
その4.最も有名なバロック音楽・・・四季「春」
現在、聴かれているバロック音楽のなかで、一番有名な曲は?と訊ねられたら、まず名前が挙がるのが、ヴィヴァルディーの「四季」ではないでしょうか。あまりにも有名すぎて、バロック音楽と知らずに耳にしている方も多いと思います。今回は、その中から「春」の第1楽章を大解剖してみたいと思います。
![]()
ヴィヴァルディー作曲 四季より「春」−この曲は、今でこそ春・夏・秋・冬の4曲がセットになっている、と思われがちですが、実は12曲からなる協奏曲集「和声と創意への試み
作品8(Il cimento dell'armonia e dell'invenzione Op.8)」の中の最初の4曲なのです。ヴィヴァルディーが本格的に活躍し始める前に、彼と同じくイタリア・ヴェネチアで活躍したアルビノーニが1700年に、たった1人の奏者(独奏者)がオーケストラと対等に演奏するスタイルの協奏曲(ソロ・コンチェルト)を出版しました。それまでの協奏曲は、コンチェルト・グロッソと呼ばれる協奏曲(独奏者が1人ではなく、たいていはヴァイオリン2・チェロ1の独奏楽器群がオーケストラと対比する形のもの)が主流だったので、たった1人の奏者が、多くのオーケストラ奏者を相手に孤軍奮闘するという形は、革新的なものだったのです。その後、1709年にトレリという作曲家が出版したソロ・コンチェルトの様式を、ヴィヴァルディーが整え、そのころのベネツィアの流行とともに、このジャンルでの最高峰といえる作品へと確立していきました。
では、ヴィヴァルディーが確立したソロ・コンチェルトの形とは、どんなものだったのでしょうか。特に大事な点を2つ、あげておきましょう。
ヴィヴァルディーが確立したコンチェルト様式
@ 急−緩−急 の3楽章構成である。
A 速い楽章では、オーケストラが全員で演奏する部分が「リトルネッロ」という、同じモチーフを繰り返す音楽となっている。(リトルネッロ形式)
つづいて、協奏曲集Op.8「春」の第1楽章を通して、コンチェルトの形を見てみましょう!(参考文献・作曲家別名曲解説ライブラリー21「ヴィヴァルディー」音楽之友社1995年
)
例)「和声と創意の試み」Op.8より”四季”春 第1楽章
*1 R=リトルネッロ A〜E=ソロ部 *2 主調がその曲のもとの調。その他は主調と深い関連を持った調(近親調)。
|
*1 |
R |
A |
R |
B |
R |
C |
R |
D |
R |
E |
R |
|
リトルネッロでの使用モチーフ |
a b |
|
b |
|
b |
|
b
|
|
a' |
|
b |
|
楽器編成
|
総奏 |
独奏 |
総奏 |
総奏
|
総奏 |
独奏 |
総奏 |
独奏 |
総奏 |
独奏 |
総奏 |
|
調 関係 *2 |
ホ長調 主調 |
↑ 小鳥の歌 |
ホ長調 主調 |
→ ↑ 泉 |
ロ長調 属調 |
→ ↑ 雷鳴 |
嬰ハ短調 平行調 |
↑ 小鳥の歌 |
嬰ハ短調 平行調 |
→ |
ホ長調 主調 |
|
描写しているもの |
|
|
|
|
|
|
ご存知の方も多いと思いますが、この曲は、ソネットという形の詩に書かれた内容を音楽で描写しています。その内容は
春が来た/小鳥は喜びの歌を贈る/そよ風の息吹に泉はやさしくささやいて流れる/ああ空がだんだん暗くなる/稲妻が光り、春を告げる雷鳴がやってくる/そして春の嵐は鎮まり/小鳥は再び春の喜びを歌いあげる
です。そしてこれが、本来ヴァイオリンの独奏が来るべき部分で描写され、様々な楽器と組み合わされて、よりよく情景が描き出されるように作曲されています。
リトルネッロはa・b2つのモチーフで出来ています。図で分かるように、繰り返して出て来た時には後半のモチーフbが多く使われています。
さあ、この表を見ながらぜひ、実際に曲を聴いて見てください!繰り返されるリトルネッロが聴き取れたら、これであなたもヴィヴァルディーの秘密のカギを一つ手にしたことになります。Good Luck!!!