マイクロ・ナノ・サイエンススペースへの挑戦
 (エアワールド2006年2月号抜粋):詳細は雑誌「エアワールド2006年2月号」をお買い求めください

 近年の各国宇宙開発を見ると「中国有人宇宙活動」、「国際宇宙ステーションとスペースシャトル打上げの危機」、「NASA次期有人宇宙船CEVの決定」、「欧州測位衛星ガリレオ構築」など、ビックプロジェクトの動きが相変わらず盛んであるが、その大きさに目を奪われてはいけないのではないだろうか?本稿では華々しいミッションの傍らで目立たず脈々と開発が進められている小型衛星の実態を紹介し、今後の日本として取るべき衛星とロケット戦略を提案したい。

★宇宙教育の現状
 近年の日本における宇宙教育は、将来のエンジニア育成を目的として「衛星設計コンテスト」と「キューブSAT」が積極的に活動を展開している。また、各大学においてもキューブサットというナノ・ピコ衛星(1kg未満、10kg未満)クラスよりも大きなマイクロ衛星(100kg未満)の開発を徐々に開始しているのが現状だ。
 キューブSATはアイデアメインではなく「作る喜び」を学生へ与える要素があり、プロジェクトを皆で成し遂げる実アプリケーションとして日本を含む海外にて積極的に進められている。日本においては東京大学と東京工業大学のみが打ち上げに成功しているが、東北大学・日本大学・創価大学・九州大学でも進めようとする動きがある。また東京大学や東京工業大学ではさらに大型のマイクロ衛星への構想もすすめる動きもあるとのことだ。このような宇宙というツールを使って「モノ作り」を経験させる事は日本のエンジニア育成において重要だと考えられる。学生時代に「チームワーク」と「手を汚して作る喜び」を経験させる事は教育・人材育成上すばらしいと考えられる。よって衛星を作るのは「独自のアイデアと開発費調達」か教育機関による補助金を使えばいいだろう。しかし打上げ手段と通信周波数帯の確保については、政府機関サイドのバックアップがあればいいのではないだろうか?


10/28超小型衛星の第2弾「サイ5」打上成功(時事通信)

★宇宙科学教育用の通信周波数帯の確保
 以上から、宇宙における人材育成において、宇宙科学教育用として通信用の周波数を新たに総務省がITUへ申請してはどうだろうか?今後、必ずと言っていいほど教育機関や学術目的として衛星を作る動きが出てくるだろう。現在でのキューブサットは通信能力不足なのが現状であり、可能であればもう少し大容量通信が可能な周波数帯を確保し、宇宙科学教育用として皆でシェアしてはどうだろうか?当然ながら独自で通信環境を申請・構築できるのであればそれに越した事はないが、すそ野を広げるためには有効な振興策であると考えられる。場合によっては日本周辺以外でも使用可能な申請をして、日本の裏側である北米〜南米の宇宙教育機関と協力する方法も考えられる。つまり宇宙教育用に協力・参加できる国をあつめて皆でシェアしようという発想である。2005年10月半ばにはNASA、欧州ESA、カナダCSA、JAXAが国際宇宙教育会議(ISEB)設立したとの事である。このISEBの議題として話し合う方法もあるのではないだろうか?

★打上げ手段としてのSS-520
 さらに、今後の宇宙科学教育において重要な事は打上げ手段である。現在の東京大学や東京工業大学の衛星はロシアのICBM派生型ロケットである「ドニエプル」、「ユーロコット」、「コスモス」にて打上げている。しかしその一方で輸出手続や書類作成が多く、さらに打上げ失敗した場合の責任所在の明記など、大学研究室としてやるには高いハードルなのが現状だ。したがって、ナノ・ピコ衛星クラスならば、観測ロケットであるSS-520を使えば10kg軌道投入が可能なため、SS-520にキックモーターを取りつけて打上げるのはどうだろうか?これならば、新規開発要素が殆ど無しでキューブサットクラスの衛星が打上げ可能となる。例えば、SS-520派生型を量産化によって2500〜3000万円程度までコストダウンし、キューブサットを6〜7機用意できれば、1機あたり500万円以下で打上げが可能となる。そうなれば、日本国内でも打上げが可能となるのではないだろうか?さらにSS-520派生型である空中発射バージョン(AL-520)ならば、C-130を使って打上げをすれば17kgのペイロードを軌道投入できるとの事だ。SS-520は、観測ロケットとしては高価だが衛星打上げ用ロケットとしては安いのだ。

  
SS-520地上打上げ(出典:JAXA) 


