機械工学は日本へ来る前にもフィリピンで少し勉強したが、ここで習った機械工学とは多少違うところがあることに思いついた。これは大学と高専との相違かもしれないが、述べてみたいと思う。
国では小学校六年、高校四年、そして大学五年という課程で工学位を貰う。大学の一、二年は高専と同様に社会学、哲学、物理、数学といった一般科目も教えられる。卒業するまでの残りの学年は殆ど専門科目ばかりだ。この専門教育の在り方が高専との違うところだ。四つの力学、すなわち材料力学、流体力学、熱力学、機械力学の教育と研究が十分行われている。講義科目の評価は殆どペーパーテストである。出題は大体応用問題で参考書を見ても解けないのが多い。だが講義で学習した概念を肌で感じられるような実験があまり伴わない。実験して結果を分析し、うなずけてなるほどという貴重な実感が少ないため、頭の中に浮かんでくるものをは一つまとまったものに組み立てるのは困難である。その故、機械工学は抽象的学問になりがちである。卒業研究も高専のような実験的なものではなく、大部分はペーパー上の設計であって、テーマも限られている。
もう一つ、高専での機械科としての工作と生産に対する重視である。ものの設計計算から工作までの一連の流れを学習するので、旋盤をはじめ最先端のNC工作機やレーザー工作機までの操作を覚える。自分は三年時に編入したので、工作実習の一部を受けなかったのを残念に思っている。やはり機械工学の意義は頭の中で概念として考えるだけでなく、実際にものを作ることだと考えさせられた。
最後に、国と高専の教官についても一つ面白いことに気がついた。国では企業から学校へ教えに帰って来る教官は少ないから、企業内の話をしてくれる人がいない。教室に入ったら、シラバスどおりに授業を行って、時間になったら部屋を出る。高専の教官は全員ではないが、授業に十分位は余談、たとえば就職活動や自分の経験や最近の出来事について話して下さる。ここにも日本の先輩後輩の関係が映し出されている。人生の先輩の豊かな意見や経験談を聞くのも教育の大事な一部である。そして教官の多くは企業に一時勤めた経験があるから、授業に関連する会社の話しをしてもらうと一層勉強は面白くなる。
こういうようなことは皆当り前だと思うかもしれないが、留学生の僕には興味深いことである。