ロケット・サテライトテクロジーのユニバーサル化(国際標準宇宙システム技術の到来)
        (エアワールド2007年8月号抜粋):詳細は雑誌「エアワールド2007年8月号」をお買い求めください

 先月号にて述べたように、先進的な衛星を世に排出している国は、静止衛星に加えて周回衛星においても標準衛星機(デファクト・スタンダード)を有しており、自国や国際協調ミッションへ使用している。また衛星標準機における周回衛星は小型高機能化しているが、静止軌道衛星は大型偏十主義からやや違う方向へ向かいつつあるようだ。本稿では、先月号に引き続き、衛星やランチャーの新世代化動向についてさらに深く考察してみたい。

◎技術遅延衛星淘汰のはじまり

 宇宙活動において国際的に高い評価を得るには“目的・コスト・効果”が優れていることだ。過去のように“ロケットや衛星はコストが高く、納期も守らなくていい”という時代ではなくなってきている。このため、アメリカではRESPONSIVE SPACE POLICY(即応型宇宙政策)を掲げて、「低価格・短納期ランチャー」開発を開始、衛星も目的に応じた「標準衛星バス筐体」を用意し、商業化させる方針も示しながら拡張性豊かな周回衛星や静止衛星を用意している。さらに新世代動向として汎用性も持たせた上に“衛星バス運用も自動”で行った上に衛星のミッション制御やステータス閲覧はWEBページで確認・コマンド送信できるシステムを持ったTACSATやOPSATシリーズが開発されている。

 対するヨーロッパは、大型静止衛星開発は主に民間中心、ランチャーは商業化や汎用性が見込めないものは中止、周回衛星は各国それぞれ使用するランチャーを絞り込んだ上に標準衛星筐体開発を進めている。大型静止通信放送衛星の技術開発は宇宙機関の資金支援を受けながら民間中心で行いながら、周回型衛星は小型高機能化が進んでいるため、欧州国内の企業や機関は、他組織の性能を上回るべく高機能化と軽量化へ向けて切磋琢磨している。

 その例が合成開口レーダー(SAR)衛星だろう。光学カメラ衛星とは違いSAR衛星はレーダーで地表を捉えるため、雲で遮られている場合でも撮像可能という特徴がある。昨年、ドイツのOHB SYSTEM社は小型の合成開口レーダー衛星(SAR-LUPE)を打ち上げた。一般的にSAR衛星は、光学カメラ衛星と比較してセンサーが能動的で消費電力もかかると言われ重量がかさむ。このため、レーダー衛星は軽量化が課題とされてきた。この要求に対し、ドイツは重量1000kgを切る770kgで開発した。これを段階的に5基打ち上げて時間分解能を上げる戦略だそうだ。しかし、従来のSAR衛星と比較して解像度は良いとしても観測できる範囲(観測幅)が多少悪いという問題があった。しかしSAR-Lupeは軽量で、使用ロケットも廉価ロケットCOSMOS-3Mのため、5基製造とロケット使用費用及び運用を含む全ミッションコストは約420億円程度であり、SAR衛星ミッションコストとしては高評価できる内容だ。

 だがこのSAR-LUPEを“コストと性能バランス的”にさらに上回る計画が発表された。それは小型衛星開発で有名なイギリスSSTLだ。彼らはコストも性能も申し分ないASTROSAR-UKコンセプトを公表している。下表を見ていただきたい。このAstroSAR-UKは、SAR-Lupe重量770kgに対し500kg重量を目指すと発表、ミッションコストは約120億円と従来のSAR衛星と比較すれば合格点であり、撮像能力も「1m解像度ならば10km四方」、「3m解像度ならば20 x 1000km四方」が撮像可能なため、かなり能力が高い。AstroSAR-UKがもしSAR-LUPEのように量産展開されれば、性能とコストバランスの良い衛星群ができるだろう。また解像度という1つの指標ではなく“コストと性能的なバランス”という観点で見れば、AstroSAR-UKはALOS(だいち)を間違いなく性能とコストのバランスにをいて凌駕しており、また今後のJAXA将来計画をも凌駕している。JAXA地球観測衛星計画のうち、少なくとも合成開口レーダー搭載衛星は計画自体がPoorと言えるのではないか?早急に「性能とコストバランスの関係」を見直さなければ、JAXA衛星は世代遅れの技術遅延衛星となり、使えないデータを収集する体制となる可能性も考えられるため、開発参加した日本メーカーも国際競争力がなく、いずれ淘汰されてしまう。

スプリンターともいえる合成開口レーダー衛星

画像出典:SSTL、OHB

 その典型例がALOS(だいち)だろう。“だいち”はタダ同然でデータ配布しても利用者が増えない。国際チャーターに参加してデータ提供しているものの、大型ゆえにレスポンスが悪い。またブラジルの森林管理で採用とJAXAは大々的に成果を出しているが、現地で話を聞いたところでは「将来ブラジルではサイクロン・ランチャーで衛星を打ち上げるので、ALOSはその“繋ぎ”に過ぎず優れた衛星データとも思っていない。タダ同然で使えるので使っているだけ」と技術遅延レベルはブラジルでも理解されている。過去の栄光(ふよう衛星)にしがみついて同様の衛星を作ってみたら、ろくな評価が得られないという状況だ。かけたコストに見合わないJAXAの典型的ミッションである。

 国際動向の変化に反応が鈍いJAXAと宇宙開発委員会体制という日本宇宙鎖国体制は抜本的見直しが必要であると同時に、今後はJAXA等の技術試験衛星が技術遅延衛星とならないよう事前チェックする体制が必要だ。果たして出来レースと言われる宇宙開発委員会で出来るのだろうか?


