革新宇宙技術への転換戦略(既存宇宙プロジェクトから商業宇宙への転換)
   (エアワールド2009年5月号抜粋):詳細は雑誌「エアワールド2009年5月号」をお買い求めください

 本稿では、明らかとなる国際動向を見据えて、今後の日本が費用対効果に優れた宇宙活動を行うべく、革新宇宙技術を踏まえた転換戦略を考えてみたい。

◎現在宇宙戦略の整理統合(高コスト・大型・基幹技術の戦略)

 筆者らは「サテライト危機管理シリーズ」、「次世代宇宙戦略シリーズ」、「新世代宇宙戦略シリーズ」、「新世紀宇宙戦略シリーズ」で世界動向における日本の現実を紹介してきた。ここで判明していることは、ランチャー・衛星・プロジェクトコスト・利用戦略の全てにおいて日本は遅れていることだった。だが近年は事実を認めて立ち直ろうとする動向が一部で見られ、“鉄の絆”で旧態体制を守るのに限界を感じ、JAXAや一部企業の拘束を抜け出して変革の道へ進もうとする勢力が現れている。「立場上はJAXA(もしくは特定企業優遇)の言うことを聞いているが、本音では改革を待ち望んでいる」とする“隠れ改革派”も次第に現れ、宇宙戦略本部に続いて今後設立が予定されている宇宙局にて抜本的改革を期待する声も聞かれ始めている。この改革を進めるには、既存プロジェクトを公正に見直し、JAXAによるマスコミ制御や政治家の圧力で捻じ曲げられない宇宙評価体制が必要であり、予算超過・技術遅延の現在宇宙戦略の整理淘汰が必要だろう。では、日本の宇宙改革へ向けていくつか解決方法を考えてみたい。

◎ランチャーの整理・統合の必要性(基幹ランチャーの期限利用)

 まずは日本が保有するランチャーの整理統合である。先月号で紹介したように、FALCONランチャーは「大出力・小型・低コスト」の液体エンジンをシングル&クラスター化することで“性能レンジ“に優れた市場参入能力を有している。販売コストが優れており、現在はFALCON-1のみが実現、ISS輸送市場へ向けてFALCON-9を開発中である一方、EADSから静止衛星打上も受注している。さらにはビゲローがATLAS-V購入の交渉をストップしてFALCON-9へ購入コンタクトを始めているそうだ。
 このため、DELTA-IV、ATLAS-V、Ariane-Vではコスト・コンセプト遅延が明確化したため、メーカーでは戦略練り直しを迫られている。
FALCONランチャーコンセプトの登場により、液体ロケットのベンチマークが登場したことで、これよりコンセプト能力の低いものは開発が許されなくなっている。つまり既存コンセプト概念が吹っ飛ばされたため、基幹ロケット、主力ロケットと称するH-2Aをはじめ、コンセプト遅延のH-2B、GX、H-X、LE-Xはもはや継続意義が消滅しているのだ。これは当事者(JAXA)自身も把握しており、あとはどう整理統合するかが今後の課題となる。
 だが現実を見れば日本の打上手段はH-2Aしかない。これは期限を定めて維持する方策が必要だろう。信頼性が上がれば商業販売出来るという論理があるが、「実績も信頼性もまだ証明されていないFALCON-9」がなぜ商業受注まで獲得しているのか?を分析する必要がある。答えはコスト・コンセプトが優れているからで、“信頼性を上げ”て“見かけ上のコストを下げ”れば売れるわけではないという現実を見るべきだろう。現在のH-2Aは国際ランチャー市場競争で脱落した存在という認識が必要だ。それを踏まえた上で、次期ランチャーができるまで期限利用(維持)するというのが正しい戦略だろう。


モジュール・エンジンコンセプト(SPAECX)            FALCON-9の仕様(SPACEX)

◎液体エンジンの再生戦略の立案

一方、H-2Bは想定していた性能が出ないことからHTVを“軽量化”する事態となっており、搭載意義の低いペイロードを降ろして何とか打上げようとしているとの噂だ。オーダーメイド型ロケットであるのに加え貨物輸送機としても高コスト・贅沢仕様のため、FALCON-9とDragonのミッションコストがJAXA(H-2BとHTV)の半値以下と言われ、成功すれば実施意義そのものに疑問符が付き、技術コンセプトも遅延確定となっている。H-XとGXはもはやコンセプト遅延であるため、エンジンなどの要素開発に留めて開発予算まではつけるべきではないだろう。
 さらに日本は液体ロケットの根幹的問題がある。それは、液体エンジンの燃焼ソフトが旧式であり、海外依存脱却ができていない事実だ。液体エンジンはひたすら燃焼試験を繰り返してエンジンのターボポンプ回転数の制御や燃料流量の調整など、最適な解を見つけてソフトウェアを作るもの。ノウハウそのもののため、これを開発せずに海外依存しているのは致命的で、日本が海外協力なしにLE-Xを開発する基盤技術は有していないのが現実である。またLE-7Aの基本ソフトを更新すれば、LE-7A(H-2A)及びLE-7B(H-2B)の性能が向上するという話も聞かれる。海外交渉してエンジンのソフト更新を交渉してはどうだろうか?少なくともH-2B打上におけるHTV軽量化の問題を解決できるかもしれない。もしくは固体補助ブースターを本数増加して対応するのも方法として考えられる。
さらに海外からの情報では、メーカーがSPACEX社へコンタクトしてMerlinエンジンを輸入する交渉をしているそうだ。これではN-1ロケットの繰り返しで、日本が真面目に液体エンジンを再開発する体制を作らねばならない。さもなくば、日本は液体ロケットを放棄する選択肢も必要になってくるだろう。産地偽装で体裁を整えて維持するほど、過去の体質は許されない。世界の現実は甘くなく、日本としても財政的な余裕もない。
 よってコンセプト遅延で液体エンジン燃焼ソフトも海外依存の日本は、出直しが必要なのは明白なため、H-2Aを期間限定利用し、モジュール型でレンジ性能を発揮できる「大出力・小型・低コスト」エンジンをまず作る“再建戦略”が必要だ。ISSや有人宇宙開発へコストや人を割いている場合ではない。


