混載打ち上げ・標準バス・マルチランチ(コンビネーション・ランチ時代の幕開け)
        (エアワールド2007年9月号抜粋):詳細は雑誌「エアワールド2007年9月号」をお買い求めください

 本稿では、過去の情報を整理しながら海外で起こりつつある宇宙システム革命の実態を分析してみたい。

◎打ち上げ能力の消費力競争

 先月号で示したように日本以外の宇宙先進国は、衛星を一品工芸型で製造するのではなく衛星標準機を用意し、これをベースにミッション機器(センサーなどの搭載機器)を組み込んで様々な衛星や探査機を開発している。

 これら衛星標準機開発の動きは1980年代の静止衛星標準機から開発が始まり、90年代に入り次第に安定化して2000年以降は安定期に入っている。そして商業化の波を受けて、2006年末現在では大手5社が80%の商業受注シェアを占めている。つまり、EADS Astrium、Thales Alenia Space(元Alcatel Alenia Space)、Boeing Satellite System、Lockheed Martin 、Space System Loralの独壇場というわけだ。商業静止通信衛星の需要数は年間25機前後と言われ、将来予測は“需要増”と言うよりもむしろ“長寿命化による影響で需要減”が見込まれ、さらに近年では機能分散型静止衛星も考案されていることから、衛星産業は今後も熾烈な競争にされられるだろう。

 この静止衛星の標準機開発の一方、近年では周回型衛星の標準機開発も活発化している。これら周回衛星標準機を重量別に分けると、下表に大別できる。

クラス別 周回衛星標準機

に大別できる。これら衛星標準機の構成部品は一定の規格化が進められており、モジュール化、ユニット化が進められている。近年では電子部品技術の発達により、アナログ→デジタル化が進められている。さらに民生品用及び航空機用の部品が宇宙用としても利用できる部品も登場しはじめ、ミニチュア化(小型化)を達成しつつある。またユニット&モジュール型の衛星が登場し始めており、今後は小型・高性能衛星が多く登場するのは間違いない。そのトップランナーがTACSAT、Microsat標準機(TOPSAT)、Minisat標準機(ASTROSAR)、MYRIADE標準機、PROTEUS標準機、LEOSTAR標準機、BCP-2000標準機などだろう。

◎ロケットのフェアリング構造・接続構造の変革も進む

  (エアワールド2007年9月号をお買い求めください)


ESPA搭載事例(出典:CSA Eng)    フェアリング内部の配置図(出典:AIAA)


ESPA搭載の多様性(出典:CSA Eng)

 ESPAはDELTA-IVやATLAS-Vに限ることではない。NASA財政支援のもと民間主体で開発中のロケットプレーン・キスラー社のK-1ロケットでも計画されている。つまり、米国で開発中の中大型ランチャーはESPAが搭載可能となっている。


ESPAのK-1ロケット搭載案(出典:SSC99-X-5)         ESPAミッション化(出典:CSA Eng)

 また、ESPAという搭載装置自身をミッション化させることも提案されている。USAFの資料によれば、ESPAの両端に太陽電池とミッション機器を取り付けて、簡易衛星を製造し、本格衛星への事前実験や工学的・理学的なミッションが可能となっている。さらにCubesat放出装置や推進系(電気推進や化学推進)の実験ができる実験ペイロードも搭載可能な仕様が発表されている。これら「拡張性のあるESPA」のアイデア力と波及性は賞賛されるべきではないか?


    ESPA/Cubesat放出装置 ESPA/装着した電気推進装置(出典:CSA Eng)

◎P-PODの規格化も進行中

 また、ESPAの搭載重量が1基あたり400lbs(180kg)ということから、CubeSATのようなナノ衛星、ピコ衛星の搭載は大型過ぎになる。このためCubesatというナノ衛星を複数搭載でき、放出可能なP-PODがある。このP-PODは重量約3kgで、すでにROCKOTやDNEPRなどで実績を挙げている。東京大学や東京工業大学のCubesatもこのP-PODに内蔵して打上げに成功している。このP-PODの搭載規格がESPAに加えてアメリカの標準規格になりつつある。

 2006年12月、TACSAT-2を搭載したMinotaur-1ロケットには、副衛星としてNASAのGENESAT-1が搭載されていた。このGENESAT-1は衛星が4.1kgでP-PODと組み合わせれば約7kgの衛星である。この装置をMinotaur-1の第4段のOrion-38ロケットモータ付近へ取り付け、軌道上で切り離しに成功している。この搭載表現をNASAは「Hitch a Ride On Rocket(ロケットに引っ掛けて載せる)」という表現をしている。まさにその通りだ。


Minotair-1搭載のP-POD(出典:ASGSB) 


PEGASUS搭載案(出典:Calpoly)