ASTROSAT-UKの関連技術(SSTL)

◎静止衛星は大型化志向から群衛星化へも

 また、大型化が進む静止衛星にも変化の兆しがある。それは群衛星化だ。静止衛星軌道は気象衛星と通信・放送衛星にとって重要であるが、通信・放送衛星の大型化と長寿命化によって年間製造数が減少する可能性が指摘されている。すでに大手5大衛星メーカーの過当競争が始まっており、このまま進めば大手衛星メーカーの淘汰が進み、技術水準維持と取り纏め技術が低下してしまう。また、静止衛星の大型化トレンドは“失敗すれば大きな経済的損失”を被る。JAXAのETS-8(きく8号)がその典型例だろう。報道ではきく8号へは641億円もかけたそうだ。しかし、受信系回路でショートが発生して通信放送衛星の送信側が使用不能になった。これを電話機の受話器で言えば「片方が動いていない」ことを意味する。相手の通話が聞き取れてもこちら側の声は相手に届かないことと同じだ。これは、通信放送衛星として機能しているとは到底言えない。商業衛星レベルならば、保険金が100億円単位で支払われる重大な不具合として記録される事態だ。しかしJAXAはこの重大な不具合を無視する形で2007年5月9日「きく8号、定常段階へ移行」とあたかも正常な見せるような発表をしている。また最近の報道によれば「電源系という基幹的回路で故障が発生した」そうだ。つまり、搭載機器(ミッション機器)ではなく、衛星バス部で発生したということになる。仮に当初の報道にあった送信機側による一部不具合であったとしても、商用通信放送衛星ならば中継機異常個所を切り離し可能な設計をしているのが通常であり、海外の宇宙技術者は「問題箇所を切り離せない設計をしている以上、“きく8号”衛星バス筐体に設計上重大な欠陥があるのは明らか」と指摘している。不具合が中継器であれメイン電源系であれ、衛星全体の取り纏めをしたJAXAに責任がないとは言えないだろう。

 また“きく8号”の不具合は商業衛星バスDS-2000に設計上の問題点があることを露呈した。気象衛星ひまわり7号(MTSAT-2)にはこのDS-2000バス筐体が使用されている。同様の不具合がMTSAT-2にも発生する可能性は否定できないだろう。また海外の衛星調達者もこの事実を把握しており、ニーズ的観点による市場投入のタイミングも最適とは到底言えず、きく8号のやり直しをしても、タイミングを逸しているため、今後DS-2000の商業化はより困難なものとなってしまうだろう。また、日本初の商用衛星スーパーバードもヨーロッパからの話によれば、アリアン5の打上げ基準要求を満たしていないようで「このままでの搭載はできない」と言われてしまっているそうだ。ヨーロッパとアメリカのメーカーの間では、どよめきが広がっている。

  
DS-2000バス(MELCO)  故障が少ないA21000バス(Lockheed Martin)

 以上、きく8号は当初の発表から5年遅れて打ち上げた上に、信頼性向上を掲げて集中的に予算投入したにもかかわらず、500億円以上の膨大な予算を消費した上で重大な不具合が発生した。おそらく、信頼性向上と言っても、ただ読めないレベルの膨大書類を作っただけだと思うが、JAXAは本質的問題に立ち入らずに責任回避をして体質改善を実質的に自らしなかったとして我々は記憶に留めておいたほうがいいだろう。

 だが、このJAXA静止衛星開発の“もたつき”の間に、静止衛星は大型化志向から群衛星利用時代へと移行しつつあるようだ。

(以降はエアワールド2007年8月号をご覧ください)


静止衛星の群衛星化(AIAA)


補給・交換ミッション「Orbital Express」(出典:DARPA)


ミッション計画(出典:DARPA)

◎ランチャーも競争時代に突入(独占価格型ランチャーでは生き残れない)

 近年の周回型衛星や静止衛星の国際動向を見れば、技術トレンドが変化してきているため、当然ながら打ち上げるロケットも搭載要求や仕様変化が求められる。ロケット開発者側においてはロケット自身の技術向上を進めながら、搭載側であるペイロード(衛星)への配慮がさらに要求されるのだ。もしそれを怠れば利用者からは敬遠され、国際市場からも弾き出される。したがって、ロケット開発者側は、“安くて信頼性もあっていいもの”という「目的・販売価格・納期」の優れたロケットを作らねばならない。

