CREW・CARGO・TRANSPORT
     
   (エアワールド2008年6月号抜粋):詳細は雑誌「エアワールド2008年6月号」をお買い求めください


 国際宇宙ステーション計画は、当初アメリカ単独の計画からはじまり、その後は予算的都合によってロシア・ヨーロッパ・日本が参加し、国際宇宙協力のシンボルとして計画が変更され、予算超過・技術的障害・シャトル事故によって計画遅延しているものの、2010年のスペースシャトル引退までに、可能な限り構造物を構築しようとNASAを中心に努力を重ねている。
 この米露欧日による「宇宙同盟」とも言える枠組みに、近年は中国が参加意向を表明、韓国もロシアを通じて宇宙飛行士を送り込むべく宇宙飛行士を選抜、インドもアメリカを通じて宇宙ステーションへ人員を送り込むべく活動し、日本が国際宇宙ステーション計画参加を掲げた80年代と比べれば、新規参入も加わって宇宙情勢が大きく変化している。また、国際宇宙ステーションは国主導のため、「官需だからコスト度外視でも大丈夫」だったはずが、CREW(人員輸送機)、CARGO(貨物輸送機)、TRANSPORT(打上ロケット)はコスト・性能で評価される動向が見られ「国際競争・国際同盟」が勃発している。
 本稿では、国際競争・国際同盟時代を分析しながら、CREW・CARGO・TRANSPORTの現状を紹介、JAXAが計画するHTV、H-2B(H-2A改良型、改善型)、次期基幹ロケット戦略の国際的評価とその問題点を整理してみたい。

◎貨物船競争(ATV・PROGRESS・シベリア・HTV)
 国際宇宙ステーションへの貨物物資輸送の手段はスペースシャトル、PROGRESS(プログレス)・ATV(Automated Transfer Vehicle)・シベリア(将来)・HTV(H-II Transfer Vehicle)(将来)などがある。このうち、スペースシャトルはコストが高く、物資専用輸送機でもないためISSモジュール打上専用機として使用されており、2010年に引退も見込まれているため、貨物船競争からは対象外となっている。では、PROGRESS、ATV、HTV、シベリアの現状を見てみよう
 現在では物資輸送用としてPROGRESSがコストも安く、実績も豊富なことから利用されている。このPROGRESSは人員輸送用のSoyuz TMAを改造したもので、貨物搭載量は最大1.8t、旧ソ連時代の宇宙ステーションMIR(ミール)の貨物物資輸送用として開発され、現在ではISS輸送用としてSOYUZロケットで打ち上げられている。
 しかしMIR用に開発した貨物機のため、ISS用モジュールで使用するラックが搭載不可能である一方、輸送能力も不足である一面もあり、欧州がATV、日本がHTVを開発している。ATVの輸送能力は7667kgであり、HTVは約6000kgである。ATVはPROGRESSの4倍強、HTVは3倍強であり、輸送能力的はATVの方が高い。
このATV開発企業は、主契約者のEADS Astrium(フランス)が筆頭に、Thales Alenia Space(フランス・イギリス)、RKK Energia (ロシア)、Oerlikon Space (スイス)、Dutch Space (オランダ)が参加している。このATV開発は、もともとフランスが有人宇宙ロケットの「HERMES(エルメス)」を開発していた頃、有人宇宙技術を学ぶために当時のソ連側と接触していた関係から、ATVは欧露共同開発という形式で実施されている。このため、ロシアのドッキングシステム(RDS)・機器制御システム(RECS)・燃料補給システム(RFS)がATVには搭載されている。ATVは別名Jules Verne(ジュールベルヌ)と言われ、ATV-1、ATV-2、ATV-3と打ち上げられる度に、番号が増える流れだ。また、ATVはHTVとは違い、ISS軌道を維持する役目も担っている。そのアニメーションビデオはESAで公開されている。

ATVのアニメーションビデオ:(http://www.esa.int/esaMI/ATV/ESAE021VMOC_0.html)


ATVのサイズとミッションの流れ(ESA)


                  搭載貨物量1800kg のPROGRESS(CSI)  搭載貨物量7667kg のATV(ESA)