 Cubesatを含むナノ衛星は10cm四方という“縛り”があると日本では勘違いされがちだがそうではない。ナノ衛星は、必要に応じてサイズ変化できるように規格化方針が示されている。したがってCubeSATは必ずしも1kg、10cm四方で作らなければならないというものではない。そしてその拡張性を持たせるためにP-PODが存在する。P-PODは1台に10cm四方の標準サイズのCUBESATを3機搭載できる仕様で製造されている。つまり、標準サイズCUBEの2連掛けや3連掛けのサイズも搭載できるため、拡張性を有したナノ衛星放出装置がP-PODなのだ。この拡張性のあるP-PODを利用者側から見れば、歓迎すべき仕様と言えるのではないか?おそらくこれが、国際標準規格になると見られる。よって、日本のロケットもP-PODを搭載できる仕様にすれば、ロケット側も利用者取り込みが出来る一方、国内衛星製造側も国際規格で衛星を製造できるため、利用ロケットの幅が広がるだろう。


ナノ衛星のサイズ・バリエーション(出典:Calpoly)

  またP-PODは、ナノ、ピコ衛星搭載機として実績を挙げつつあるが、今後は様々なロケットにも搭載される予定だ。現在の発表資料によれば、PEGASUS、DELTA-II、FALCON-1にも搭載検討資料が発表されている。恐らく、ESPAのように搭載最適化のソフトも同時開発されていることだろう。注目すべきことは、最新で開発中である液体廉価ロケットFALCON-1から固体空中発射ロケットPegasus、信頼性・実績ともに名高いDELTA-IIという新旧ロケット全てにP-PODが搭載可能となっていることだ。当然ながらDELTA-IVやATLAS-Vにも搭載可能だろう。


P-PODのFALCON-1搭載案(出典:NASA)       P-PODのDELTA-II搭載案(出典:Calpoly.)

◎混載アダプターの開発を欧米露は進めている

 また、ESPAやP-PODに限らず、ロケット1基に衛星1基というのではなく、1つのロケットに衛星を混載打上げするためのアダプター開発も盛んだ。COSMOS-3Mは液体廉価ロケットとして君臨、低軌道(300km)へ1.3t、太陽同期軌道SSO(500km)へ900kgの打上げが可能だ。さらに上段のアッパーステージBreeze-Kの搭載検討が進んでおり、ドイツのRUBIN-X計画も国際共同で行われており、打上げ価格は直接契約をすれば、$7.2mil(約8億5千万)だそうだ。今後はさらなる利用側のコスト低減と顧客獲得を目指して衛星のマルチ搭載仕様の開発を進めている。


COSMOS-3Mのマルチ搭載(出典:GFZ-potsdam、Engesat)  

 またPROTONとROCKOTで使用されているアッパーステージBreezeも衛星が混載できるように仕様変更が可能だ。Dneprも混載が可能な仕様がある。さらにMinotaurロケットも、P-PODに加えて主衛星のマルチ搭載が進められている。おそらくDELTA-IVやATLAS-V規格のESPAでは、ロケットのフェアリング搭載スペースの確保が困難であることと、固体ロケットであることから振動環境的に困難だからと見られるが、将来のMinotaur-IVでは「主衛星1基の下に副衛星を4基搭載できる仕様」や、「主衛星を2機搭載できる仕様」などのマルチ搭載システムを発表している。ESPAとは違うが、恐らくESPAへ搭載できる衛星をMinotaur-IVにも搭載できる仕様で作られているのだろう。また別の発表資料では、Minotaur-IVのマルチ衛星搭載の方法論が示されている。以上、MinotaurロケットシリーズやCOSMOS-3Mは、ロケット1基にあらゆる衛星を効率よく搭載するシステムを開発しているのだ。


Minotaurシリーズのマルチ搭載例(出典:Orbital Science)   Dneprのマルチ搭載例(出典:コスモトラス)


Minotaur-IVロケットのマルチ搭載の流れ(AIAA)

◎なぜ、ESPAやP-POD等の搭載規格化が進められているのか

 ではなぜ、ロケット1基に衛星1基という“1to1体制”ではなく、様々なマルチ搭載仕様が出てきているのか?それは、打ち上げにおけるロケットのペイロード消費率を上げるためだ。ロケットは通常、軌道投入能力にマージンを持たせて衛星を搭載、打ち上げている。だが、衛星が小型化してきていることと、余剰打ち上げ能力をムダに捨てていては予算措置上及び商業利用上、説明がつかないからだそうだ。折角の打ち上げ能力が余っているにも係らず、無駄にロケットを打ち上げては、官需ロケットでは「税金の無駄遣い」、商業ロケットでは利用者側から「もっと打上げ重量単価を下げろ!!」と言われる事情が存在する。しかし、ロケットメーカーから見れば「作業が増えるからメンドクサイ」という意見が出るのも事実だ。だがロケット打ち上げを“利用者主体”で考えれば、ペイロード消費率を上げて利用者の便を追及するのは当前だろう。逆説的に言えば、ペイロード消費率を上げられないロケットは作る価値の無いロケットともいえる。利用者の便ではなく、ロケット技術者の趣味で打ち上げていると言われても、仕方のないことだろう。このため、アメリカではESPAなどを採用させるため、既存ロケットメーカーに「採用すれば減税する」というアメとムチでロケットメーカーを育成させているのだ。

◎衛星とランチャーのコンビネーション打ち上げ

 このESPAなりP-PODなり搭載アダプターなり、搭載規格にもトレンドがある。それは「コンビネーション搭載」だ。上記の混載打ち上げは、ただ闇雲に衛星を搭載打ち上げしているわけではない。コストバランスが悪くなる可能性が高く意味がない。ロケットの性能にもよるが、下表のようにコンピネーション打ち上げが主体である。