 この時代変化のトレンドについて行けずに引退・中止したロケットがTitan・Ariane-4・Energiaではないだろうか?恐らくこれらロケットはコスト・目的(ミッション)・納期(生産・打上)の総合的判断で中止されたのだろう。Titan-4は高価過ぎで、Ariane-4はコストは合ったがアッパーステージ時代に対応できない事態を予想していたそうだ。また、特定のミッションのためにロケットを新調するようなやり方は許されない。例えば宇宙ステーション物資輸送システムの“ロシア:プログレス・シベリア”、“ヨーロッパ:ATV”が参考になる。これらは既存のロケット(SOYUZ、PROTON、ARIANE-5)の使用を計画している。

 対する日本のHTVは、H-2Bロケットをわざわざ新規製造するコンセプトで進められている。これは費用(税金)もかかり、技術的リスクも増大するためナンセンス・コンセプトだろう。もし、H-2BとHTVの新規開発が、コスト・納期的にATVやシベリアを凌駕できるのならばまだ良いが、どう見てもそれは考え難い。JAXA筑波は事実上の輸入文化を推進しており、調達において「価格的に優位であれば外国製を購入している」と発表している。宇宙物資輸送が国際標準価格で製造できずに競争力が乏しいならば、HTVやH-2Bは中止して国際宇宙ステーション輸送システムを委託輸送すべきではないか?場合によってはAriane-5やPROTONを使えばいい。

 欧州のATVはここ最近、ロシアのシベリアが出てくればコスト勝負できない危機感を抱き、ロシアと筐体の共通化を含めて共同開発の道を模索すべく会合を続けているそうだ。つまりATVの抜本的改革とコストダウンをしている。またNASAでは民間委託で宇宙輸送物資活動を実施すると発表しており、SPACEX社のFALCON-9やロケット・プレーン・キスラー社のK-1が開発中だ。FALCON-9やK-1は移動式ランチャーのため、日本進出も可能である。これらロケットを誘致するか委託打上げすれば、H-2Bは不要である。しかもK-1やFALCON-9は40億円〜50億円の価格に対し、H-2Bは180億円であり、3倍以上もする。K-1やFALCON-9はH-2Aよりも低コストのため非常に魅力的だ。技術的に成立した場合は、彼らを日本へ誘致してはどうか?

 また、もしHTVを計画中止せずに打ち上げるにしても、先月号で示したようにH-2AでHTVを打ち上げるコンセプトのほうが信頼性・コストの点でまだ優位である。HTVとH-2Bの本質的問題を指摘できない文部科学省宇宙開発委員会の審査能力は、機能していると言えるのだろうか?筆者はHTVとH-2B計画はコンセプト・国際競争的にもはや敗北していると判断している。開発しても競争力のつかない技術開発になるのは間違いない。将来に繋がるという“相変わらずの言い訳”が聞こえてきそうだが、ヨーロッパがATVの国際競争力を考慮してロシアとの関係構築に動いているにもかかわらず、JAXAのHTVとH-2Bは競争力を一切考えない開発を平然と進めているのは見ないのがJAXAだ。


高コストのJAXA-HTV(JAXA)   引退したAriane-4とTitan-4B(CNES、USAF)


(画像出典:ESA、NASA、ROSCOSMOS、JAXA)

 国産主義も必要だが、国産と言って実は輸入品だらけだったJAXA技術試験衛星や地球観測衛星とH-2Aロケットならば、結局は打上げを委託すればよい。国産・低コストで頑張ってきたISASがJAXAから分離独立してJ-JPLとして国産主義で進めればよいのではないか?特定のプロジェクト(H-2BやHTV及びGOSATなど旧NASDA計画)のみを特別扱いし、国際的・ロケットと衛星のペア戦略的に通用しない高コスト計画を容認しているJAXAは非常に問題がある。また、「価格的に優位であれば、国産にこだわらない」とのJAXA主張は、実は国産の方が安くて性能的にも拮抗するにもかかわらず、わざわざ輸入品で調達した例も複数あるそうだ。詳述は今回避けるが、必要とあれば今後紹介したい。

◎小型衛星打上げ定期便体制を確立するアメリカ

 過去の誌面(2006年7月号)で紹介したESPA(EELV Secondary Payload Adapter:使捨ロケット2次ペイロード搭載装置)であるが2007年3月9日、ATLAS-Vへ搭載され打上げ成功した。ESPAはロケットと衛星を結合する装置に小型衛星搭載装置をプラスしている。これは、ピギーバックと同じ概念と見られがちだがそうではない。現状のピギーバック搭載方式は搭載衛星ごとにインターフェース調整が必要なため、搭載作業に手間がかかる。これでは利用者側からみれば不便であり、ロケットを組み立てる側も面倒だ。