  
成功したFALCON-1             FALCON-9とCEO                    民間宇宙船Dragon(SPACEX)

◎日本が海外依存せずに出来るランチャーは固体ロケット

 海外技術依存無しに純国産ランチャーを達成したのは固体ロケットである。液体技術が国外依存である事実が判明した今では国家技術安全保障上、非常に重要な技術であり、この技術で商業ランチャーを目指すのが日本の宇宙プレステージ回復にはまず必要な一手であろう。だが、安易にナショナリズムで国産技術維持という名の下に高コストのロケット開発は許されない。まずは国際動向であるVEGA、Minotaurシリーズ、ATHENAシリーズや大型固体固体ロケットATHENA-IIIやOLYMPUSを徹底分析して、モジュール型、バリエーション、最終段液体、空中発射など、コストをかけずに打上性能レンジを確保した上に、国際市場と国際提携を視野にした開国型固体ランチャー戦略が日本として正しい戦略だろう。
 だが、問題がある。JAXAは固体、液体ロケットを技術戦略的に公正に扱う機関として能力不足であることが判明している。最近はやっと次期固体ロケットのSRB-Aモータを外して商業ランチャーを提案せよと言い出したという噂が聞かれるが、それは誰もが当たり前に思っていることであり、今頃になって遅過ぎであるとも言える。だが様々な拘束条件を与えているとのことで、その意図はまだ不明だ。今後、設立される宇宙局にて公正に審査されるべきだろうが、コストミニマムな派生戦略コンセプトを立てなければならず、まずはコンセプト研究を徹底的にさせるべきだろう。一部では、国際的に通用するコンセプトが海外で発表されているが、より詳細な戦略及び派生コンセプトの研究が必要だろう。液体エンジン再生にも言えることだが、コツコツと積み上げる戦略が必要だ。また固体は一部海外企業(複数国)から「日本メーカーと提携したい」という情報も寄せられている。内向きになることなく、宇宙先進国の企業と積極的に交流する戦略もメーカーには必要だろう。国際固体ロケット連合に日本が参入できるかの瀬戸際であるという認識も必要である。

◎大型衛星から小型衛星への転換(小型衛星企業育成)

 大型衛星のトレンドは静止放送通信衛星とNPOESSやMetopなどセンサー積込型地球観測衛星に限られ、世界潮流は小型化の流れが主流となるのは明白だ。日本は静止通信衛星市場として見かけ上、受注しているものの、ダンピングや基幹モジュールを海外依存している情勢だ。2008年の静止通信衛星の商業受注は、アメリカ勢が3社13機、ヨーロッパ勢が2社9機、中国が1機、日本が1機という結果だった。日本はこのまま続けても、MTSAT-2、スーパーバード7、ST-7全ての基幹部品に海外モジュールを採用しているため、旧式技術や在庫処分によるバーゲンセール市場で進出の余地はあるが、巻き返しできるほどの技術的ポテンシャルと費用対効果の高い戦略は提示されていない。目先の巨大官需受注のために、またしても基幹部品が海外依存の早期警戒衛星、通信傍受衛星を叫んでいる。
一方、フランスは早期警戒衛星や通信傍受衛星の技術がないため、小手調べとして小型衛星バスMYRIADEを使った「ELINT(電子戦)衛星ELISA(150kg/4基)」を計画し、「早期警戒と地球観測衛星SPIRALE(114kg/2基)」と「通信傍受衛星ESSAIM(120kg/4基)」を打上げている。軍民両用衛星だろうが、軍事衛星だろうが、技術実験衛星(FEEP実験)だろうが、はたまた科学衛星だろうが、商業地球観測衛星販売、技術移転(ブラジル)まで「150kg衛星バスMYRIADE」で実績を挙げまくり、フランス国家として少ない予算で多くのミッション成果と知見獲得を引き出す、費用対効果の高い宇宙活動を展開している。同等の宇宙予算水準を有する日本が出来ないはずがない。


2基の早期警戒/火災探知衛星Spirale(CNES) 4基の通信傍受衛星ESSAIM(CNES)