コンビネーション打ち上げの組み合わせ

 まずメイン衛星だ。これは1基ないし2基が搭載される。2基搭載の場合はロケットのフェアリングの上下に分けて搭載するのが主流のようだ。特にAriane-VやDELTA-IIでは目立った実績を挙げている。DELTA-IIでは過去の紙面(2007年6月)で紹介した気象・環境観測衛星群A-Trainの“Calipso”と“Cloudsat”が最近の打ち上げだが、過去にも“EO-1”と“SAC-C”の実績がある。


DELTA-IIの衛星のメイン衛星2基搭載(NASA)

  そして次に搭載するサブ衛星はメイン衛星と比較して小型である。この衛星をESPAや図に示すようなピギーバックへ搭載される。そしてさらに余裕のある場合はP-PODのような超小型衛星放出装置が寄生虫のように搭載(パラサイト搭載)されるという、「A・B・Cのコンビネーション搭載」が行われているのだ。


  サブ衛星の搭載    メイン・サブ衛星の搭載作業(Arianespace)

  また、必ずしもA・B・Cを全て搭載して打ち上げる必要は無いが、考え方はフライパンの「ティファール(T-fal)」を想像すればいいだろう。このティファールは、取り外し可能な取っ手を採用した調理具で人気がある。料理に応じて調理用容器を選択できるコンセプトなのだ。


ティファール(T-fal)

 この概念が規格化トレンドに当てはまる。必要な料理(ロケットの打上げ)に対してフライパン(衛星)を組み合わせて、ロケットの打上げにおけるペイロード消費率を100%に近づけるのが今後のトレンドなのだ。

 当然ながらロケットの目的に応じた価格・機能・安全性選択の必要があるが、A、B、Cの組み合わせによって隙間なく搭載し、ロケットのノーズフェアリング内の搭載スペースを高密度利用する体制を進めている。

◎搭載シミュレーションが構築され、混載が容易に

 だが、衛星をロケットへ搭載する作業は、見かけ上は楽に見えるが簡単ではない。ロケットに衛星を搭載しても、衛星の形状・重量は毎回違うため、打ち上げ時にかかるロケットへの振動環境が異なるのだ。このため、ロケットへ衛星を搭載する際に、「重心がどこにくるのか?」、「固有振動数(振動のピーク)は?」、「ロケットと衛星の間で共振し過ぎないかどうか?」などと衛星自身の特性データからロケットへの干渉を事前に把握、問題があるならばダミーウェイト(おもり)を搭載して振動特性をズラしたりしなければならない。よって衛星1基ならば比較的解析計算が楽だが、複数の衛星を同時搭載すると、衛星同士で干渉することも考慮しなければならず、その“解析計算”は厄介となる。だが、聞くところによれば、ESPAやピギーなどの混載作業をするにあたり、搭載する“メイン衛星”や“サブ衛星”、“パラサイト衛星”がどう干渉するか?を瞬時に解析計算可能なソフトウェアを開発しているそうだ。

 このソフトは、“メイン衛星”、“サブ衛星”、“パラサイト衛星”という各衛星の寸法や重心位置、重量等のデータを計算ソフトへインプットすると、「打上げ時の振動に耐えられるか?」、「どの位置へ副衛星を配置すれば良いか?」など最適解析計算をしてくれるそうだ。

 このソフトがあれば、ロケットに搭載する衛星の振動・音響などの干渉解析計算をゼロからしなくてすむメリットがある。つまり、打上げ作業の期間短縮・効率化が出来るため、コストダウン・競争力強化につながるのだ。

◎コンビネーション打上の標準化競争の背景

 ではこのコンビネーション打ち上げ競争に至った経緯を理解すべく、少し歴史を振り返ってみよう。ロケット1基に衛星1基を搭載して打ち上げという“One to One体制”は、70年代から90年代初頭にかけて主流だったと言える。それは「ロケットの打ち上げ能力の制約」と「衛星の機能を向上させるには大型化が必然だった」という背景からであり、宇宙開発国すべてにおいて同じだったろう。このため「(機能向上のため)大型衛星を打ち上げるには大型ロケットが必要」という考えのもと、各国のロケットは打上能力向上に主眼を置き、液体ロケットは1段目エンジンの推力向上へ特に力を入れ、固体ロケットも直径を増すことで打ち上げ能力向上を図ってきた。

 日本の固体ロケットで言えば、M-3型からM-3S-IIへ進んでM-Vロケットへ行ったことであろう。M-3S-IIは当時ハレー彗星探査機を打ち上げるため、極限にまでM-3型ロケットの性能向上を図ったもので、世界を驚かせたのは固体ロケットにて宇宙探査機を打ち上げたことであった。しかしM-3S-IIは探査機側の要求からさらなる打ち合げ能力向上が要求され、M-V開発へ至っている。これら事実から“One to One体制”が90年代までは当たり前だったと言える。