AL-520空中打上(出典:第35回宇宙科学技術連合講演会)

進む小型衛星開発
 近年の小型衛星開発は全体的に3つの流れがあると筆者は考えている。それは
・ 宇宙開発途上国が宇宙事業へ参入するために登竜門として開発する流れ
・ 宇宙先進国機関が技術実証・人材育成・機能化を追求するために開発する流れ
・ 個人・大学・企業などが人材育成・産業活性化(アピール)などのために開発する流れ

がある。したがって、小型衛星開発を単なる「宇宙途上国によるレベルの高くない開発」と見るのは正確な分析ではない。

★フランスの小型衛星開発
 欧州最大の宇宙機関のフランスCNESでは、500kg・500Wクラスのミニ衛星バス“プロテウス”と100〜150kgのマイクロ衛星バス“Myriade”を開発し、大型地球観測衛星SPOTやHelios 2などの一方で着々と自国にとって必要なミッションを実施している。
 例えばミニ衛星バス“プロテウス”を使ったミッションでは、CNES/NASA共同地形観測ミッションであるJASON-1が2001年12月に打上げられ、JASON-2を2009年に打上げる予定だ。また、2005年打上げ予定のCNES/NASA共同の雲エアゾール赤外観測衛星CALIPSOや、2007年打上げ予定のESA/CNES開発の土壌水分・海洋塩分観測衛星SMOSも同様にミニ衛星バス“プロテウス”が使われている。
 次にマイクロ衛星バス“Myriade”は、CNESと欧州衛星メーカーAlcatel Alenia space社が開発した小型衛星バスであり、2004年6月に打上げられた小型地球電磁気観測専用衛星Demeterに使用され、2004年12月に打上げられた雲とエアゾール観測衛星Parasolや、2006年末に打上げ予定の地球観測衛星にも使用されている。また、CNESとイスラエルでは共同で電気推進搭載の地球観測衛星VENµSや、CNESとインド共同の地球観測衛星メガトロピークにも“Myriade”か“プロテウス”が使用される予定である。


PROTEUSバス(出典:CNES)                  Myriadeバス(出典:CNES) 

 以上のようにCNESやフランス国防省では小型衛星の開発を脈々と続けている。ある論文によると、90年代に高額だった3トン級のSPOT地球観測衛星や1トン級のプレイアデス地球観測衛星開発の経験から、世界をリードするためには低コスト・高頻度・高解像度のミッションを幅広くこなす必要があり、500kg級の衛星と100kg級の衛星バスを構築して利用することだと書かれている。しかもミッション創出を積極的に行い、小型衛星では大手衛星メーカーが儲からないというスキームを見事に崩している。これはフランス宇宙機関CNESの能力の高さを表している。

★ESAにおける小型衛星開発
 ESA、デンマーク、ドイツ、スウェーデンでは、小型衛星に地球の磁場を測定して地球全体の磁場環境の変化を計測するため、重量35kgの母衛星に重量3〜4kgの子衛星を5機〜6機打上げる構想を描いている。これはSWARMミッションと言われ、複数の衛星を打上げることにより、同一時間に様々な位置で磁場計測が可能なため、太陽風による磁場環境の変化や地震による磁場環境の変化データを取得できると見られ、場合によっては低軌道の衛星天気予報や地震の事前予知研究にも応用できるのではないだろうか?

★NASAにおける小型衛星開発支援
 次にNASAにおける小型衛星開発は数が多いため詳述は避けるが、センサーなどのミッション機器を宇宙実証・利用したい人のために、NASAゴダード宇宙センターでは「Rapid Spacecraft Development Office(迅速な衛星開発事務所)」を設立し、ミッション機器を載せるための衛星企業を紹介してくれる業務を行っている。これは、ミッション機器を開発した人が、WEB上にあるデータシートに必要事項を書き込んだ後、NASAが衛星メーカーを呼び集めて「お宅の衛星バスでできる?」と斡旋してくれるのだ。


       海洋観測衛星NPP         ガンマ線天文衛星GLAST (NASA)

 以上のように、NASAでは競争概念を取り入れた小型衛星開発を斡旋している。このようなRapid Spacecraft Development Officeに日本の小型衛星バスが入れればステータスが得られそうな気がするが、日本としてもこのような環境で生きて行ける衛星メーカーが出てきて欲しいものだ。国家宇宙予算環境はNASAと違うが、欧州系衛星メーカーが食い込んでいる事実を見れば、必ずしも不可能ではない。

