ジャンル
* * *
17世紀までは、オルガン・チェンバロ・クラヴィコードいずれの鍵盤楽器でも、同じ音楽を共有していました。つまり、この曲はチェンバロの曲、この曲はオルガンの曲、っていう区別がなかったのですね。17世紀後半から、それぞれの楽器の語法が分かれ、それぞれの楽器にふさわしい音楽となっていったというわけです。
この時代は良くも悪くも、その楽器らしい音楽を、まだまだ模索している最中だったので、同じジャンルの音楽が、国によって違った名前で呼ばれていたり、また、同じ名前が、ちがうジャンルに同時に使われていたりします。たとえば、「パルティータ」という名前は、J.S.バッハが作曲したものは、組曲(舞曲=踊りの曲の集まり)ですが、イタリアのバロック初期のジャンルでは、変奏曲のことをこう呼んでいます。
もうひとつ、この時代のおもしろいところは、国(地域)によって、特徴がはっきりしていること。ある国で書かれたジャンルが、他のある国では全く書かれなかった、なんていうこともあったりします。
|
1. |
対位法の音楽―フーガにつながる |
|
|
ティエント(西・伊)、リチェルカーレ(伊)、カンツォーナ(伊)、ファンタジア(英)、フーガ、など |
|
2. |
走句的音楽(純粋に器楽的な技法を追求したことによって生まれた、自由な形式の楽曲)―プレリュードにつながる |
|
|
トッカータ、プレリュード、など 注)トッカータと名の付く楽曲は、走句的な部分と対位法的・またはホモフォニックな部分が交互に現れる作品が多い。 |
|
3. |
舞曲(踊りの音楽、またはそれから発展したもの)―組曲につながる |
|
|
パヴァーヌ、パッサメッツォ、パドヴァーノ、ガリアルド、サルタレッロ、アルマンド、クラント、サラバンド、ジグ、ブレ、メヌエット、パスピエ、など |
|
4. |
定旋律(cantus firmus)による楽曲(形式のモデルは声楽曲、c.f.はグレゴリオ聖歌などによる) |
|
|
イン・ノミネ、プサルム、ミゼレレ、など |
|
5. |
変奏曲
ディフェレンシアス(西)、パルティータ(伊)、ヴァリアツィオ/ヴァリエーション、など |
|
|
グラウンド(英)、パッサカリア、シャコンヌ、など |
|
6. |
表題のついた描写音楽(主にフランス18世紀、F.クープランなどの作品) |
|
7. |
コンチェルト(2段鍵盤の機構を利用、J.S.バッハは、他の作曲家の協奏曲を、チェンバロ・ソロのために編曲) |
|
8. |
ソナタ(ギャラント様式への傾向。2部形式・単一楽章の楽曲―D.スカルラッティー、A.ソレルなどの作品。多楽章の楽曲―C.Ph.E.バッハなどの作品。古典派以降の、ソナタ形式による「ソナタ」とは区別して扱う。) |