 その一方90年代に入り、ミニ衛星(500kg未満)打上用のロケット開発が動き出した。ここで登場したのがTAURUSだろう。TAURUSは固体+最終段液体ロケットであり、当時のTRW社の衛星筐体バス“T-200B”との“One to One体制”で構築して打ち上げられている。このTAURUSの後継がMinotaurシリーズだろう。

 また、ミニ衛星(500kg未満)打上用ロケット開発に拍車がかかったのは、ソ連邦崩壊後のICBM派生型ロケット(ピーストランスファーロケット)の登場がある。廃棄するミサイルをロケットとして再使用すれば、“ミサイル廃棄”と“稼ぎ”の両方が可能な上に、旧ソ連邦の宇宙技術者の“はみ出し国”への流出を食い止められるメリットがある。この動きにより、低価格ランチャーが世に放たれたのだった。結果、「打上重量単位の価格破壊」が発生、急激に宇宙開発国および宇宙開発組織の増加が生じている。このピーストランスファーロケットの登場により、コスト度外視の宇宙開発体制に1つのブレーキを与えたのだろう。技術開発偏重主義から「目的・費用・効果」を追求する宇宙活動こそがすばらしいという意識が日本を除く宇宙先進国で芽生えたと考えている。

◎One to One体制からコンビネーション打上体制へ

 また、90年代のミニ衛星用ランチャー利用の中で、ミニ衛星(500kg未満)ではなくナノ衛星(10kg未満)、マイクロ衛星(100kg未満)対応のランチャーが登場した。これがKOSMOS-3MやDneprだろう。これらロケットは衛星を複数搭載できるマルチスタンドを用意して衛星搭載スペースを有効活用している。この必要に応じてマルチスタンドを用意したのをきっかけに“One to One体制”から“マルチ搭載対応型ランチシステム”のニーズが理解され始めたと考えている。

 そうした中でミニ衛星用ランチャー(=小型衛星ランチャー)の中で打ち上げ能力を上げて、フェアリング構造やアッパーステージを変化させて利便性向上を図ろうとする競争も出始めた。それがROCKOT、TAURUS-XL、Dneprだろう。ROCKOTは、プロトンM型ロケットと同じBreeze-KMアッパーステージを採用して8回以上再着火を実現、複数の衛星を異なる軌道へ投入できるコンセプトで優位性を確立している。Dneprもアッパーステージに固体ロケットモータ(キックモータ)をプラスすることにより、惑星探査軌道へも打ち上げられる拡張性を確立し、またフェアリング構造内も多段式にして高密度利用を遂げている。TAURUS-XLは過去のTAURUSロケットモータ(Orion-50モータ)の性能向上で打上能力増強を図り、フェアリング構造も変化させて世代交替を進めている。

これら小型衛星ランチャーの「高密度搭載技術競争」の潮流により、新たに開発着手されたロケットには、

・ フェアリング内の搭載構造が交換可能でコンビネーション打上が可能

というニーズが発生、現在開発中のロケットである「Minotaur」「FALCON」「K-1」ロケットは、「One to One体制」だけではなく「コンビネーション打ち上げ」が可能な仕様で製造されている。Minotaur-1はフェアリング構造を複合材料化させて軽量化させた上にP-PODを搭載というコンビネーション打上仕様を確立した。上記で述べたように“FALCON-1はP-POD”が“K-1はESPA”が搭載可能となっている。恐らくというか当然ながらK-1は打上能力が高いためP-PODも搭載可能だろう。

 そしてアメリカの大型ロケットであるDELTA-IVやATLAS-Vもメイン衛星(A)の複数打上に加えて、“サブ衛星(B)”、“パラサイト衛星(C)”が搭載できるようにESPAやP-PODの搭載を進めて競争に参戦している。つまり、90年代後半から現在にかけて高密度搭載技術競争がロケットの世界で勃発しているのだ。少なくとも言えることは、今後のロケットは“One to One体制”ではなく“コンビネーションLVS標準化競争”を意識して設計する必要があり、高密度搭載技術競争という新世代動向を念頭に置いてロケット設計を進める必要がある。

◎H-2Aシリーズの現状は?

 では日本のロケットはどうなっているのか?日本のH-2Aは2段目に不規則振動の問題も含め、一品工芸品的な打上げをしておりコンビネーション打上時代に対応できていない。上記の複合・段積み打上機として素地が極端に乏しい。過去のADEOS-2打上げ時にピギーバック衛星を3機搭載した実績や3号機で2段積み打上をしたことがあるが、システム設計はJAXAがしたのではなく、AEROASTRO社へ外注して実施しており、日本としてノウハウは蓄積していない。また、ミッションコストが高すぎるGOSATもまいど衛星やCubesatなどをサブ衛星、パラサイト衛星として搭載すると発表しているが、これまたAEROASTRO社へ搭載システム設計を外注しているようだ。自力で副衛星搭載システムの設計能力が極端に乏しいのだろう。

