痛い背中
「ポルナレフ」
名前を呼ぶ。肩越しにそのまま口接けた。その体勢からでは、あまり深く合わせられないことにアヴドゥルは苛立ちを覚え、強引にポルナレフの頭を引き寄せる。下唇を甘噛みし、それから口腔を探るように舌を入れ、ポルナレフのそれと絡ませる。
どれくらいそうしていたのかは、わからない。ただ、出しっ放しのシャワーの音だけがいやにバスルームに響いていて。
「アヴドゥル……!」
唇が離れると、そう呼んで抱き締めてくる。それがあんまり強い力だったので、少し驚いてしまった。けれど彼の胸に顔を埋められるのは嬉しくて、双眸を閉じて彼の胸の鼓動に耳を傾けてしまう。
「…泣くな。お前が泣くことはない」
頬に落ちてきたものに気づき、優しく言う。
「…俺が、……俺のせいで…」
ポルナレフはアヴドゥルの言葉が聞こえないように涙を落とし続ける。頬に落ちる涙の音がシャワーの音よりも大きく聞こえるのは何故なのだろう。
震えているポルナレフの身体。抱き締めてくるその手にアヴドゥルは自分の手を重ねた。瞬間、少しポルナレフの身体が大きく震える。それは驚いたようなものではなく、怯えたようなものだった。
今のポルナレフに届く言葉はほんの少ししかない。
「愛してる」
双眸を開け、ポルナレフを見た。大粒の涙を流す青年は、言葉に力無く首を振る。何か言いたいのだろうけれど、何も言えない様子でただ、強く抱き締めてきて。その涙を止める方法を彼は知らないのだろうか。