 1990年の不景気により世界は「重厚長大」から「軽薄短小」の市場へシフトしている。宇宙も同じ潮流であり、日本は重厚長大思想を継続する選択肢でなく小型へシフトするのが良いだろう。
 そのためには、大手衛星メーカーの協力を得るか、もしくは第3の衛星メーカーを育成するかの検討も必要だ。アメリカでは大手企業BoeingとLockheedではない衛星企業(Microsat systems、SpaceDev、General Dynamicsなど)が育成・登場し、ドイツでもSTIやOHBなど欧州巨大企業のEADS以外のメーカー育成をしている、SSTLはEADSに買収されたことで、MYRIADEチームとの交流を重ねて、小型衛星の大量コンステレーションの検討を開始しているとのことだ。小型衛星が1つの巨大産業として生まれつつある中、500kg弱で作れる衛星ミッションなのに4倍以上の重量で製造、打上げているJAXAのGOSAT(いぶき)を見れば、日本の技術水準が高いとは言えない事実を認めなければならない。冗長だのオプション装備だの効果的でない設計で衛星を太らせるのは、今後許されないだろう。
 さらに言えば、JAXAが主導して衛星を作る時代も終焉をむかえているのかもしれない。それはEADSの動向だ。Aviation week誌の報道ではCNESがフランス大型地球観測衛星SPOT-6をメーカーへ作らせようとフランス政府へ予算申請したが、EADSが「SPOT-6の開発は必要ない。我々がSPOT-6よりも優れた性能を民間が低コストで作るので、CNESはデータ購入を複数年契約してくれればいい」と申し出たそうだ。CNES主導で地球観測衛星をゼロから作るのではなく、EADS(民間)が自己負担で製造し、観測データを一定期間、提供保証することで、政府から資金を得るスキームを立てている。これは宇宙機関が開発に関与しないため経費削減できる一方、メーカー側も“政府以外のペイロード”を搭載することできるため、他国や企業のセンサーを「お預かり搭載」するビジネスへも展開できるメリットもあり、ビジネスの幅が広がることを意味する。政府が衛星開発を主導しないことで、費用対効果の高く、メーカーもビジネスチャンスが広くなる環境が欧州で進んでいるのである。
他にも他国地球観測衛星(韓国)などと組んで画像販売したりと、「民間が中心となって作った宇宙システムを官が支援・購入・採用する」ことで、自国以外の宇宙需要を取り込む自国官需依存体質の脱却を図っており、こうした時代対応の検討も必要だろう。


EADSは様々なサービス会社を設立し、衛星需要開拓/脱宇宙機関主導
(EADS)

 日本では国際基準でない高額宇宙システム(H-2A、H-2B、ALOS、GOSAT、災害衛星など)を「一括購入か継続購入してくれ」という政治的体制を期待しているが、日本の場合は「技術水準の建て直し」をし、「目的・費用・効果の優れた宇宙システム」を作る体制を作るのがまず先であろう。
 つまり、大型であれ小型であれ優れた商業ビジネスコンセプトを立てなければ、企業は生き残れない情勢となっているのだ。よってこれら時代に対応するため、「軽薄短小=小型衛星」に対応できる企業を育成する必要がある。これは宇宙局なり経済産業省が「産業宇宙研究」をしてコンセプトを纏める必要があるだろう。このように、民間が宇宙システムを開発し、良いものを政府が買い上げる流れは今後も多くなるだろう。恐らく、国家宇宙機関主導で実施される宇宙プロジェクトは、民間がビジネスとして商売できないサイエンス分野だけになるかもしれない。

◎内閣府宇宙局の宇宙産業政策(GXとHXの継続審査)