 次にHTVだ。これはJAXA(旧NASDA)が計画しており、搭載貨物量は欧州ATVより1.6tも低い。JAXAは目標性能を下回る傾向があるため、実際の搭載貨物量はさらに低い可能性がある。このHTVコンセプトはスタート当初、ATVやPROGRESSとは異なり、将来の有人も見越して再使用も目標としていた。このため、アメリカのHMX社のAAS(ALTERNATE ACCESS to SPACE:宇宙への補充要員アクセス)コンセプトをベースに、胴体に耐熱タイルを貼り付ける方式で計画していた。しかし、耐熱タイル輸入がITAR(武器輸出規制)で輸入できなくなり、あえなくHTVはATV同様に使い捨て仕様となったのである。また、HTVはATV・PROGRESSと違い、与圧貨物と非与圧貨物を同時に輸送できる、ある意味贅沢な仕様で計画されている。単機能型で勝負をするATVやPROGRESS、複合型で勝負をするHTVという構図であるが、非与圧部と与圧部を双方採用すると、設計が複雑化することから故障要因及び部品数増加を招くため、豊富な実績があるアメリカやロシアが単機能型へ注力している現状、及び、HTV輸送能力がATVを下回っている現状から見ても、日本の優位性があるのか疑問が残る。また、海外宇宙報道を分析すれば、HTVはドッキング装置が海外パテント品を購入しているためハッチは外国メーカーが来て取り付けを実施、ドッキングセンサー(方位測定センサ)もATVへ納入しているドイツJena-Optronik GmbHから1000万ユーロ以上(約16億円)で購入、「ハードウェア」と「内部構造」はドイツのMT Aerospaceへ設計委託、ソフトもアメリカへ丸投発注されている。HTVは結局のところ、コンセプトはアメリカ、設計と部品はドイツ、ソフトもアメリカと、まったく国産がない訳ではないが、ある意味「産地偽装」しているのが現状なのだ。

       
                                    HMX社のAASコンセプト(HMX)                            搭載貨物量6000kg のHTV(JAXA)

 最後にシベリアだ。これは拡張版PROGRESSで、ユニットモジュールの組合せでバリエーション豊かな貨物輸送機である。現在、価格競争&バリエーションで他を圧倒する貨物輸送機と言われており、米露企業出資のCSI(Constellation Services International)が計画、2002年7月にNASA から$2.3mil(約2.3億円)の契約を請けて検討を進めている。
 シベリアは高実績のPROGRESSをSPACETUG(タグボート)として、その上段にマルチバリエーションの貨物キャニスターを搭載、搭載貨物量を1本化せずに3000kg、4000kg、5100kg、5817kg、6300kgという5種類の拡張型貨物船を用意する発想だ。またロケットも、ATLAS-V、DELTA-IV、ZENIT、PROTON、H-2A、FALCON-9、Ariane-Vなどにも搭載を想定している。ATVはARIANE-V、HTVはH-2を前提にしているが、シベリアはランチャー性能に合わせて輸送コンテナを提供するマルチ戦略だ。
 またCSIでは、ATVやHTVの信頼性確保には5年〜10年かかると指摘し、高実績のPROGRESSをSPACETUG(タグボート)として、その上段に「PROGRESS拡張版キャニスターをユニット&モジュールで構築し、ロケットに合わせて貨物装置を提供する方が経済効率が良い」と主張している。このシベリアは、アメリカのNASA-COTS(民間宇宙輸送開発)へも応募したが、ロケットは米国製で打上げ可能であるものの、貨物船が米国技術ではない(ロシア有人宇宙技術)という理由で落選したようだ。しかし、コスト競争概念・信頼性・拡張性で評価をすれば、このCSIコンセプトは最も競争能力があるのも事実だ。

 


シベリアのコンセプト(CSI)                 搭載貨物量をロケットに合わせて供給(CSI)

あらゆるロケットへ対応でき、貨物サイズもコントロールできる、所謂「プラチナカーゴ(貨物)」としてATV、HTV、シベリアを国際競争させれば、間違いなく1位がシベリア、2位がATV、3位がHTVとなるだろう。大型ハッチがないという問題も、ロシアならば直ぐに解決するため、HTVのハッチが大きいという優位性はすぐに失われる。


シベリアのユニット&モジュール貨物室(CSI)          貨物モジュールで国際同盟案(CSI)

◎乗員輸送船(SOYUZ・ORION・Kliper・マルチカプセル)
 次に乗員宇宙船開発だ。まず、サブオービタル機(Space ship 2、XP、EADS宇宙船等)は弾道飛行のため、ISS乗員輸送機とはならないため除外される。
有人宇宙技術は、アメリカとロシアが全体システムとして保有しており、中国はロシアからの技術導入で有人宇宙活動を達成した背景がある。この有人宇宙技術である「生物閉鎖技術」はアメリカとロシアしか保有していないのだ。特にハッチ技術はライセンス料を支払って導入している。これはJEM(きぼう)、HTV、ATVなどにも言える。
 このためISS乗員輸送機は、アメリカとロシアの開発競争であり、ヨーロッパでは独自開発の姿勢を見せておらず、ロシアからシステムを導入するというスタンスで利用検討している。現在のISS乗員輸送船は、スペースシャトルの他にSOYUZ-TMAカプセル、Kliper(クリッパー)、NASA-CEV(ORION)、マルチカプセル型(DRAGON、AAS)などがある。
 SOYUZ-TMAカプセルはロシアが現在ISS乗客輸送船としてSOYUZロケットで打ち上げている。また、民間人宇宙旅行者の輸送手段としても使われており、過去5人がそれぞれ打ち上げられた。
 Kliperは、SOYUZ-TMAカプセル技術を応用しながら、その構造体に翼を取り付けて有翼化して耐熱タイルを張る発想(リフティングボディー)で検討され、カプセルとは違って水平着陸するコンセプトである。しかし、開発には時間がかかるため、登場にはもうしばらく時間がかかるだろう。また、欧州とアメリカではKliperを輸入してロケットへ搭載しようと話し合われている情報もあり、スペースシャトル以外で水平着陸を計画しているKliper動向には注目が集まっている。日本でも導入の打診がきていたが、筑波勢力によるHTV有人船案を推進したい勢力の反対により頓挫している。
 次にNASA-CEV (Crew Exploration Vehicle)の「ORION」は、スペースシャトルの後継機として計画されたカプセル式の乗員輸送船であり、ロケットARES-1に搭載予定だ。このORIONはアポロ計画のように海上着水するとヘリ空母で回収せねばならず、コストがかさむことからアメリカ大陸の砂漠地帯にパラシュート着陸する計画だった。しかし、「もし軌道がずれて海上に着水したら?」という問題から、水陸両用着陸仕様へと設計変更されたため、重量増加を引き起こし、Ares-1側も技術的問題が発生、難航しているそうだ。