 さらに問題なのは今後のH-2A打上計画だ。上記のコンビネーション打ち上げ時代による、搭載スペースの消化率向上において、その逆を進んでいるのがH-2Aによる惑星探査機PLANET-C打上だ。PLANET-Cは当初、M-Vで打ち上げるべく計画が始まった。しかし、JAXA宇宙基幹システム本部の国際動向無視のデタラメ論理によってM-Vは中止され、H-2Aで打ち上げると発表している。だが、ノーズフェアリングの中にPLANET-Cを搭載すれば、内部はスカスカでペイロード消化率は極端に悪い。しかもH-2Aが高価過ぎる影響で、ミッションコストも悪化している。下手をすると、探査機よりH-2A関連経費(射場維持費、全人件費、特許使用料)のほうが高価なのかもしれない。

 これはJAXA宇宙基幹システム本部(旧NASDA)がH-2A利用を推進するため、「目的・費用・効果の優れたM-V・科学ミッション」という“セット体制”を無理やりH-2Aへ搭載させようと画策した背景があるからと思われるが、上記のように「ペイロード消化率を上げようとする時代」にもし、H-2AでPLANET-Cを打ち上げれば、「国際的なJAXAへの評価はどうなるのか?」をJAXAはじっくり検討すべきだろう。恐らく、唖然・驚愕・嘲笑されるのではないか?

 一方、H-2Bは宇宙物資輸送用HTVがあるが、過去の誌面で述べたように「目的・費用・効果」という総合的評価と国際的な比較結果から大敗北した計画に陥ってしまった。それは、H-2Aとの部品共通化を発表しているが、実はコスト影響力の大きい1段目エンジン・筐体は共通化されていない。Ariane-VやDELTA-IVやATLAS-Vのように上段の入れ替えやモジュール追加で性能向上を図るほうが効率的なのに、1段目は作り直しで2段目は変更せずという、「ただ性能をあげればいい」というコスト・効率性無視のロケットを製造している。国際技術潮流から大きく逸脱した液体ロケット計画を進めることは愚かであり、JAXAと宇宙開発委員会が承認したH-2B計画はもはや戦略的にガタガタだ。


Ariane-Vシリーズ一覧(CNES) 


共通化されていないH-2AとH-2B(CNES)

 またH-2Aの2段目不規則振動問題がそれに拍車をかけている。H-2Bの2段目のそれは、H-2Aと同じものを採用している。国際的に見れば、アッパーステージ開発時代に対応していない上に、コンビネーション打上時代にも対応出来ていないのが現状だ。この影響により、近年のH-2Aは“One to One”というシングルランチが主体でメイン衛星(A)2基という段積み打上ができない。過去はできたが、現在は「改良を加えれば悪化する」というデス・スパイラルに嵌っているようだ。

  また、エンジン燃焼におけるソフト更新も必要だろう。だが問題なのは、液体エンジン燃焼ソフトが輸入品であることだ。これを書き換えて利用しているが、最新の液体ロケットと比較すれば使用言語が三世代旧式で「現在ではJAVAやLinuxなど民生品ベースでプログラミングされている時代」と比較すれば、世代交代をしていないH-2Bはそれだけで不合格だ。LE-5は、もはやソフトも設計思想も旧式でソフト源泉ロケットも振動問題を抱えて退役したとのことで、当時の思い入れで維持し続けても未来は厳しいかもしれない。

  今後は「MB-XXへの転換」と「アッパーステージ開発と構造強度の向上」と「ESPA利用及びコンビネーション打上システム開発」と「射場システムの更新・即応化・低コスト化」を含め、大々的なコンセプトチェンジが必要だと考えられる。現状のH-2Aは「(利用者主体ではなく)ロケット技術者が趣味で打ち上げて喜んでいるロケット」になってはいないか?M-Vのピギー衛星搭載に反対した実例から見てもそう考えてしまう。

  以上H-2Aシリーズは、1960年代の旧式宇宙技術が基本で進められている。上記の複合・段積み打上機として素地が極端に乏しい上に2段目の振動問題とソフト問題が拍車をかけているのが現状だ。これを隠して“過去の培った技術を最大限活用してH-2Bを開発中”と発表しているのが現状で、コンセプトが敗北・崩壊しているのは明白だ。今後も「基幹ロケット」として定義して良いロケットなのだろうか?基幹ではなく大男の殿ロケットではないか?

◎M-Vはコンビネーション打上時代に対応していたが、、、

  一方、M-Vロケットによる東京工業大学の小型衛星を副衛星として搭載・打ち上げた経緯は、独自設計だったそうだ。これは高評価できるが混載シミュレーションによる搭載作業の短縮化・簡易化は進められていない。つまり、M-Vは混載可能だが毎回適合ランチをしているのだ。

  今後はミノトウル・ロケットが参考になるかもしれない。ミノトウルは、TACSAT-2打上に際して直径を大きくしたフェアリングを新調している。実のところ、ロケットはフェアリングを交換すると、空力特性が変化したり、振動環境が異なるため簡単に交換することはできない。しかしミノトウルの新型フェアリングは“複合材とテンセグリティー構造の組み合わせ”というアルミ構造ではない新たな製造手法により軽量化と高強度を実現して容易に交換可能としたそうだ。しかもフェアリング交換だけでロケットを打ち上げられた背景には、事前の数値計算シュミレーションでユニット&モジュール管理により衛星搭載が容易に出来るよう、システムが構築されているからだそうだ。またVEGAも“One to One体制”ではなく、コンビネーション打上体制を発表している。SOYUZのインターフェース共通化も想定してユーザーマニュアル作成を進めており、M-V技術を取り入れながら発展の道を進んでいる。