 ロケットは商業化できないコンセプトならば、要素研究に留めておくべきであろう。近年は政府支援により、宇宙機関が関与せずに民間が主導してロケット開発する動向も見られ、官が100%主導してロケットを開発する時代ではなくなってきている。日本でも費用高でコンセプト不足のランチャーは今後、淘汰の嵐に晒されるため、建て直しが必要である。
 また、軍事衛星専用ランチャーとかJAXAや防衛省専用ランチャーという、専用ランチャー化することは大きな間違いである。軍事衛星だろうが民間衛星だろうが探査機だろうがロケットは打上手段に過ぎないからである。例え衛星が専用であってもロケットは「安くて使い勝手」が良ければいいため、どのみち日本は商業ランチャーを育成する戦略が必要になるのは明白だ。
 よって、H-2Aは期限付きで使用し続けるにしても、その後継がGXロケット、HXロケットとなるのが正しいのかを継続審議する必要があるだろう。まず、GXの最近はDELTA-II後継との報道があるが、モジュール型FALCONやTAURUS-II及びATHENA-IIIと市場で戦えるコンセプトではない点と、「大型ロケットを小型に使う」のがコストパフォーマンスで正しくないのはH-2Aが証明している中、妥当性を評価し直すことが必要である。またGXの1段目であるATLAS-Vの1段目の輸出許可が存在しないため、米国本土での打上を計画しているが、実施意義や搭載衛星の検討などの審議も必要だろう。また、HXも同様に過去の延長で実施するのか、液体エンジンの燃焼ソフトの近代化(米国との交渉が必要)が可能か、長期的に見て国産化が可能かなど“基礎技術の再建”と“コンセプトが国際水準”なのか評価が必要だろう。
 また宇宙局には大型ロケットの必要性及び審議に加え、宇宙産業政策を立てる必要がある。これは国際動向から見ても「小型宇宙システム時代への対応」が可能な政策が必要なのは明らかである。アメリカは即応型宇宙政策や小型衛星企業の育成、世界トップを走るヨーロッパはSSTLバスやMYRIADEバスにて技術実証・実用利用・商業販売・技術移転・宇宙外交に利用展開され、費用対効果の高い宇宙システムを登場させている。合わせてPROTEUSバスも併用し800-300kgで実用的なミッション衛星がバンバン生まれ、ナノ衛星やマイクロ衛星で新世紀技術を育成、アメリカやヨーロッパでは大型通信放送衛星で国際市場である「重厚長大市場」を制覇しながら、90年後半から始まった「軽薄短小市場=小型衛星市場」を見越して産業育成をかけていたのである。
この情勢からブラジルは中国と共同で進めていた小型地球観測衛星CBERS計画を放棄し、フランスのMYRIADEバス技術導入を進めているそうだ。また、SSTLのNigeriasat-2も300kgで解像度2.5mと計画しているが、SSTLはこれをベースに重量350kg、解像度0.6mの高解像度衛星の製造計画を発表、価格は約50億円だそうで、これを複数機打ち上げてGoogle Earthの生中継版(近リアルタイム)のフランス衛星群E-CORSEと協力できないか打診しているそうだ。彼らは大型光学衛星GeoEye-1の解像度0.4mで価格500億円の衛星を引き合いに「高額衛星1機で高解像度衛星(0.4m)で1回勝負の撮像よりも、多少解像度の悪い衛星(0.6m)を低価格50億円で数基(10基?)打ち上げたほうが、天候が悪くても撮像のチャンスは増えるしユーザーは喜ぶと思う」という主張をしている。このように小型(350kg)でハイレベル衛星が製造されている中、日本の情報収集衛星(IGS)は1機幾らで作っているのだろうか?
 話は戻るが「小型は大をも制する」と言わんばかりにSSTLは2.5-3kW電力で中継器を12-24本搭載した小型静止通信衛星を50−100億円で販売する戦略も発表、ESAから静止中継衛星GMPを受注している。さらにEADSグループ傘下となったことから、MYRIADEチームとの交流を重ねており、欧州全体が大型に加えて小型・中型宇宙市場の足場を固めつつある。さらにはNASAやESAらから月探査機(MoonLITE ,MoonRaker, Magnolia)、火星探査機、再突入機計画へ向けて研究を受注している。
このように米ソ冷戦時代ではなく、多極化する宇宙同盟時代を見越して日本も「小型宇宙システム時代への対応」できる国際宇宙産業育成策が必要であり、ナショナルスペース戦略として構築する必要があるだろう。

◎国際宇宙産業育成策の1つに必要なインターオペラビリティー

 新たな国際宇宙産業育成策が必要な背景は、あらゆる産業で進められているインターオペラビリティー(相互運用)が背景にある。欧州では各国鉄道の2010年自由化を進めている。経済発展に伴い、人とモノの流れは経済発展のカギを握る。日本でも新幹線の投入が経済活動の根底を支えているのは明らかだろう。欧州では「人とモノ」の流れが発展すれば環境負荷の影響が重くなることを考慮して鉄道網の強化が必要であるという結論のもと、鉄道規格の異なる各国を統一(標準化)し、相互乗り入れや予約システムの統一を進めることで欧州連合の国際競争力強化を進めているそうだ。これはインターオペラビリティー(相互運用)の一環である。日本でも鉄道網ではないが、ICカード「スイカ・パスモ」により首都圏の鉄道・バス利用が格段に便利となり、「スイカ・イコカ」により関東と関西JRの利用も1枚のICカードで利用可能となった。また携帯電話も海外でも使える機種が登場し、いちいち空港で借りる必要もなくなってきている。サービス会社はインターオペラビリティーによるユーザーニーズの向上を進め、産業競争力を強化しているのである。
 これは宇宙の世界でも起こっている。昨今、世界利用されているアメリカGPS衛星に加え、欧州はGalileo、ロシアはGlonass、中国はCompass/Beidou、インドはGagan/IRNSS、日本は準天頂衛星と全地球レベルか地域レベルの測位衛星網構築がすすめられている。しかし、規格の異なる衛星はかえってユーザーの使うレシーバーが複雑・高コスト・大型化する問題があることから、軍事用の測位電波は各国独自とし、民事電波利用は規格統一しようと国連が利用者を巻き込んで話し合いを行っている。ロシアは米国と欧州に合わせるため、新型GLONASS-Kでは一部スペクトルを統一する体制を検討しているそうだ。米ソ冷戦時代では考えられなかったことである。これも自国の産業競争力を高めるためのインターオペラビリティー戦略として見ていいだろう。いずれ、民事利用の測位電波が統一され、全地球規模のGPS/Glonass/Galileo/Compass全対応型(受信衛星数100基以上)の受信機が登場するのだろう。


最新の米国、欧州、ロシア測位衛星は900kg以下で製造中
(LM,ESA, Rosaviakosmos)