★米国空軍及び海軍の小型衛星開発
 米国における小型衛星はNASAの他にも空軍及び海軍が行っている。アメリカ国防省や空軍のAir Force Research Laboratory:AFRL(空軍調査研究所)や海軍のNaval Research Laboratory:NRL(海軍調査研究所)が小型衛星開発を進めている。例えばAFRLではTacsat-2だ。この衛星は今までに無い発想なのだ。しかも地球観測ミッションならば解像度1m程度を目標とし、公表資料によると民生部品を多用し、重量も200kg弱で衛星寿命は最大で1年としている。ミッションコストは打上げ費込みで20億円以下を目標としている。つまり安い、早い、上手い戦略を実現しようと、開発を進めているのだ。


Tacsat-2(出典:2005 MAPLD 国際会議)

★ドイツ宇宙機関DLRの小型衛星開発
 ドイツでは、日本の旧NASDAが「おりひめ」、「ひこぼし」というETS-7で実証したランデブーと同様の技術を確立するため、たった140kgの母衛星と40kgの子衛星を打上げ、軌道上でドッキングロボット技術を確立しようと小型衛星開発を進めて2008年打上げを目指している。


DLRランデブーロボット衛星「プリズマ」

★カナダ宇宙機関CSAの小型衛星開発
 CSAでは小型ペイロード計画のもと、トロント大学宇宙研究所(UTIAS)、ブリティッシュコロンビア大学と共同でMOSTという100kgクラスの天体観測衛星を開発、RADARSAT-2と共にアメリカのデルタU型ロケットにて打上げる構想を描いていた。

  
     カナダ MOST               15cm直径のカメラ(出典:AIAA-SSC03-VI-2)

★なぜ、小型衛星開発が活発なのか?

・ トータルコストを下げるため
・ ミッションリスクを減らすため
・ 開発した技術を早く実証するため
・ 大型衛星だけでは人が育ちにくい

という理由があると思われる。大型衛星や大型ロケットは壮大で宇宙先進国の技術アピールとして、それなりの説得性があるのは事実である。しかしその反面、トータルコストが上昇してしまい、即応性・柔軟性が失われ、失敗すれば膨大な損失を被り、長期間の停滞を強いられる。また、大型のシステムを作ろうとすれば、人や資金が長期にわたって流入されるため、1つのミッションを終えるのに15年以上かかる挙句、経験を十分に積んでいない人が年功序列で出世してしまい、長期的に考えれば技術・人が育たない環境となってしまうのだ。そうなるとメーカーは、1つのミッションに出来るだけ搭載機器を載せて資金を支払ってもらおうと、何でもかんでも「弁慶の七つ道具」のようなシステムを構築しようとする。その結果、「ヤマタノオロチ的衛星」が出来上がり、利用する事が目的なのに作るだけで燃え尽きてしまい、利用がよく良く見えない環境となってしまうのだ。これは何処の国でも抱えている問題のようで、これを脱却するために大型衛星開発の一方で、小型衛星という「小回りの効く宇宙開発」をしっかりとしたビジョンを持って進めている。このため、打上げ手段として小型衛星打上げ用ロケットであるICBM派生型ロケットの売れ行きが好調で、その打上げ予約が殺到している。

★弾道ミサイル派生型の限界
 そもそもICBM派生型ロケットは、旧ソ連時代に製造されたミサイルのため、「程度がいいもの」から打上げに使用されている。よって何らかの対策を施さない限り、打上げ失敗数の増加が懸念される。現に2005年1月〜10月末までにH-2Aやアリアン5など45回のロケットが世界中で打上げられたが、うち3回打上げ失敗している。そして、この3回失敗はすべて旧ソ連時代のロケットであり、うち2回はICBM派生型ロケットであるロコットとSS-N-18を使ったVolnaロケットである。

   
潜水艦搭載中のVolna        潜水艦からVolna打上げ    

★今後の打上げ手段は?
 ここ、数年間における小型衛星打上げは、「ロシアICBM派生型ロケット」と「大型ロケットの空きスペース利用」による利用が進むだろう。しかしこの他にも格安で使い勝手の良い打上げ手段が登場するかもしれない。それはアメリカの弾道ミサイル派生型ロケットの登場による打上げビジネスの参入と国際アライアンスによる合弁企業である。まずはアメリカ弾道ミサイル派生型ロケットの能力と価格表をご覧いただきたい。