  またM-Vは、学術ロケットとして開発された経緯から、利用者主体ではなく固体ロケット技術を追求する体制で開発されてきたことと、「固体は固体、液体は液体」という間違った縦割り行政のため最終段液体ステージが開発できなかったこと、文部科学省宇宙開発委員会とJAXA(旧NASDA)が固体ロケットの本質・潜在的価値を理解できなかった上にコストダウン・次世代化させずに(H-2Aのコストは隠してM-Vだけが)高価だという論理を強引に展開したことにも問題がある。恐らく妨害的なことがなければ、M-Vはコストダウンを達成し、打ち上げ技術は正常進化していただろう。よって今後の次期固体ロケット計画は国際動向を見据えて十二分に検討する必要があるだろう。もともと固体ロケットは国産技術を有しているため十分構築可能なはずだ。

  さらに問われるべき事もある。これは余談だが、この国際的なコンビネーション打ち上げ潮流に対し、東工大衛星搭載のM-V搭載をJAXA筑波(JAXA宇宙基幹システム本部)が反対したことだ。国際動向からみれば、ISASのとった行動は間違っているとは到底言えない。しかしJAXA筑波という「予算も人員も事実上10倍以上もある組織」から反対されたISASは「これはロケットの重心を整えるダミーウェイトを衛星へと置き換えただけ」と説明し、反対勢力を上手くかわした経緯がある。能力のある組織の足を引っ張ったことは非常に情けない話でもあり、国際的な恥ともいえる。

  だが、この事実関係を注意深く考察すると、東工大衛星のM-V搭載を反対したのは、「H-2Aの副衛星搭載における国産設計能力が乏しい現状が露呈しては困る」とか「H-2Aの2段目の振動問題が露呈しては困る」という思惑がJAXA宇宙基幹システム本部にあったのではないか?と筆者は推測している。「混載対応ソフトの開発動向」および「副衛星搭載システムの設計能力の乏しさ」からすれば、大幅な戦略変更をしなければ「H-2Aシリーズの将来は非常に厳しい」とも言える。


フェアリングの異なるMinotaur-I(出典:AIAA)      東工大衛星のM-V搭載(画像出典:USSS2005、JAXA)

◎GXロケットもコンビネーション打上に対応しておらず

 次にLNGエンジン開発遅延で、コストが膨れ上がっているGXロケットだ。すでに、GXのすべき方向は過去の誌面で発表(2007年3月号)したが、もう一度問題点を整理してみよう。

  LNGエンジンは、ロシアのLNGエンジン技術特許をベースに開発中とのことだが、「短期間ではモノにならない技術」だろうと海外技術者から聞いている。指摘では2011年納入は無理で2015年にモノが出来上がっているかどうかも不透明なエンジンだそうだ。それぐらい、開発には時間がかかるエンジンのため、GXへ搭載するという目的のみで開発すべきエンジンではないと考えている。

  また打上システムも、海外では即応型打上システムが開発され、GXの1段目として採用しているATLASロケットの最新型は、最速で8時間打上げが可能だそうだ。このため、当初のGX計画をそのまま続行すれば、コスト高で打上作業が煩雑なシステムが構築されてしまう問題がある。

  次にLNGエンジンを採用した2段目は、アッパーステージ時代に対応していない。LNGエンジンは最着火の信頼性に問題があり、搭載する“メイン衛星”や“サブ衛星”、“パラサイト衛星”というコンビネーション打上時代到来に対処出来るコンセプトが発表されていない。折角、ATLAS-Vと同型シリーズのRD-180エンジンを使った1段目があるのに、それを2段目が生かし切れていないのが実情で、これは問題があるだろう。ただ、H-2Aシリーズと比較して優位なのは、2段目の振動問題がないためコンビネーション打上コンセプトは可能であるということだ。LNGエンジンは別途開発し、やはりMHIとP&Wロケットダイン社が共同開発したMB-XXか、IHIが過去ライセンス生産した経緯をもつRL-10シリーズ等を採用して、アッパーステージ開発とコンビネーション搭載体制を構築すればいいだろう。もしATLAS-Jを目指すならば、ATLAS-Vの小型版を視野にESPAとP-PODを搭載すれば、日本の衛星メーカーからも国際仕様へと繋ぐきっかけとなるため、歓迎されるのではないか?


M-Vは正常進化できた(出典:ISAS)     LNGにこだわり、国際提携を生かしていないGX(出典:JAXA)

◎H-2B、GX、次期固体計画はすべて不合格

 以上から、JAXAが計画するH-2B、GX、次期固体ロケットは全て

・ 搭載消化率向上のため、コンビネーション打上システムが不十分

・ フェアリングの最適化搭載シミュレーション・システムを確立していない


という問題が上記の国際動向から明らかとなった。これは利用者側から見れば致命的問題で、コスト競争・商業即応型打上時代にも不利である。さらに各々のロケットの問題点を整理すると