 鉄道・ICカード・携帯・測位衛星に見られるように、利用者のために技術側はインターオペラビオリティー(相互運用)でユーザーニーズを向上&開拓、産業競争力強化をしているのだ。ロケットも同様で、搭載規格を統一(ESPA。PPODなど)する兆候が見られるのは過去に述べた。無論、全てが良い結果を生み出すものでもない。イギリスでは鉄道の民営化することでインフラ経済性を追求し過ぎたため逆にユーザー環境が悪化した例もある。
だが宇宙におけるインターオペラビリティー(相互運用)は日本のアジアにおけるプレステージと自国産業競争力を強化するために必要な要素であると言える。言葉を変えれば「ニューディール政策の国際宇宙版」と言えるかもしれない。今後は宇宙局が新時代へ向けてユニバーサル宇宙システムを目指した「既存産業の方針転換」と「新規宇宙産業育成」を図り、新時代へ対応できる戦略を展開しなければならないと考えている。その場合は国際的に対等で付き合ってくれる技術がなければ相手にされない。

◎革新宇宙標準システムの実用化競争(次期固体の商業転換)

 インターオペラビリティー(相互運用)時代へ対応するには、小型宇宙システム時代に対応できる宇宙産業育成が最も有効的な手段であり、H-2Aではない小型打上手段と商業宇宙機における技術開発と実用化が必要である。これはJAXAから宇宙局(内閣府)への業務移管を実施して、商業宇宙市場へ対応できる革新宇宙技術を育成するのが理想だろう。この小型宇宙システムを戦略的に構築することで、費用対効果の優れた宇宙産業育成を図り、低コストの未来技術育成環境の整備、商業宇宙産業の育成、宇宙外交(アジア宇宙途上国連合、宇宙先進国との技術交流)を展開する環境が望ましいだろう。このキーとなる国内技術は、
・ 固体革新技術ランチャー
・ 小型標準バス(ナノ、50kg、150kg、500kgクラス)

であると考えている。国際的に対等な付き合いをするには、インターオペラビリティーや商業宇宙市場に対応でき、コストがかからない小型の純国産技術育成が得策だ。
 まず、ランチャーは固体ロケットが妥当だろう。液体ロケットでは大型過ぎでソフト旧式の上に国際レベル評価で低く、ダンピングランチャーでもあり一方通行の旧式宇宙技術売却市場となっている。よって固体革新技術ランチャーを実施し、国際ベンチマークロケットであるVEGAやMinotaurをベースにユニバーサルモジュールランチャーを目指すべきだろう。このモジュールランチャーに加え小型衛星もMYRIADE(150kgクラス)、PROTEUS(500kgクラス)をベンチマークにし、小型衛星バスを大手もしくは第3衛星メーカを育成し、商業宇宙市場対応、実用ミッション利用、国内宇宙技術育成、宇宙外交へ展開させ、宇宙システムの低コスト化・最適化・24時間対応を目指し「モジュール・マーケットシステム」を構築するのが良く、小型・短時間打上・コストミニマムの宇宙システムを宇宙局が中心となり展開するのが良いだろう。
 これは何も全て新しく構築する必要はない。コストダウンできる要素をもった最適な従来技術をベースに対応するのがよく、メーカー側にダラダラ研究開発の無限ループで製造させるのではなく、コスト・納期・最適性のコンセプトを徹底的にさせることで、商業宇宙へシフトさせる流れが作れればよい。

◎商業宇宙プロジェクト(新型固体と小型衛星バス)への期待

 モジュール型FALCONランチャーが登場した以上、そのレベル以下のランチャー開発が出来なくなってきた今、JAXA大中小ランチャー戦略は崩壊していると言えるだろう。今後設立される宇宙局には出直し戦略が必要となる。その建て直しは、固体ロケットをベースにした商業宇宙プロジェクトの立案を期待したいものだ。
目指すは、ユニット・モジュール構成による固体ファルコン・ランチャー化であろう。この目標をベースに衛星サイズであるPICO(1kg未満)、NANO(10kg未満)、Micro(100kg未満)、Mini/SMALL(500kg程度)クラスの衛星打上に特化した、モジュール型の小型ユニバーサルランチャーを構築、商業ランチャー市場へ対応できるコンセプトを提案させるべきだろう。このコンセプトで既存改良・ユニット化・モジュール化で大型万歳志向ではない、世界ナンバーワンの固体コンセプトで世界舞台へ復帰するのが日本のナショナルプレステージとして最優先と考えている。間違ってもSRB-Aモータを使ったJAXA宇宙輸送ミッション本部コンセプト(次期固体)でもなく、大型万歳で中身は輸入品の液体ランチャーではない、納期(スピード)・コンセプト破壊力・機動的運用が可能なものを意識し、予算・性能・成果の望めるランチャープロジェクトを展開、官需依存ではなく民間宇宙活動への市場へも進出可能な「日本建て直しランチャー(復興ランチャー)コンセプト」を内閣府が構築するのが良いだろう。それと同時に小型衛星バスの育成による実用ミッション利用、基礎研究実証を重ねてMYRIADEのように商業販売・技術移転・技術実験で宇宙同盟関係を構築できる官民協力の低コスト宇宙外交の仕組みを構築する必要があるだろう。
この実績を挙げながら商業宇宙プロジェクトによる民間出資を呼び込み、官需依存産業の脱却を目指した産業育成が内閣府宇宙局の政策として最もふさわしいかもしれない。

