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コリンはいつも通り、オフィスビルのエレベーターを待っていた。今日もまた忙しい一日なんだろうな…コリンは軽くため息をついた。エレベーターの扉が開き、コリンはそれに乗ろうとした。その時、背後に人の気配を感じ、コリンは振り向いた。そこには長く艶やかな黒髪の女性がいた。彼女の黒い瞳はコリンに向かって優しく微笑みかけていた。
「どうぞ」
コリンは彼女を先にエレベーターに乗せた。
「ありがとう」
彼女はコリンより上の階のボタンを押した。その階に入っている会社は海外に大きく展開しているものだった。働いている人かな…コリンはそう思った。コリンよりずっと低い位置にある彼女の髪の毛をコリンは見つめていた。彼が降りる階にエレベーターは着き、扉が開いた。
「それじゃあ」
コリンが軽く挨拶をすると、彼女は再びにっこりと微笑んだ。
「ええ、また」
コリンの目の前で扉がすっと閉まった。
コリンは1ヶ月に一度くらいの頻度で彼女をエレベーターホールに見かけた。いつも彼女はコリンに向かって微笑みかけてくれた。その優しく愛らしい笑顔は彼を和ませてくれ、コリンは彼女に会うことを心待ちにするようになった。しかし、彼女も毎日このオフィスビルに来ているはずではあったが、朝の通勤時間帯は人も多く、なかなか一緒のエレベーターに乗ることはなかった。ある日の夕方、コリンがエレベーターホールで人を待っていると、エレベーターから彼女が降りてきた。彼女はコリンと目があうと、笑顔を浮かべた。
「さようなら」
コリンは彼女から声をかけてくれたことに驚いたが、慌てて答えた。
「さようなら…よい一日を」
それからコリンは何度か同じ時間に彼女に会った。どうやらこの時間が彼女の終業時間らしかった。コリンはその時間に用事がない限り、タバコを吸いにビルの外に行ったりエレベーターホールをぶらついたりするようになった。朝よりはかなりの確率で彼女に会うことができた。彼女のあの笑顔を見ることができた日は、コリンはとても幸せな気持ちで一杯になった。
暫くして、彼女にぷっつりと会えなくなった。コリンはエレベーターに乗り、自分のオフィスのある階のボタンを押し、何気なく上の階のほうを見た。彼女が押していた階のボタンに会社の名前はなかった。コリンはオフィスの受け付けの女性に挨拶すると、さり気なく聞いた。
「7階に入っていた会社はどうしたのかな」
「ああ、何週間か前に引っ越したみたいですよ」
コリンの心の中で、名前も知らない黒髪の彼女が微笑んでいた。
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