真夜中の電話


彼女は時計を見た。もう12時。軽くあくびをすると、彼女はベッドに入ろうとした。明日は…もうすでに今日だが…彼女の誕生日だった。どうせ何をするというわけでもないし、ご馳走を作ったりケーキを焼くとしても自分でするのだが、折角の誕生日、しかも休日なのだから、明日は少しゆっくり起きよう…彼女はそう思い、電気を消した。その時、電話のベルが鳴った。こんな時間に、誰かしら…彼女は寝ようとしたのを邪魔されたこともあり、電気を再び点けると少し不機嫌な声で答えた。
「もしもし」
「…ごめん、寝てた?」
彼女は耳を疑った。まさか…でもこの声は…。艶のある、耳に心地いい声。
「コリン?」
「久しぶり、元気だった?もう日本は日付が変わってるよね」
彼女を起こしたかもしれないと遠慮がちに話すコリンに、彼女は少し意地悪を言いたくなった。
「そうよ、もう12時過ぎ。こんな時間に電話をかけてくるなんて」
「ごめん、本当に…でも誰よりも先に言いたくって」
暫くの沈黙が訪れた。電話の向こうのコリンは今、どういう顔をしているんだろう…どういう服を着ているのかしら。彼女は彼に会いたくなった。
「誕生日おめでとう。素晴らしい1年になるように祈っているよ」
彼女は胸が熱くなった。このたった一言を言う為に、彼はわざわざイギリスから電話をかけてくれたのか…。
「…ありがとう、コリン。素敵なプレゼントだわ」
「それじゃあ、また会える日まで…おやすみ、よい夢を」
「おやすみ」
彼女は受話器をそっと置いた。遠い国で自分のことを考えてくれていたなんて…彼女は胸が一杯だった。暫く電話を見つめていたが、電気を消し、ベッドに入った。瞼を閉じると、コリンの顔が目に浮かんだ。彼の瞳と、そして優しい笑顔。今聞いたばかりの彼の声が頭の中で廻っていた。
「もう、眠れないじゃない」
彼女は呟いた。しかしその声は嬉しさに満ちたものだった。

 


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