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皆さん、こんにちは。ペンバリー管弦楽団コンサートマスターのコリン・ファースです。僕たちの仕事は、音楽を演奏し、皆さんに聴いていただくということです。つまり、聴衆の皆さんがいてこそ成り立つ仕事なのです。皆さんにできるだけコンサートに足を運んでもらえるように、コンサートの魅力について少しでもお伝えできたらと思います。
1.コンサートへ行こう!
コンサートと聞くと、なんとなく堅苦しい、ちょっと特別なことで、着飾って行かなくてはいけないと思ってませんか?曲目解説書を読んで、作曲家がその曲を作った当時の背景を知り、主題の意味や関係・各楽器の役割などを暗記し、過去の名演・名録音と比較できるようにそれらを研究し、前もって曲を「理解」してから聴かなくてはいけないとか、演奏中は咳・くしゃみはおろか、まばたきや息をしてもいけないのではないかとか(笑)、そういう「気軽に行くものではない」という考えを持っていたりしませんか?そういう「批評家以上に批評家」という聴衆の方もいて、ちょっと聴いてみようという人たちが行きにくいという事実もありますが、実際コンサートというものはそんなに大仰なものではありません。評論家や耳の肥えた音楽愛好家の皆さんに満足してもらう演奏をすることも大事ですが、僕たち音楽家はそういう人たちのためだけに弾いているわけではありません。むしろ、専門的知識などを持たずに、ちょっと聴いてみようと来てくれたお客さんが、コンサートの後で「来て良かった、楽しかった」と思ってくれる演奏を、僕たちはするべきだと思っています。つまり、頭ではなく、心に訴える演奏です。
さて、音楽はCDやDVDでも聴くことができます。最近はスピーカーやプレーヤーなどの器械が発達してきて、「音楽ホール並み」の音を家で聴くことも可能になりました。また、CDなどの録音は「ミスがない」演奏がほとんどで、かえってコンサートの生演奏よりもいい音楽を聴くことができると言う人もいます。でもホールでしか体験できないものもあるんです。一瞬一瞬をその場にいる皆が共有しているという感覚、今その場で音楽が生み出されているという緊張感。弾き手からの一方通行の音楽ではなく、聴き手との「対話」がホールにはあります。聴衆の皆さんもそれぞれ違った興味を持っていて、演奏のどの点に注目するか、人によって異なると思います。またどの奏者を見るか…指揮者を見たい人、弦楽器を見たい人、出番の少ない楽器の奏者に注目する人もいることでしょう(笑)。CDでは弾いている姿を見ることはできませんし、DVDでも映像は限られてしまいます。どんな演奏をするのか楽しみにしている聴衆の皆さんが、僕たちをそうやって眺めているということは、緊張することでもありますが楽しいことでもあります。それに実は僕たちも皆さんを舞台から見ているんです(笑)。コンサートでは、演奏もその時1度きり、お客さんも毎日違う顔ぶれ、つまり一期一会です。だからこそとても貴重なものなのです。
コンサートのチケットは安いものではありません。特に、コストのかかるオペラや、有名団体の演奏旅行でのコンサートとなると、かなり高額になる場合もあります。CDやDVDで何度も聴けるほうが安い、と言えばそうなのですが、値段では比べられないものが生演奏にはあると僕は思っています。ぜひ皆さんにコンサートホールでの演奏を聴いて欲しいと思います。
2.チケット入手の方法
コンサートを聴くためには、まずチケットを買わなければなりません。チケットの売り方は劇場・オーケストラによって様々なので、それぞれ前もって調べる必要があります。
一番確実で比較的安く買えるのは、年間会員になることです。これは秋からの新しいコンサートシーズンが始まる前(大体4月くらい)から売り出されます。シーズンを通じて、何回かのコンサートのチケットが組みになって売り出され、個別に買うより何割か安くなっています。またかなり早い時期に売り出されるので、売り切れて買えなかった、ということにはなりません。劇場やオーケストラによっては、この年間会員になると特典がある場合もあります。
そんなに何回もコンサートに行くことができない、という人は個別にチケットを買うことができます。オーケストラの定演の場合、年間会員が優先なので、それで「売れ残った」チケットが個別に売り出されることになります。その個々のチケットの売り出し方はいろいろで、シーズン全部のチケットを一斉に売り出す劇場もあれば、「何月何日までのチケットは、何月何日から売り出します」といった方法をとるところもあります。チケットの割り当てが一番多いのは会場の窓口ですが、遠くに住んでいる場合や海外のホールで聴きたい場合はそこまで行くことはできません。最近はどの劇場にもホームページがあってそこからチケットが買えるようになっていますので、それを利用するのもいいでしょう。インターネット経由だと窓口より少し高いこともありますし、チケットを郵送してもらうとその料金がかかることもあります。チケットセンターなどでチケットを扱っているものもありますが、主催者以外のところで買うと、たまに追加料金がかかることもあります。
前売りでは買えなかったとか、当日になって突然行くことにした、という場合は、当日券を買うことができます。当日券の窓口が開く時間も会場によって異なるので、前もって調べておくといいです。基本的には開演の1時間半〜1時間前です。人気の演目だと当日券が全く出ないこともあります。でも会場の窓口付近では、余ったチケットを定額もしくは少し安く売ってくれる人や、タダで譲ってくれる人もいるので、諦めずに行ってみるといいと思います。また、立ち見のある会場で、立ち見券が当日のみの販売というところも多いです。少し体力が必要ですが(笑)チケットを手に入れるチャンスはあります。どの国にもダフ屋はいますが、法外な値段なのも同じです。こういう人たちは会場の外でチケットを扱ってますから、外では買わないようにしましょう。
3.いざコンサート会場へ!