SOYUZ(上)とKliper(下)(narod)            ORION(NASA)

また、有人宇宙船と貨物機能を同時開発するという、マルチカプセル・コンセプトも考えられている。これはまず、貨物船として開発して信頼性を確立した時点で、有人船へと発展させるコンセプトだ。提案企業はSPACEX社のドラゴン、HMS社のAAS、RPK社のK-1などが挙げられる。これら開発は、NASA-COTS(Commercial Orbital Transportation Services)と呼ばれる民間開発で実施されている。


マルチカプセル型DRAGON(SPACEX)            有人&貨物のAAS(HMX)

◎NASA-COTS(民間主導による宇宙システム開発政策)
 NASAではCOTS(Commercial Orbital Transportation Services)計画で貨物輸送システムやマルチカプセル開発を実施している。これは、従来のように宇宙機関NASAが宇宙システムを設計・開発するのではなく、審査に合格した民間企業へ予算を直接与えて宇宙船を設計・製造させる官民協力方式で、民間企業側はNASA契約額の約1.5倍の資本を自己調達しなければならない約束が課される。


     NASA-COTS概要                 NASAのISSへの年間貨物輸送需要(NASA)

 これは、スペースシャトル引退後のISS物資輸送手段が無くなるため、人員輸送はARES-1(ORIAN)とし、貨物輸送手段は民間企業へ任せるという発想だ。しかも、官需依存体質脱却のため、民間資金を導入させるようNASAが民間へ仕掛けている。このため、2005年に募集をかけたところ、20社21提案が提出され、「Space Exploration Technologies (SpaceX)」、「Andrews Space」、「Transformational Space Corp(T/space)」、「Rocketplane-Kistler (RpK)」、「SPACEHAB」、「SpaceDev」が最終審査として選抜され、SPACEX(FALCON-9ロケットとDRAGON)とRpk(K-1)が選抜された。この2社が実際にフェーズ1として受注、総額500億円程度で2006年より開発着手したのである。
 このSPACEXのロケット「FAOCON-9」とカプセル「ドラゴン」、RpKのロケット「K-1」は貨物機として打上げた後に、延長計画としてISS乗員輸送システムも開発するというマルチカプセルを目指している。うちDRAGONは、ジェミニ計画に従事したロッキードマーチン社の技術者が設計したとされ、過去のNASA有人宇宙技術をベースにカプセル設計が行われている。


2006年NASA-COTS計画に選抜されたSPACEXとRpK(NASA)

  また、NASAでは、年間のISS輸送市場として$300〜700mil(約300億〜700億)あると発表している。シャトル引退後の2010年〜2015年の5年間で最低1500億円、最大3500億円市場としてISS輸送システムを「買い上げる」と発表しているのだ。時代も変わればコンセプトも変わる。このNASAビックビジネスに魅せられて各社が手を挙げるというやり方がNASA-COTSなのだ。HTVのように官需依存で終わらせるのではなく、民間を競争育成させるNASA戦略は評価すべきだろう。
 だが、NASA-COTSは民間開発というリスクもある。RpKは、NASA-COTSの条件である「NASA予算の1.5倍にあたる資金調達」に失敗したため2007年秋にNASAから契約解除されたのだ。サブプライムローン問題がタイミング悪く直撃し、資金調達ができなかったそうだ。よって、2008年4月現在では、SPACEX社と新たにOrbital Science社が採用された。投資額が豊富にあるSPACE-X社はそのまま契約延長(フェーズ2)され、2009年9月にISSへの貨物輸送と回収デモが予定されている。そして、Orbital Science社は、TAURUS-IIロケットとCygnusが選抜された。初打上は2010年末を予定している。


2008年新たに選抜されたOrbital社(NASA)                選抜漏れした候補各社プラン(NASA)