このためESPAでは搭載スペースやインターフェースをあらかじめ固定、打上げ時の音響や振動環境が一定のレンジで確定されるため、衛星を作る側もロケット搭載作業側も利用・インテグレーションがより楽な仕様で作られている。また、このESPAにはCUBESATの放出装置であるP-PODも搭載可能であり、大学衛星や中小企業のナノ衛星も容易に搭載できる体制を整えている。

 つまり、搭載仕様が固定されることで衛星側・ロケット側双方にとって利用・作業しやすい環境を作り上げたのがESPAとP-PODである。ESPAは1つの衛星取り付け箇所に最大400lbs(180kg)の重量が搭載可能だ。だがESPAは当初、反対論もあった。主衛星へ悪影響を及ぼしかねないという懸念事項があったのだ。しかし、余剰打上げ利用はアメリカの国内宇宙産業育成において重要であるという認識から、ロケット側の強度や耐振動性を徹底して分析し、ATLAS-VやDELTA-IVへ搭載可能にするよう、ロケット開発依頼主のUSAFは政策的に実行、ロケットメーカーへは「ESPAを採用した場合は、減税措置をする」という案を提示して開発させたそうだ。ロケットメーカー側の「作業が増える」というマイナス面を“減税”という形で還元したのだ。アメとムチである。日本でも参考にしてはどうか?


ESPA       ESPAへの衛星装着風景          P-POD衛星放出装置
(出典:USAF、ロスアラモス研究所、Calpoly)

 また、ESPAが今後も搭載されれば、DELTA-IVやATLAS-Vの打上げに応じて小型衛星打上げ環境が整う。当然ながら余剰搭載環境が整っている前提条件が必要だが、アメリカでは適度のインターフェース標準化によって「小型衛星の打上定期便」が出来上がったことになる。小型衛星ランチャーも開発中だが、常に国内で開発しているランチャーを競争環境へ追い込んで、切磋琢磨させるアメリカ宇宙政策はすばらしいのではないだろうか?宇宙予算が膨大にある国だからこそできる戦略かもしれないが、インターフェース規格やP-PODの相互利用など、これからの宇宙利用時代と標準化時代を想定して、アメリカ、欧州、日本、ロシアなどでロケットのピギーバック規格をある程度融通しあえるようにしておくことは、日本のロケットが国際舞台へ出るためには必要ではないか?日本は独自規格から国際規格に対応できる体制が必要ではないか?宇宙利用拡大と国際宇宙協力の観点で日米交渉してはどうか?

 だが海外からの指摘では、H-2Aは「不規則振動問題と強度の関係からESPAは搭載不可能ではないか?」と指摘を受けた。これが事実かは現場にしか分からないが、もし欧州やロシアのARIANE-5、PROTON、SOYUZ、VEGAなどがESPAインターフェースやP-POD対応可能になった場合、H-2Aは国際競争力がなくなり消え去る運命になるかもしれない。この波及性で見れば、H-2Aの2段目振動問題は非常に深刻な問題かもしれない。

◎衛星とロケットをセットにしたミッションコンセプトの動き

 また別の視点で見れば、近年アメリカや欧州の開発している周回衛星とロケットには1つの繋がりがあるようだ。それは衛星とロケットのセット形態である。過去の誌面で紹介したように標準衛星機(デファクト・スタンダード)は、バス機器(電池・電子機器・リアクションホイール・構造体など)を大きく変更せずに多種多様なミッション機器(センサーなど)が搭載できるという「拡張性を有した衛星筐体」が開発されている。その典型例がMYRIADE、LEOSTAR、BCP-2000などだ。この製造方針により「製造ラインの安定」、「コストダウン」、「パーツの量産化」が出来るようになり、従来の一品工芸品型の衛星よりも信頼性と納期短縮化が可能になるため、競争力ある衛星メーカーを育成できる。

さらに、これら衛星筐体バス打ち上げに使用されているロケットを見ると、ほぼ同じものが使用され、闇雲にロケットを切り替えているわけではない。以下を見てほしい

標準衛星機と使用ロケットの関係

 これは標準衛星機(衛星筐体バス)に対し、どのロケットが使用されたか示している。現在新世代衛星バスとも言えるTACSATはMinotaurが使用され、LEOSTARはTAURUS-XLかPegasusが使用されている。またイスラエルのEROS-AとEROS-Bは共にSTART-1が使用され、PROTEUSバス筐体は米仏共同ミッションではDELTA-II、ESAミッションではSOYUZが使用されている。MYRIADEはAriane-Vの副衛星搭載とDneprロケットが使用されている一方、ESPAにも搭載可能だそうだ。いわゆるユニバーサル仕様とも言える。またBall AerospaceのBCP-2000ではDELTA-IIとMinotaurが使用され、Microsat-100はロシアのKOSMOS-3Mが使用されている。このように、衛星とロケットはペアの関係で打ち上げられているのだ。これには政治的理由も多少あるが、何よりも衛星を作る現場は、同じロケットが使用されることにより、ロケットの打上げ環境(振動や音響)があらかじめ分かっているため、拡張性のある衛星筐体バスに加えて製造しやすい環境が整う利点がある。つまり、信頼性のあって競争力ある衛星が製造できるのだ。