・ H-2AとH-2Bは2段目に振動的問題がある一方、心臓部のソフト・部品・射場システムが旧式・高価なシステムとなっていること。

・ 次期固体ロケットは、固体ロケット技術を熟知していないJAXA宇宙基幹システム本部(旧NASDA)主体で、国際動向を把握しておらず、コンセプトが陳腐で魅力無し。純国産技術をわざわざ放棄して、技術的に優位とは言えない輸入特許技術(SRB-A)で次期固体開発を発表、余計にコストのかかるコンセプトなのに、部品共通化によるコストダウンを提唱して事実関係を隠蔽。

・ GXはLNG開発遅延を抱えたまま、時間が経過するにつれて全体コンセプトがもはや復古主義的コンセプトに陥っており、国際提携のメリットも生かしていない


という問題点を抱えている。DELTA-IV、ATLAS-V、Ariane-VのようにICBMランチャー・民間中心開発のK-1及びFALCONロケットが登場したら、コンセプトも柔軟に変更するという体制が日本にはない。第二次大戦で言えば、空母による航空戦力の登場で戦局が大きく変化する時代となったにも関わらず、大艦巨砲主義でカミカゼをしようとしているのがJAXAロケット開発体制ではないか?能力や戦略性のある人材・組織を数の論理で押さえつけているのが現状だ。

  ここで1つの疑問が生じる。日本は旧NASDAロケットチームが開発に関与すると、シーラカンス(古代魚/生きた化石)コンセプトを作る動きをしているように感じるのは、筆者だけだろうか?意味のない無限開発で世界潮流を外れたロケット・コンセプトを世に放とうと連発しているのがJAXA(旧NASDA)と文部科学省宇宙開発委員会ではないだろうか?J-1やTR-1は言うに及ばす、J-1復刻版の次期固体計画、LNG無限開発、国際技術潮流から外れたH-2Bがそうだ。このままでは、世界第2位の宇宙予算を持ちながら、JAXAロケット開発は日本の辱となり、世界の端となるのではないか?と筆者は危惧している。この科学技術政策の失策は海洋の世界でも存在するが、少なくとも明確に言えることは、H-2B、GX、次期固体計画は「これから世に出すロケット」としてすべて不合格コンセプトであるということだ。早急な見直しが必要と同時に、心ある者が立ち上がることを期待したい。


原子力船「むつ」とその船体を流用した「みらい」(JAMSTEC)

◎日本宇宙体制が改革を必要としている理由

 だが日本は、ランチャーを開発しても搭載する衛星や探査機がない。ロケットが国際潮流から外れている一方、過去の誌面(2007年7月号)で述べたように標準衛星機(デファクト・スタンダード)の開発・構築競争にも日本は遅れている。これに続いて日本は「M-Vと科学ミッション体制」という目的・費用・効果が総合的に優れているセット体制を放棄して、「技術遅延・高コスト・低成果」の「H-2Aと実用・技術試験衛星」というセット体制を残した。

 つまり、世界第2位の宇宙予算を用いながら時代の変化に乗り遅れた挙句に、コストバランスの良いものを放棄して悪いものを残したのだ。しかしそれが指摘されては困るため、「液体ロケットだけが今後発展する。固体は消える運命」という国際情勢から外れた論理を展開、国産固体ロケット発展を妨害したのがJAXAである。輸入特許ベースのSRB-A利用という「固体ロケットの本質を理解していない人間が短絡的に考えるアイデア」で、「ロケット全重量に対するペイロード投入比率が良いと世界的に高評価されていたISAS固体ロケットを作れない失敗作J-1の再来」を宣言したJAXA宇宙基幹システム本部(旧NASDA)がそれを示している。次期固体ロケットを本気でやる意思がないとも解釈できる。

  旧NASDAにとっては都合が良いが、「H-2シリーズの真実は、完全に国産化できなかったこと」と「日本の安全保障を含む国益」を考慮すれば、国益に適った宇宙活動をJAXAはしているのか?と疑問に感じるのは筆者だけだろうか?

  よって文部科学省の宇宙体制は「予算をかけた割りに国際的な地位はろくに築くことができなかった」と事後評価でき、将来も「コストバランスの悪い宇宙活動を推進している」と評価できる。日本の発展を考えれば、このままでは決して許されないだろう。抜本的に改革をしなければ、日本の宇宙活動は外国旧式宇宙システムの売却市場となる上に、存在感なく科学技術立国として恥ずかしい地位へ転落してしまうのではないか?

◎標準化された宇宙システムを目指す必要

 よって日本の存在感と国際的地位を回復させるために、段階的に宇宙システムを次世代させて新世代化させる必要がある。これを考慮すれば、まず標準衛星バスを構築する方法が良いだろう。しかし、JAXA(旧NASDA)のように大艦巨砲主義的な衛星バス開発ではなく、上記で述べた“メイン衛星(A)”や“サブ衛星”(B)、“パラサイト衛星(C)”というコンビネーション時代を考慮して標準バスを育成する方策が良いだろう。

 特定の衛星バスのみへ絞り込むことは、目的へ応じた宇宙活動を阻害してしまうからだ。例えば測位衛星は技術進歩により1000kg程度かそれ以下の時代になるため、過去のように通信衛星バスを用いて製造する時代ではなくなってきた。最新鋭グロナスは850kg、ガリレオも700kg程度を目標に開発中だ。まさか日本の準天頂測位衛星が軌道が高くても2000kg以上になるとも考え難いが、もしこれ以上の重量で製造されれば技術開発的にも失格であり、国際的に唖然・嘲笑されるだろう。(準天頂衛星の重量はいったいどれぐらいなのだろうか?)