このようにNASA-COTS計画は、2008年4月現在、民間のSPACEXとOrbital Science社が実施している。このほかにもNASAは、「シベリアを計画するCSI」、「B-747空中発射カーゴ輸送システムを計画するT/space」、「ハイブリッドロケットと貨物&乗員輸送マルチ型Dream Chaserを計画するSPACEDEV」、「V2ロケットエンジンを再生したロケットで計画するPLANETSPACE」、「貨物システムを提案するSPACEHAB」の5社をバックアップ会社として指定し、SPACEX社とOrbital Science社の動向に応じて支援できる代替体制を敷いている。
 また、これらNASA-COTSには選抜されていないが、(乗員&貨物)マルチカプセル型船として、HMX社のAASも密かに注目されている。注目されている理由は、その設計のシンプルさだ。AASのサイズはロシアのPROGRESSとほぼ同じであり、特徴は故障箇所をできるだけ減らすため、PROGRESSのように180日作動できる環境ではなく、たった4日間で使用するという、シンプル設計で考えられている。乗員輸送船としては4人乗りで、貨物輸送機としては、1800kgとしている。
 以上、乗員輸送船は米露開発競争で実施され、生物閉鎖環境における過去の知見(ジェミニ・マーキュリー・アポロ計画)を利用して、いち早く目的達成する方法論で実施するため、短期的将来はカプセル回帰し、長期的にはKliperやAASやDream Chaserなど、米国独自計画が出てくるものと見られる。
 有人宇宙システムの開発者に話を聞くと、米国における有人宇宙開発は、第一世代としてジェミニ計画でカプセル技術を育て上げ、アポロ計画まで行ったそうだ。基本的にこの世代までは生物閉鎖環境はカプセル型で成り立たせている。そして第2世代として、スカイラブ計画で生物閉鎖環境技術を大型化させ、その知見をベースにスペースシャトルへと行ったそうだ。しかし、シャトル技術を長期的に維持したことから、当時の技術者が引退したため、生物閉鎖環境技術の建て直しのため、シャトル後継機計画は一旦カプセル型に戻し、コスト概念を意識して知見再獲得を優先、その技術を育てながら新世紀へ対応した技術を育て上げる長期的ロードマップを考えているとのことだ。つまり、アメリカは有人船を一旦カプセル型に戻してやり過ごし、貨物競争は民間中心に開発させながらロシアやヨーロッパ、日本へ道を譲り、その間に別の次元で新たな第3世代を目指して開発し、勝利する計画を考えているのではないだろうか?
 また、これら貨物船や乗員輸送船開発のトレンドは、低コスト・高機能・ユニバーサル対応する動向が見られる。貨物船シベリアは“日米欧露ロケット”のサイズに合わせた貨物船をユニバーサル仕様でラインナップし、どこの国でも採用できる仕様だ。そして乗員輸送船も多種多様のランチャーで打ち上げられれば、量産とコストダウンを達成できる。
 このように、ISSにおける貨物・乗員輸送システムは、やみくもな開発ではなく、「モジュール開発競争によるユニバーサル化」、「低コストを目指しながら高機能なコンセプト」をトレンドとしている。はたして、「高機能だが高コスト」・「生産地偽装」・「輸送能力がATVより劣る」日本のJAXA-HTVは、国際協力の舞台であるISSで賞賛される宇宙システムとなれるのだろうか?

◎新世紀宇宙利用システムの実用化競争(商業用宇宙ステーション計画動向)

<民間の無人型宇宙製薬工場>

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SOYUZ-Kliper及び、SOYUZ−ATVによるポストISS案(出典:FlightInternational、RSA)

<民間宇宙ホテルのビゲロー>
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                     Bigelowの計画          GENESIS-I                 GENESIS-II                   Dnepr  (Bigelow Aerospace)

 

<宇宙企業以外が出資する動き>
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貨物企業FEDEXも出資(Andrewspace)     カプセルや打上手段の民間開発案(tSpace)

   
計画変更したPLANETSPACE(ATK)              Dream ChaserのATLAS-V利用案(SPACEDEV)


ドニエプルによる脱出用カプセル打上(ISC)

 ポストISSへ向けて欧州やロシアでは宇宙以外の民間企業を引き込んで宇宙活動をする一方、アメリカでもNASA-COTSで民間企業育成と、資産家が宇宙へ投資して活動を実施、宇宙企業へ声がかけられ、支援する体制が構築され、コスト競争の中で宇宙企業が育成されている。
しかし日本は、ISS後の計画はHTVをミニ宇宙ステーション化して「宇宙以外の民間企業を引入れる」のではなく、「JAXA主導(国家主導のみ)」で打ち上げたいと提案する動向が見られるが、これが如何に「場当たり的」で「時代遅れ」で「コンセプト能力不足」であることは、もう分かるだろう。宇宙先進国の企業は国際市場へ向けで需要開拓し、コスト競争に勝てる宇宙システムを構築すべく、技術基盤を確保しながら他社と組んでいる。

