ロングコートと交差点


街はすっかり秋の装いになっていた。街路樹は黄葉し、あちこちに黄色の絨毯を作っていた。今朝降った雨でしっとりとした落ち葉の上を、彼女は急ぎ足で歩いていた。今はもう雨は降っていなかったが、夕方で気温が下がってきたのと冷たく吹きつける風のせいで、彼女の体には凍えるほど寒く感じられた。こんなに寒くなるなら、もっと厚手のコートを着てくればよかったわ…彼女は腕を組み、自分を包み込むようにした。街路樹を抜け交差点に来ると、風は益々強く彼女に吹きつけた。前方から容赦なく吹く冷たい風を、彼女は目を閉じて堪えた。暫くしてふと風が止んだ…彼女は不思議に思い、目を開けた。彼女の目の前には1人の男が立っていた。背が高く、広い背中。上質な紺のロングコートを着たその男が、風を遮っていたのだ。偶然かしら、それとも…?彼女はその男の後姿を見つめていた。信号が青になり、その男は歩き出した。彼女もその後をついて歩いたが、その男の足は速く少し離された。交差点を渡り切ったところで、その男は彼女のほうを軽く見た。力強く、そして限りなく優しい深い色の瞳。その男は彼女に微笑むと再び前を向き、黄金色に色付いた葉が散る中を足早に歩いて行った。彼女は寒さを忘れ、その男がコートの裾をなびかせて歩く後姿を見送った。


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