 日本が「コンビネーション打上時代へ対応」でき、「ミッション目的・開発費用・見込まれる成果」をバランスよく達成するために、下表をベースとした標準衛星バスを確立する方法が良いと考えられる。

 CUBEクラスはボーイング社が先日打ち上げ成功したように、衛星の運用や制御システム、新型部品という次世代技術を先取りするために利用して、場数をこなし経験値獲得にはいいだろう。また、新しい宇宙ベンチャー育成を考えれば、大学ベースで開発させて技術的可能性のあるものは、大手宇宙企業もしくは国側が支援すればいいだろう。ボーイング社もCUBESAT開発に当たり、スタンフォード大学と共同で進めたとの話だ。P-PODへ搭載できる仕様で製造すれば、打ち上げ費用を安く出来るかもしれない。

 INDEXクラスは50kg〜100kgクラスの衛星として、受動系センサー・民生品技術の実証・科学ミッション・推進系実験など幅広い利用が期待できる。国際的に出るならばESPAへ搭載できる仕様にすれば、米国ロケットへ搭載できるため、比較的低コストで打ち上げられるかもしれない。

 OICETSクラスは500kg周辺の衛星バスとして能動型から受動型センサー及び高解像度地球観測衛星として有望かもしれない。これはバス設計方針次第だが、SERVISバスに搭載したセンサーが小型化してきた時点でOICETSバスはニーズが高まると考えられるため、新世代用衛星バスとして時間をかけて育て上げる方法もある。開発元のNICTがJAXAではなく、国際情勢と提携をしっかり研究して独自開発すればいいだろう。

 SERVISクラスは1000kg周辺のバスとして、きわめて短期的に利用が可能で拡張性のある衛星バスだ。過去の誌面で述べたように国際共同ミッションにおけるセンサー回収ミッション及びカプセルという閉鎖空間利用を見越して、バイオ系や密閉技術追求による将来の有人宇宙技術の基礎開発として利用することも考えられる。デタラメな開発費をかけてはダメだが、回収依頼をアメリカ・ロシア・オーストラリアなどへ依頼し、海上回収を止めて地上回収すれば比較的低コストで回収できるだろう。

 最後にNPPだ。これはアメリカとの共同開発を依頼すべきだろう。これからの気象・環境観測時代を考えた場合、大型地球観測衛星はJAXA戦略レベルがあまりにも低いためガタガタだ。よって日米共同開発として技術導入を進めてはどうか?ここで底上げをしながら、インターフェースの共通化による将来の国際提携の道を作る方法もある。日本からはSERVISを出して回収ミッションを含めて手を結ぶという発想だ。NPPと通じてSERVISの世代交代を図ることも可能だろう。実のところNPPという衛星バスは、周回型だが静止軌道用として使用できる素地の衛星バスだそうだ。将来性は非常に高い。

 これら衛星バスを段階的・多方面的に開発・発展できる育成戦略が必要であり、「目的・費用・効果のバランス」を無視した国際的に恥ずかしい宇宙システム計画を連発しているJAXA計画よりも、上記の衛星バス育成による段階的思想は、海外から高い評価が得られるだろう。

◎ロケット開発も新世代対応ランチャーへ転換

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◎まとめ

 ロケットはペイロード消化率を競う時代へ突入している。このため“メイン衛星(A)”や“サブ衛星(B)”、“パラサイト衛星(C)”をESPA・P-POD等へ高密度搭載してコンビネーション打上体制を確立しつつある。さらに衛星搭載を容易にするため、搭載最適化ソフトを開発して宇宙輸送手段の世代交代と技術・コスト競争力向上を進めている。

 だが、JAXAが開発中のH-2B、GX、次期固体ロケットは「A・B・Cコンビネーション搭載打上時代」に対応しておらず、これからの時代を考慮すれば不合格コンセプトであることがはっきりした。またH-2Aは海外へ設計委託しており2段目不規則振動問題も加わって素地が悪く、純国産M-Vは国際レベル到達が可能だが、JAXA宇宙基幹システム本部の謀略により中止させられ、次期固体は構想レベルが低い。GXはLNGエンジン開発にはあと5年以上かかると予測され、既存計画は陳腐化した上に国際提携のメリット生かせていない。

 国際レベル到達と国民の税金を有効に使うためにランチャーや衛星製造計画の“抜本的やり直し”が必要だろう。NASAでも月・火星探査計画がコスト的に合わず、計画が白紙に戻ったそうだ。ダメなものはダメと人事刷新までしているとの話だ。これぐらいの改革が日本でも必要ではないか?少なくとも宇宙開発委員会は諮問機関として機能していないことははっきりしている。JAXA組織見直しを含めて今後の改革がどう進むのか?組織利益と国益にズレが生じはじめている日本の宇宙活動を修正できるのか?が宇宙基本法やそれに続く宇宙活動法などに問われた課題なのかもしれない。


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