◎国際宇宙ステーション内部でも近代化競争が勃発
 今後は、「ハイコスト・チープリターン」宇宙システムは淘汰される。それを維持しようとすれば、国際社会からはじき出されるだろう。それは国際協力の場である国際宇宙ステーション(ISS)内部でも発生している。
 日本では宇宙モジュールが打上がったことで「20年の苦労が実った」と安堵感が広がっているが、宇宙ステーション自身ではモジュール競争がすでに始まっている。それは、ISSモジュール競争である。
 時代も変われば技術も変わる。現在のISSは建設遅延のため技術は古くなりつつある。このため、制御モジュール更新、省電力化させる技術、居住空間を快適にする技術、研究実験装置の更新による近代化競争が始まっている。例えば、姿勢制御装置も現在では小型で省電力なものが登場しているため、交換すべく各国が技術競争を始めている。また内部の構成部品もMEMSや電子技術の発達で小型・軽量・高機能なものが取り入れられつつあり、それは先月号で紹介したNANO、PICO衛星技術などで培われた技術がインストールされようとしている。大型衛星ばかり作り、ろくな小型衛星戦略がないJAXAは、ここでも技術蓄積で差をつけられている。
 次に電力もISSという宇宙コロニーの省電力化が進んでいる。具体例を挙げれば蛍光灯を止めて省電力・超寿命・高輝度のLEDを使ってISS電力消費量を抑えようと競争を始め、電池もニッケル水素からリチウムイオン化による蓄電量の増加と省スペース化、配線の交換などを進めている。この分野は日本が貢献できそうだが、この近代化競争にJAXAが動いている気配が無い。実際に海外からの話では「日本のモジュールは古過ぎで、JEMが新規に打上げられても中身は陳腐化している」と述べている。

◎日本の問題点や実情を整理すると
 今後、ISSという国際協力の場が「短期的に廃棄」されるにせよ、「長期的に維持」されるにせよ、国際協力の場に参加した日本がろくな戦略を描かずに「国際宇宙協力交際費である400億円」を使い続けるのは、お粗末と言えないだろうか?日本は中国・インド・韓国よりもISSによって優位的立場にあるにもかかわらず、近代化競争に参加せずに「20年前のストアモジュール(きぼう)」を打上げるだけでは、果たして国際的に賞賛され、かけた費用に見合う成果を挙げられるのだろうか?
ISSが「血と汗と涙の開発物語」、「宇宙飛行士の笑顔」で国民を騙すのは、今後宇宙を目指す若手のモチベーション上も良くない。では、日本の問題点や事実を整理してみると、以下になる。

・ ISS構築コストは6800億円ではなく、1兆2千億円以上(見積の1.8倍以上)
・ ISS年間維持費400億円(5年間2000億円)のうち、JAXA職員の人件費は含まれず
・ 当初のISSミッション計画の8割が消滅
・ JEM(きぼう)基幹部品は輸入品で海外企業による施工、配線もケネディー宇宙センターでやり直し(部材・部品・組立作業まで供与)
・ JEMは国際協力で利用されるため、日本が使用できる割合は3割程度。JEM本格稼動は2009年後半以降(調整に時間がかかる)。システムが陳腐化。
・ HTVはコスト異常、基幹部品も輸入品、NASA-COTSで敗北、国際同盟も参加出来ず
・ H-2Bもコスト異常、射場更新費も膨大、旧世代技術ロケット、エンジン開発も暗礁
・ 日本人宇宙飛行士育成には一人あたり50〜150億円かかる

 日本の宇宙予算は、年間2800億円という資料を提示しているが、これは真実ではない。実際はJAXA(NASDA)そのものが特別会計に依存しているため、見えない予算がプラスされれば、宇宙予算は年間約5000億円もある。このうち3000億円を旧NASDAの優遇する企業(三菱重工や三菱電機など)へ流しており、残りの2000億円で宇宙ミッション活動を実施している。この費用ベースで換算すると、宇宙ステーション予算は、JAXA(旧NASDA職員)の人件費と裏予算をプラスすると、年間800億円かかるのが実態である。ISS年間維持費400億円というのは真実ではなく、こういうカラクリなのだ。また“きぼうモジュール”はケネディー宇宙センターで、配線やハッチのやり直し・取り付け直しが行われているが、この費用はJAXA発表額の中には含まれていない。さらにHTVやH-2BというISS利用を想定した貨物輸送システム開発も、このJAXAが“公表”する年間経費400億円の中に含まれていない。