 このため、闇雲にロケットを変えると打上げ環境(振動や音響)が変わることから衛星バス筐体を開発する際には、事前に打ち上げるロケットを決めておく必要がある。だが、ここで重要な前提がある。それはコストバランスが優れていることだ。例えロケットと衛星のセットは必要でも、コストが高過ぎではダメなのだ。アメリカではこの実験的要素として、90年代に小型衛星時代へ対応するため、「TAURUS及びATHENAロケット」と「TRW社(現ノースロップグラマン社)のT-200筐体バス」をペアにしてミッションコスト削減を図っていたそうだ。しかしTRWは業界再編でNorthrop Grumman社へ買収され、チームはOrbital Science社へ移籍してこのペア体制を継承してLEOSTARを開発、TAURUSロケットと二酸化炭素監視衛星OCOのペア体制が最近の動向だ。しかもこのペア体制で単独開発型よりも30%の費用削減を可能としている。

 イギリスでもSSTLがCOSMOS-3MとDneprロケットでペア体制を構築しながら、将来のランチャーラインナップにSPACEX社のFALCON-1を予定している。

 ドイツではOHB System社などがあるが、彼らはCOSMOS-3MとEUROCKOTとDneprロケット使用によるロシア+ドイツ体制で適合衛星を展開している。

 ESAのMYRIADEは上記で述べたが、フランスのPROTEUSバスはDELTA-II、SOYUZ、Ariane-Vとペア体制を敷いている。このように衛星とロケットのペアはトレンドがあるのだ。


T-200衛星筐体バスとロケットのペア体制(NASA、Orbital Science)


   ドニエプルとAriane-Vに搭載したそれぞれのMYRIADEバス衛星(CNES)

◎日本の問題点は?

 だがJAXAはこの技術トレンドを理解していないようだ。まず、ロケットと衛星のペアとしてM-Vと科学衛星のセット体制を放棄したことだ。例えば“はやぶさ”のミッションコストを見れば、かけた費用における成果は十分と言える。ISASは旧NASDAの10分の1の予算で宇宙活動を行ってきた。またM-Vはコストダウン型のM-V Lite構想を掲げて半値にする計画まで立てていた。しかし当時の宇宙開発委員会は固体ロケットがLow-Costランチャーとして魅力的であるにもかかわらず、世界動向を読み間違えて固体ロケットの潜在的本質を見抜けずにM-Vロケット開発中止を通達した(この決定に旧NASDAが裏で画策したというのが通説である)。

 Minotaur-1シリーズやVEGAなどを見れば明らかだろう。M-VやM-3S-IIは用途に合わせてキックモータを採用したり、フェアリングを調整したりというISASの80年代から90年代に確立した手法を取り入れている。つまりISASは固体の王道を走っていた。他の固体ロケット開発国であるイタリア・アメリカ・ロシア・中国・イスラエルはM-Vをベンチマークにしていたのだ。にもかかわらず、日本は自ら降りた。ISASが意識していたか、していなかったかは分からないが、M-3S-IIやM-V開発動向および「SAT&LVSセット体制」は海外が調査団を派遣するほど先端的だったそうだ。しかし次期固体計画は「失敗作J-1ベース」で固体ロケット技術の本質を知らないJAXA宇宙基幹システム本部(旧NASDA)主体で行われている。日本は確立した国際的地位を自ら捨てた上に、固体ロケット技術を良く知らない技術者が行っている。

 そしてJAXAはコストバランスの優れたペアセットを放棄する一方、逆にコストバランスが国際的に2倍以上もかかっている“H-2Aと技術試験衛星・地球観測衛星”のペアセットを残した。この行為に世界は唖然・驚愕したはずだろう。事実JAXAはM-Vで打上げ予定であったPLANET-C計画をH-2Aで打ち上げると発表。周囲には「M-Vを辞めてH-2AでPLANET-Cを打ち上げた方が総合的に安くなる」と説明したが、維持費含めてじっくり計算すればそれは事実ではないことは露呈した。これは旧NASDAが液体ロケット技術者中心のため固体ロケット技術の本質を理解している人が乏しかったのも原因の1つである。

 しかも世界動向から見れば、地球観測衛星は小型化が進んでおり、H-2Aではオーバースペックだ。静止衛星向けに作ったH-2Aを万能化させようとしたが、コストが高いため「大は小を兼ねられず」に、結果的に引退へ追い込まれたTitanロケットの悪いところを全部吸収している事実にJAXAと宇宙開発委員会は全く気付いていない。

