テーレ、魔女の踊り場 クニグンデ    
 

 ノルトハイムとゲズントブルンネンの間にボメネブルクという場所があります。ドイツの人々は昔からゲルマンの原始宗教を信じていましたが、このクニグンデの物語の時代に入る頃には、キリスト教の宣教師が熱心に布教活動を行ったので、人々はキリスト教を信じるようになりました。ボメネブルクにはクニグンデという名の娘をもった伯爵が住んでいました。伯爵一家もすでにキリスト教に改宗していましたが、クニグンデだけはキリスト教を信じようとはせず、ローテベルクという場所にあるゲルマン宗教の聖地にこっそり出かけては、オーディンや他のゲルマン神話の神々に生け贄を捧げていました。

 このクニグンデは非常に美しい娘で、ボメネブルク周辺に住む多くの騎士たちが、クニグンデを奥方にしたいと願いやってきたものです。しかし、騎士たちはキリスト教徒だったので、クニグンデは誰のプロポーズもうけようとはしませんでした。クニグンデは、自分のようにゲルマン宗教を信じる人としか結婚したくないと思っていました。

 さて、ある日、見知らぬ、背の高い騎士が、黒馬にまたがって、クニグンデの住む城へやって来ました。そして、クニグンデに、自分の奥方になる気はないかと尋ねました。異教徒であることを示すため、騎士は突然、十字架の前につばを吐き、背を向け、キリスト教を信じることを拒否しました。クニグンデは、彼こそは本当の異教徒だと思い、
「かしこまりました」
と、騎士の結婚の申し込みをうけたのです。たとえ、両親があわてて、よく知らない騎士との結婚を反対したとしても、クニグンデの心は変わらなかったでしょう。

 クニグンデは、ゲルマンの風習にのっとり、結婚式をあげたいものだと思いました。そして、その日が来ました。しかし、約束の時間になっても花婿は現れませんでした。結婚式の晴れ着をまとった美しいクニグンデは、一日中部屋で待っていましたが、とうとう花婿は来ませんでした。クニグンデは、この屈辱に怒り、そして、一日中泣いていました。花嫁になるのを楽しみにしていましたから。さて、夜になると、激しい嵐がおこりました。空には黒い雲があらわれ、絶え間なく、稲妻が光り、雷が鳴りました。お城の人はみな、不安になり、嫌なことがおこらなければ、と思っていました。すると、突然、黒い甲冑を身に着けた見知らぬ騎士が、クニグンデの部屋の窓から入って来ました。騎士はいやがるクニグンデを連れて行こうとしました。クニグンデは抵抗したのですが、騎士は花嫁をつかみ、無理矢理、暗闇の中にひきずりこんでしまいました。以来、クニグンデを見た人はいないと言われています。

 お城の人はその事件を見ていました。後に、人々は事件について、こんな風に考えるようになりました。あの見知らぬ騎士は、悪魔自身で、悪魔がクニグンデをゲルマン教の聖地、ローテベルクに連れていったので、クニグンデは永久にそこで暮らさなければならなくなったのだと。しばらく経ってから、クニグンデは一年に一度、復活祭の夜にだけ、ローテベルクを離れることを許されるようになったそうです。彼女は体を洗いにルーメ川に行き、その後、とても美しくなると言われています。
 


 
 
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