◎ISSの日本参加は、経済摩擦問題による政治的決断からはじまった
 ではなぜ、このような膨大は予算執行が容認されているのか?それは、80年代の日本高度成長期に遡る。当時の日本は経済が好調で自動車輸出による貿易黒字も加わって、その余りに余った予算を、貿易摩擦の解消材として利用した政治判断がある。日本は米国との貿易摩擦を少しでも解消すべく、スペースシャトルシステムやISSシステムを財政面で支援した。この行動により、日本は米国との間で緊張緩和を成し遂げ、同盟国としての地位を失わずにナショナルプレステージを維持できた。これは気象衛星の分野でもそうだろう。静止軌道に気象衛星を保有し、国際気象機関の中で中国よりも高いナショナルプレステージを確立できたのも、日米同盟関係が維持できたからとも言える。
 しかし、90年代に入りバブル経済が崩壊。好調に増加していた宇宙予算にも陰りが見え始める。また、ISS計画が予算超過及び開発遅延が続き、中止論議がアメリカ議会で叫ばれた頃、NASAとNASDAは必死の議会ロビー活動によって、「わずか1票差」で計画続行という結果になっている。だが計画続行となっても、開発遅延により利用者が離れ、地上技術の進歩も加わって当初の計画ミッションの8割が2008年現在までに失われている。
 また90年代の日本は、宇宙予算に陰りが見え始める一方、NASDAは国民には見えにくい特別会計を利用し、ISSのモジュール開発を続行している。しかし実態は技術力がないため、部材・部品・組立作業まで外国人技術者が来日し組立作業を行っている。事実、2007年3月に打上げられた“きぼうモジュール”の保管庫は、部品から組立てまで殆どがアメリカ製で、これを輸入して組み立ている。この産地偽装の最大のポイントは生物閉鎖環境を作り出す“開閉ハッチ技術”の輸入である。日本では、きぼう(JEM)でハッチを国産化したと主張するが、実は出来上がったJEMはケネディー宇宙センターでハッチが米国の業者によって取り替えられている。つまり、筑波宇宙センターにあるJEMのハッチは「地上用ハッチ」であって、宇宙用ではない。このため、JEM実験室は左右が米国製で、真ん中のドンガラが日本製造となっている。一番、技術的にリスクの低い場所を製造して「国産」とNASDAとメーカーは主張しているのだ。
 そして90年代はNASDA無策と衛星・ロケットの技術開発失敗及び、99年にはH-2ロケット打上失敗という「試練の時」を迎えた。ISSは実際のところ、政治的決断によって官庁が主導して実施したため、宇宙公共事業という趣が強い。国家宇宙戦略という次元ではなく政治的・経済摩擦問題解消でスタートした流れのため、その流れを引き伸ばしているNASDA体制は、宇宙を外交戦略的展開する体制ではなかったのである。そのNASDA体質の悪さは、三機関統合後のJAXAになっても続いている。

◎90年代以降は宇宙外交に失敗(乗員輸送手段の確保に失敗し、HTVは敗北)
 このため、スペースシャトルが永遠に存在するものと信じ込んでいた当時のNASDAは、ISS乗員輸送手段をスペースシャトルに頼っていたため、シャトル後の乗員輸送手段を確保していなかった。これはコロンビア号事故後に2010年でシャトルを引退させる決断をしたアメリカ宇宙政策で露見する。現在のところ、ARES-1やNASA-COTSの乗員輸送手段に頼るかSOYUZ-TMAに頼ることになると考えられるが、宇宙外交を展開していないため、スペースシャトル以降の乗員輸送戦略は不透明である。
 一方、欧州ESAはしっかりと、ロシアへコンタクトして、欧露間で宇宙輸送手段の協力関係が結ばれている。その流れがSOYUZの欧州射場進出、及びATVの技術提携、Kliperの共同開発と輸入、ATVとSOYUZ-TMAのミニ宇宙ステーションへと繋がっている。欧州は日本と違って90年代も積極的な宇宙外交を展開していたのだ。


仏領ギアナに建設中のSOYUZ射場            欧露連合によるギアナ・ランチャー体制 (Arianespace)

 よって90年代のNASDAのすべきことは、80年代にNASA計画を財政面で支援していたことを背景に、将来の展望を見据えて次世代の戦略を展開すべきだった。日本があれだけの財政支援をNASAへしていたのならば、スペースシャトルの日本人副操縦士くらいは誕生してもおかしくないくらいだ。しかし戦略欠如に加え、コストのかかる宇宙公共事業をNASDAとメーカーを含む官庁は目論んでいたことから、次第にNASAやアメリカ企業から「財政目当てで呼ばれる」流れとなる。この流れの中で生まれたのがHTVだ。HTVは、海外のライセンスもので構築されているため、海外企業にとっては収益になる。海外企業はHTVを「名を捨てて実をとる戦略」を取り、NASDA(JAXA)は「名を取り、実を捨てる」戦略となった。

 しかし、HTVにも問題が生じ始める。当初は貨物輸送を日本が展開してNASAへ供給することも目論んでいたが、コスト超過とシャトル引退及びNASA-COTSプログラムの登場で、「HTVより安価な貨物輸送手段」が開発されており、HTVがアメリカ国内では相手にされていない。事実、HTVは米国企業と共にNASA-COTSに申し込んだが最終審査にも残らなかった。つまり、現在のHTV利用にアメリカはJAXAへ“NO(いらない)”を突きつけたのだ。これは宇宙外交の失敗も物語っている。もはやHTVはJAXA筑波とメーカーの情けない雇用対策プロジェクトとして遂行されており、ISS貨物システムが供給過多に陥っている状況下も加わって、どうしようもない状況だ。しかもドッキングセンサー技術をドイツから輸入している。これは、レーザー誘導という、将来の交換機能を持ったモジュール型衛星(Orbital Expressなど)の基盤技術開発を目的とした意味合いがある。「ここの基礎技術は必ず自国で握っておきたい」という根幹部品まで日本は輸入しているのだ。海外では“基礎技術は抑えてから外と組む戦略の時代”にJAXAは技術戦略さえ描けていない。