 このためJAXAは地球観測衛星GOSATをアメリカOCO衛星と比較して3倍もの重量で製作、コスト的な説明がつかなくなったため、小型衛星のピギーバック打上げをすることで、何とか体裁を整えようとている。だが、H-2Aがオーバースペックである上に、フェアリング内部がスカスカと言えるほど、上部容積がムダなほど余っている。例え小型副衛星を搭載してもミッションコストを相殺できるほどのレベルではない。H-2AとGOSATのペア体制はコストバランスと技術動向的にもはや崩壊しているのだ。この上、必要とは言い難く、国際標準価格の倍以上するH-2Bまで開発しようとしている。

 このような宇宙政策を実施してきた責任は問われるべきと同時に抜本的改革が必要だろう。そういう意味でもJAXAからISASを分離して別次元でやり直すことは、日本の宇宙強国復活のためにも必須と考えている。この意見に同意してくれる読者は多いと思う。内閣府宇宙戦略本部でJAXA解体を含めて今後の組織体制をぜひ検討してもらいたいものだ。


セットミッションとしてコストバランスが悪い計画(JAXA、時事通信)


DELITA-IIのペイロード搭載の高効率化(NASA、Boeing)

 実際、外国の宇宙機関最高顧問は「ISASは買収したい。JAXA(旧NASDA)は予算だけが魅力」と発言するほど、ISASの目的・費用・成果を高く評価していると同時に、H-2Aや旧NASDA衛星のコストバランスの悪さを理解している。今後は、JAXA宇宙鎖国体制ではなく、国際的に対等に付き合う戦略・視点が必要であり、JAXA解体と組織の再構築及び、目的・コスト・成果に合うペア体制が必要であると言える。

◎OICETSは欧米に衝撃

 また、ペア体制を崩して別のロケットに乗り換え、見事重大な不具合なく打上成功したのが日本の光通信衛星OICETSだ。このミッション計画は当初J-1ロケットで打ち上げ予定だった。J-1は固体ロケットのコストダウンを目的に、当時の国産液体ロケットH-2の固体ロケットブースターを流用してISASのM-3SII型ロケットモータを組み合わせたものだった。だが、海外でも「目的の良く分からない失敗作ロケット」として教科書で紹介されているように、J-1はコスト高・コンセプト能力不足のために批判を受けて中止され、その煽りを受けて衛星のOICETSは旧NASDAホームページで「冬眠中」と紹介されたように保管庫入りした。

 しかし2004年、打ち上げるロケットのないOICETSは、ロケットとのインターフェースや打上時にかかる振動・音響環境が異なるドニエプル・ロケットで打ち上げることになった。これは異例の事態と言える。静止衛星ではデルタ、アトラス、アリアン、プロトン、シーランチ(Zenit)などへ対応可能なように衛星を製造しているが、日本のOICETSはICBM派生型ランチャーで打ち上げることを想定せずに設計していた。ロケットと衛星のペアを無視した計画となったため、ロケットとのインターフェース設計及び振動・音響環境試験等をやり直さなければならなかった。だが日本はそれを短期的に問題なく成し遂げた。これは、欧米からみれば衝撃的な行動だったそうだ。ある意味、技術的成果は高いと言える。しかし、ロケット本体は安かったものの、海外の関係者に話を聞くと、「日本の帰った後は、金の延べ棒を置いていったような環境になった」と述べており、地上施設が飛躍的に良くなったそうだ。つまり、OICETS打上げは技術的に成功したが、「目的・費用・成果(効果)」のバランスは、非常に悪かったそうだ。だが報道では、あたかもロケットの打ち上げ費用10億円程度しかかかっていないような報道がなされている。

 1996年に1回しか打ち上げていない失敗作J-1の影響が2005年OICETS打上げまで続いた事実を重ねれば、JAXA次期固体ロケット計画の危うさを感じられずにはいられない。やはりJAXA宇宙基幹システム本部以外で国際競争力あるランチャーを計画したほうがいいのではないか?もし全段固体J-1の再来では、国際的な恥さらしになってしまう。

 以上、OICETSは当初想定していないランチャーで打ち上げており、ペア体制を無視したにもかかわらず、技術的には上手く行ったことは評価できる。だが、全体費用が異常にかかっていることから、「目的・費用・成果」という総合的評価で見れば、合格点を与えてもいいものかと疑問が出てくる。


OICETS(JAXA)                            ドニエプル(Yuzhnoye)                              失敗作J-1(JAXA)

◎国際競争社会で生き残れる開発体制が必要

 以上、JAXA(旧NASDA)の目的・費用・成果のバランスは非常に悪い。もっと簡単に言えば、高い費用のわりに高い成果を挙げていないのだ。また、衛星開発は“スーパー301条”を理由に「同じ衛星を作ると国際競争入札になるから技術開発衛星として1機、1機違う衛星をつくらなければならない」とJAXAは拡大解釈して国際競争力ある宇宙ミッションをするのではなく、技術開発でコストのかかる計画だけを推進している。誰も「科学衛星・探査機及び技術試験衛星を国際競争入札せよ」と言っていないにもかかわらず、拡大解釈して高コスト・一品工芸品専用衛星開発を奨励している。