◎JAXAコンセプト遅延宇宙システムの整理(メーカー丸投げプロジェクトの整理)

 よってJAXAプロジェクトの幕引きが必要だ。まず日本には商業市場へ対応できる宇宙システムがない。H-2Aはダンピングランチャーであり価格不適で販売する情勢、静止衛星もダンピングして国内基幹部品は海外モジュール組み換えしている状況だ。H-2Bは先日報道陣に初公開されたものの、新規開発された1段目推力がATLAS-VやGXの1段目推力(3820kN)の約半分程度、固体補助ブースターなしには発射台を離れることが出来ない。さらにモジュール型FALCON-9コンセプトの登場で打上価格は倍(FALCON-9は最大58億円に対してH-2Bは120億円以上)で、“1段目は回収して部分再使用”するFALCON-9と比較して“H-2Bは完全使い捨て”というコンセプト遅延も露呈している。さらにはエンジン周辺の断熱材を海外メーカから購入し、断熱材取り付けノウハウは技術移転を断られ手探り、燃焼試験を完全に成功しておらず、ソフトも不具合で米国へ戻して修理という状況で、未来展望が明るいとは言えない。重要部品は輸入品&海外委託で燃料タンク・ドーム部を国産化したと主張する内容であり、「開発費が安い」という主張も開発中身にしては高過ぎで、打上単価も高いため賞賛できるかは微妙だ。報道発表資料を見れば一目瞭然だが、「世界レベルから見て、H-2Bは性能・コスト・レンジ・設計コンセプト比較でどういう位置にあるのか?」という分析資料は一切出されていない。資料を見た報道関係者もどう分析して良いかも分からないかもしれない。
 さらにはH-X、H-XXというコンセプト遅延の計画も後に控えており、恐らくこのままでは「技術者による自己満足宇宙システム」と「意義の乏しい研究開発の無限ループ」と化す可能性が高く時代錯誤の宇宙活動が展開されてしまう可能性が高い。この動向を監査し是正するにはいくつかの施策が必要である。
まずJAXAの新規宇宙プロジェクトの中止である。既存限定利用に留めてコンセプト遅延システム継続の悪い流れを断ち切らなければならない。


H-2B(左)の1段目はATLAS-V/GX(右)と比較して約半分の推力しか出ない
(画像出典:Robot Watch HP、Dynamic Environment Workshop)

 次に各H-2シリーズとGXの開発費超過と単価公表が必要であろう。この単価はJAXA人件費、開発メーカ人件費、輸入品データ、ソフトウェア技術水準、開発作業内容、射場建設費、維持費、特許支払料、開発遅延項目など、都合の悪いデータを隠すのではなく、全て公表してJAXAによるメーカ丸投げ体質是正や、プロジェクト整理が必要だろう。
 これら問題ある宇宙プロジェクトを整理し、国家宇宙ビジョンは文部科学省から内閣府が担う体制が良いと考えられる。文部科学省では「(中身が乏しい)研究開発」に特化しているため、内閣府(宇宙局)が主導して利用官庁を巻き込んで総合的な宇宙戦略を立てる必要がある。今後は宇宙空間利用時代に向けて「時代錯誤のJAXAコンセプト遅延システムの幕引きを図る」のが良いだろう。具体的には

・ H-2Aは継続利用して新規開発は中止してH-Xは出直し
・ GXは清算してニューコンセプト(ファルコン)ランチャーへ

という方策が考えられる。H-2AとH-2Bの1段目性能は、(輸出許可が存在しないにせよ)GXの1段目で両方を担える事実もある。だが双方共にモジュール型FALCONコンセプトと比較すれば、カンブリア的ランチャー(コンセプト遅延)になっており、コストでも敗北で出直しが必要だ。よって形式的にも商業化したH-2Aは継続利用し、新規開発を中止して出直しさせるのが妥当だろう。
 出直案としては、国産主義による「三菱重工H-Xを液体エンジン建て直し」で実施、「ニューコンセプトランチャーは国際共同でモジュールエンジン開発(IHI、Snecma、P&Wの日仏米チームによる量産エンジン)を展開」させるのが良いかもしれない。双方開発目標エンジンは、Merlinエンジンよりも少し上の推力レンジをターゲットにし、シングルエンジンで10億円、モジュール化で最大50億円を上限に性能レンジ・コンセプト研究を展開、ポストH-2A/B、ATLAS-V、Ariane-V、DELTA-IV、PROTON後継機市場を競わせる方策も考えられる。FALCONランチャーが登場した今、旧態NASDAコンセプト機からの脱却が必要で、商業機対応を目指して出直すのが妥当なのだ。よってコスト度外視の国威ランチャーではなく、真の“ナショナルプレステージある”ランチャーを育成する必要がある。そのためには、目先ではなく時間をかけて液体エンジンを建て直す必要があるのだ。