 これは、アメリカ航空宇宙学会論文にてアメリカ国防総省が発表した資料を翻訳整理したものである。そしてピースキーパーは弾道ミサイルとして配備されているが、これをそのまま衛星打上げ用ロケットとして使用する構想を描き、ジョージア工科大学が技術的検討を実施、ピースキーパーをクラスター化して日本のHTVを13億円程度で打上げる構想を発表している。恐らく13億円では困難で20億円程度となるだろうが、日本ではHTVをH-2Bで打上げる構想を描いており、仮にH-2BとHTVが実現したとして打上げても、国際競争力の観点から将来的にH-2Bによる打上げが出来るかどうかは分からない。

 NASAは11月半ばに打上げ手段を民間企業から購入する方針を発表している。また小型衛星はピギーバック(副衛星)として打上げることもあるが、大型衛星の進捗状況によって打上げ時期が左右されるため、小型衛星本来の「早く打上げ、早い成果を得る」という目的に沿う事ができない。よって衛星側は「即時に打上げられないなら、安いロケット(ロシアICBM派生型ロケット)を購入して打上げる方がいい」という結論になる。つまり「1kg〜150kg付近の衛星に対応」でき、「ICBN派生型ロケットと比較してコストが同等かそれ以下で打上げができるロケット」であるならば、打上げ市場として利用者を囲い込むことが出来るのではないだろうか?

★SS-520ロケットの魅力
 SS-520は観測ロケットとして開発された。全長9.65m、直径0.52m、全備重量2.6tであり、140kgのペイロードを高度1,000kmまで運ぶ事が出来る。しかしこれは弾道飛行であって、第一宇宙速度7.8km/sを出してペイロードを軌道投入しているわけではない。しかし、観測ロケットとしてあまりにも性能が良すぎてしまい、キックステージをプラスすれば小型衛星打上げにも使用可能である事が分かってきている。このSS-520の魅力は、日本初の衛星“おおすみ”を1970年に打上げたL-4Sロケットと同等の性能をもっていることだ。しかもSS-520はL-4Sと比較して小型であり、技術革新によって脈々と培った固体ロケット技術が何と、観測ロケットで衛星を打上げる能力を持ってしまったというのだ。分析した海外の研究者は、「SS-520における材料の選定や固体燃料を最新式にして、電子機器を低コスト化して空中発射すれば、50kgの衛星を軌道投入できるかもしれない」という指摘を得た。これは技術的検討を徹底的にする必要があるが、この指摘が仮に実現してロケットを大量生産できれば、ICBM派生型ロケット価格を下回る可能性が高いだろう。海外の研究者も「もとは観測ロケットだが、これは唯一、ICBMロケットに勝てる低コスト・ロケットになり得るかもしれない」と言うのだ。

★SS-520派生型も同時に
 しかし、観測ロケットSS-520だけでは、ICBM派生型ロケットへ対抗するには困難だ。もし100kgクラスの衛星が大量に普及したらSS-520では対応できない。したがって、SS-520とM-Vロケットの性能を穴埋めするロケットがあれば望ましい。しかも新規開発をせずに今ある技術と製造ラインを使って作り上げることだ。このような観点で考えると、SS-520を大型化したSS-620、SS-720、SS-820、SS-920というのはどうだろうか?射場については内之浦射場をテストランチャーとして使用し、商業打上げとしては海外企業とアライアンスを組んで空中発射会社をやるか、ハワイの観測ロケット射場を利用する方法も考えられる。したがって、アメリカの大手企業と手を組んで、ハワイで打上げる方策もビジネスとしてあり得るのでは?と考えている。日本だけで完結しようという発想では今後宇宙企業は生き残れない可能性がある。

★将来の低コストロケットは?
 さらに将来に渡って、小型衛星打上げロケットとしてトップランナーを走るためには、固体燃料の研究を進めたり、材料を検討したり、ハイブリッド・ロケット技術を検討したりと次期低コストロケットを検討する必要があるだろう。つまり自動車のカローラ80点主義のように、低価格を実現しつつも信頼性が高く基礎技術を脈々磨いて市場投入する発想が少なくとも今後宇宙には必要になる。技術開発暴走主義で超高級自動車を作る発想では、小型ロケット市場では生き残れない。

★調布飛行場や種子島に着陸可能な空中発射母機
 このSS-520〜SS-920において、空中発射ロケットを仮にやる場合、旧航空宇宙技術研究所の協力が必要となるかもしれない。そうした場合、調布飛行場の滑走路800mにて離着陸可能な空中発射母機があれば望ましい。そしてC-130の小型版が見つかった。この機体は滑走距離580mで離着陸が可能で「懸架打上げ方式」と貨物扉から放出して打上げる「落下打上げ方式」双方が出来る機体なのだ。それはC-27Jである。また、実証実験は増田追跡局か内之浦追跡局を使用して打上げて技術的に可能か実験をし、空港も種子島空港を使用して技術開発をする方法も考えられる。