H-2Bは国力消耗で利用価値なし、HTVは国際連合へも不参加(JAXA)

 現在のISS計画を総括すると、日本はヨーロッパの2倍以上の予算を使っていたにもかかわらず、JAXA(NASDA)の成果は乏しく、基礎技術開発戦略も乏しく、宇宙外交展開にも事実上失敗、将来展望も貧しい結果となっている。

◎このままではISSが「ハイコスト・チープリターン」に、、、
 宇宙は金がかかるので、戦略・経営を間違えると大きな損失を招く。ましてや、NASDAは90年以降、ほぼ80年代の惰性でISS計画を遂行しているため、国際的にも取り残された上に、中国・インド・韓国の追い上げで「金を掛けた割に得るものがない」という事態に陥った。このままでは、海外企業や宇宙機関へ財政支援をするだけで産地偽装された「日本の宇宙システム」が打上げられる事態だけになりかねない。
 この状況下、成果が乏しくなるのはJAXAも認識している。しかし、対策として出てくるのは宇宙カレーや宇宙ラーメンなどの宇宙食と、カップラーメンやスポーツ飲料のCM撮影に使う「宇宙スタジオ」という、あまり中身のないもので成果を誇り始めている。海外動向を見ても「宇宙食やCM作りで」はしゃいでいるのは日本ぐらいなもので、「日本は本当に宇宙をやる気があるのか」と言われ始めている。今後も目先のマスコミ受け狙いで、JAXA人件費等を含めて年間800億円も使って国民を騙し続けるのは無理がある。 
 そのJAXA戦略の悪さに拍車をかけているのがHTVとH-2Bだ。最近、たったの10秒だけH-2Bエンジンを試験し、「熱で溶解する前に燃焼試験を終了」させて「初試験成功」とマスコミ報道させているJAXAだが、「正確ではない報道」で国民を騙す姿勢は、末期症状とも言える。そもそもHTVは国際的に敗北、H-2Bも「価格異常と言われたH-2Aよりも高価」なロケットなのだ。このまま開発しても国際的に容認されるものでもない。ソフトもTITAN-2の骨董品で種子島射場の整備塔では、建物からロケットさえ出せない事態となっている。このため、紀伊半島の原生林を伐採して新射場を作ろうとの計画情報もあるが、日本の宝とも言える地域に「国際的に恥ずかしいH-2ロケット射場」を作れば、自然保護団体から批判を浴びた上に日本の液体ロケットの未来も無い。
 そもそもH-2Bは必要なのか?もしISSが国際協力の場ならば、HTV搭載ロケットは国際競争させるべきだろう。HTVのために、ロケットまで新造する発想が間違っている。実際にNASA-COTSで米国企業と組んで提案したのだから出来るはずだ。H-2BコストがH-2Aより下がるのなら検討の余地はあるが、無理にH-2Bを作れば同じ技術を有するフランスとの「差」はさらに開くだろう。また、HTVも年間1基の打上がせいぜいで、開発原価償却に20機は最低作らなければならない。製造するHTVを6基打上げたとしても、残り13機分のH-2Bの需要はどうするのか?衛星の国際トレンドは小型化の時代で、大型液体ロケットは連合が進むこれからの時代にだ。はっきり言えば、H-2Bは日本として不用であり、国力消耗以外に何者でもなく、高価格・輸入ソフト・輸入部品・ライセンス料を支払っても国際ロケットへとなれるはずがない。そしてH-2Aもどんなに足掻いても、商業ロケットとして成功できないだろう。特定企業の雇用維持のために、適正とはいえない技術開発を実施し、マスコミを接待してコントロールする努力では、近い将来没落してしまうだろう。今後は、H-2シリーズの事実をさらに深堀りした上で、液体ロケットを国際的地位へ上げるために、事実を鑑みた戦略を提案してみたいと思う。
 また、宇宙飛行士育成も見直しが必要だ。国民に夢を語るのは良いことだ。しかしそれだけで50〜150億円もかけた成果を説明するにはあまりにも厳しすぎる。しかも立場が異なるにせよ、韓国は30数億円という適正な予算でISSへ人員を送り込んで「自国民に夢を語る」実情から見れば、日本はハイコスト・チープリターン評価になってしまう。日本はコスト・技術的に独自の有人宇宙船は作れないにしても、せめて米露と同盟関係を結んでアジアの宇宙飛行士を育成するために、筑波宇宙センターの宇宙飛行士育成施設を有効活用すべきだろう。この施設は宇宙飛行士を同時に10人以上育成できる能力がある。しかし実態は年に1人、いや年によっては0人を育成している能力余剰施設である。このまま施設を廃棄する方策もあるが、今後のアジアにおけるナショナルプレステージを拡大するならば、米国やロシアを引き込んで筑波施設を有効活用する戦略が必要だろう。


   
韓国は30数億円でISS派遣(KARI)  JAXA宇宙飛行士育成には50億円以上/1人かかる(JAXA)