◎新型固体が次期基幹システム化しないと日本は脱落

 モジュール型FALCONの登場で、既存大型液体ロケット戦略はリセットされたと言っても過言ではない。コンセプト破壊力抜群のFALCONランチャーは国際ベンチマークである。結果、JAXAランチャーは現行・将来計画含めて脱落しているのは明らかだ。
 この情勢を回復させるには、短期・中期・長期的な視野で戦略を練直すことが必要であり、国内で使える技術を見れば、短期的・中期的には固体技術をベースに建て直すしかないのは明らかであろう。これは世界的に見ても正しい戦略である。欧州ではVEGAのP80ベース派生計画の動向が進み、アメリカもFALCONへ対抗すべく大手がCastor-120固体モータをベース(Minotaur、ATHENA、オリンパス)に早急な固体モジュールランチャー構築を進めている。固体ロケットの弱点は、振動環境が激しいことと軌道投入性能が悪いという一般論があるが、すでに振動抑制装置や最終段を液体ステージ化することで、問題はほぼ克服されている。さらに小型衛星であればあるほど、振動や音響環境は衛星側へは大きな負担とはならず、むしろ出来なければ「その程度のインテグレーション力しかない」とみなされるのが実情だ。
 よって日本も小型化・低コスト化の宇宙システム産業を育成すべく、固体をベースで次期基幹宇宙システムを早急に対応しないと、商業宇宙市場や国際ランチャー競争で脱落するのは確実だ。日本や世界が最も必要とする宇宙システムは
・ 次世代コンセプトは量産・需要対応・コストダウン
であり、量産技術と市場対応(装備・コスト)と最適既存流用であり、その課題を最短でクリアするのは新型固体であると考えられる。GXやH-Xはお呼びでないのだ。



新型固体Minotaur-IVも登場(OSC) VEGAもモジュールLVS構想(b14643.de)



◎海外の固体モジュール・ランチャーは更なる進化

 海外からの情報では、固体ロケットのコスト・量産・保存性のメリットを生かして固体モジュール・ランチャーVEGA、Minotaurシリーズの登場後、ATHENAシリーズが参入し、民間貨物航空会社をも巻き込んだオリンパスが登場している動向は本誌2009年2月号・3月号で紹介したが、そのモジュール固体ランチャーのさらなる動向情報が入ってきた。やはりというか、当然というべきか、コンセプト検討をさらに進めているそうだ。端的に言うと

・ P80モータやCastor-120モータのコストダウン
・ オリンピアの上段バリエーション

・ 固体技術大型と推進薬更新に対応するため、研究所を創設

である。まず、コストダウンについてだが、モジュール固体へ対応するには、FALCONランチャーのMerlinエンジンのように、ベースラインモータを決定してコストダウンかけるのが妥当である。このためヨーロッパはP80、アメリカはCastor-120モータをベースラインモータと決定し、製造インフラと量産対応設備の検討を始めている。固体モータは保存性に優れていることから、製造インフラと原材料及び推進薬の一括調達などを実施した上に、他産業との連携で調達単価を下げようとする「賢い戦略」でコストダウン戦略を立てているそうだ。日本では、ロケットメーカが自社中心主義で他産業と組んで一括調達するなりの戦略が足りないため、相変わらずコストが下がらない体質が続いている。
 次にオリンピアの上段バリエーションである。ATHENA-IIIとオリンピアはARES-1の1段目モータを流用しているが、上段バリエーション戦略は「やり方次第」で様々な打上市場を狙える。このためATHENA-IIIでは2段目にCASTOR-120を採用しているが、オリンピアでは貨物・衛星・有人打上に備えて、様々な上段バリエーションを検討中とのことだ。これは非常に興味深いといえる。
 最後に固体技術大型化と推進薬更新である。固体技術大型化は先月号で「ARES-1の1段目モータが“20年ぶりの固体モータ新規開発”であったこと」を述べたが、固体モータは主に“高張力鋼ベースのセグメント構造”と“複合材ベースのフィラメント構造”という大きく2種類の設計理念でモータケースが製造される。前者はM-Vの1段目、旧式H-2の補助ブースター(SRB)、ARES-1の1段目、スペースシャトル1段目(SRB)、ARIANE-V(P230)の1段目である。後者はVEGA全段モータ(P80など)、M-Vの2段目と3段目、Castor-120モータ、H-2AのSRB-Aなどである。大型モータの場合は製造や輸送などのハンドリングの問題からセグメント構造で製造され、大型トラック1台に載るサイズ程度ならフィラメント構造で製造される。アメリカでは“セグメント構造のARES-1固体モータ”と“フィラメントワインド構造のCastor-120モータ”双方の技術を更新していると言え、固体モータを今後も生かす姿勢であるのは明白だ。また欧州でも“セグメント構造のP230固体モータ(Ariane-V補助ブースター)”の能力向上版であるP240(推進薬10t追加)やP250(推進薬20t追加)をAriane-V ECBバージョンで検討したり、“フィラメントワインド構造のP80固体モータ”の能力向上版であるP107-23(推進薬27t追加)を検討したりと固体モータの大型化検討を進めている。つまりアメリカも欧州も“セグメント構造”と“フィラメント構造”双方の固体モータを更新・育成していたのである。
 さらには推進薬も向上する計画だそうだ。アメリカでは低毒性推進薬の研究を実施し、「グリーン・プロペラント(低毒性推進薬)」として開発中だそうだ。また欧州でもCNESが現行P80モータ推進薬を使用するが、将来は段階的に「グリーン・プロペラント」と「ブタレン系のバインダー推進薬」にすると発表している。固体ロケット技術を維持どころか大型化や推進薬更新までもして性能向上戦略を発表しているのだ。

