバイオ実験衛星O/OREOs(NASA)     ナノスペースの打上枠を確保するアメリカ(NASA)

  これら機能向上により、衛星バスの小型高性能化が実現できれば、全体衛星重量の削減につながり、ペイロード比率向上にもつながる。これら基礎技術を磨いておけば、モジュールユニット衛星やプラグイン衛星の時代へ対応できる基盤が確立できるのだ。よって、H-2Aの混載搭載の有効活用も必要だが、ナノ・マイクロ宇宙技術を育成するために、観測ロケット技術の低コスト化と高性能化(衛星ランチャー化)は進めておくべきだろう。そう、過去の紙面で紹介したRNSLV(Research Nano Space Launch Vehicle)が鍵を握る。だが、単なるISAS観測ロケットを活用して国内に留まるのではなく、国際提携も含めて実施するのが良いだろう。利用・納期・性能・量産・コストをベースに内閣府戦略本部が募集・提案をかけるのが良いかもしれない。これら基礎技術を地道に育て上げることで“失われた技術開発能力”を復活させ、将来の温暖化対応における防災・環境気象衛星システムへ対応できる体制を目指すべきだ。

◎輸送手段のユニバーサル利用化(内閣府所管)

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衛星の混載はもはや当たり前(STI)                    NASAは様々なランチャーを利用(NASA)

◎まとめ

 “フル規格衛星”から“コマーシャル規格”へと世界がシフトしている。また、ロケットに限らず衛星も小型化が進んでおり、国際市場対応ができない衛星バス、宇宙部品、ランチャーは淘汰されるだろう。このため、宇宙先進国ではナノ・マイクロ宇宙産業育成を長期的視野で進めており、新世紀宇宙技術はナノ・マイクロ技術開発(MEMS)がベースとなるだろう。日本では大型宇宙活動のJAXAではない、別の新たな戦略が必要だ。

 国際比較により、JAXA実用衛星の小型化が進んでいない実態と、GOSAT(いぶき)の基幹センサーが輸入品であることが判明した。かつてセンサーは一部独自開発していたものの、現在では開発能力が極端に不足している事実が判明した。日本が今後必要とする技術開発能力を有していないため、JAXAは歴史的役割を終えたと判断できる。今後JAXAは一提案機関へ格下げし、内閣府が主導して「ナノ・マイクロ技術育成から建て直すための基礎技術育成戦略」と「国威ランチャーを放棄して、旧NASDAコンセプト機から商業機対応のランチャー戦略」を進めるべきだ。それと同時にメーカー側も時代変化の認識と国際情勢の分析が必要であり、間違っても社内交際費・赤字穴埋めのために宇宙予算を使うべきではない。

 日本の基幹システム(気象衛星・国威ランチャー・センサー・衛星バス)が崩壊している中、小手先や特定企業優遇ではない、真に必要とする宇宙技術を内閣府が育て上げるため、重点部門(防災宇宙空間利用システムなど)を内閣府が所管し、短期的・中期的・長期的な戦略で地盤沈下した日本を建て直す戦略が求められる。


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