チケットを手に入れられれば、あとはもう行くだけです(笑)。よく「服装をどうしたらいいのかわからない」と仰る人がいますが、これは一概に答えられるものではありません。特別な音楽祭や初演の時など、「正装」を求められることもあります。でもそれは例外的なものです。基本的に「自分が納得できて、周りの人にも迷惑にならない格好」ならばなんでも大丈夫なのです。一番わかりやすいのは、「チケットの値段と服装は比例する」という方程式でしょうか(笑)。チケットの値段設定が高いコンサートに来ている人や、高めの席に座っている人たちの服装は、それなりに高級感漂うものになっています。逆に、立ち見や安めの席にいる人たちは普段着で、Tシャツやジーンズの人も多いです。たまにしか行かない人は、この機会にちょっとお洒落してみるのも楽しいかもしれませんね。でも一番大事なのは、リラックスして聴ける格好であるということだと思います。慣れない服を着て気疲れしてしまうのも残念です。
さて、チケットには「開演時間」というものが印刷されています。これは「演奏が始まる時間」です。あまりこの時間ぎりぎりに行くと、荷物を預けるのや席を探すので時間がかかったりして、あたふたしてしまうこともあります。この時間に遅れてしまうと、最初の曲が終わるまで扉の外で待たされてしまうので、余裕を持って行くようにしましょう。「開場時間」というものもたまに明記されていますが、これは会場の中に入ることのできる時間です。会場によってはビュッフェなどがあり、そこで軽い食事や飲み物を買うことができるます。また、CDやDVD、オーケストラのグッズなどを売っているお店がある場合もあります。ぎりぎりに行くよりは、少し早めに行ってそういう所で時間をつぶしているほうがいいと思います。
先ほど少し触れましたが、荷物やコートを預けるか預けないかということもあります。ハンドバッグやポシェットサイズの鞄を預ける必要はありませんが、リュックサックは預けるように係員に言われますので、最初からクロークへ行くようにしましょう。コートは会場によって扱いが違います。着たまま、もしくは持ったままホールに入っても問題ない会場もありますし、「コートも必ず預けてください」と係員に言われる所もあります。クロークが有料か無料かというのも、会場によってまちまちです。
さあ、いよいよコンサートが始まります!
4.コンサート中のマナー
ちょっと触れましたが、開演時間に遅れて来ると、最初の曲が終わるまでホールには入れてもらえません。区切りのいいところで係員が中に入れてくれますが、周りのお客さんの迷惑になる場合もありますし、僕たちも客席がなんとなくざわつくのがわかるので、時間には遅れないようにしましょう。
それから携帯電話。日本のホールでは、会場内が圏外になっている場合もありますが、外国のホールではそうではないところが多いです。これは通信法か何かの法律の問題らしいですが。コンサート前に携帯電話を切るよう注意を促す放送も入りません。つまり、電源を切るのを忘れて、電話がかかってくると鳴ってしまうのです。会場に入る前に、携帯電話の電源を切ったかどうか、必ず確認するようにしましょう。
コンサート中の写真撮影や録音は禁じられていることです。これも法律に触れてしまうので、しないようにしましょう。演奏中にフラッシュがたかれると、弾いている側も気になります。コンサート前や後、それから休憩中に、自分たちの記念撮影をすることは問題ないです。会場によってはこれも厳しく取り締まっているんですけどね。やってみるとわかることですが、大きなコンサートホールでフラッシュをたいて写真を撮っても、あまり綺麗に撮れるものではありません。特に演奏中、客席の照明を落としている時は暗い画像にしかなりません。
そしてくしゃみや咳。これは生理現象ですから仕方ないです。本来いつしてもいいのですが、口を手やハンカチで押さえるなどして、なるべく小さく、周りのお客さんの迷惑にならないようにしたほうがいいでしょう。楽章の間などに、客席の皆さんが一斉にすることがありますが、一人一人がどんなに小さくしても、大勢でするのでかなり大きな音になります。これはいかにも「今まで我慢してました」といった感じなので(笑)、それよりは曲の間にしたほうが目立ちません。我慢しているのも辛いことですし、そうして曲を楽しむ余裕がなくなってしまうと残念ですから、無理して我慢する必要はありません。喉が痛い場合、喉飴などを持っていると便利です。
演奏中に隣の人とのおしゃべりはしないようにしましょう。どんなに小さな声で話しても、ホールの音響はそれなりですから、響いてしまいます。楽章間もあまり好ましくありません。
仕事で疲れていたり、海外でのコンサートでは時差ぼけの時もあるでしょう。そうして音楽を聴いていると、気持ちよくなっていつしか眠気に襲われることもあります(笑)。寝てはいけないということも全くありません。ただ、周りのお客さんの迷惑にならないような寝方(?)をしましょう。
「こんなに気をつけなくてはいけないことがあるのか、コンサートはこんなに堅苦しいのか」と言われてしまいそうですが(笑)、大事なことは「会場の皆が楽しめるように、他人の迷惑になるようなことはしない」ということです。それさえ守っていただければ、あとはどう演奏を聴いてもいいのです。
5.生演奏を楽しもう!