 
セグメント構造の固体モータ(画像出典:NASA)

    
フィラメント構造の固体モータ(画像出典:AVIO、ESA)

◎今後20年先は固体が主流になる可能性も(ハイブリッド成熟にはまだ期間要す)

 これは、日本のM-Vが「全段固体で惑星探査機“はやぶさ”や“のぞみ”を打上げた実績」がベースとなっている。「固体で衛星打上なんて出来ない」と揶揄された東大宇宙研がL-4Sで衛星打上成功し、「固体で地球の重力を脱して惑星探査なんてできっこない」と揶揄されたISASがM-Vで探査機を打ち上げた事実で、各国が見直しているのかもしれない。また、固体推進薬も燃えカスがデブリになる問題があるが、最終段を液体化するか、デブリにならない推進薬を開発することで宇宙空間に漂う問題を解決することは可能であり、当然アメリカも欧州も分かっていることだろう。
 固体の良さ・悪さを認めた上でアメリカと欧州は伸ばす決断をしているのである。故に日本は固体技術をもっと見直して誇るべきだろう。ロケットは液体至上主義から固体&液体至上主義へてシフトしており、今後20年は固体が主流となる可能性だってあり、日本は宇宙局やメーカーの戦略次第によっては追いつき、参入して固体ロケット市場で対等の国際協力体制でさえも出来る余地は残っている。
 また大型の道も固体モジュール・ランチャー戦略によりセグメント固体の道もあり、推進薬もISAS固体技術者の研究戦略、推進薬メーカーである日本油脂、日本化薬、旭化成ケミカルズなどの従来推薬会社に加えてバイオ系・ケミカル系推薬や低融点推薬など新たにケミカル会社をも巻き込んで低コスト化も意識した“新世紀対応推薬戦略”をロードマップ立てて展開すれば、日本に限らず悪用しない宇宙先進国間で量産シェアすることだってできるかもしれない。世界は今ある良い基盤技術を「ブラッシュアップ(磨き上げ)」して「コストダウン」したランチャーを開発している。FALCON-1ロケットも新規開発ではあるが、全く未知のものをベースにやっているのではない。
 日本も「新規開発」とか「射場移転」とかコストのかかるプロジェクトばかりを推進するのではなく、国際動向をしっかり分析して次なる一手を考えるべきだろう。そのためには、JAXAの「情報封鎖によるマスコミ制御を是正」して「時代錯誤のJAXAコンセプト遅延システムの幕引きを図る」ことから始めるのが良いと考えられる。
 また、固体ロケットには出来て、液体エンジンには出来る「燃焼中断/再着火」については、ハイブリッドエンジン技術を有望視する声もある。これは、ヴァージンギャラクティック社の民間宇宙旅行船スペースシップワンで採用されているエンジンであり、当該技術はSPACEDEV社(現在はSierra Nevada社に買収された)が担当、将来の有望性も考えられる。しかし現在は燃焼が安定しない問題と、必要推進性能に対するシステムが重量過多の問題を抱えており、小型での実用化はしているが、大型化と燃焼安定にはしばらく時間がかかるだろう。日本では北海道のべンチャー企業が独自コンセプトで開発しているが、こちらも基礎研究を継続している情勢だ。

◎まとめ
 諸外国と比較して日本は「ランチャーはコンセプト不足と誤認」、「衛星も国際的に遅れた」という状況だ。今後は宇宙局による“時代錯誤JAXAコンセプト”の幕引きを図り、「小型化・低コスト・高性能化」への転換を図る必要がある。商業宇宙システムの実用化を図るためには、小型衛星バスの育成(50kg、150kg、500kg)とCUBESATなどのナノ衛星で基盤技術を開発し、サイエンスミッション等でセンサー基盤技術育成を図る「シンプル・フレキシブル・短期間」の宇宙ミッション・ループで「技術と人が育つ環境」を整備するのが最優先だろう。
 ロケットは形式上商業化したH-2Aを継続利用しながら新規開発は中止し、GXとHXの継続審査をしながら出直し戦略を立てる必要がある。GXは清算してニューコンセプト(ファルコン)ランチャーをさせるのが良いのではないか?
 商業宇宙へ対応するには、まずは固体を次期基幹システム化しないと日本が脱落するだろう。一方、液体エンジンは「大出力・小型・低コスト」を目指して「短期的には死んだフリ」をして「長期的に巻き返す再建戦略」を立ててメーカーには「燃焼ソフト国産化」と「コンセプト研究」を徹底させるべきだろう。
衛星もロケットもNASDAコンセプトからの脱却が必要であり、都合の悪い情報を隠してマスコミ情報封鎖をするのでもなく、宇宙開発利用を過剰に綺麗に見せるのでもなく、公正な戦略判断と技術育成戦略で“失われた15年”を取り戻す再建戦略を宇宙基本計画には期待したい。


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