リンダーホーフ、キオスク クニュッペルブーヘ 

 ドランスフェルトとバルテロデにオッセンベルクという丘がそびえたっています。そこには、巨大な樹冠をもった太いブナがあります。この地方の人は、クニュッペルブーヘ(ブナの棒)と呼んでいます。というのは、ここで昔、ある男がクニュッペルブーヘに恐ろしい目にあうという事件があったからです。

 ここにかつて、ビューレンかヴァルローゼン出身かわかりませんが、ひとりの分隊長が住んでいました。男には子どもを身ごもっている恋人がおり、娘と結婚することを固く、約束していました。男が分隊長として部隊を率いていかねばならなくなり、お別れの時が来ました。娘は涙を流し、別れを悲しみました。男は、
「必ず戻ってくるぞ。もし誓いを破ったら、悪魔が太いブナのあるオッセンベルクに自分を連れて行き、ぶんなぐられてもいい」
と誓いました。

 それにもかかわらず、このいい加減な男は二度と娘のもとに戻ることはありませんでした。おき去りにされた娘は深い悲しみと羞恥心から自ら命を断ちました。一方、分隊長の方は、別の女性を愛するようになり、結婚したいと思っていました。いよいよ結婚式の日がきました。男は教会の祭壇の前で花嫁に誓いをしようとしていたその時、花嫁の立っているはずの場所に、不幸な最期を迎えたかつての恋人が幽霊となって現われ、拳をあげました。おそろしさで背筋がぞっとし、男は昔自分が娘に誓ったことを思い出したのです。男が教会を出た瞬間、誓いを破った時のことが現実におこったのでした。悪魔が男に飛びついてきて、ドランスフェルトを越え、オッセンベルクに連れて行きました。男は巨大なブナのところでおろされ、クニュッペルブーヘでなぐられ、瀕死の状態になりました。

 それで、悪魔はとうとうぶつのをやめました。最後の力をふりしぼって、分隊長はオッセンヘルトに這い戻ってきました。激しくぶんなぐられたので、洋服がボロボロになり、ほとんど裸、全身はアザだらけ、悪魔が自分をなぐったクニュッペルブーヘにすがっているという哀れな姿で、村の宿屋に現れました。男は同じことしか言わず、宿屋の主人は困りました。
「今日はおれの結婚式、今日はおれの結婚式…」
とうとう昼間過ぎに男の家に送り返し、男を毛布にくるみ、ある農夫に分隊に戻しました。

 不実な男が、約束を破ったことで悪魔がなぐるのに使ったクニュッペルブーフは、宿屋の食堂に置かれたままでした。そこでこの事件の記念に長い間、宿屋で保存し、この話が真実である証拠をお客たちに示しました。

                                                      Nach Kuhn, Schwartz 1848
 

Hosted by www.Geocities.ws

1