前項で口うるさく書いてしまいましたが、コンサートで一番大切なのは音楽を楽しむことです。生演奏のコンサートでは見所・聴き所が溢れています!
最初に書きましたが、生演奏でしか体験できないものをぜひ感じ取ってもらいたいです。あの広いホールの中を満たす音。その音は体中に響きます。そしてその音楽は、舞台上にいる教育を受け才能と特殊技能を持った音楽家たち(自分で書くのもおこがましいのですけどね(笑))が、その瞬間に生み出しているものなのです。全く同じ演奏というものは、2度とできません。会場にいる演奏者と聴衆の皆さんだけが共有できる音楽をぜひ楽しんで欲しいです。
見ていて一番わかりやすいのは指揮者でしょう。指揮者はただ単に棒を振り回しているだけではありません。例えば同じ曲を同じオーケストラで、でも違う指揮者で演奏した場合、かなり違ったものになります。指揮者が音楽を作り上げる時に果たす役割というものは、それほど大きなものなのです。指揮者は普通、客席に背中を向けているのですが(笑)、彼が何をしているのか注目すると、どういう音楽を作ろうとしているのかが見て取れます。まずどの方向を向いているか。ずっと譜面だけを見ているとか、正面だけを見ているということはありません。指揮者はその個所で大事だと思うパートの方を向いて指揮します。指揮者が見ている方の楽器を注目すると、何か特別なこと、例えばとても美しい旋律だったり、伴奏でもとても大事な動きだったり、ちょっと変わったことをしていたりします。そして指揮者の手の動きにも注目してみましょう。手によって速さだけを指示しているのではありません。曲の表情や音量も手の動きでコントロールしています。例えば、手のひらをかざすと音量がすっと下がりますし、逆に手のひらを上に向けると音は大きくなります。ホールによっては指揮者の顔が見える位置に客席がありますが、そういう席からは指揮者の表情もチェックできます(笑)。
もちろん僕たち演奏家もチェックしてください(笑)。楽器を演奏される人たちには、興味のある楽器の演奏家の弾き方・吹き方を見るのも楽しいことでしょう。そうでなくても、プロの演奏する姿はそれだけで美しいものです(そのはずです(笑))。あれだけの人数が息を合わせ、一緒に音楽を作っていく様子を感じ取ってください。弦楽器の場合、弓の動きでそのパートが何をやっているのか知ることができます。CDなどの録音で聴くと旋律がまず耳に入りますが、生演奏で弓の動きを見ていると、普段は聴こえないような裏の旋律や伴奏、例えばセカンドヴァイオリンやヴィオラの音も聴こえてきます。そうすると曲の奥深さが増すことでしょう。そして管楽器奏者たちが、お互いの音に耳を澄ませ、息を合わせてアンサンブルをしている姿も要注目です。ピッチの高さや音色・音量など、もちろん指揮者がリハーサルで指示をしますし本番でも振ることはできますが、それらは基本的に彼らが長年一緒に演奏してきた中で培ったものによって完成されます。文字通り「息の合った」管楽器奏者たちの音の重なりをぜひ聴いて欲しいです。もちろん管楽器のソロも聴き所です。
また一風変わった見方もできます。結構「見るのが好き」という人が多いのが、曲の合間にティンパニ奏者が指で軽くティンパニをはじき、耳を楽器にくっつけて調律する姿です。出番の少ない楽器の奏者が演奏していない間、どうやって待っているかを見る人もいるようです(笑)。例えば、ブラームスの交響曲第1番で、4楽章まで出番のないトロンボーン奏者が3楽章までをどうやって過ごしているかとか(笑)。打楽器の多い曲で、打楽器奏者たちが楽器を色々と持ち替えたり、別の楽器のところまで移動したりするのを見る人もいることでしょう。また音楽家たちも人間です。よく観察していると「人間味溢れる」行動をしていたりするものです(笑)。
コンサートでは、たまにソリストなどのサイン会があったりもします。パンフレットなどにサインをしてもらうのも記念になることでしょう。また、日本では無理なようですが、会場によっては簡単に楽屋まで行ける所があります。そういうところでは指揮者やソリスト、またオーケストラの団員たちにも気軽に会うことができます。楽屋に行けない場合は、会場の楽屋口で出待ちすることもできます。
生演奏の楽しさは書ききれるものではありませんし、それぞれに違った楽しみ方があります。自分なりの楽しみ方を発見するのもまた楽しさの1つだと思います。
皆さんのご来場を心よりお待ちしています!
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