 その証拠が地球観測衛星ミッション計画だろう。「A-Train」など最新の地球観測ミッションは特別なものを除き1t以下の時代にもかかわらず、JAXAのそれは2t以上の計画を推進している。結果、高額のH-2Aを使用しなければならず、コストバランスが国際的に比較して悪いものが平然と推進されている。この事実を宇宙開発委員会も見抜けていない。

 この他にもH-2B計画、HTV計画がある。国際価格と比較しても倍以上かかっているのに計画推進する一方、M-Vは高価だから中止と訳の分からないことをしている。H-2Aは基幹ロケットだからと言い出しそうだが、基幹ロケットとして必要な基準をすでに逸脱している。H-2Aがもし今後生き残るならば、LE-7をマルチノズルではなく、シングルノズルで推力増強を図り、SRB(固体ロケットブースター)なしでリフトオフできる環境を作り、抜本的振動の問題を解決すべく、不規則振動問題のあるLE-5は早く止めてMB-XX導入してアッパーステージを開発すればいい。SRBが無くてリフトオフできれば、10億円以上はコストダウンが可能である。そしてATLAS-VのようにSRB取り付け部分に実験ペイロードXPCを搭載してサービス展開すればいい。

 今後はJAXA宇宙基幹システム本部が主体とならず、製造元の三菱重工が主体となってJAXA本体にかかるH-2シリーズ開発経費を全額三菱重工へ注ぎ込めば実質的に現場開発予算の増額が図れる。この環境下で三菱重工独自のH-2Cを作ればいい。LE-5の振動解決に無駄な予算をかけず、将来性のあるエンジンに切り替えればいいのではないか?そのほうが国際競争力あるランチャーを開発できて、メーカー側も開発予算の増額が図れる。アメリカや欧州では宇宙機関がロケット開発を主導する時代ではない。国際競争力あるランチャーならば、予算を可能な限りメーカーへ与えて開発させるほうが効率的だ。それで開発できなければいずれ淘汰されるのは必然だろう。何もJAXA宇宙基幹システム本部が関与する必要は無い。あるメーカーのエンジニアもJAXAの意味の無い関与にウンザリしているそうだ。今後は内閣府宇宙戦略本部が国際動向と照らし合わせて審査すればいい。H-2AもH-2Bもコンセプト能力不足であることは世界動向からはっきりしている。


ATLAS-Vの実験装置搭載装置XPC(Lockheed Martin)                         Ariane-Vアッパーエンジン(CNES)

◎日本にはユニバーサル衛星がない

(エアワールド2007年8月号をご覧ください)


ロシアの衛星標準機開発(クルニチェフ)           ロシアの衛星標準機開発の歴史(クルニチェフ)

◎ロケットのユニバーサル仕様も日本にはない

 また、ロケットも様々な衛星が搭載できるように、衛星バス開発側とアライアンスしておくことが今後必要だ。もっと強く言えば、海外を含む衛星メーカーを抱え込んでおくことが重要だ。いい例がSPACEX社だろう。FALCON-1は開発途上であるが、すでにSSTLへ出資して打上市場を確保している。SSTLから見れば、COSMOS-3Mに加えてFALCON-1が手に入れば、安定的に低価格のランチャーを確保できるメリットがある。

 だが、日本にはランチャーを開発しても搭載する衛星がない。H-2BはHTVとのペアで進めようとしているが、コストバランスが悪い。(余談だが、HTVには意外なところで市場を伸ばすチャンスがある。実のところアメリカやヨーロッパがまだ手をつけていない領域でもあり、トップランナーになれる可能性があるそうだ。ヒントを言えばISSや月・火星物資輸送ではない。だからと言ってHTV開発の正当化にはならないが、発表にはまだ早すぎるので、次号以降で述べたいと思う)

 また、H-2Bに加えて次期固体ロケットやGXロケットも搭載する衛星がない。JAXA内部で衛星を載せようと自己完結主義的な政策をしているが、それでは過去の悪い流れを断ち切るには十分とは言えず、商業市場など何も見ていない戦略だ。このままの戦略では量産効果も望めず国際市場へろくに出られない“H-2Aのようなランチャー開発”を繰り返すだけだ。ましてやJAXA衛星計画ではコストも重量も2倍以上のため、国際的に通用するメーカー育成ができない。以下を見てほしい。