 
C-27Jスパルタン(出典:www.c-27j.ca)

種子島空港

★競合ではなく、宇宙ユーザー獲得が目的
 このSS-520派生型(SS-520〜SS920)は、H-2AやM-VやGXとはまったく競合しないことが第一のメリットである。さらにC-27JとSS-520と管制ユニットがあれば、離島からの打上げも可能となり、赤道付近から打ち上げられれば漁業関係者へ迷惑をかけることなく打上げ能力を最大に引き出せる。またもしH-2AやM-Vが何らかの理由によって停滞しても、小型衛星については打上げが可能である。またC-27Jならば、物資輸送能力も有しているので、政府の支援物資輸送機として使用したり、先月号で紹介した環境観測へ参加させたりなど様々な用途に使用できる。つまりダメコンを意識した発想と、別用途での有効活用という発想だ。

★狙いは国際貢献により弾道ミサイル開発の阻止
 以上のようにSS-520〜SS920は小型衛星専用ロケットとして可能性がある事を述べた。また、これを用いれば北朝鮮のようなノドン、テポドンなど弾道ミサイル開発国のミサイル開発を中止させて小型衛星と小型ロケット技術を場合によっては提供し、エンジニアを平和的技術開発へ転進させるプログラムも実行可能だ。また宇宙先進国同士で宇宙教育協定が結ばれたが、ハワイ、内之浦、クールーに宇宙教育センターを構築し、大学や若手の人材育成と国際交流を実施し、またアジア諸国を巻き込んで小型衛星を製作、SS-520などで打上げを行うのだ。ハワイでは、もともと日米の大学が宇宙交流をしており、キューブサットもここから始まった。

   
北朝鮮ノドン打上(出典:www.spacewar.com) 


内之浦宇宙センター(出典JAXA-ISAS)

   
ハワイ射場(出典:USN)            クールー射場(出典:ESA)

 これは宇宙先進国がやらなければならない責務だと考えている。ロケット技術はミサイル技術でもあることにより、ロケット技術を持つ国は世界へ対してより責任ある行動が求められる。したがって、小惑星探査機“はやぶさ”のようにコンパクトで世界を驚かすことができる日本が先導して平和裏に技術移転させる戦略が今後要求されるのではないだろうか?
 しかし現実は厳しいかもしれない。現在、中国がAPSCOというアジア宇宙機関を設立した。参加国は中国、ロシア、タイ、マレーシア、フィリピン、パキスタン、イラン、韓国などだが、さらに国連アジア太平洋経済社会委員会ESCAPも参加している。つまりAPSCOは国連のお墨付きをもらっているわけだ。その一方日本ではAPRSAFがアジアにおける宇宙機関のとりまとめをしている。しかし、後発であるAPSCOが国連まで巻き込んで戦略的活動を展開しているのだが、APRSAFは周囲から指摘されてあわてて戦略を練っている状態だ。
 少し話が外れたが、「日本の宇宙技術飛躍」と「人材交流」と「小型衛星打上ロケット構築」と「核開発国のピース・トランスファー」を目的として戦略的に小型衛星とSS-520〜SS-920を進めることは日本に限らず、格安の打上げ手段を世界のユーザーへもたらす事ができるため、十分意味があるのではないだろうか?

★まとめ
 宇宙先進国では、小型衛星開発を戦略的に進めている事例を述べた。今後の宇宙開発は用途に応じて大型衛星から小型衛星まで様々なミッションが出てくるだろう。よって筆者は低い投資でスピーディーな結果を出すためにSS-520派生型を製作し、宇宙産業が崩壊しないよう小型ミッションを数々創出して実行し、足場を固め直す事も必要だと考えている。さらに今後は雇用対策や技術開発のために無理やり大型ロケットや大型衛星の開発をするようなやり方は許されなくなるかもしれない。筆者はスピーディーな宇宙活動の展開を進めている海外の動向から、大型衛星や大型ロケットだけを進めることがいいのだろうか?と考えているのだ。
 過去の日本は外国の宇宙機関から「Small but quick is beautiful」と賞賛されていた時代があったことを考えれば復活の余地は十分あり、もう一度過去の成功例を振り返って今後の宇宙開発には何が必要で、どうすれば良いのか思考してみてはどうだろうか?


小型衛星打上げ手法(画像出典:JAXA、CNES、AIAA論文、t/space)


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