リンダウ、ボーデン湖 ブランブルクのノロ鹿

 ヴェーザー川が弓状に曲がっているあたりにフュネングラーベンという険しい山があります。そこにはブランブルクというお城の跡があります。ずっと昔、そこでは、時々、月の明るい晩の真夜中に、3頭の見事なノロ鹿を見ることが出来ました。ノロ鹿は急ぐことなく、森からやってきて、ヴェーザー川を泳いで渡り、サバブルクの方へ消えて行きました。ザバブルクはグリム童話の中にある"いばら姫"の舞台となってお城と言われているところです。

 グラスヒュッテ出身のある森林職員は、その話を聞き、ノロ鹿のうち1頭を仕留めてみたいものだと考えました。そこで、ノロ鹿の現れるといわれている場所に、12時ちょっと前に出かけ、待ち伏せしていました。すると、本当にしばらくすると、満月の中、ゆっくりと暗い森からノロ鹿たちが歩いてくるのが見えました。若い狩人は慎重に銃を肩で固定し、ノロ鹿に狙いを定めました。しかし、指に引き金をかけようとすると、突然、指が岩のように固まって動かなくなりました。まるで魔法にかかったようでした。一方、ノロ鹿は悠々とした足どりで、金縛りにあった狩人の前を通りすぎて行きました。狩人の目には、ノロ鹿がまるで3人の美しい女性のように映りました。彼女たちはこうして、優雅な足どりで霧の中へ消えて行きました。

 翌日、別の森番が、ブラムブルク城の近くで、若い森林職員を見つけました。森林職員は一本の樫の枝に身動きもせず、寄りかかり、深くじっと考え込んでいました。森林職員は昨夜の出来事に痛く心を動かされ、今尚、正気を取り戻せない様子でした。やっとのことで森番は、若い職員の心を呼び戻すことができました。そして、若い男は、たんなる狩りの楽しみで動物を殺したりしてはいけないことを、昨晩思い知らされた、と語りました。それから、この男は二度とノロ鹿を撃とうと思うことはありませんでした。
                                               Nach Schambach und Mu"ller 1854
 

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