◎政治的理由から始まったISSを日本はどうするのか?
 日米貿易摩擦から始まったISSは、時代の変化と共に変革が求められる。戦略無く、国民の税金を浪費し続けるJAXA体制は、もう許されるものではない。有人宇宙は理想(夢)だが、予算・技術・目的からISSのような宇宙交際費(貿易黒字のオフセット)はもうできないだろう。また、日本が空白の10年問題(宇宙実験の80%以上が消滅)で何もしない間、ESA・NASA・ロシアは補充の宇宙試験を創造(バイオ・遺伝子・部品開発)する一方、新世代技術を育てるべく、宇宙機器試験(CUBE放出・MEMS試験など)をしている。そうした中、JAXAは宇宙スタジオで世界の「笑い」を獲得している状況だ。今後は“きぼう”を失望にしないミッション再生が必要だろう。
 また、2010年シャトル引退後の乗員輸送手段(2015年)に日本はどうするのか明確ではない。日本独自モデルではコスト的・技術的に無理との現実の中、HTVは年1本で2015年まで消化するには、H-2Bの利用価値はないだろう。その一方、H-2A(改修)にHTVを合わせる発想も考えられるが、もしHTVをやるならば、上記の国際動向から見ても国際ランチャーで打ち上げる(デルタW・アトラスXなど)競争原理が必要だろう。
 またNASA-COTSは、ISS貨物輸送を目指した手段だけではない。ポストISSを睨んだ国際競争はすでに始まっている。よって2010〜2015年の空白期に備えたCOTS(貨物・乗員)の日米共同開発やソユーズへ暫定利用など、コストに見合ったミッション検討が日本にも必要だろう。
 今後は、JAXAお抱え企業の技術力そのものが、コストをかけたわりに成果が上がらなかった事実を鑑みながら、取捨選択を迫る時期に来ている。かつてイギリスがロケットを切り捨てて、小型衛星・通信放送衛星・センサー開発に特化した政策を打ち出した。当初反発が激しかったが、2008年の現在から評価をすれば、結果的に費用対効果が高く、国際的にもベンチマーク衛星を排出して国際的優位性を確立している。宇宙予算が少なくとも、選択と集中で成功した例として参考にすべきだろう。ロケットはすでに商業ベースで運用されており、国として保有しなくとも自由に購入打上可能だ。ドイツが軍事衛星をロシアのロケットで打上げている実情から見ても、「国家安全保障だから自国ロケットで打上げる必要がある」という論理も崩壊してきている。つまり、ロケットは国際価格に対応できないならば、遅かれ早かれ淘汰される運命なのだ。国威発揚で始まったH-2シリーズやISAS固体ロケットは、国際市場へ対応できるコンセプトが必要になるが、H-2Bは明らかにコンセプトアウトのため、やっても国力消耗をもたらすだけで将来がない。今後、ISSを含む有人宇宙は「勇気ある撤退」か、「集中と選択」が必要なのは明らかであり、H-2B中止は当然だが、HTVも国際競争でランチャーを調達する必要があり、ポストISSは「名より実を取る」戦略を目指したJAXA構造改革が必要だろう。

◎まとめ
 欧州・米国・ロシアでは、自国技術と足りない技術を出し合ってCREW(乗員船)・CARGO(貨物船)・TRANSPORT(ロケット)の国際同盟を構築、官需予算の中で競争力ある宇宙企業を育成して国際的地位を確立している。また、ISS内部でも国際競争でシステム更新し、宇宙コロニー維持とコスト低減及び将来の宇宙技術育成を戦略的に展開している。さらにNASAでは、COTS計画で予算を与え、民間企業もNASA契約予算額の1.5倍を自己調達し、開発している。この背景にあるのは、ポストISSの民間企業参入を見据えて経済的な宇宙活動を目指していることであり、「官需予算だから研究開発できれば良いというJAXA思想」はもう世界から外れている。

 「宇宙食とスタジオ」ではしゃいでいる日本(JAXA)は、海外から失笑を買う一方、国際連合へろくに参加せず、技術競争の場にも参加せず、10年前のストアモジュールを打上げて歓喜しているだけで国際的立場を悪くしている。その情報が漏れないよう、JAXAはNASA-COTSや民間宇宙システム開発動向の情報を封鎖、マスコミへは誤認識を与える情報を流し、宇宙鎖国を作ろうとしている。HTVのためにわざわざH-2Bロケットを新造するという、もっともコストのかかる宇宙公共事業的な発想も問題だろう。

 80年代の日米貿易摩擦解消と、公共事業として始まったISSは参加から20年。将来に対して日本が何をすべきか考え直す時が来ている。一度走り出したら酷いものになろうとも、最後までやらないと終わらない日本の宇宙体制は、新規プロジェクト開始をも阻害している一方、JAXA組織自身を変革させない限り何も変わらないことを示している。

 今後は国民を騙すのではなく、真に日本が国際的に認められる行動が必要であり、それが出来なければ日本の宇宙は没落の道を歩むだろう。今回は「JAXAが国際協力の場でも立場を悪くしている」実情を紹介したが、具体的な解決策は今後にしたいと思う。


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