日本の開発予定ランチャーのベンチマーク案

 これは日本が開発するロケットのうち、どれを参考にすべきかを示したものだ。各ロケット開発企業は今後、アライアンスを組む必要があるだろう。なぜならロケットを国際仕様に持って行き、ユニバーサル仕様にしておかなければ量産が見込めないからだ。このため、海外のロケットと搭載仕様(インターフェース)などを共通化し、部品や材料を共同で調達してコストダウンする方法も考えられる。互いに自国内で独自に受注しながら補完関係を結び、第一段階として1つの“商標、銘柄”を確立すればいいだろう。そうすれば一定の打上げレンジ幅でブランドを構築でき、衛星メーカー側との関係も強化できる道が出来る。日本のロケットで問題なのは“お客さんIF(インターフェース)がない”のだ。この体制を抜けるには国際協調しかない。同等レンジ幅のロケットと手を組みながら、市場拡大を狙う戦略は、生き残る上で非常に重要な思想だ。これを実施して衛星標準機とロケットのペアによるユニバーサル化を進める方法が考えられる。例えば「ユーロコット・ドニエプル・次期固体」の組み合わせや「TAURUS・Minotaur・次期固体」の組み合わせも考えられる。あまり核心に触れすぎるのは良くないので、抽象的に書かざるを得ないが、経営戦略を考えている人には理解できると思う。

◎JAXA主導の宇宙開発体制はもはや限界

 以上、JAXAは「ミション・コスト・打ち上げ機会」を有効に活用していない。衛星メーカーやロケットメーカーを国際競争の中で生き残る体制を作るには、JAXA主導の体制では無理である。事実、H-2A、H-2B、次期固体、GXは国際市場では勝てない。H-2Bは言うに及ばす、次期固体も上記のようにペア体制と国際提携を確立できなければ開発すべきではない。GXはLNGエンジン開発の遅れでコンセプト自身が陳腐化し、90年代の旧世代ロケットになってしまっている。

 衛星もJAXA計画では「大男の殿衛星」が生産されそうで、ALOSやETS-8のように海外から嘲笑・失笑されてしまうだろう。過去の誌面で説明したように国際動向を意識して衛星標準機の開発が必要だろう。日本としてその素地があるのは、

・ CUBESAT:10kg以下

・ MHI開発中のSMARTSAT:150kg級

・ NICTのOICETS:500kg級

・ USEFのSERVIS、USERS:1000kg級


だろう。CUBESATは文部科学省、SMARTSATは総務省、OICETSは防衛省、SERVISは経済産業省、2t級は内閣府とJ-JPLが主導して国際協調で進める方法も考えられる。各機関の研究所とメーカーで標準衛星を開発させる方法も考えられる。この方が「目的・費用・効果」のバランスが優れた量産衛星開発ができ、比較的小型のため、各省庁独自で開発が可能だ。

 国際動向から、今後の衛星はパーツの単純化・モジュール化が進むのは明らかだろう。日本は部品のミニチュア化(小型・高性能化)技術が高く、50kgクラスまでモジュール・ユニットで世界を主導出来る能力が十分にあるため、JAXAとは別次元で育成する体制が必要だ。これは経済産業省主導の体制で行うべきではないか?本戦略についての詳述は次号以降にじっくりしたいと思う。

◎まとめ

 海外では静止衛星の群衛星化の検討もはじまり、大型偏重主義の静止衛星も変化の兆しが見えてきた。また、大型衛星でしか出せなかった性能が小型でも可能になった。最新計画のASTROSAR-UKは、同様衛星のJAXA将来計画が「目的・費用・成果」のバランスの悪いことが露呈した。また、独占価格ランチャーでは国際市場では生き残れない。「コストバランスの優れた衛星とロケットのペア体制」を構築することが今後必要な視点であり、衛星もロケットも国際アライアンスを組んで「ユニバーサル仕様」にする方がブランドを確立できて国際市場で踏み止まることが可能だ。よって今後は「機能・コスト・量産性」のある衛星が生き残れる時代となり、ESPAとP-PODの打上定期便体制は産業育成が目的ではないか?だが、技術思想がなくただ搭載したのが「H-2AとGOSAT」の組み合わせだ。如何に予算をかけても競争力のない衛星とロケットのペア体制になっているかは、読者の皆さんにはもう分かるだろう。

 宇宙政策・戦略・技術開発・指導を間違えれば、メーカー産業化の道を閉ざしてナショナル・プレステージも低下してしまうため、宇宙政策決定の責務は非常に重要とも言える。また「スーパー301条」の拡大解釈も止めたほうがいいだろう。「ろくでもない衛星やロケットを作れば宇宙メーカーの競争力が低下する」という認識が宇宙戦略立案者には必要であり、出来レースのような審査会は許されない。「技術開発をすればそれでいい」とか「商業化はメーカーが勝手にやれ」というやり方を進めてきたJAXA(旧NASDA)と宇宙開発委員会の政策は、世界第2位の宇宙予算を持ちながら結果的に「競争力がつかない技術遅延衛星・ロケット」を開発しているのが実態だ。これは失われた10年の根源ともいえ、回復させる政策が急務である。海外宇宙機関の上層部からは「ISASは買収したい。JAXA(旧NASDA)は予算だけが魅力」と言われている現状を見れば、抜本的改革が必要だろう。歴史的役割を終えた機関、センサー開発能力の乏しい組織、コストバランスの悪い開発をしている組織は解体及び再構築が必要だろう。次回はさらに海外動向を分析、日本の現状を分析しながら解決案を考えてみたい。


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